神様の言うとおり 公演情報 NICE STALKER「神様の言うとおり」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    この手法ではゆるくなってしまうのでは?
    この日も超満員で、電車遅延のためぎりぎりについた私は補助椅子へ・・・。
    ただ、お隣がかなりの美人のお嬢様だったのはラッキー(?!)
    それはともかく、携帯の設定のための用紙が足りなくて、
    もたもたしており、さらに10分ほど遅れての開始となった。

    さて、携帯で劇中で投票させるという試み・・・、
    もちろん芸術家・表現者として、
    新しい試みにチャレンジしていくことは重要であると思うし、
    上手くいくことを願ってもいたが、次のような懸念ももっていた。

    1 (かなり)昔、漫画雑誌で読者にその後の筋の進行のアンケートを取り、
    作者がそれに合わせるという企画がはやったらしいが、
    結局は月並みな展開が多くなり、
    「読者の希望に合わせること=いい作品になる」
    というわけではなかったようで、結局は廃れてしまったという。
    2 最近では、試写会で上映中、携帯でアンケートやら感想を送信させる手法もあるらしいが、
    上映中観客が携帯を取り出しただけで、場内が明るくなるし、ざわつくし、鑑賞の妨げになる、との批判もかなり出ていたようである。

    で、当日どうであったかというと、2については、多少そんな気にもなったが、
    映画と違って真っ暗ではないし、そこで今後の芝居に影響を与えられる
    という要素もあるので、個人的にはそれほど邪魔にはならなかった
    (個人差はあるだろうが)。

    ネタバレBOX

    しかし、1については、やはり色々考えさせられた。

    (1)何回アンケートがあったか覚えていないが、仮に5回なら、
    2択なので、2の5乗=32通りの筋があるともいえるが、
    現実にはそれほどの用意がされているとは思えなかった
    (というか無理だろうし、意味もないだろう)。
    つまり、2択のいずれかが選択されることで、
    その直後については変化があるようだが、
    結局は、その程度で、結局は1つに収斂していくようである。
    要は、一旦は2股に分かれても、全く違う方向に行くのは最後くらいで、
    途中では結局は1つに合流してしまっているのではないか?
    それなら、どれほどの意味があるのかな?と思ってしまった。

    (2)また、2択なので、観客は自由に選べるわけではなく、
    あらかじめ用意された2つのいずれかしか選べない。
    選択肢は、正反対というよりは、どちらも似たものも多くて、
    「どっちもな・・・」と思ったこともあり(某国の国政選挙に似ているか?)、
    要は、マスコミの偏向世論調査(?)と同様、設問自体に、
    設問者の意図が色濃く反映されているのであり、
    (1)と合わせても、さほど観客にフリーハンドが
    与えられているわけではない。
    もっとも、設問で笑いを取っていたところもあり、
    それはそれで面白かったが・・・。

    (3)観客がどちらを選ぶかについても、
    「私がその立場なら、こうしたい、こうすべき・・・」という見解よりも、
    「私としては、○○の方の筋書きを見てみたい」という見解で
    選択している人も多いのではないか?
    つまり、選ばれた「結果」がどの程度の意味を持つのかな?と思った。
    そしてさらに、例えば、いじめを受けている同級生への対応について、
    を考えてみたい。
    この時、誰でも経験しているであろう、いじめや若い頃の失敗について、
    演劇として深く掘り下げていく、ということはあまり期待できず、
    選択された結果により、ポイントが切り換えられ、
    そのレールの方向に進んでいく、という程度にすぎない。
    ちなみに、私もいい年をして、行き遅れたおじさんなので、
    結構台詞が当てはまることも多く(?)、
    要は、いじめられる人間やダサい人間を、
    ただ浅薄な笑いの対象としか扱えないのであれば、
    しょせんその程度の演劇にしかならないであろう。

    (4)、上演中、観客を惹きつける要素として、「これからどうなるのだろう?」
    という強い思いがあると思うのだが(だからネタバレを嫌う人も多い)、
    この手法では、アンケート中に結果がどうなるか、
    というゆるい期待にしかならない。
    また、古典もの(クラシックや落語でも同様だが)では、ネタバレであり、
    その後の展開は分かっているのだが、
    しかし、分かっているものが、どのように演技され、演出されるか、
    を楽しみに行くのである。
    こっちの方がむしろ、私は演劇の本質的な魅力だと思うのだが、
    それは失われてしまいますよね。

    何より、観客の予想や期待を裏切り、しかもそれ以上の感動を与える・・・
    というだけの台本や演技を、私は期待したいのである。
    これでは、選ばれた結果から、その後の成り行きは
    多少とも予想できてしまう・・・。
    以上を考えると、私としては、この程度の手法では、
    それほど効果があるとも思えないし、
    今後、一般化していくとも思えないですね。

    まあ、今回は、ゆるいながらも面白かったのだが、
    でもその程度かな?という印象だった。

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    2011/06/02 07:54

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