帰還の虹
タカハ劇団
駅前劇場(東京都)
2014/07/23 (水) ~ 2014/07/28 (月)公演終了
満足度★★★★
骨太な物語
戦時下でも描くことをやめなかったある画家の物語。
彼の友人たちや彼の妻、若い画学生など、登場人物それぞれの輪郭が鮮明で、どういう行動が正しかったのか、などという安直な評価ではくくれないそれぞれの葛藤を描いていく。
画家が描こうとしたもの、画学生が描きたかったもの、それぞれにそれぞれの真実があるのだろう。
見応えたっぷりの骨太な作品だった。
肥後系 新水色獅子
あやめ十八番
小劇場B1(東京都)
2014/07/23 (水) ~ 2014/07/27 (日)公演終了
満足度★★★★★
嘘と真実
複数の時間軸を行き来しながら描く、どうしようもない男の嘘と真実。
女子高演劇部の人間関係や劇中劇で描かれる戦時中の描写、神社で自死した高校教師を取材する女など、どの場面も繊細かつ鮮やかで、登場人物それぞれの想いが愛おしい。
現実と虚構のあわいにある、ほの暗い空間。
そいういう雰囲気が心地よくて、いつまでもそこにとどまっていたい、と思ってしまう。
もしもいま、好きな劇団や好みの作り手の公演がすべて同じ日に重なったとしたら、選ぶのはこのユニットかもしれない。
若々しさと老成した雰囲気。儚さとしたたかさ。そして、嘘と真実。この小さなユニットが、これからどこへ向かうのか、本当に楽しみだ。
少年十字軍
Studio Life(スタジオライフ)
シアターサンモール(東京都)
2014/02/08 (土) ~ 2014/03/02 (日)公演終了
満足度★★★★
歴史と虚構
骨太な歴史ドラマを、繊細かつ幻想的に描いて、3時間を長く感じさせない舞台だった。
若手中心のキャストを、ベテランが多くの役を演じて支え、物語に広がりを持たせていた。
面白かったので、ダブルキャストのもう一方が気になったり、原作を読んでみようと思ったりしている。
独り芝居『審判』
多田直人案
吉祥寺シアター(東京都)
2014/01/15 (水) ~ 2014/01/19 (日)公演終了
満足度★★★★★
名作……
言語に絶する体験を語り続ける1人の男。
ときに激し、ときに涙ぐみ、ときに冷笑し、しかし、揺れ動きながらも務めて平静かつ理性的であろうとする。
久しく感じたことのない緊張感と集中力。
張り詰めた空気が会場中を支配し、200人近い観客が、眼をそらすことも身じろぎさえできずに、
ただただ息をひそめて1人の男の言葉を受けとめ続けた2時間15分。
壮絶な内容以上に、それを語る男の意志と、演じる役者の覚悟に圧倒された。
ミュージカル「ブッダ」
わらび座
THEATRE1010(東京都)
2013/05/07 (火) ~ 2013/05/12 (日)公演終了
満足度★★★★
『ブッダ』
冒頭から、異国情緒あふれる音や光、そして人々の動きに引き込まれる。
言葉での状況説明はほとんどなく、人々の営みが、大河のように目の前を流れていく。
洪水、戦争、病気、老い、死。それを見つめるシッダールタの目線を共有するかのように、観客もとまどいながらそれを見つめていく。
舞台上での物語の進行はわかりやすいとは言えない。けれど、その混沌がある意味この世界そのものなのかもしれない、などと思ったりもする。
おるがん選集 3
風琴工房
くらしのアトリエ ひらや(東京都)
2013/04/27 (土) ~ 2013/05/06 (月)公演終了
満足度★★★★
さまざまな愛
会場は高円寺の駅から10分ほど歩いた住宅街の小さな民家を改装したカフェ(?)。
空気まで共有するような空間で演じられるそれぞれの愛の物語。息をつめるようにその世界に身を浸した。
たいせつなきみ
NAO-TA!プロデュース
ザ・ポケット(東京都)
2013/04/24 (水) ~ 2013/04/29 (月)公演終了
満足度★★★★
泣いて笑って……
観終わってふと思いました。この舞台の主役は、舞台には登場しないお父さんとお母さんかもしれないなぁ、と。
お父さんの残した亡き妻への言葉。娘たちへの想い。当たり前の家族の当たり前の愛情が、しみじみと胸に響きました。そしてこれからもきっと、三姉妹のかたわらで見守ってくれることでしょう。
