満足度★★★★★
観劇から一日たった今も登場人物達に思いを馳せてしまう。小品にして傑作です。
観終わって、しばし自失状態。劇場を出てしばらく歩いているうちに涙がこぼれてきて、とまらなくなってしまいました。
3人の「狼少年」たちの子供時代に描いていた悲しくもきらきらした夢と、大人になって突きつけられるそれぞれの現実。決して全員がハッピーになるわけではない。ファンタジータッチの世界観にもかかわらず、描かれる現実は容赦なく苦くて痛い。今までのおぼんろ作品と比べて、ストーリー構成がほとんど完璧といっても過言ではなかった(と思うんですけど)ということに加えて、それぞれの人物が丁寧に大切に書き上げられていて、それを演じている役者さんが全員ハイレベルかつ哀愁を帯びた佇まいがきれいなので、全ての人物に感情移入ができてしまうのですね。
他の方も高評価のようですし、次回作はプレッシャーもかかって大変かと思いますが、ぜひこのクオリティのまま進化していってくださいね。
ネタバレBOX
印象的なシーンがたくさんありました。おばあさんが、ふいに母親の表情になった瞬間(特にラスト!)、怒りにまかせてお菓子を投げてしまった拓馬の自分自身に驚いたような顔と老婆の悲しみ、拓馬に裏切られた瞬間の倫平の見ているこちらが胸をえぐられるような表情には、あやうく泣かされそうになってしまいましたし、絶望に負けて人として大切なものを全て落っことしてしまったような諒一の凍て付くような表情は本当に恐ろしいにもかかわらず、子供時代のガキ大将ぶりを見てきただけに、救いようのない哀しさがありました。
盗賊の面を取った諒一の顔が涙だらけになっていた演出は、秀逸でしたね!呆然として子供のように諒一にすがりつく拓馬の姿に胸を締め付けられました。
そして、ラストの拓馬の表情とセリフには、もう完全にノックアウトです!!
倫平と老婆が「親子」になった経緯とか、拓馬の今後とか、諒一が救われることはあるのかとか、それぞれの人物について、劇中では語られなかったアナザーストーリーを、観客それぞれに想像させるだけの力を持った作品であり、役者さんたちの演技であったと思います。
"前2作も観に行っていたのですが、
脚本は風呂敷を広げすぎて収拾がつかない感じで「書き散らした感」が否めないし、
役者さんも、今回の出演者4名や主演の阿久澤さんなど一部を除いては、「これでお客さん呼んじゃうの!?」という
レベルでだいぶイライラしてしまい(ごめんなさい)、うーん、もう行かないだろうなーと思っていました。"
けれど、もし今回もっと日数があったなら、私はきっと友人や家族を誘ってもう一度足を運びましたよ。電車に乗って、お金を払ってでも、もう一度あの世界に浸りたいと思いましたから。
ただ、敢えて言うならば、やはりあの狭さで縮こまって観劇するのは身体的にかなり辛いですし、
今後もあのレベルで見せてくれるのであれば、小さい劇場でも、今までのようちゃんとした音響や照明を使った状態でぜひ観てみたい。音楽の使い方や暗転に、情緒というか余韻が足りないのが勿体無いと思いましたしね。
ぜひご検討を!!