
なべげん太宰まつり『駈込み訴え』
渡辺源四郎商店
ザ・スズナリ(東京都)
2025/04/27 (日) ~ 2025/04/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/04/27 (日) 15:00
昨年の高校演劇の全国大会で優秀賞に輝いた青森中央高校 演劇部の『駈込み訴え』が、ザ・スズナリで上演された。これまで二度拝見して、個人的には 2024年に拝見した 317作品の内のベスト10%に挙げた作品で素晴らしい上演だった。今日スズナリでの再演と言うこともあり、高校演劇ではあるのだけど、こう言わせてもらっても良いのではないかと言うことでコメントをさせていただくと、岐阜の全国大会での上演でも新国立劇場での上演でもそうだったのだけど、イエスとユダを演じられたお二人の演技が飛び抜けていた。何人か来ておられたシアターゴアーの方も同じ感想をおっしゃっておられた。
そして、青森中央高校 演劇部の『駈込み訴え』の前に 30分版の『駆込み訴え』を一人芝居で演じられた下山寿音さんがまた素晴らしかった。下山さんの目の力が凄かった。いや、それ以外の演技も素晴らしかったのだけど、畑澤聖悟さんの演出と合わせ出色の上演だった。
その下山寿音さんの一人芝居での『駆込み訴え』が上演されたことで、その後の青森中央高校 演劇部が演じた『駈込み訴え』のガイドラインが示されることになり、『駈込み訴え』が初見の方達の大きな助けになっただろう。
そう言えば、開演前の待機列で、先頭におられた高校演劇ウオッチャーの方達、お一人は大阪から観に来られ、もうお一人は、岐阜でご覧になられ、もう一度ご覧になりたいと、青森まで遠征され上演を追いかけられたと言う方達とひとしり青森中央高校 演劇部の『駈込み訴え』を語る機会に恵まれたことも素晴らしい機会だった。

遠巻きに見てる
劇団アンパサンド
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2025/04/18 (金) ~ 2025/04/27 (日)公演終了

逆光が聞こえる
かるがも団地
新宿シアタートップス(東京都)
2025/04/24 (木) ~ 2025/04/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/04/25 (金) 14:00
今回、『三ノ輪の三姉妹』に続いて 2回目のかるがも団地。前回の感想が「わちゃわちゃしながら、緩い境界線で転換を適宜スピーディーに挟みながら、ツボは緩く、でもしっかり押さえた会話劇」として「初めて”かるがも団地”を拝見した。『三ノ輪の三姉妹』が、好みの作品だったので、来年5月にもう一度かるがも団地を拝見することとしよう。予定表に書き込んだ」としての今回だったのだけど、今回は一転してハイテンポ!スピードに少し付いていけない気味。我々の世代(昭和真ん中生まれ)ではいじめがほとんど無くて、別にそれを良いとはしないのだけど、生きて来た過去、生きて行く"今"、それぞれの性(さが)、力関係、ヒリヒリと映し出していた。まったく違うテイスト。これは観続けるべき劇団だなと。見定めることなんて出来ないだろうとの予感がしている。劇作家の板場充樹さん、仙田の北原州真さんのお二人の力感の無い抑えた姿、あの100㏈の人でドンキー店長の武田紗保さんのパワー、万引きをした百瀬葉さん、謎の貫禄(抑揚)の宮野風紗音さん、皆さんの演技が印象に強く残りました。

旅するワーニャおじさん
パンケーキの会
下北沢駅前劇場(東京都)
2025/04/10 (木) ~ 2025/04/16 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/04/16 (水) 13:00
最後の西村由花さんが演じるチャン セミの感情の爆発、俳優の方の苦労を思う。演技したことがなくて、あの状況を引き出す/導く手立ては想像が及ばないけど、ひたすら恐れ入る。もちろん演技全般がそうなのだと思うが、あの場面がある意味唐突な、あるいはその感情を作る前の場面がなかったと思うので。
平吹敦史さん、佐乃美千子さん、金聖香さん、西村由花さんの演技に魅かれた。
韓国演劇を拝見する機会は多くないが、この作品、韓国の社会/世情/人間関係が投影されていると思うが、人と人と人。それにしても酒を飲むシーンのなんと多いことよ!