個性的な登場人物がそれぞれ必死で生きている様子が愛しくて、泣きながら笑い、笑いながら泣いてしまう、忙しい舞台でした。
淡仙女
あやめ十八番
セーヌ・フルリ(東京都)
2013/04/17 (水) ~ 2013/04/21 (日)公演終了
満足度★★★★
濃密な空間……
ほの暗い濃密な空間で紡がれる、ある家族の物語。……それも一筋縄ではいかない、過去と現在、現実と虚構の重なる不思議な空間でした。
登場人物の一人ひとりの想いが、観終わったあとにじんわりと胸に残ります。
誰かを大切に思うこと、幸せでありたいと思うこと。たくさんのイメージの積み重ねが、さまざまなことを考えさせる舞台。これを観ることができてよかったです。
ミュージカル「アトム」
わらび座
新宿文化センター(東京都)
2010/06/19 (土) ~ 2010/06/27 (日)公演終了
満足度★★★★★
観てよかった……!
誰もが知っている鉄腕アトムをひとつの象徴として、ウエストサイドストーリーばりの対立と愛の物語を、歌とダンスで描いたミュージカル。
横内謙介氏のハートウォーミングなストーリーとラッキィ池田氏による楽しくて力強いダンス、甲斐正人氏の親しみやすく美しい楽曲、そして役者陣の安定感のある演技や歌によって、シンプルなテーマが胸に迫る素敵な作品となっていたと思う。
アズリを演じた三重野葵さんと神楽坂役の椿千代さんの静かな中に強さを感じさせる演技、そして圧倒的な歌唱力が印象に残った。
NOT BAD HOLIDAY
劇団競泳水着
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2009/05/19 (火) ~ 2009/05/26 (火)公演終了
満足度★★★★★
思いがしみとおる。
競泳水着を初めて観たのは、前作の「プリンで乾杯」だった。そのときにも、構成の緻密さや展開の巧みさ、登場人物へのあたたかい目線などにたいへん好感を持った記憶がある。
しかし、この「NOT BAD HOLIDAY」は、それ以上に好きな作品となった。
若者たちの恋や夢、仕事や挫折、そういうものを描きながら、中心にひとつの家族を置いたことで、彼らのこれまで過ごしてきた時間や出会ってきた人々までも感じさせるような、そういう奥行きが感じられる気がした。
時間や場所を巧みに行き来して積み上げられていく場面が、しだいに気持ちよくひとつの流れになる。
トレンディドラマというより、生きた人間のささやかな悩みや思いがけないトラブル、誰かを思う気持ちなどが、水がしみこむように自然に心に入り込んでくる、そういう芝居だった。
ショート7
DULL-COLORED POP
pit北/区域(東京都)
2009/04/29 (水) ~ 2009/05/06 (水)公演終了
満足度★★★★
濃密な時間……。
A・B両プログラムをそれぞれ複数回、拝見した。
7本とも、よく練られた完成度の高い舞台であり、しかもとんでもなくバラエティ豊かなラインナップで、やや息苦しさを感じるほど。
中でも、他の方と同様「エリクシールの味わい」がやはりひと際印象に残る。猥雑なテーマをこれほどピュアな純愛の物語に作り上げた力技に脱帽。
「藪の中」では、役者の力に息を呑むと共に、観る者に確実に物語を届けようとする脚本の企みにも感心する。
どの作品も、人の心の暗い部分を描きながら、きちんとエンターテイメントとして成立していることに驚く。
観る側にも、気力体力の充実が必要なほど、濃密な舞台。
「猿 mashira 2009」
劇団ZAPPA
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2009/04/17 (金) ~ 2009/04/29 (水)公演終了
満足度★★★★
うわ、久しぶりに
泣きました!いやホント、面白かった♪
火消したちの心意気、女火消しの恋、そして勤皇の志士たちの企て。大切なものを守ろうとする意志。
熱い思いが伝わってくる、観終わって気分が高揚する、そういう舞台でした。
鬼の如く、地獄の如く、恋の如く
Dotoo!
