ガレージのダンデライオン(無事千秋楽終えました!ご来場ありがとうございました!) 公演情報 東京カンカンブラザーズ「ガレージのダンデライオン(無事千秋楽終えました!ご来場ありがとうございました!)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    エンジェル
    今回も中盤から激しく泣かされた。観客をこれでもか!という具合に落涙させる三重奏にも似た構成の作りこみが上手い。そうして終盤、天使に降り注ぐ羽の乱舞で舞台は終わる。なんと見事な幕引きか。目が流れてしまうんじゃないかというほど泣いて感動した作品だった。こういう舞台を観ると帰路の足取りは軽く至福な気持ちになる。有難う!とこの舞台に関わった全ての人たちに感謝したい。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    精神薄弱で天使のような心を持つ二女の綿子。明日の命も解らない心臓病の三女の繭子。彼女らの為に水商売の世界にとびこんで二人を育てた長女の莉子。この三姉妹を主軸に、「生きる」をテーマにした舞台だったように思う。

    「生きる」とは実にシンプルな言葉だ。しかし、命の切り刻みが来る日も来る日も繰り返され、明日の命の保証がない場合、いかに図太い人間でも参ってしまう。人の人生はひと続きにみえるからこそ安定しているのであって、これが初めからこま切れになると、意味を失うと思う。今という時間が筋の通らない空虚なものになり、生きながら骨を抜かれたも同然なのだと・・。

    そんな不安な毎日を生きる繭子を、姉二人が健気に守り支えていくのだが、そんな家族に後から後から災難が降りかかる。しかしその災難にもめげず立ち向かう強い心と、他者をも改心させてしまう綿子の愛が観客を泣かせ感動させるのだ。

    この物語は、もはや人情劇という枠を弾き飛ばすほどの傑作といっていい。無軌道な生活をしていた都会の若者が日向家の人々と暮らすことで改心していくさまや、女性実業家が社長を解任され日向家に居候になる情景などを説得力をもって描いている。骨格はシンプルでも、その肉付けは意外に難しいのが演劇だ。下手をすると陳腐な話になりかねない。しかし川口は群を抜く人物造形と挿話を積み重ねて、ダイナミックな成長物語に仕立てている。

    陳腐すれすれの手垢のついた話を、鮮やかな物語に転換してしまうのは川口の描写力、観察力にほかならないとも思う。だから舞台のスパイスはストーリーではなく技術であることを見事に証明していると言い換えてもいい。

    更に道具立ての上手さも絶品だ。病院院長の息子を繭子の恋人役として登場させたり、未だにイジメの恨みを持つボランティアを登場させたりして、日向姉妹を揺さぶらせるプロットのうまさは見逃せない。そしていちばんは無償の愛に何の抵抗もなく捧げる綿子の造形だ。これは、かつてのイジメから人間の愛に恵まれず、その場しのぎの行動を繰り返すしか生きる術を知らなかった千春がここでの生活と綿子の思いやりで見事に立ち直る。

    それらを背後から支えるものは愛だ。捩じれて捻くれた登場人物の身体の奥深くまで愛の言葉や行動は沁み渡っていく。愛は、ゆらゆらと立ち上り観客の心にまで伝わってくる。だから目頭がジンと熱くなってくるのだ。

    大地に根を張り踏まれても踏まれても花を咲かせるたんぽぽ。タイトルも素敵だ。キャストらもまったく噛まずに素晴らしい演技力だった。お勧め。



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    2011/04/18 14:54

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