しのぶの観てきた!クチコミ一覧

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ハムレット

ハムレット

東京芸術劇場

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2017/04/07 (金) ~ 2017/04/28 (金)公演終了

新訳の上演台本で、カジュアルな言葉遣いが増えているように感じました。かなり自由度が高そうな作品で、回を重ねるごとに変わっていくのだろうと思います。詳しい感想:http://shinobutakano.com/2017/04/10/5210/

城塞

城塞

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2017/04/13 (木) ~ 2017/04/30 (日)公演終了

すごく刺激的でした。シアタートークの質問でも「怖くて震えが止まらなかった」とおっしゃる方が。怖くなるポイントも観客それぞれでしょうね。若い方、チケット安いですのでぜひ。当日学生割引は正価の半額。Z席(当日券)は一般も1620円。
シアタートークのメモ:http://shinobutakano.com/2017/04/19/5298/

エレクトラ

エレクトラ

りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館

世田谷パブリックシアター(東京都)

2017/04/14 (金) ~ 2017/04/23 (日)公演終了

アングラ小劇場出身の大ベテランの俳優たちと、NHK朝ドラのヒロインを含む若手スターたちとの共演が見どころの娯楽舞台。「おどろおどろしくて、可笑しくて、ためになるお説教もてんこ盛りの、おとぎ話」といった作風。白石佳代子さんと麿赤児さんは出ているだけでエンターテインメント。高畑充希さんはすごい貫禄。中嶋朋子さんが素晴らしかった。

長い墓標の列

長い墓標の列

兵庫県立ピッコロ劇団

ピッコロシアター 中ホール(兵庫県)

2017/04/13 (木) ~ 2017/04/16 (日)公演終了

やはり、いい戯曲でした。著者の福田善之さんのトークもあり幸運。感想と内容のメモhはこちら:http://shinobutakano.com/2017/04/16/5251/

COASTER コースター 2017

COASTER コースター 2017

Doris & Orega Collection

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2017/03/30 (木) ~ 2017/04/09 (日)公演終了

こういうタイプの娯楽演劇は10年以上前に観てたかしら〜と、懐かしさが込み上げました。ヨーロッパ企画の本多さんが出ていらして、落ち着きました。

ネタバレBOX

ドタバタ劇中劇の「脳内劇場」は演劇ならでは。
野良女

野良女

東映ビデオ

シアターサンモール(東京都)

2017/04/05 (水) ~ 2017/04/09 (日)公演終了

ストリップ小屋を模したステージで、アラサー女子仲間が冴えないプライベートを晒すコメディー。若者がこんなにも追い詰められているのかと、日本の現状について真剣に考える時間になり、面白かった。善悪、清濁、当事者と部外者など、裏表を成す事柄の両面を、同時に舞台に載せる演出がいい。深谷美歩さんがさすがの巧さ。露骨な下ネタ炸裂ですので、そのおつもりでどうぞ。上演時間は約2時間弱。

ネタバレBOX

男性たちをトルソーで代用し、黒子に徹していた男優が最後に登場人物として現れる。生々しくて、きれいごとで済まさないのが良かった。
人生百年時代に突入する。長い目で人生設計するよう、若者に教育する必要性をまた強く感じた。
ハムレット

ハムレット

ゲッコーパレード

旧加藤家住宅(埼玉県)

2017/03/31 (金) ~ 2017/04/10 (月)公演終了

満足度★★★

 幸運なことにぽかぽか日和で、蕨駅からの徒歩約12分のお散歩が楽しかったです。会場は駅から線路に沿って真っ直ぐ進み、地図のとおりに2度曲がるぐらいの場所にあり、生け垣に舞台写真や活動紹介の紙を貼ってくださっていたので、迷わずたどり着けました。

 会場は築数十年と思われる民家。全席自由で各回限定15席です。前の二列は桟敷席(畳に座布団)、最後列は背もたれなしのイス席ですので、劇場へはどうぞお早目に。開演前に台所をじっくり眺めていると、「私の祖母の家と同じ食器棚がある!」「あのマグカップ、私も持ってる!」などの(笑)、色んな発見がありました。

