あけむの観てきた!クチコミ一覧

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入管収容所

入管収容所

TRASHMASTERS

すみだパークシアター倉(東京都)

2023/02/17 (金) ~ 2023/02/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/02/21 (火) 14:00

辛い内容なので観るのにかなりの覚悟がいりましたが、観てきて良かったです!!もし躊躇している方がいたら「ぜひ観てください!!」と背中を押したい気持ちです。
この作品で1番評価したい点は、単純にウィシュマさんの死に憤る側と入管側の意見の対立に、安易に二極化していない点です。個人支援者、支援者団体、入管の現場の人々、入管で決定権を持つ上位者、それぞれがけして1枚岩ではないことが伝わります。さらに被収容者とその家族の姿、入管行政に疑問を感じている記者の視点が描かれていて、台詞の情報量もすごかったですが、なにより描き方に作品を表現する際の思慮(考えた量が透けてみえるかのような思慮深さ)や配慮が伺えました。脚本に大拍手、大満足です。もちろん役者さんの技量や演技にも大拍手です。特に入管側の役者さん達は演じる方も辛いだろうなということを感じました…もう観てるときはひたすら憎っったらしい!と思うのですが…一筋縄ではいかない、「この表現はすごい」と思わせる仕掛けがたくさんあります。入管問題に関心を持ってる人も、そうでない人にも、ぜひ多くの人に観ていただきたい作品です。

ネタバレBOX

ウィシュマさん死亡事件について、多少は知識がある(入管関係の本を読んだり、ネット上の報道記事を読んだりした)側からすると、入管職員の葛藤について「こんな風に思ってたらあんな酷いこと出来ないだろ」という気持ちにもなったんですが、大なり小なりウィシュマさんの死に対して思うところがあった職員が居たということも報道で知っているので、特に首席処遇担当の藤枝役がウィシュマさんの死に対して(支援者の警告をことごとく無視せざるを得ない果ての死に対して)支援者に土下座した場面には入管側を単純な「悪」として描かない思慮を感じました。
上意下達が徹底した組織であること、権力がある側ほど「本庁」の意向を気にする描写も見事でした。作中ニシュマさんに接していた処遇の女性2人の対比も見事だったと感じます。上位者ほど、入管の使命である「国へ帰らせること」の使命を語ることの、それが国家のための崇高な目的であり、それに逆らう奴らは悪い奴なんだ、と断定するような物言いに、戦時中の軍部の上層部めいたものを感じて心底ゾっとしました。「想像力の欠如」についてすごく考えさせられる作品です。
入管問題に詳しい人ほど(内容の辛さがわかっている人ほど)観るのを躊躇う気持ちもあると思うのですが、この作品のメッセージ性に私は希望を感じられました。1人でも多くの人に、この国で暮らす当事者として観ていただきたいです。

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