『humming5』 公演情報 ポかリン記憶舎「『humming5』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    重なりがべたつかず、クリアで深い
    物語の進行から
    次第に垣間見える時間や想いが
    場の空気を重くするのではなく
    深くしていく感じ・・・。

    重なってはいくけれど
    澱まない刹那の
    いくつもの空気感に捉えられました

    ネタバレBOX

    初めての場所だったので
    ちょっと早めに会場近くまでいって。
    日が長いこともあり、暮れきる前の街の雰囲気に浸る。

    会場は坂の途中にあるカフェ。
    日もとっぷりと暮れたころ
    主宰の方の凛として心地よい
    職人技のような客入れを経て
    静かに舞台が始まります。

    カフェの感触がまずつくられる。
    その場のお客さんが去ったり
    物語の前半を担う常連さんがやってきたり。
    トイレットペーパーのエピソードなども
    キャラクターの出掃けの裏付けに留まらない
    その店のニュアンスを創り出していきます。
    トイレを借りに来てバイトを志願する男の存在も
    したたかに差し込まれて
    その店の開かれた部分と閉じられた部分が
    観る側に肌合いとして伝わってくる。

    そのベースがあるから
    常連の客と昔の恋人の再会にしても
    あるがごとくにすっと入ってくるのです。
    二人の関係が
    作りこまれ置かれるのではなく
    時が次第に場に解けるなかに自然と伝わってくる感じがして・・。
    その店の女主人と帰って来た娘が
    ひととき常連客に店を託して場を外す空気にも
    不思議なくらい違和感がなく
    あとには二人だけがその店に置かれたことの
    細微でやわらかい揺らぎや
    あるがままに広がっていきます。
    二人がそれぞれに過ごした時間が
    美化されることことなく感情に流されることもない
    互いの姿をその場に表す。
    満ちていく想いが
    場の密度をゆっくりと高めて。
    そして、店に男が現れて想いの交わりがさえぎられる時の
    すっとテンションが切れる感じが
    場の揺らぎにさらなる振幅を与えて。
    女性が店を去った後
    やってきた客をひとりにして彼女を追う常連客に
    観る側の想いまでが一つのベクトルのなかに
    しっかりとおさまっていく。
    ひとり残された男が、
    静謐で居心地の悪そうな時間を過ごす中に
    常連客が残していった携帯がなって
    カップルの想いの重なりが暗示されるあたりも
    上手いと思う・・・。

    その、残された男は店の主人の娘が見つけてきた婚約者候補で
    やがて戻ってきた女主人と面会を果たします。
    母親は男を挑発して試す。
    がむしゃらさのないその男は
    母親のお眼鏡にはかなわなかったよう・・・。
    そこには、母親が過ごしてきた時間とともに編み上げた
    人生や結婚に対しての感覚があって、
    その枠に捉われることにも、
    でも、踏み出し破ることに逡巡する娘の想いが
    常連客の想いと同じように、
    あいまいな、でも確実に存在するベクトルの中に重なり
    そのカフェの時間にゆっくりと吸い込まれていきます。
    その場に生まれたいくつもの想いが
    したたかな重なりをもって
    でも、互いが色を染め合ったりべたついたりすることなく、
    それぞれに淡々と深く
    店に流れる時間を彩っていく。

    終演後にカフェタイムがあって
    その場に暫く居させていただいたのですが
    なにか、舞台の延長線上の時間に
    ふっと置かれているような感覚が残って。
    なんというか、観る側としての
    舞台上の時間と場所の座標軸が
    現実感を持って交わったように思えたり。

    私が3・4・5と観た
    劇団のhummingシリーズは一応これで終わりのようですが
    このような作り手のやり方はさらに続けられるとのことで、
    ふたたび作り手が供するであろう
    どこかの場所とそこにつくられる時間の揺らぎに出会うことが
    益々楽しみになりました。

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    2011/05/01 08:08

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