雨模様が投票した舞台芸術アワード!

2018年度 1-10位と総評
背に描いたシアワセ

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背に描いたシアワセ

やみ・あがりシアター

久し振りにお芝居の楽しさを堪能した気持ちになりました!!
嫁姑問題と老い、認知症問題を見事に融合させた秀作コメディ。

何とも言えないパーマがかかった髪形、キドカラーと言いながらスマホもある世界、モヤモヤ感がありました。お嫁さんに対してお母さんと呼びかけたときは、一瞬妻に対して言ったのかと考え、若い頃と現在が交錯しているのかと思いましたが、実母に対して言ったのだと分かった瞬間、ああそうだったのかと全ての疑問が晴れ、素晴らしい構成の作品だと感嘆しました。

嫁姑問題は次の世代へも引き継がれて行きます。認知症は減っていってほしいものです。

この作品はスタンダードな作品になり得ます。ただし、先に題名ありきだったのか分かりませんが、題名からは入れ墨という印象を受けてしまいます。しかも辻褄を合わせるかのように普通の人には見えない入れ墨のシーンをわざわざ作り、さらに上塗りするかのように普通の人には吹けない楽器まで登場させていました。

私のそばには芝が居る

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私のそばには芝が居る

劇団藤一色

面白い上に、オノマリコの概念君、寺山修司の役者感を彷彿させる素晴らしいお芝居でした!!!
芝居が衰退した今日、芝居を衰退させた根源であるハプニングに対して、演出、役者、小道具、照明、衣装、観客などの概念が立ち向かい、芝居を復興させるというコメディ。

一人ひとりが概念として演じるのは、オノマリコ(趣向)『解体されゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話』の息吹、敬虔、奔放、哲学、癇癪、沈黙、平穏、飴玉、○○のようで、しかも分かり易い。

死んだ役者が復活するところでは、寺山修司『青ひげ公の城』の中の、普通の役者なら次の芝居で生き返ってくる、生き返ってこなかったのは役者として不適格といった趣旨の言葉を思い出しました。次の芝居でなく、カーテンコールの拍手で蘇る、観客の力の素晴らしさを認識させてくれ、最近とあるお芝居で演劇おじさんなどと揶揄されへこんでいた気持ちを元気づけてくれました。ありがとうございました。

最初の観客席の役者さんは、当日パンフレットに観客という配役があることが書かれていたこと、身じろぎもせずに余りにも不自然に座っていたこと、さらにその後ろの席に座ったお客さんがここが一番いい場所なのよと言いながら座ったことから役者さんだと気付いてしまいました。本当の観客役の役者さんが遅れて着席したときは本当のお客さんかと、こちらはしっかり騙されました。

人を殺して 生きている

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人を殺して 生きている

オザワミツグ演劇

[Aキャスト]観劇
高校時代にいじめられっ子が好きな子を守ろうとしてその子からも虐められ、卒業して先生になって、虐めに遭った生徒に死なれ失業し、自分を虐めたやつが虐めた側の生徒と援交していることを知って殺してしまい、物はついでにと、高校時代に虐めた者たちを殺してしまおうとしたところ、同僚の先生から夫が浮気していたと連絡を受けると出掛けて行き優しくしようとするも結局は嫌われ殺し、再び高校時代のやつらのところに戻ると、好きだった子を性的虐待していた父親がいてそいつを殺し、結局死刑になりそうだけど好きな子を守ったことになったのかなという、エッチで凄まじいバイオレンスな作品。

最近、ガツンとしたものを観ていなかったのでとても新鮮に感じ、素晴らしかったです。エロくてグロテスク、ちゃんと血糊も使うところなどelePHANTMoonのお芝居のようでした。

Aキャストの加藤マンを演じた俳優さんは藤井七段に似ていましたね。援交女子高生役の梨木まいさん、透明感があって良かったです。

731

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731

パラドックス定数

歴史の闇の話であり、サスペンスドラマでもありました。
昭和23年春頃、731部隊の生き残り幹部たちが互いを牽制するために集い、会話を繰り返すうちに、中国で行われていた実態や彼らの今の生き様、悩みが伝わって来るとともに、最近起きた帝銀事件の毒薬、犯人像、その背景が明らかになり、さらには、国内でも南京事件等の被害者の頭部を使った手術技術の研鑽が行われていたことまでもが明らかになる話。