駅前劇場(東京都)
2009/03/18 (水) ~ 2009/03/25 (水)公演終了
満足度★★★★
コーヒーを一杯
一般的なイメージから、ちょっと外したところもある文豪たちのキャラクターが、まずは面白かった。芥川龍之介が妙に明るくてたくましかったり、夏目漱石がやたらと屁を使った例え話をしたり、菊池寛がとてつもなく軽いノリだったり、観ていて思わずクスクス笑ってしまう。
自由恋愛・不倫・心中未遂、挙句の果てに、それを題材に小説を書いたり、生まれてきた子どもに魔子と名づけたり。文豪たちの波乱万丈の生き方が、会話の中から次々と見えてくる。
そんな文豪たちの人生と、経営不振のため歴史のあるコーヒー専門店を閉めようとしている加織やそれを止めようとする兄 幸輔の状況が、微妙にからみあいつつ、物語は進む。そして、加織と夫 健太郎との間の微妙な関係が問題になって……。
人生ってのは、ちょっとほろ苦いコーヒーみたいなもの。そんな気障なせりふをつぶやいてみたくなる。当然そのときには、片手にコーヒーをね。
BASARA~謀略の城
WAKI-GUMI(脇組)
俳優座劇場(東京都)
2009/03/06 (金) ~ 2009/03/15 (日)公演終了
満足度★★★★
戦国マクベス
戦国時代の史実よりは、原作であるマクベスの方に近い。マクベス=松平弾正久秀とその妻が追い詰められていく様子が印象的だった。殺陣や舞の迫力は一見の価値があると思う。
恋人としては無理(JAPAN TOUR)
柿喰う客
STスポット(神奈川県)
2009/03/05 (木) ~ 2009/03/09 (月)公演終了
満足度★★★★★
これも愛
初演をご覧になった方の感想などから、スピーディでハイテンションな芝居なのだろうと思っていたら。
冒頭のスピード感や小ネタの応酬に目を奪われているうちに、ふと気がつくと、疾走感の中に透き通った切なさが加わっていて。
弟子たちの過去が語られる辺りやイエスの処刑後の弟子たちの様子に、愛することや信じることへの悲しみが感じられてきたり。
これはたぶん、ある種のラブストーリーだったのだろう、きっと。
観終わった後、そんなふうに思った。
オンリー・ユー
鈴舟
シアターサンモール(東京都)
2009/02/24 (火) ~ 2009/03/01 (日)公演終了
満足度★★★★
幸せになってね
強盗が人質と共に立てこもった郵便局という一種極限状態のはずの場所で、どこかとぼけたやり取りが続く。郵便局員やアルバイト、客、そして強盗も、それぞれの事情を抱えた中での微妙に噛み合わない会話がおかしい。その上、予想外の飛び入りがあったり、ピザを取り寄せて腹ごしらえをしたり。
どの役者さんも達者で観ていて安心感があったが、特に麻生美代子さんが演じたおばあちゃんが素敵だった。
ボケてしまっているのかと思ったのに、話が進むに連れて鋭いセリフが次々と飛び出してきて、終盤、郵便局を出て野次馬相手に演説する声を聞いたときなどは、笑いながらもなんとなくジンときてしまった。
何度も笑わせながら、夫婦の間の心の機微や、職場恋愛の葛藤、家族への愛情などが描かれていく。観ているうちに、最後はホロリとさせられてしまった。
ごく普通で、そしてちょっと変な人ばかりなのに、それでもみんな一生懸命なのが少しせつなくて。できればこの後、みんなどうにか幸せになって欲しい、そんな気分になった。
傑作