まつり
早稲田大学演劇研究会
早稲田大学大隈講堂裏劇研アトリエ(東京都)
2025/04/03 (木) ~ 2025/04/07 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/04/07 (月) 12:00
劇研アトリエで涙ぐんだのは初めてではないかと思う。
今日のアフタートークのはぎわら水雨子との主宰/作/演出 小島淳之介さんのやり取りに同氏の作品への取り組み方の真摯さが滲み出ていて感心しきり。
作品は年代的に判ったのが島倉千代子と久保田早紀(あれは本人ではないと思うが)と他少し。マンガや平成以降の曲、芸能のことはわかっていなく、金田ネタは知識として知っている程度。そして演劇を観出したのはたった 10年前。パロディがパロディと判らないもどかしさ。皆さんが受けているのを聞いてそうかこれがネタなんだなと 笑
オープニングのクロージングの舞踏の小気味良さ!
皆さんの役ごとの色彩が冴えていてその演技に引き込まれ、渾身のバカバカさの真剣勝負を楽しませてもらった。
涙したのは山に登るシーン。いきなり、でもなくて、茶漬けで、あれ?家を出て行くのかなと思っていたら、おんぶで、おお、そう来たのか!でした。
オタク役の方の演技が巧みなのだけど、最後の舞踏の時にもその役柄を反映させていたのには驚いた。

ガラスの動物園
滋企画
すみだパークシアター倉(東京都)
2025/03/26 (水) ~ 2025/03/31 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/03/31 (月) 14:00
翻訳:小田島恒志 演出/音楽:額田大志(ヌトミック)
佐藤滋推しです。故に以下、バイアスがかかっています
あっ、ヌトミックも大いに好みです。以下、バイアスが 2倍になっています
素晴らしかった!笑
いや、最後近くでは泣いていた
戯曲は未読、上演を観るのは今日が初めて
Intermission前は説明的な部分ということと受け取れた。西田アマンダの切れと、夢は持っているけどいやいや滋トム、原田ローラの薄幸さを位置付ける。ここでそれぞれの俳優の技量、技が。佐藤滋は前説から佐藤滋の人柄が満載。姿が良い、手がデカい。そして、高く広い、すみだパークシアター倉に舞台美術の映えること。遠近を強調した床。その床/壁を這い、伸びて縮む陰と光
後半はそら惚れるやろ大石将弘ジムが良い。正直、彼のカウンセリングで身構えてしまうローラがほどけて行く、人と人が向き合うシーンに涙が。そう見せる演技が凄い
戯曲にそうあるのか、滋トムが霊としてそこに在るが如く居る、その気持ちにも心を動かされた
最後のシーンで蝋燭の焔を吹き消すシーンも良かった。これも戯曲にあるのだろうか
大石将弘さんと原田つむぎさんの二人のシーンでの原田つむぎさん舞台真ん中で正面を向いておられる時の表情が凄かった。最前列で見たので見れたのかも知れない
額田さんの音楽、岩城保さんの照明、これは良いのは観る前から判っていた。で、上演を見て、そうだった。闇と陰を操り、壁に影を切り取る光、息を呑む見入る観客。最前列だけど背中でそれが判った。あと蓄音機のジリジリ
ガラスの動物園を読んでみたくなった
滋企画のこの上演が『ガラスの動物園』の個人的な原器となる訳だ

wowの熱
南極
新宿シアタートップス(東京都)
2025/03/26 (水) ~ 2025/03/30 (日)公演終了
実演鑑賞
鑑賞日2025/03/29 (土) 13:00
これまで 4回拝見していての5回目、作/演出のこんにち博士のベスト、南極ゴジラから南極に至っての、5回目が劇団としてのベストでした。
いやー、これぞ南極(ゴジラ)の演劇だ!3年4ヶ月前、都内の一軒家で観客数人で観た南極ゴジラが劇団名を南極に変え、新宿シアタートップスを満員にして公演を打っている。このブラウン管テレビ(2枚目の映像の奥の灰色の方のテレビ)がこの公演にも登場させ、演劇の作り方もあの時からの地続きの展開だ!南極はどんどん力を付け、観客を巻き込んでいる!
素晴らしい「演劇」だった。
以前注文と言うかこんなことを言っていたけど、もうお仕舞いだ!「演技も良いところがあるし、大きく拡がる可能性を感じた。ブンブン振り回してもっと遠くにボールを飛ばし続けて行って欲しい」今日は素晴らしい演技で観客を十ブンブン振り回して大きく拡げ、遠くにボールを飛ばしていたよ!
速射砲の様に継ぎ目なくエネルギーを注ぎ込み、繋がる話を重ねながら、散逸させず、収束させる展開が見事。映像、着ぐるみ、衣装、照明、音、音楽、あと何だ、そう、俳優10人の演劇への熱量が見える、主演の端栞里さんのwowの熱(量)、ユガミノーマルさんのトゲトゲの髪、新宿シアタートップスの舞台の構造をしっかり使った物語の設定なのか、「wowの熱」という劇名が先なのか、奈落をプールとして使う展開が良い。場面転換は暗転なれど粗目の舞台美術の移動を観客に見せ、次の展開を意識下に置く仕組み。
2時間10分、視線は舞台にくぎ付けでした。
これからも10人のメンバーで南極がどんどん観客を魅了してくれ!
ところで、公演のフライヤー、台詞にあったけど、何も物語の内容が判らない段階で描いたのですよね、wowの熱が放射されているんですね。

