人間嫌い 公演情報 たすいち「人間嫌い」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    古典物でも高水準の出来上がりに
    実は、かくいう私も、生でモリエールを見るのは初めてだし、
    モリエールについて造詣があるわけでもない。
    ただ、今回拝見して、やはり何より面白かったし、
    時代のふるいに耐え、現代まで残ってるだけの出来のよい台本であると感じた。
    それを前回、短編で好演を見せた+1が、今回、長編かつ古典もので、
    どのような芝居を見せるか、興味深かった。

    私的には、やはり高水準で、出来のよい芝居であったと思った。

    ネタバレBOX

    社交界に生きる人達の追従、欺瞞、不正が日常茶飯事になっている中、
    男主人公アルセストは、極端なほど世辞・追従が全くできず、
    ある意味正義感が強いともいえるが、周囲とは当然激しい摩擦を起こしていく・・・傍から見ればやはり滑稽な人物であることには変わりがない。
    そして、そういう性格の彼がなぜか恋する女主人公セリメールは、
    逆に「典型的な社交界的人物」。
    そして、この二人の周囲には、多様な個性の強い人物が数多くいて、
    そしてこれら登場人物が大小様々の事件を引き起こしていく。

    このモリエール作品に、ある場合には必要と思われる、
    強い自己主張的表現や、長い台詞を言葉のリズムを有しながら話していくこと、
    それに間の取り方、などが、脇役陣を含めてしっかりしていて、
    それらを前提に、人間の弱さや可笑しさ、
    そして素晴らしさがしっかり織り出されていった舞台であった。
    私自身、やや疲れ気味だったので、1時間半はつらいかも、と思っていたが、
    実際はあっという間に観終ってしまった感がある。

    さて、素晴らしい舞台であったが、さらなる向上のためにということで、
    あえて私が気になったこととして、以下3点を指摘しておく。
    1 この物語では、男主人公は極めて非妥協的人物であるが、
    「結末部」の台詞などでは、若いのに諦めゆえの隠遁を決意してしまうし、
    また恋人への台詞なども含めて、
    極端な個性がやや緩くなってきたように考えることができるであろう。
    一方、女主人公は、「この時代の社交界としては極めて常識的」な生き方を
    していて、上手く立ち回っているのだが、やはり「結末部」では、
    やり口がばれてしまう・・・。
    そして、それまで気持ちを秘めていた脇役の位置にあった2人が
    結ばれることに。
    こういう、下向き、あるいは上向きの「ベクトル」が、
    もうちょっとくっきり出る演出ができれば、
    さらに印象強い舞台となったのではないだろうか?
    2 上述のとおり、脇役も含めて好演していたのだが、
    実は、「舞台に出てきて台詞が始まるまで」の間に、
    ちょっと存在感に欠ける人が何人かいた。
    台詞が始まってからは良かったのだが。
    つまりは、名俳優や名バレエダンサーなど、
    ある意味、突っ立っているだけでも、
    強い存在感とオーラのようなものが伝わってくるのであり、
    それは内面の思いとか、微妙な表情・所作から滲み出してくるものであるが、
    その辺もこれから考えて頂ければと思う。
    3 音楽というか効果音で、心臓の鼓動のような音を数か所使っていたが、
    その場面が内面の不安をことさら強調する場面とも思えず、
    私は少々違和感を感じた。

    ただし、これらの課題はあっったとしても、ポイント4.6~4.8位なので、
    四捨五入で5Pを献上しました・・・。

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    2011/06/19 08:26

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