 今回の『ハムレット』は“戯曲の棲む家”シリーズの第6弾。当日配布のパンフレットによるとセリフは全て、シェイクスピア作『ハムレット』の翻訳本からの引用だそうです。

ネタバレBOX

 時系列ではなくランダムに場面を上演していくスタイルで、3人の俳優が複数役を演じます。渡辺恒さんが演じるのはハムレットなど、崎田ゆかりさんはオフィーリアなど、河原舞さんはホレーシオなど。演出の黒田瑞仁さんは客席下手奥で音響と照明のオペレーション等をされており、客席後方の雨戸の開け閉めも担当。昼間の回でしたが雨戸のおかげで暗転を味わえました。黒田さんは墓堀り役として出演もされました。

 台所がメイン舞台でした。相対する畳の居間が客席です。客席上手側のふすまの向こうにも畳の部屋があり、そこからも俳優が登場しました。覚えている場面は「生きるべきか死ぬべきかそれが問題だ(訳は色々あり)」「尼寺へ行け」「オフィーリア狂乱の場」「父王の幽霊がハムレットに死の真相を告白」「ハムレットが母ガートルードに詰め寄る」「ハムレットとホレーシオが墓堀りに話しかける」「オフィーリアの埋葬」「ガートルードとクローディアスがハムレットを引き留める」など(間違ってたらすみません)。時系列ではないので、『ハムレット』を知らない人にはどんなお話なのかはわかりづらかっただろうと思います。

 冒頭が面白かったです。暗転中にひっそりと登場して冷蔵庫のドアを開け、取り出したガラス瓶入りの食べ物を食卓で食べながら、渡辺さんがセリフを言います。「このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ」(だったかな)という有名なセリフが、いい年になって実家の世話になっているニート男性のつぶやきに聞こえて、笑えました。ビートルズの楽曲が流れるのも“青春”っぽくていいと思いました。
 
 黒田さんの終演後のトークによるとこの作品は三部構成とのこと。「本編とは一切関係ない、意味のない場面」「CMと呼んでいます」とおっしゃった第二部は、崎田さんと河原さんが大きな声を張り上げ、大げさな身振りで演じます。灰色と黄色の配色のペアルックで、お笑い芸人のコンビのようでした。そういえば最近観た『ハムレット』でも、墓堀りの場面はお笑いにしていたなぁと思い出しました。

 実際に料理をして食べる場面は、料理をする動作が板についていて、観ていて退屈しませんでした。サンドイッチを作って食べるところが一番好きでしたね。ただ、サンドイッチを食べながら、文庫本の『ハムレット』を手にセリフを読み上げるのは、意図がわからなかったです。口の中にまだ食べ物が入っているし、誰に語り掛ける風でもないので、食べ終わってから語るか、黙読でいいんじゃないかと思いました。行動の根拠となる設定や動機などはあまり重視されていないようです。

 最後に舞台美術の見せ場がありました。台所の上の棚を開くと内側が装飾されており、置かれたオブジェには照明が当たっています。冷蔵庫の下の引き出しからも何かが飛び出ていました。テーブルを横にすると、その裏にも装飾が施されていました。暗闇でたくさんの奇妙な物体にカラフルな照明が当たります。少々気味の悪い、ホラー風味のエンディングでした。作品全体が住人の男性(=ハムレット)の妄想の世界だったと解釈して良さそうです。家の中に照明がたくさん仕込まれていて感心しました。

 俳優同士がお芝居で会話をする際、生の感情の交流は特になく、空に向かって独白をする人たちが交互に話をしている印象でした。手を伸ばせば届くぐらいの至近距離に観客がいるのですが、俳優は観客と積極的には交流しませんでした。せっかくの家屋の中での上演なのに、もったいない気がしました。

 終演後に演出の黒田さんとゲスト (演出家・青年団演出部の蜂巣ももさん)との「歓談」という形式のトークがあり、作品理解の助けになりました。畳に座布団を敷いて、全員がゆるやかに円になって座ります。観客はお二人が話すのを聞くだけで、質問できる雰囲気にはならなかったので、「歓談」ではなく「ポスト・パフォーマンス・トーク」としてもよかったのではないかと思いました。
怒りの旅団-アングリー・ブリゲード-

怒りの旅団-アングリー・ブリゲード-

ワンツーワークス

赤坂RED/THEATER(東京都)

