1
花のゆりかご、星の雨
時間堂
世に秀逸なキャッチコピーは多いが、広告のためコピーになってしまっていて、自分たちが提供しようとしている作品と、劇団が標榜する良さとが一致している劇団はないに等しい。
そんな中で時間堂『花のゆりかご、星の雨』はまさに「すごい、ふつうの演劇。 ふつうの、すごい演劇」という言葉にぴったり合致する素晴らしい作品だった。
ロマンチックと言ってしまっても差し支えない、非常にストレートなストーリー。家族や大切な人たちとのわだかまりを氷塊させる過程に至っては、主軸となる現代から過去の出来事を眺めるという非常に「演劇的」な手法で描かれている。
とても好きなお話なのだが、下手を打つと(時間堂以外がやると)ドツボにハマって見るに耐えなくなるのは間違いない。
だがこんな幸せなお話を生で見せられて全く違和感を感じさせず、集中してみることができ、あまつさえ涙腺を緩ませられたのは登場人物たちが「役者」としてではなく、物語の中に生きる人として「その場にいる」ことが出来ていたからだと思う。
演技とは嘘をつく技術なのではなく、そこに生きることなのだと気づかされた。
「すごい、ふつうの演劇。 ふつうの、すごい演劇」でした。
2
めくるめくセックス
シンクロ少女
僕は演劇が好きだ。
その理由の一つとしてあるのが、「笑っていいのか、泣いていいのかわからない」という、表現し難いものすごい感情を与えることができる数少ないメディアだからである(無論、たとえば映画でも可能は可能だし、それを表現し得ている作品はあるのだがスクリーンを通すことで観る側の「かしこまり度」があがってしまう気がするのだ)。
シンクロ少女『めくるめくセックス』はそんな表現し難い感情を喚起された素晴らしい作品だった。
原因不明で眠り続けていた妻。その間に浮気をしていた夫。妻は夫の目の前で、他の男に抱かれる……というドロドロな展開ののち、二人はなんとプロレスをする。
無言のまま、服を脱ぎ捨て、息を切らし、おそらく15分ほどの間(感覚なのでわからないが、それまで普通に会話が繰り広げられていた中での無言なのでかなり大胆さを感じる時間)。
険悪な状況の中でなんで急にプロレス!?そして二人とも上手いし!という笑いと、
言葉にできない憎しみ、そしてそれ以上の愛を無言でぶつけ合う二人の姿は美しくも滑稽で、笑えるけど悲しい。ああああああすげーよかった。
年に二回は本公演をしてほしい。
3
骨のない男
ワワフラミンゴ
本当はひっそりこっそりとおもしろいことをやっていてほしいので公の場所で誉めたくなんかねーよと思うのだけど、おもしろかったのだからしようがない。とにかくおもしろかった。
役者たちのワワワールドがよりワワワールドになってきていると思う。
やっぱりあれでさらに下北ファインホールでやっていたころのような、こんなふわふわしたバカみたいな女の子たちが普通の街を歩いているんじゃなかろうかとか、え、なんか今宇宙を感じた!?みたいな劇場の外の空間まで広がっていく感じがほしいと思ってしまう。
彼女たちにあった空間が見つかるといいなぁ
4
愛の渦
ポツドール
間違いなく一番好きな劇団。
おもしろいのは間違いないのだがそれゆえに、どうしても「ポツドール以上」を求めてしまう。もっとおもしろい作品が見たい。
そして年に2回はやってほしい。
5
て
ハイバイ
おもしろかった。
すごくいい作品なので、総合的にこの順位におさまったけれどなんだかはみでてたところというか、破たんというかがなく(物語としては十分破たんがあるのだけれど)、再演だから(初演観てないけど)いい意味でも悪い意味でも洗練させてしまったのかな?という印象もあった。
6
成れの果て
elePHANTMoon
ポツドールに匹敵する緊張感。すごい。
7
うそつき【公演終了! ありがとうございました!】
ルスバンズ
嘘ってやっぱり物語をおもしろくするよね。
8
モンキー・チョップ・ブルックナー!!
アマヤドリ
おもしろい。
ダンスが観たかった。
もっとラストがぐわーあがってきて、バーンってダンスが始まったら泣けていたと思う。というような物足りなさもあるにはあるのだけれどそれをさっぴいても非常におもしろかった。
9
リビング(公演終了!!)
カスガイ
いい。いい話を丁寧に作れていたと思う。
ラストはあれをやったらみんなおもしろくなってしまうので違う方向性で見たかったなぁ。
10
ベルゼブブ兄弟
劇団鹿殺し
『赤とうがらし帝国』も鹿殺しさんっぽくてよかったのだが、もし他の劇団がこのテキストを上演したらどうなったのだろうと思わせる鹿殺しとしては比較的リアルな愛憎があったこちらの作品のほうが印象に残っている。