満足度★★★★
ベケットの恐るべき吸引力
2時間半余、片時もたゆまず、見る者の集中を吸い込み続けてビクともしない。ブラックホールのようなベケットの恐るべき吸引力。
たとえば一夜明けて裸木にしょぼくれた葉っぱがついている。それにはべつに「意味」なんかないよ、そうベケットは言っている。意味を求めて踏み込む観客の背中を、その行為の無意味さを、観客自身が眺めている。ベケットの吸引力の強力さの源泉は、その無限遡及にある、と私は解釈する。
そのベケットのDNAを表現型に結実させたのは、戯曲翻訳者、演出をはじめとするスタッフと、橋爪功を筆頭とする演者の力である。満腔の賞賛をおくりたい。