2017/03/16 (木) ~ 2017/03/26 (日)公演終了

前半と後半で違う役を演じる際に、どんな役なのかを説明するのではなく、登場人物として存在、反応するのがとてもいいと思います。小劇場で舞台美術の大きな変化を見せてくれて贅沢でした。
上演時間は約2時間40分、休憩なし。てっきり休憩があるものと思っていましたが、ぶっ続けですした。

時をかける稽古場2.0

時をかける稽古場2.0

Aga-risk Entertainment

駅前劇場(東京都)

2017/03/22 (水) ~ 2017/03/28 (火)公演終了

満足度★★★

 本番2週間前に台本が出来上がっていない、いや、1ページも満足に書けていないという修羅場で、小劇場劇団の劇団員たちが、公演初日を迎えるために奮闘します。稽古場の部屋で偶然見つけた“タイムマシン”で、本番前日に飛ぶというタイムトラベルもののコメディーです。

 時間旅行、並行世界などのSF題材を生かした現代の娯楽作で、人間ドラマも織り込んでいることに好感を持ちました。作・演出の冨坂友さんの経歴を拝見したところ、黄金のコメディフェスティバル2014、2015において最優秀脚本賞を受賞されています。初演を経た再演で、戯曲はかなりブラッシュアップされていたのではないでしょうか。

 俳優のボケ・ツッコミの呼吸があざとく感じられたり、物語の仕組みを説明するためのやりとりが多かったこともあって、私は笑えなかったですが、初日のほぼ満席の客席からは笑いがよく起こっていました。

ネタバレBOX

 額縁舞台の全面を覆うスクリーンに文字映像が映写されます。転換を見えなくしたり、場面の日時を明示したりする、大切な役割があります。開幕してすぐに流れたキャスト、スタッフ紹介のオープニング映像は、初演と同じデザインだったようです(動画で確認しました)。キャスト紹介の文字映像をスクリーンに映写するだけの演出は、久しぶりに拝見し、懐かしい気もしました。オープニング映像については、その前と後で場面の変化がほとんどなかったので、なくても良かったのではないかと思いました。

 登場人物は本番2週間前(3月)と本番前日(4月)を行ったり来たりします。3月のAさんが4月に行くと、代わりに4月のAさんが3月に飛ばされるという設定です。中盤ぐらいまで舞台は3月のまま。3月の人々全員が4月に移動してからは、舞台が4月になります。それだけで終わらず、5年後の人々が4月に戻ってくるのが面白かったですね。そして“タイムマシン(選んだ時代に飛ぶ)”だと思っていた黒いガムテープが、実は“もしもボックス(望んだ場所に飛ぶ)”だったと判明するくだりも、よく練られた仕掛けだと思いました。事前にホワイトボードに“ドラえもん”の絵を描き、“タイムマシン”と“もしもボックス”の話題を前振りしていたことも理解の助けになりました。舞台右奥のドアがピンク色なので“どこでもドア”に見えるのも遊び心があって良かったです。

 3月の世界では客演のハマカワ(ハマカワフミエ)がインフルエンザを発症したために公演中止になって、5年後には劇団は解散してしまっていました。4月に移動していた3月の人々は、色んなすったもんだと議論の末に、全員で3月に戻ろうと話し合います。でもハマカワだけは「自分がこのまま4月にいれば、インフルエンザ発症の時期がズレて、公演は中止せずに済む」と主張し、1人だけ4月に残ると言い出します。それに対して3月の人々は「全員一緒に居ること、このメンバーで稽古して本番を迎えることが重要なのだ」とハマカワを説得しようとします。ハマカワフミエさんの演技に説得力があり、彼女が本気で4月に残りたいと思っていること、つまり、公演を中止にしたくないという強い気持ちが伝わってきました。議論に真実味と迫力がある、いい場面でした。

 3月と4月は異なる世界であって、同じ時系の数直線上にあるわけではない。だから、3月の仲間と4月の仲間は違う集団である。それがしっかりイメージできるようになった時、舞台上で同じ名前の複数役を演じる俳優が、その人数分の違う人物に見えてきました。演劇は集団創作で、過程(稽古)の時間の充実度や人間関係がそのまま本番に反映されます。それをよく知っている演劇人だからこそ、描けたドラマだったのだろうと思います。残念ながら、手前みそでお涙頂戴の雰囲気もわずかながら感じられ、引き込まれるほどにはなりませんでした。

