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茶の間が水浸し【4月14日~17日公演中止】

茶の間が水浸し【4月14日~17日公演中止】

吉祥寺GORILLA

サンモールスタジオ(東京都)

2022/04/13 (水) ~ 2022/04/17 (日)公演終了

映像鑑賞

満足度★★★★

口コミ初投稿、初めての劇団さんの鑑賞です。

脚本は噛めば噛むほど考察が進みましたが、1回の実演鑑賞で理解するには登場人物も多く、大風呂敷を広げて畳めきれない内容なのが惜しいところです。
初日実演鑑賞組の評価が低くなるのは致し方ないかなと思います。

不幸にも配信という映像作品になって、不謹慎ながらも良かった作品であるとも言えます。

主人公、父母、転校前の同じ柔道部の女子、転校先の同じ教室の同級生、転校先にいた幼馴染のギャルとその彼氏のヤンキー、転校先の先生、そして肝である主人公が突如部長を務めることになった演劇部の個性豊かすぎるメンバー。

それぞれの登場人物が自身の理想と現実のギャップを自責とするか、他責とするか、その中間で佇んで気付かないふりをするか。

GWも後半戦に入ります。
是非とも登場人物と共に「苦しんで」ほしい作品です。

ネタバレBOX

ネタバレの裏なのでここからは「です・ます調」を止める。


転入前の高校では柔道部でちょっといい関係の女友達もいる利発な主人公であったが、ある日突然学校に行けなくなってしまう。
その前からよくお腹が痛くなる症状はあって、女友達には「いつもお腹痛いマン」なんて揶揄されていたが、その半年後とうとう「前の日までは行く気なのに、朝になると起きれない」。

物語は、転入先の恐らくかなりランクを落とした通学型の通信制学校に3年生として転入する前の晩から始まる。
外的要因であり恐らく元凶である引き戸から漏れる夫婦の会話、内的要因であるお人よしの主人公の性格からストレスが溜まって行く様を水音がひたひたと、こぽこぽと徐々に変わっていく。


先生も同級生も後輩も「頭がいいので大丈夫」を乱発し、やっと外に出られた主人公を再び追い詰めてくのがとても苛立った。
もう首筋まで水が迫ってきた、今にも溺死しそうなそんな心境の時に、さらに「勉強しないのか」と父親が追い込んでくる。
高校・大学受験前の父親の追い込みほどキツイものはない。
私の父親の嫌いなところと主人公の父親がダブって見えてしまい、恐らく他の誰かの父親像にも当てはまるのではないかしら。
企業で働いていたので、サラリーマンの父親の気持ちも分かるから、余計に辛かった。

内的心境と同時に、物理的な決壊が起こり、まさに「茶の間が水浸し」状態になって、主人公以外の登場人物が活発に物語をかき乱し始める。


ブルーライトの主人公の心境と劇中劇の台詞が胸を打ったが、精神的苦しんでいる主人公や「すぐに刃物を探す少女」がいるにも関わらず、その劇中劇のあんな台詞がある脚本を選んだのが演劇部顧問かと思うと嫌気がさした。
また、主人公に部長を押し付けながら、「すぐに刃物を探す少女」の申し送りもできていない。
教師として上手く立ち回れない役回りとして描きたかったのか、そこがよく分からなくてモヤモヤした。


表には「大風呂敷を広げて畳めきれない内容」と書いたが、あえて畳まず、登場人物それぞれがどのように「受け止め」られたかを観劇者に委ねているようにも思える。
それが1回の実演観劇では分からない内容になってしまっている。ああ、勿体ない。

配信を何度も再生すると、考察やら解釈やらが止まらなくなる映像作品なので、是非配信で見てほしい。

結局3回再生して私は、主人公は自責に走り、転入前後何度も腕を差し伸べてくれていた女友達も見ないふりしており、終盤も先生や友人に勧められたから東京に逃げるように旅立ち、問題解決には至ってない、一歩前進しただけと捉えている。
外的要因である夫婦関係は母親が変化し始めて、他の登場人物はさて、どうなったかな?

最後に、役者さんの皆さん、あの足元の小道具の中でよく転ばずに演技できたなって思った。お疲れ様でした。

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