薄暗い中での会話劇、素晴らしかったです。

帝銀事件の被害者は聖母病院に収容されたとのことでした。シアター風姿花伝のすぐそばでもあり、身近に感じられました。

夢で逢いま笑

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夢で逢いま笑

劇団ズッキュン娘

<女優バージョン>観劇
アイドルグループ「マカロニガールズ」解散後、偶然踏切自殺をしようとしていた元芸人純を助けたことからお笑いコンビ「開かずの踏切」を組むことになった好子が、周囲の人に助けられながら新たな道で頑張り、晴れの舞台でとんでもない挫折を味わうも、立ち直ろうとする物語。

夢は叶わない人が多い、その代わり、ばちも当たらない。夢は叶わないことが多いが、叶った人は叶った人で、それが重荷になったり、方向性が決められてしまったりすることもあり、必ずしも単純に幸福とも言えない。そして、夢が叶った人も叶わなかった人も、人生を生き抜くことが大切だと、いつもながら藤吉さんの実体験を踏まえたような、甘っちょろくなく、もの凄く現実的で奥深いメッセージは共感が持てました。

山高ければ谷深し、漫才コンクールという最高の舞台で真っ白になるという大失敗から立ち直ることは大変だと思いますが、もう一度チャレンジしてほしいと心の底から思いました。

elfin’の美声ズッキュン!ライブも、カッコよくて素敵でした!!

さようなら

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さようなら

オパンポン創造社

ハラハラドキドキ、しかもダラダラした一日一日の表現も含めて全体にスピード感があって素晴らしかったです。
脱税して貯め込んだ社長の2千万円を盗むことを計画し実行した淡路島のネジ工場社員たちの顛末。

変化する必要があるのか、努力したこともない人間が急に変化できるはずがないなど、味わい深い格言も多くありました。

男がとことんクズであることを知ったスナックのママさんが、男と逃げたのが泣かされます。最後のオチも面白かったです。女も戻ってきて、二人で笑わせてほしいものです。

歌姫、ネバーダイ!

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歌姫、ネバーダイ!

ライオン・パーマ

番外公演最高!!!
父の作ったタイムマシン付き肩掛けカラオケで1818年に行ってしまった2118年の女性が、スイッチを壊され戻れなくなったものの、たまたま人魚の肉を食べたことで不老不死になり、家族に会いたい一心で、様々な状況に遭いながらも生き抜いていく話。

歌もうまかったし、一つひとつのエピソードも面白かったし、まさか、さらに未来まで行ってしまうなどとの出来事もあり、素晴らしかったです。ただ、何かを削ったりして2時間に収めることも重要だとは思いました。

ラストの感動シーンも、いつ来るか分からないままどこかでひっそりと待っている男がいるというお芝居は観たことがありましたが、それでも感動しました。

主宰の嚙み噛みを排除するのが番外公演だとすれば、大いに結構、どんどんやってほしいと思います。

ブロウクン・コンソート

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ブロウクン・コンソート

パラドックス定数

悪い奴らっているもんですね。
拳銃密造と言うか、錆びた拳銃を磨き直して新品同様にする闇商売に絡む工員の兄弟、暴力団員、殺し屋、警察官の持ちつ持たれつの関係が、兄貴分の出所によって少しずつ崩れていく様を描いた全編クズまみれの話。

工場に行って工員にでも聴き取りしたのでしょうか。クズ振り、半端ない暴力、リアルでした。

『ソウル市民』『ソウル市民1919』

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『ソウル市民』『ソウル市民1919』

青年団

『ソウル市民』観劇
1909年、日韓併合の一年前。漢城で文房具店を経営する篠崎家の一日を描いた話。

朝鮮人を下に見る、当時の当然の雰囲気が素直に表現されていました。

『ソウル市民1919』の方が面白かったです。お相撲さんが逃げるのは分かります。単にどうでもいい意味不明な出来事として描いただけなのでしょうが、本作で手品師がいなくなるという事象は、日常の中に非日常を描かなければならないという強迫観念に因るものとしか思えませんでした。

豊饒の海

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豊饒の海

パルコ・プロデュース

初音映莉子さんが主役のような作品、思ってもいなかったことで本当に嬉しく思いました。
若さと肉体美、そして武士道めいたもの、理想の人間像に憧れていた三島らしい作品。

ラストの、理想の青年は存在していなかったのではないか、壮大な男のロマンだったのではないかという展開に驚きましたが、貴族である親たちも存在していたこともあり、そんなことはないだろう、記憶障害かなと理解しました。

総評

『 背に描いたシアワセ』と『私のそばには芝が居る』の二作品は群を抜いていました。『 背に描いたシアワセ』は改良の余地があると思いますが、スタンダードな作品になり得るものと考えます。

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