 中盤かその前あたりで、複数の出演者が、床に貼った黒いビニールテープを剝がしていたのが気にかかりました。必要に迫られてもいないし、“タイムマシン”である黒いビニールテープは「1個しかないから貴重だ」という話題も出ていたのに、勝手に無言で剥がしてゴミにして(なきものにして)いたんです。おそらくですが、3月から4月へと場面転換した際に、4月の床に貼られていないはずの黒いビニールテープが残っていたら、矛盾するからではないかと。些細なことなのでスルーできればよかったんですが、疑問とともに強い印象が残ってしまいました。込み入った設定を完璧に成立させるのは難しいものだなと思いました。

※作・演出の冨坂友さんがクチコミに対するコメント覧でご説明くださいきました。

・「一度貼ったビニテはタイムマシンとして無効」というルールが明示されている
・使用済みで“ただのビニテ”と化しているものを剥がしてゴミにするのは自然な行動
・稽古の邪魔になるので剥がさない方が不自然

なぜ私はあの行動を不思議だと思ったのか、記憶をたどってみました。私には、彼女たちが稽古をするために黒ビニテを剥がしている風に見えなかったのかもしれません。“稽古をしたい”よりも、“ビニテを剥がしたい”という方の動機を受け取ったのだろうと思います。

私が脚本の細部まで理解できておらず、失礼いたしました。加筆することで訂正させていただきます。ご親切に感謝いたします。ありがとうございました。
(2017/03/27 高野しのぶ)
遠くから見ていたのに見えない。

遠くから見ていたのに見えない。

モモンガ・コンプレックス

BankART studio NYK 3C gallery(神奈川県)

2017/03/18 (土) ~ 2017/03/19 (日)公演終了

満足度★★★★

 コンクリート打ちっぱなしの大きな空間を斜めに横切るようにピンク色のシートが敷かれています。会場入り口からまっすぐ伸びているので、映画祭などでスターが歩くレッド・カーペットのような感じです。客席はその周囲に壁に沿うようにしつらえられており、約5~7席の列が2段あるひな壇が計4~5か所に点在。3歳未満の赤ちゃん同伴の「未来席」もあり、私が観た15時開演の回は親子連れで賑わっていました。ソファもあっていいムード。

 キャスター付きの可動式パネルが4枚あり、それぞれに1t、2t、3t、4tという大きな黒文字が描かれています。「t」を「トン」と読むと、とても重たそう。空間中央には壁と同様にコンクリートがむき出しになった円柱状の柱が数本立っていて、観客にとっては美的な装置でもあり、視界を遮る障害物でもあります。

 衣裳のデザインはカジュアルで幾何学的なカットが未来風。灰色のだだっぴろい空間にパステル調のカラフルな色彩の衣装と、ピンクのカーペットが映えます。ダンサーは積極的におどけて道化を演じ、全体的に明るくてハッピーな時間でした。私は感動して泣いちゃったりも。

 北川結さんのダンスが素晴らしかったです。頭のてっぺんから足のつま先まで意識が行き届いていて、目を奪われました。たとえ隙だらけの立ち姿でも、一本筋の通った何かが感じられ、凛として見えるのです。ダンサーという生き物はなんて美しいのだろうと、目の前で披露されたソロダンスを見つめながら涙しました。

 窓がある空間でしたので、昼と夜とでは全然印象が違うだろうと思います。

ネタバレBOX

 上演中に説明する言葉(セリフ)があったわけではないので、私個人の解釈です。

 劇場入り口から生まれ出た人々は上半身がほぼ裸で、灰色の空間に放り込まれ、戸惑っている様子。徐々に手に持っていた衣装を着て、散らかったものを片づけて、周囲の様子をうかがいながら、それぞれに動き、踊り始めます。

 可動式パネルは1枚(3×6尺)の縦型の板を3枚、横につなげた大きさでしょうか。計4枚のあり、ダンサーが両手で取っ手を持ったり、キャスター部分の底板を持ったりして、移動させます。板と板は垂木で繋ぎ合わせられ、パネルによっては両端に板があり、真ん中は板がないものもあります。

 柱と同様、パネルでも敢えて観客の視界を遮って、世界、世の中を作り上げました。少しずつ成長していく人類が、それぞれに突き当たる試練のようでした。また、人それぞれに見えるもの、見たいものは異なります。観客もそれを体験できました。