wowの熱
南極
新宿シアタートップス(東京都)
2025/03/26 (水) ~ 2025/03/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/03/29 (土) 13:00
いやー、これぞ南極(ゴジラ)の演劇だ!
3年4ヶ月前、都内の一軒家で観客数人で観た南極ゴジラが劇団名を南極に変え、新宿シアタートップスを満員にして公演を打っている。南極はどんどん力を付け、観客を巻き込んでいる!
素晴らしい演劇だった。これからも10人の南極がどんどん観客を魅了してくれ!
以前注文と言うかこんなことを言っていたけど、もうこれ以上言わないことに。
「演技も良いところがあるし、大きく拡がる可能性を感じた。ブンブン振り回してもっと遠くにボールを飛ばし続けて行って欲しい」今日は素晴らしい演技で観客を巻き込んでブンブン振り回して大きく拡げ、遠くにボールを飛ばしていたよ!
以下引用
一回目が凄く面白くて、2回目は少し拡がりがないかなと思い、3回目に拡がりを期待して観たのが『南極ゴジラの地底探検』でした。以下、その時の感想です。今日と明日の福島での南極ゴジラの『南極ゴジラの地底探検』超お勧めです!
以下引用
南極ゴジラ『南極ゴジラの地底探検』↓↓いやー拡がってました!
アフタートークで山崎彬さんが言っておられた、このまま続けて行け。この前のゴルフの日本オープンで優勝したアマチュアの選手、ドライバーはフルスイングを心掛けて、曲がっても良いので目一杯振り続け真っ直ぐに飛ぶ様になったって。
まだまだ荒削り/足りないところも、でも勢い/想い/工夫/発想/映像/展開/小道具、光を放つかけら達があちこちに散りばめられていた。演技も良いところがあるし、大きく拡がる可能性を感じた。ブンブン振り回してもっと遠くにボールを飛ばし続けて行って欲しい。行けー、南極ゴジラ!

痕、婚、
温泉ドラゴン
ザ・ポケット(東京都)
2025/03/20 (木) ~ 2025/03/30 (日)公演終了
実演鑑賞
鑑賞日2025/03/27 (木) 14:00
『痕、婚、』
痕と婚に恨を加わえ、「恨、痕、婚」ということにも出来るかと思う。韓国語だと恨はハン。誰も責められないなどと言うことでは済まされない。でもそれを変えて行くことを思い、前に進んで行くことを続けるしかない。素晴らしい上演だった。
去年10月に開いた『痕、婚、』の プレ企画 リーディング公演。『悼、灯、斉藤』の時に初めての試みとして開催した、リーディングの後に良かった点、わからなかった点を聴き手だった観客から挙げ、キャストの皆さんの意見も交えながら、創り手の原田ゆうさんと、やり取りして、改稿の参考にという試みの第2回目に参加して、発言した(と思うが)者として、戯曲を買ったので、どこに手を加え、どこをバッサリと切り取ったか確認しよう。
開演前に劇団員の方が受付に居られ、そのプレ企画のことを含め少し話をさせていただいたのだけど、えっ?友久役のあの人!と思い、終演後に確認したらやはりそうでした。まだこれで 3回目なので劇団員の方の顔、男前ばかりなので覚え切れてないので....。それにしても豪胆な 笑

