満足度★★★
浮遊感のある太宰
少女の独白体で書かれた短編小説を男女2人の役者で舞台化した作品で、発話法や体の動きがテキストに対して不思議な距離感を持っていて、浮遊感がありました。
原作を3割程度カットして、ちょっとした遊び心の台詞が追加された以外は原作に忠実でした。同じ格好をした2人が同時に主人公を演じたり、急に別の登場人物になったりと、原作を知らないと少し混乱しそうな演出でしたが、原作に見られる文体の使い分けを増幅するような多様な発話スタイルの採用や、文脈に則っているけど次第に分離して見えてくる動作など、演技に趣向を凝らしていて楽しかったです。
変にドラマチックな方向や笑いの方向に持って行くことのない、役者の気負わない雰囲気が良かったです。小道具や音響も使わず、わずかな照明の変化と演技だけでも求心力がありました。
当日パンフや客席のベンチもナチュラルなテイストの中にセンスの良さが感じられました。
60分と短めの上演時間でしたが、個人的にカットしないで欲しかった部分がいくつかあったので、もう少し長くても良いと思いました。