散歩する侵略者 公演情報 イキウメ「散歩する侵略者」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    演劇の面白さに溢れている
    面白い! 凄い! 
    演劇にしかできない巧みさ。

    立ち見がこんなに多いトラムは初めて。
    人気があるのも頷ける。

    ネタバレBOX

    どうなっているのか、そしてどうなるのかという興味で進む、物語自体が面白いし、役者も演出もいいから引き込まれていく。
    笑いも用意されている。

    観ながら思ったのは、自分を含め、多くの人が「概念」をきちんと考えずに言葉を使っているのではないかということ。
    どれだけの人が「概念」を意識して言葉を発していたり、受け止めていたりしているのだろうということなのだ。
    一見、「概念」を奪われて大変なことになると思いつつ観ているのだが、ひょっとしたら、概念を奪われても、誰も日常生活にはまったく困らないのではないかと思ってしまう。
    「言葉」は「言葉」だけで存在し、自由に行き来する。そんなに重みもないし、それが実態ではないか。

    フリーターの丸尾と長谷部が言う「戦争」も「平和」も、本当に理解して発しているのかはわからない。単にそういう言葉があるだけなのだ。
    (所有の概念を失っただけでそんなに共産主義っぽくなっちゃうのか、という台詞には大笑いしたけど・笑)

    逆に、もちろん、言葉に付いてくる「概念」はあるということも言える。つまり、言葉に託している「気持ち」がそれにあたる。
    その「気持ち」は、あまりにも個人的すぎて、誰にでも共感できる共通項にはなり得ない。それだけに、奪われてしまうことは怖いとも言える。

    だから、宇宙人がどんなに「概念」を集めたとしても、人間の総体は見えてこないことになる。

    つまり、もしこんな形で侵略してくる宇宙人がいるとすれば、でたらめで適当に発せられる概念なき言葉と、極個人的な概念に支えられた言葉、そういうものを集めてしまうと、宇宙人たちは困惑し、混乱するだけなのかもしれない。

    それは、どういうことかと言えば、「人間同士だって、そんな簡単にはわかり合えない(理解できない)」ということなのだ。
    言葉は適当だし、それに付いてくる「概念(思いとか気持ちとか)」は、その人の中にしかなく、それも発している本人が意識しているかどうかもわからない曖昧なものだから、その意味(気持ち)の交換と共有なんてできるはずはないということなのだ。

    宇宙人じゃなくても人間は、わからないというのが本当のところなのだ。

    物語の落ち着く先に「愛」があるように設定されていて、それを軸に新たに光の差す物語が展開するように見えるのだが、それは人間たちが勝手に思い込んで、盛り上がっているだけで、「愛」の概念を知った宇宙人の真治は何も言っていないのだ。
    確かに人間の思考を手に入れ、あらゆる概念を知ったのだが、それによって真治は人間になったわけではなく、彼は、あくまでも人間とは異なる思考の者であるのだ。
    だから、勝手に盛り上がる人間たちの思うようになるとは限らない、と思わせるあたりが、またSFっぽい幕切れでもあると思う。

    灰色で、その存在を意識させないセットや道具が配置され、それを巧みに使いながら、時間や空間が重なり合う。
    ふとした瞬間に自宅から病室に移ったりする。
    そういう演出があまりにもうまい。一気に見せてくれる。

    役者も誰もが素晴らしい。特に中学生・天野を大窪人衛さんの、あのイヤったらしさは凄い。宇宙人とは言え、イヤな中学生だ(笑)。
    真治の妻・伊勢佳世さんの、後半にいくに従い感情が上がっていく様も見事だし、奇妙さがうまく表現されていた真治役窪田道聡さんとのコントラストもいい。真治の義理の兄・安井順平さんのきちっとした感じ、フリーターの丸尾(森下創さん)と長谷部(坂井宏光さん)のいかにも、もいい感じ。

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    2011/05/29 07:29

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