解体されゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話
1999会
スタジオ「HIKARI」(神奈川県)
2025/01/23 (木) ~ 2025/01/25 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/01/25 (土) 13:00
『解体されゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話』はこれまで 6回拝見している。
9人の俳優/照明/音/スタッフの気持ちが伝わって来た。癇癪と敬虔の二人でのシーンが良いなと思っていたら、もう一度終盤にもその二人のシーンがあってその 2つの場面、凄く良かった。そして土本燈子さん、トータルで良いのですが、改めて声が良いなと。
多分、1999会としての『解体されゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話』はこれで最後、その「最期」を見届けてきた。
70年近く生きて来て、9人の彼女達、彼女と括るのは駄目なのかもしれないけど、東京女子大学の話なので、いや女性を自認していない人も居たのかも知れないが、人として生きていると色々なことがあるんだと思いながら見ていた。
これからも色々なことがある。とにかく生きて行こうよ。そんな気持ちを持ちながら見ていた。

VIANCA;clockwise
江花明里.あそびの会
Paperback Studio(東京都)
2025/03/20 (木) ~ 2025/03/22 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/03/22 (土) 14:00
主宰の団体名は「江花明里.あそびの会」
架空畳主宰の小野寺邦彦氏が作/演出、出演が江花明里氏と黒田和宏氏。
「1918年、第一次世界大戦後のロンドン・ソーホーと1998年、経済曲線を垂直に落ちてゆく東京・渋谷が繋がる物語」
ロンドンと渋谷を結び付けるアイデア。そこから渋谷のスクランブル交差点で、人とぶつかり、くるくると回る体から展開し始める物語。
黒い壁の会場を活かしたそう来るかと言う最後の仕掛け。黒の衣装だった江花さんが最後に衣装をノースリーブの白い衣装に変える。VIANCA、イタリア語で白を表す bianca 女性単数形、色白で silky smoothな江花明里氏故に映える仕掛だった。
江花明里さんと黒田和宏さんの息の合ったコンビの60分、くるくるするりと面白かった。

XXXX(王国を脅かした悪霊の名前)
お布団
シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京都)
2025/03/08 (土) ~ 2025/03/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2025/03/14 (金) 15:00
帰り道、同じ回を観た顔見知りのTheatre Goerのお二人と話しながら歩く。一人は終演後拍手をしておられなかった。もう一人の方は縷縷展開を話され、評価しておられた。両極端。
論理的におかしいと言われる方、2023年の『ザ・キャラクタリスティックス/シンダー・オブ・プロメテウス』を拝見した時の私と同じだ。当時論理的な不具合に引っかかってしまって受け取れなかった。
私自身はその中間。確かに見ながら論理的な齟齬が気になるが前回程ではなく受け入れていた。マクベスの話をベースにしての新しい話として受け取っていた。休憩後の部分で纏める、ゲーム的な感覚なのだろうか。ゲームをまったくやらないので判らないのだけど。

ハッピーケーキ・イン・ザ・スカイ
あまい洋々
インディペンデントシアターOji(東京都)
2025/03/13 (木) ~ 2025/03/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/03/14 (金) 19:00
上演時間 1時間50分、作/演出/主宰の 結城真央さんの 作品の中で一番長い上演時間の作品。そしてこれまでもそうだったのだけどベストを塗り替えて来ていた。今作は社会派作品と言えるなと観ながら思っていたけど、それも含めて 長尺になり膨らみも加わり今作が結城さんの作品の中で突き抜けてのベストだと思った。
アフタートークで出演者の松村ひらりさんが「これまでの結城さんの作品は内面を描いていた」的なことをおっしゃっておられたが、まさしく彼女として初めて外との関わりから内面を描いた作品になっていたと思う。児童養護施設に居た高校生、その同級生達が 7年間秘密にしていた一つの重苦しい秘密、虐待やネグレクトのこと。それをプロライターに暴かれる。重い内容なのだけど、一つ解きを加え、終盤に明日への繋がりをこれまで以上に明確に置いていた。素晴らしい作品を拝見出来た。
9人のキャスト(結城さん自身は含まずに)も素晴らしい俳優達をキャストとして選んでいた。
そして結城さんは空間の使い方にも優れた才能があると思っているのだけど、王子小劇場のあの 2ヶ所を活かした使い方と題名に沿った舞台美術だと後に判る仕組みも含めて良かった。高校演劇をやっていた結城さんということで、演劇部もしっかり潜り込ませていたし。主演のチカナガチサトさんの演技が素晴らしかった!