世田谷シルク
ART THEATER かもめ座(東京都)
2009/02/14 (土) ~ 2009/02/15 (日)公演終了
満足度★★★
刺激的な1時間
3回公演のうち、花組芝居の堀越涼さんがゲストの回を観てきた。
芝居の冒頭、背を向けて座っていた堀越さんが平手打ちされてこちらを向いた瞬間、ドキッとする。
薄暗い空間。遥かな銀河を巡る少年たちの物語とそれに織り交ぜられるさまざまな断片。 そのイメージの連なりの中に、死というものを意識させる流れ。
日替わりゲストによる日ネタ(?)のコーナーもあって、ますます多彩な印象となっていた。
せっかくなので、「銀河鉄道の夜」についての部分をもっとたっぷり観たかった気もするけれど、いずれにしても刺激的な1時間となった。
怪奇探偵丑三進ノ助 ~推して参る!~
しゅうくりー夢
恵比寿・エコー劇場(東京都)
2009/02/05 (木) ~ 2009/02/09 (月)公演終了
満足度★★★★★
満足満足
今回の公演は、連日完売で追加公演も決まったという。その勢いもうなずける、見応えのある作品だった。
ハラハラドキドキするストーリー展開やカッコいいアクション、そしてせつない思い……。
人気のあったシリーズの続編だけれど、初めてご覧になる方でも問題なく楽しめる内容になっている。もちろん、以前の「大正探偵怪奇譚」をご覧になっていれば、「あ、あのセリフは!」とか、「あれ?この曲……」とか、けっこうピンと来る場面も多くて、ますます楽しめるだろう。
2月9日18:00~の追加公演については、まだチケットがあるようなので、気になった方はぜひ!!
泉鏡花の夜叉ケ池
花組芝居
青山円形劇場(東京都)
2009/01/12 (月) ~ 2009/01/22 (木)公演終了
満足度★★★★★
人ならざるモノたちの祝祭
マチネで那河岸屋(なにがしや)組、ソワレで武蔵屋組を観劇。(主人公の萩原晃を演じる役者さんの屋号で、チーム分けしてあるのだ)
那河岸屋では、ぽっちゃりしたお茶目な学円と華奢で可憐な百合、そしてワイルドな晃という組み合わせ。何より加納さんの演じる白雪のワガママで情熱的なお姫様が、いいようもなく美しい。
武蔵屋組は、凛々しい学円と清楚で妖艶な百合、そして頼もしい晃という組み合わせ。 山下さんの白雪は、蛇とも鬼とも言われる夜叉ヶ池の主の猛々しい外観から滲み出る恋心がせつない。
白雪の眷属たちの衣装や動きのポップさが素敵だった。ずっと前に観たリンゼイケンプカンパニーを思い出させる、人ではない妖しいモノたちの祝祭という風情が印象的だった。
客を舞台に乗せたり、客席に歌詞カードを配って歌わせたりと、観ているものに一体感を感じさせる演出が楽しかった。
proof
コロブチカ
王子小劇場(東京都)
2008/12/25 (木) ~ 2008/12/29 (月)公演終了
満足度★★★★
濃密な時間
「休憩です」と言われて驚いた。時計を見ると、芝居が始まってすでに1時間以上経過していたけれど、実感としてはほんの短い時間に感じられたから。
それほど引き込まれてしまったのは、4人の濃密な演技によるものだろう。それぞれの役の細やかな心の動きが、表情からしっかりと伝わってくる。特に、コロさんの演じたキャサリンの繊細さと大胆さには目を奪われた。
観に行ってよかったと心から思える美しい舞台。観た後に、少しだけやさしくなれる気がした。