満足度★★★
信じること
兄が経営するバイク屋を舞台に、超能力を持つ弟とその周囲の人たちの関係がじっくりと描かれた作品で、小細工のない正当派な芝居でした。
自分には超能力があり特別な人間だと思い込む主人公と、彼を自由に生きさせて駄目な人間にしてしまったのは自分のせいだと言う兄の奇妙な関係を軸に、妻や超能力をメディアで取り扱おうとする人々、職場の人などとの関係を通じて、弟が半ば自分勝手に感じている孤独感が痛々しく描かれていました。
説明的な表現はしないで舞台上でのやりとりのみで内容を伝えようとする作風だったので、なぜ兄が弟に対して甘いのかや、妻が弟のどこに惹かれて結婚したのかなどの背景が描かれず、物足りない感じがありました。もう少し背景が見えた方が、登場人物それぞれに共感しやすく、物語として厚みが出ると思いました。
役者の演技にリアリティがあり、特に主役を演じた星耕介さんの陽気な雰囲気の中に秘めた気難しさや狂気を感じさせる眼差しが印象的でした。妻役の菊池春美も健気な感じも良かったです。
本物のバイクまで配置したセットが細かいところまで丁寧に作られていて、飲み物や食べ物も本物を使っていて、リアルな空気感がありました。あと、BGMの選曲が格好良くて音楽的センスを感じました。