泣けば心がなごむけど、あなたの前では泣けません 公演情報 世田谷シルク「泣けば心がなごむけど、あなたの前では泣けません」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    劇場の大きさにおさまらないような
    劇場の枠におさまらないほどの
    広がりを感じる作品でした。

    でも、決して大味ではなく
    常ならぬ密度がしっかりとシーンごとに作られていて。

    見応えがありました

    ネタバレBOX

    いつもに変わらぬソリッドな舞台。

    劇場の舞台がいつもより広く感じられる。
    チラシ配布を排しての開演前の公演広告の時間も、
    居心地のよい映画館の雰囲気を思い出して個人的には好きだったり。

    一つずつのシーンが丹念につくられている舞台だと思いました。
    冒頭の公園での自然観察の雰囲気にしても
    その肌合いがしっかりと伝わってくる。
    こう、木々に囲まれた場所の空気がきちんと作られている。

    それは、主人公が別の世界に入り込んでも同じこと。
    よしんば、それが童話のような世界であったとしても
    観る側は語られる物語を追うだけではなく
    ちゃんとその世界の内側に閉じ込められて
    いろんなことを感じることができる。

    表現の豊かさ、
    なにかを具象する力だったり
    あるいは観る側のイメージを膨らませるテクニックだったりするのですが、
    いろんなことが、一歩観る側に踏み込んでやってくる感じがあって。
    鳥やいろんな生き物の仕草の切り取りや
    花たちが醸し出すニュアンスにしても、
    観ているだけで楽しいし
    舞台に広がる世界に取り込まれる感じが
    常ならぬほどに圧倒的で・・・。
    公演を重ねた効果というか
    いろんなメソッドが世田谷シルクの色として
    クレヨン王国の世界に観る側を捉えていく。
    観る側が向かい合うのではなくゆだねることができる
    表現のクオリティが絵空事を
    観る側に浸しこんでしまう。

    その一方で
    同じ力が主人公の現実も描き出していく。
    父親や血の繋がっていない妹のこと。
    新しい母親のこと。
    幼馴染の同級生や、先生との関係。
    入り込んだ世界に居場所が生まれるに従って
    現実の物語も次第に客観的に見えてくる。
    リストカットを繰り返す心情も
    現実の積み重ね感だけではく、
    もうひとつの世界から
    理とともに伝わってくるような印象と絡まり合って、
    観る側に厚みを持って伝わってくる。
    童話の世界に導かれながら
    現実の質感が表裏一体となって観る側に置かれていくのです。

    前述のとおり
    映像の表現にしても
    身体が創り出すものにしても、
    舞台を吹き抜ける風にしても、
    観る側をがっつりと浸すだけの厚みがあって。
    それなりに横幅がある舞台であっても
    劇場がとても狭く感じられた。
    その入りきらなさのようなものは
    舞台だけにとどまらない。
    前から3列目で観ていたのですが、
    にもかかわらず、
    見えないはずの劇場の客席側の奥行きが
    肌合いとしてとても寸詰まりのようにも感じられて。
    言葉を変えると、なんというか
    場所に広さがあれば、
    ある分だけ密度を損なうことなく広がって
    もっとクリアな突き抜けが生まれる予感があって。
    作り手のそこまでの底力が
    舞台のいくつもの刹那からから伝わってくる。

    2時間超えの比較的長尺な舞台だけれど
    だれたり隙間を感じたりする部分がなく、
    ずっと舞台に閉じ込められていることができました。
    作り手としてもっと精度を上げることができる部分は
    それなりにあるのだろうし
    表現したいものに対しての足枷も感じてはいるのだろうけれど、
    よしんばそうであったとしても、
    膨らみと内在した刃物の切れ味には
    がっつりと観たさされたし
    作り手の次を渇望させるに十分の出来だったと思います。



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    2011/06/13 07:28

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