あさはかの観てきた!クチコミ一覧

1-2件 / 2件中
夏至の侍

夏至の侍

劇団桟敷童子

すみだパークシアター倉(東京都)

2022/06/07 (火) ~ 2022/06/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2022/06/17 (金) 14:00

今回の芝居、不覚にも4度泣いてしまいました。ハラハラ涙が溢れて「あ、やばい」と思ったら、隣の女性もハンカチ目にあててたり、あちこちから啜り泣きが聞こえたり。

桟敷童子の芝居は喪われていくものへのノスタルジーが通奏低音としてあるけれども、それが単に昔を懐かしむわけではなくて、どうしようもない時代の流れや社会の変化に翻弄されながら、巨きなものに抗いそこに懸命に生きるひとを描くことで、人間の優しさや勁さ(しなやかなしたたかさ)、どうしようもない業や眩いような美しさまで、深い人間像がいつも胸に迫ります。

ネタバレBOX

今回は出演者は誰も亡くならなかったのでいつもよりはいつもよりは息を詰めずに観ていられましたが、やはり予定調和では終わらない。最後の舞台転換でただ一度だけ現れる、崩壊したはずの水車の息を呑む美しさと、いないはずの「夏至の侍」を手にする女将さん…それは死んだ息子なのか、この過酷な日々を生き抜いてボロボロになりながら今ここに至った孤独な自分自身なのか、それとも帰ってきた娘たちと多くの仲間に支えられて過ごした夢のような日々なのか…これが余韻のあるラストでした。

音無さん素晴らしいですね。こんな激しい一面もあるのかと、いつものTVでの穏やかな役どころに不満が募ります。村井さんと二人での業・業・業にまみれた作品観てみたいです。

劇団の役者さんたちも私にとってはお馴染みになってきましたが、人物像を掘り下げた確かな演技と鍛えられたアンサンブルで、いつもながらに時空を超えた世界に連れて行って私の日常を忘れさせてくれ、そしてこれがお芝居であることも忘れて没頭させてくれます。

もりちえと客演:瀬戸氏のリアル夫婦も、底抜けにいい人でよかった。前回の芝居での夫婦になる件では笑っちゃいましたが、今回は台風や倒産の緊張感に私が耐えるために大切な安心感を提供してくれました。あの夫婦の空気感のおかげで、逃れられない不吉な予兆にギリ耐えられ気がします。

それにしても、これでもかというほど善人ばかりしか出てこないのに、ちゃんと人間ドラマが成立していることに驚きを禁じ得ません。別の方が指摘されていましたが、亡くなった息子と夏至の侍を重ねて掘り下げた再演をぜひ観たいと思いました。
おとうふ

おとうふ

劇団道学先生

OFF OFFシアター(東京都)

2021/08/27 (金) ~ 2021/09/08 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

劇団道学先生「おとうふ」
そのタイトルロゴやイラストから喚起される、真っ白で淡白な滋味深さ(例えば「かもめ食堂」や「めがね」みたいに小林聡美やもたいまさこが淡々と語りあってるイメージ)を予想して見事に裏切られました。寒風に吹きさらし出汁で煮染めた方です。

主な登場人物は、バラエティ番組収録のための「笑い屋」として呼ばれている二人のベテランおばちゃんと一人の新人さん、それにADさんたち数名。おばちゃん(これは劇中何度も繰り返される位置づけなので、差別的意図はありません)たちが待ち時間に繰り広げるおしゃべりを中心に、生きる哀しみと可笑しみがたっぷり染み込んだ、濃いめの味付けに背中が弛みます。

とにかく大した事件は起こらず、テンポの良いおしゃべりだけで運んでいくお芝居なので、役者さんたちのアンサンブルが命なのですが、これがお見事。自分も仕出しの笑い屋のひとりで、一緒の楽屋にいるけど圧倒されて話に加われずちょっとニヤニヤしながらそばで聴いている臨場感。なんと、もりちえ以外は「絹」と「木綿」のダブルキャストだそうで、時間が取れるなら両方観なきゃ損、って感じでした。どうやって2種類のアンサンブル練り上げたんだろう?

途中、番組収録のシーンで3人が大笑いしているのだけれど、その無対象の笑いの演技に釣られ笑いしつつ、この女優さんたちの地力の確かさを思い知らされました。

このページのQRコードです。

拡大