セツコの朋友
セツコの豪遊
中野スタジオあくとれ(東京都)
2025/03/08 (土) ~ 2025/03/09 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/03/09 (日) 13:00
セツコの豪遊の10周年記念公演としての「セツコの朋友」を拝見しました。
・幻の旗揚げ作品リバイバ『イ。』
・新作書き下ろしひとりごと『子自記』
なるほどイ。なんだな。イが個別で登場する舞台は初めてだ。
そして古事記ならぬ子自記なんだ。なるほど!10周年記念、こちとら演劇を観出して10年、でも上演は劇団化して10年で、演劇をやり始めてはもっと長いんだな、だからやっぱり勝負にならないわ。
勝負とはちゃうけど。『子自記』は自己の投影、なるほど、ふんふんと魅入っていた。

暗室【京都公演 / 出演者・公演日程変更】
安住の地
アトリエ第Q藝術(東京都)
2025/02/27 (木) ~ 2025/03/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/03/02 (日) 14:00
現像、現像液の臭い、私自身写真を現像したことは無いがフィルムカメラの時代に生きていたので知識として知っている。この作品は写真に纒わる2つの話。戦艦の暗室と、津波にのまれた大切な写真、見付かったけどその泥に塗れた写真を洗浄する作業室。暗室の作業で体を斜めにするのは印画紙の液を切るためだろう。観客の大半はこの一連の動作の意味が最初は判らなかったと思う。所作として暗い照明の中で美しい。写真洗浄も然り。
二つの話を表す 5人の俳優は文句なく良い。戦時における写真、津波被害に遭われた方々へ差し伸べる救いの手。それぞれの話に引き込まれる。が思わぬ展開が仕組まれていて驚いた。予想だにしないことになるのだ。そしてそれも納得させられる。そのあたりを含めて良い戯曲だ。良くこの写真に纏わる、それは水に纏わることでもあるのだけど、二つの話を結び付けたものだと感心する。
あの泥に塗れた写真。亡くなったあの人の思い出を取り戻す手掛かりとなる作業。そしてその作業のお陰で思い出と出会えることを思うと涙が滲む。まあ綺麗事だけでは済まないと言うのが前述の思わぬ展開なのだけど。が困った、ぐしゅぐしゅした鼻、とにかく静かな上演なので鼻をかむタイミングがないのだ。終演後皆さんが捌けるのを待った。文句を言いたくなるのはそこだけだった。

ユアちゃんママとバウムクーヘン
iaku
新宿眼科画廊(東京都)
2025/02/21 (金) ~ 2025/02/25 (火)公演終了
実演鑑賞
鑑賞日2025/02/25 (火) 14:00
去年7月にザ・スズナリで再演された『ながれんな』のチケット代が 自主規制額(年金生活者) 5,000円を超えていて観れていなかったので3年4ヶ月振りの iaku。次もどうなるか判らないので(予定表には書いている)、即予約していた。
ご自身の同名の短編小説を、講談師 神田松麻呂さんと iakuの常連の橋爪未萠里さんがタッグを組んでの小説 / 講談 / 演劇の融合、ハイブリッド型リーディング公演。65分
観終えて外に出ると観終えた方がもう一人に「さすがだなー」とおっしゃられた。もうそれで十分なのだ。さすが横山さんでした。
講談師の神田松麻呂さんの講談に橋爪未萠里さんの演技が絡んで絶妙なのだ。途中からその展開にどっと沸く客席。さぁどうなるんだと思っていたら終幕。これはホラーだよと思い、横山さんに「ホラーですよね」「そうなんです」と帰って来た。見事としか言い様がないのだ。
何処かで一杯やりたい気持ちになった。
それと、この『ユアちゃんママとバウムクーヘン』フライヤーの図柄。観た後にしか判らない、この図柄が意味するところ!もう、横山さんったら!