 夕田智恵さんの声掛けで、観客全員が一緒に足踏みをする時間がありました。ヘビーメタルの歌手に扮装したダンサーが乗ったパネルを山車のように移動させて、各客席を回ります。ロックの音楽に合わせて、派手な照明とともにノリノリで楽しみました。結構長い時間だったので、自分の体力の低下をまたもや思い知らされました…。

 私は入り口から向かって下手側、空間の中央あたりの前列に座りました。私の席の上手側が入り口になります。ある時、ピンクのカーペットの中央を横切るように4枚のパネルが並べられ、上手側が見えなくなりました。パネルのすき間から様子をうかがうと、白神ももこさんに向かって観客が手に収まる大きさのカラフルなボールを投げているよう。子供たちも一緒に大いに盛り上がっています。

 対して下手側は、2~3本の垂木をつなげた物体をいくつも出してきて、寝そべる臼井梨恵さんの上に重ねていました。その作業をするのは内海正考さんと北川結さん。シンクロする動きで夫婦のようにも見えました。臼井さんは白い紐をみつあみ(?)している様子。動と静、解放と抑圧、娯楽と芸術が対比され、やがて上手は資本主義社会、下手が某共産主義国家にも見えてきました。パネルは国境にもなり、分断された世界を観察できました。

 その後、真ん中の4枚のパネルを一気に上手側(入り口側)へと移動させる場面で、大きな波の音が流れたのです。1~4tもの物体を押し流すのは津波。下手側に折り重なるのは瓦礫。その下には人が横たわっています。東日本大震災発生時の記憶が蘇りました。しばらくして「夢で逢いましょう」をBGMに北川結さんが空間全体を使って踊り出し、私は涙腺決壊。死んだ人に会いたいという願いは、叶うことのない、最も切実な願いです。夢ならそれが叶うかもしれない。そして人生という一瞬の夢を今、共有できているのだと感動しました。

 北川さんが踊りながら両目を手で覆い始め、他のダンサーがそれを補佐します。徐々に両眼をふさいで踊るダンサーが増えていき、補佐は内海さんのみとなります。動きを止め、立った女性ダンサーたちが力なく、よろよろと倒れ始めました。おそらく人間の老化を表しているのでしょう。

 内海さんは下手側の垂木をいくつも持ってきて、一人ひとりを立たせてから、垂木を杖として渡します。それでも3人の女性ダンサーは杖と一緒に倒れ、内海さんは倒れる度に立たせて杖を渡すのですが、きりがありません。やがて女性ダンサーたちは徐々にその場から逃れていき、内海さんは倒れた垂木を立てることだけに没頭し始めました。何かに熱中しているうちに目的が失われ、行為が形骸化していく様がよく表れていました。

 5人のダンサーがアイコンタクトを取り、全員で意識を合わせながら、それぞれに踊り始めました。やがて全員一緒の振付の群舞も始まります。クライマックスに向かって盛り上がっていきました。BGMはおそらくマーヴィン・ゲイの「セクシャル・ヒーリング」の変奏(間違ってたらすみません)。

 同じ振付でも誰かの動きを少しずらしたり、おどけた動作が挿入されたり。完璧にはせずに、常にどこかが欠けています。不器用で、不細工だから可愛らしくて、愛おしいんだよな、人間ってこういうものだよなと、涙しながら見つめていました。そういえばパネルを潜り抜けようとして、背中に背負った箱が垂木に引っかかり、何度かやり直した白神さんがとても素敵でした。

 勢いを保ったままダンサーが入り口へと退場していき、終幕かと思いきや、内海さんが歌いながら登場。上半身裸の上に金色に光り輝くガウンを羽織っています。フレディ・マーキュリー? エルビス・プレスリー? 白神さんは何度もピルエット、臼井さんはフラフープで失敗連発、北川さんは「ピヨピヨー!」と叫びながら羽ばたく鳥の動きで走り回っていました。これは…輪廻転生でしょうか。生まれて、生きて、死んで、また生まれる命を想像しました。とてもハッピーな気持ち!

