1
長い正月
20歳の国
石崎竜史さんの 100年を100分で描き切るテンポ、展開の速さにもかかわらず愛が封じ込められ、それぞれの時代のキーワードや流行語を挟み、まだ日本の伝統として1年の内でも大きな存在だった、大晦日と元旦を舞台にした、心に染み込んでくる戯曲。それぞれの時代の楽曲達と重ねて現わして行き、こまばアゴラ劇場の構造を巧みに使い、生と死を端的に現した演出が素晴らしかった。構成/展開が見事。8人の俳優に、5代にわたる家族と5代の内の3代の宮司家の人々を12人で演じることで、それぞれのキャラクターの違いを浮かび上がらせる構造になっていて、俳優達も、その 100年の年月/人々を素晴らしい演技で現わしていた。登場した人物にこれだけ愛着を感じた作品は記憶にない。
自分の70年弱の人生が、この100年間の、まだ生まれていなかった 大正12年からの30年間は、祖父祖母、父母が居た時代であって、まだ結婚していない(単に事実としてのこと)、娘と息子が家に居てと、他人事ではなかった。女の子の家に電話を掛けた時、お父さんが電話に出て来た時の絶望感は今の皆さんには味わえ無い悲劇なのだった。笑
時代に重ねてくる曲達も、昭和の懐かしい曲達で、「また逢う日まで」や「時代」がこの物語のそれぞれのシーンと重なり、感情を揺さぶって来て涙なしでは見られなかった。ワンタッチカレーって言葉など、良く探して来たなと。
そして、俳優が端的に現すキャラクターに引き込まれた。
力強く素晴らしい歌声にそれまでのシーンを大きくシフトチェンジするパワーを持たせ、流れを切り替えた菊池夏野さん。あらゆる演技が素晴らしかった。
祖母、子供からOLへと目まぐるしく演じ分ける Q本かよさん。
死の口に向う土間から2段を登る時のつま先の在り様。寿美という一人の人生を子供から老婆まで演じた田尻祥子さん。田崎宮司さんではないことを知った時の変顔のインパクト、そして八の字眉ごとでの年代の演じ分け。
恋人から母に、そして老婆へと、爆発的な演技も冴えていた櫻井成美さん。
説明的な台詞を巧みに操った山川恭平さん。「また逢う日まで」の歌の上手さたるや。
本当に素晴らしい上演を拝見出来ました。皆様ありがとうございます。宝物です。