楽屋 ~流れ去るものはやがてなつかしき〜
ルサンチカ
アトリエ春風舎(東京都)
2025/02/15 (土) ~ 2025/02/24 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/02/24 (月) 13:00
日本で一番上演されている戯曲とのことだけど、観劇歴 10年で初めて拝見した。 1977年に書かれた戯曲とのことで俳優ではなく女優。後でわかる女優AとB 2人の在り様。勘の良い人なら最初に判っただろうけど判ったのは最後だった。
4人の女性の俳優が女優A/B/C/Dを演じる。長く女優を見てきた清水邦夫が書いた女優の話なのだけど、4人はどんな気持ちで演じておられるのだろう。女優、『かもめ』のニーナも女優としての在り様に悩む役柄だ。
伊東沙保さん、キキ花香さん、日下七海さん、西山真来さん、4人それぞれの俳優のしての味が見えてそれが良い。チェイホフ、シェイクスピアの戯曲が登場する。10年演劇を観て来ていて判るのだけど三好十郎の『斬られの仙太』は知らない。三好十郎は築地小劇場で公演されていた頃の劇作家。女優Aの時代が判る様になっている訳だ。
開場すると俳優 4人が楽屋になっている舞台美術の鏡や手鏡で化粧をしたり、衣装を整えていて、 視線を客席にも向ける。劇中でもそうだった。これは終盤客席の灯りをいったん明るくすることと同じく、観客も亡霊に仕立て楽屋に一緒に居る心持ちにする試みなのだろうか? ここに居ない人達である女優A、B、Dは黒い衣装でアトリエ春風舎の黒い壁に溶け込む。一人白を纏い現世に居る女優Cは反対に疎外されている様だ。 伊東沙保、キキ花香、日下七海、西山真来がそれぞれ異なる演技体。そしてそれが良い。 最後のシーンはプーシキンの小詩からの引用の 華やかな都(まち) 貧しい都 囚われの心 ペテルブルグの街の「舞台と楽屋」の2面性か、その楽屋なんだな。そして囚われる心、なるほど楽屋に留まる 3人の心たちか。 その前の最後間際の三人姉妹の台詞「それがわかったらねえ、それがわかったら......」を伊東沙保さんが口にされ、 西山真来さんがこの詩を引用した台詞を話す。最後のシーン、出番が出来た女優達の見せ場だ。
伊東沙保さんの「斬られの仙太」の件での渡世人口調が大好物だった。あの件も面白い。そして日下七海さんの眼で語る演技たち、そして鏡前でのニーナが素晴らしい。最後に楽屋に残ったあの 3人での三人姉妹を観てみたい。

女性映画監督第一号
劇団印象-indian elephant-
吉祥寺シアター(東京都)
2025/02/08 (土) ~ 2025/02/11 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/02/10 (月) 14:00
凄く良かった。そして今ザラザラとした思いが心に澱の様に残っている。題名から想像していた伝記的なことだけでは無く、他の要素も重ねて問かけて来る!出演された皆さんが素晴らしい。そうキャスティングがはまっているのだ!続きはネタバレbox にて

ここはどこかの窓のそと2
階
テルプシコール(TERPSICHORE)(東京都)
2025/02/06 (木) ~ 2025/02/08 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/02/07 (金) 14:00
そこにあるけどないかも知れない。あったかも知れないけど無くなったかも知れない。そう思うけど違っているのかも知れない。重なるとしても点で重なる円と線。見えていることと見ていないこと。見えてますか?あなたは居ますか? でも本当はそこに在りますよ。
七井悠さん、北村守さん、桜田燐さん、言葉が大切にされ行き来して、3人の在り様、関わり/関わりのなさ、のバランスが絶妙だった。展開に、ことさら気を揉みながら進んで行くところも良かった。

きみはともだち
果てとチーク
アトリエ春風舎(東京都)
2025/01/16 (木) ~ 2025/01/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/01/19 (日) 13:00
れぞれが考えていることは、お互い判らないけど、しかし、彼らの関係は題名通り「きみはともだち」だ。でも判り合っている訳ではない。でも知ろうとすること、相手の立場の理解を深めることは出来る。まあ、そんなに簡単ではないけど、少なくとも相手を思いやる気持ちは持てるかも知れない。それはどんな立場に居る相手であれ、あるいは己であれだ。普段、演劇に教訓を求めることはしないけど、この作品が訴えかけるモノを受け取り、それを意識し続けることが大事だと思う。
戯曲の構成/80分での展開の巧みさ、川村瑞樹/升味加耀/松森モヘー/横手慎太郎、4人の人物像と、それぞれ違う立場で違う痛み持つ、それを表す演技と申し分ない。特に升味さんの負荷は凄いものだと思うが、舞台美術もこれまでと違う具体的な創り込み、トータルで素晴らしい上演だった。