 白神さんがマイクで終演のアナウンスをして、観客は自由に退場します。ダンサーがダンスを終えた時に終幕。
エレファント・ソング

エレファント・ソング

名取事務所

「劇」小劇場(東京都)

2017/03/17 (金) ~ 2017/03/26 (日)公演終了

カナダの三人芝居。フランス演劇界のモリエール賞・二部門にノミネートされた作品だそうです。吉原豊司さんの翻訳を扇田拓也さんが演出されます。上演時間は約1時間40分弱。精神病院が舞台の心理サスペンスでした。
グザヴィエ・ドラン主演で映画化も。さすがに面白い戯曲でした。

夏の夜の夢

夏の夜の夢

青年団リンク・RoMT

サンモールスタジオ(東京都)

2017/03/10 (金) ~ 2017/03/20 (月)公演終了

シンプルな空間での古典上演。現実と地続きの昔話であり、ファンタジーなのだと思いました。

彼の町

彼の町

劇団銅鑼

俳優座劇場(東京都)

2017/03/15 (水) ~ 2017/03/20 (月)公演終了

90歳になられた鈴木瑞穂さんの演技を観られたことが嬉しかったです。上演された短編の中では「せつない」と「接吻」が好みでした。上演時間は約1時間50分弱。
パンフレット(600円)にこの映像の内容が採録されています。とてもお薦め。満州で生まれ、広島で原爆を体験した90歳の鈴木さんが語ってくださっています。

炎 アンサンディ

炎 アンサンディ

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2017/03/04 (土) ~ 2017/03/19 (日)公演終了

大評判の2014年初演の出演者が再演でも集結。やはり涙ダーダー…。凄惨極まる戦争の背景はそのままに、スピード感、娯楽要素が増した気がする。最後はファンタジーとして受け取れた。東京公演は前売り完売。兵庫公演あり。

ネタバレBOX

ニハッド被告が法廷でピエロの赤鼻をつけたことで、ナワルの息子とわかる皮肉。凄すぎる。
私はだれでしょう

私はだれでしょう

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2017/03/05 (日) ~ 2017/03/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

敗戦から1年後、アメリカ占領下にある日本唯一のラジオ局(現NHK)で、15分間の番組「尋ね人」を作った人たちがいた。優しくて温かくて、私は最初から涙が流れっぱなし。歌って踊る音楽劇で負の面も見せつけるのが凄い。“負け続ける”人々から勇気をもらった。

Huis Clos ユイ=クロ

Huis Clos ユイ=クロ

「戯れの会」

学習院大学南1号館特設劇場(東京都)

2017/02/22 (水) ~ 2017/02/26 (日)公演終了

新訳だったおかげか、意味が分かりやすかったです。築90年以上の建物(文化財)での公演。2015年からの3年連続企画の最終回とのこと。千秋楽の上演時間は約1時間55分。

コドモ発射プロジェクト「なむはむだはむ」

コドモ発射プロジェクト「なむはむだはむ」

東京芸術劇場

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2017/02/18 (土) ~ 2017/03/12 (日)公演終了

子供が書いたお話を大人が言葉、歌、体で演劇に。涙が出るほど笑って、技に見入って、ライブの楽しさに浸った。大人が本気で、子供と対等に渡り合って生み出された、優しさと幸せがいっぱいの時間。舞台美術も素晴らしい。ありがとうございました!

お勢登場

お勢登場

世田谷パブリックシアター

シアタートラム(東京都)

2017/02/10 (金) ~ 2017/02/26 (日)公演終了

上演時間約2時間30分強、休憩なし。柄ものの衣装が良かった。

陥没

陥没

Bunkamura/キューブ

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2017/02/04 (土) ~ 2017/02/26 (日)公演終了

『東京月光魔曲』(2009年)、『黴菌』(2010年)に続く、昭和の東京をモチーフにした「昭和三部作」の第三弾。東京オリンピック開幕まで間もない時、あるホテルのロビーを舞台にした、ロマンティックで可愛らしい恋愛群像喜劇でした。瀬戸康史さんの演技が素晴らしかったです。

ミュージカル「ビッグ・フィッシュ」

ミュージカル「ビッグ・フィッシュ」

東宝

日生劇場(東京都)

2017/02/07 (火) ~ 2017/02/28 (火)公演終了

2003年のアメリカ映画が2013年にブロードウェイ・ミュージカルに。その日本版の初演です。演出は白井晃さん。父エドワードは自分の人生経験を誇張して話すので、劇中劇として再現すると荒唐無稽なファンタジーになり、観ていて楽しいです。

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