マシュー・ボーンの「眠れる森の美女」
ホリプロ
東急シアターオーブ(東京都)
2016/09/14 (水) ~ 2016/09/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
世界中で見られるということ
バレエもダンスも詳しいわけではないが、それでも次々に繰り出される情景に引き込まれた。以前この劇場で「トップハット」を見た時もつくづく感じたことだが、このジャンルだけはしばらく日本はイギリスには追いつけそうもない。眠り姫のダンスなどの技術も卓抜なのだろうが、若いダンサーがその役を楽しんでいる(少なくとも観客にそう思わせる)ことが伝わってくる、周囲の出演者も同じ。構成も演出も音楽もすごく解りやすく、しかし下品や幼稚ではない。ときどき、おおっつ!と言う仕掛けがある。
日本のダンスも進歩したが、理屈が先に立って楽しめない。苦虫をかみつぶして踊っていても見る方は楽しくない。楽しいということと笑うということを勘違いしている。マッシュ・ボーンにはそういう偏屈は一切ない。さすが!である。降参。
DISGRACED ディスグレイスト 恥辱
パソナグループ
日本特殊陶業市民会館(愛知県)
2016/09/27 (火) ~ 2016/09/27 (火)公演終了
満足度★★★★★
技巧を尽くしたアメリカ現代劇
やはりブロードウエイの力と言うのはすごいものだ。多人種国家のアメリカが抱える人種問題は今や世界的なひろがりがある。現実にその渦の中で戦ってきたアメリカ人の葛藤が、かくもみごとな夫婦の物語となって観客の心を打つ芝居になってしまう。千人の劇場がもつ娯楽作でもある。凄い。
人物造形の見事さ、ストーリー展開のうまさ、たとえば肖像画、とかセットの絵とかの小道具や、俳優たちの衣装など細かいところにも行き届いていて満足する。
これは劇場の席のせいかもしれないが、主演の二人の早いセリフが聞きにくいところがあった。内容の複雑さからかもしれない。しかし、この二人(小日向・秋山)の演技力は、舞台俳優としては一級の出来だ。演出も隙のない栗山節がいい。よくこの芝居を見つけてきた製作にも拍手。いい芝居を観たと素直に感動して家路をたどれた。
SHAKESPEARE IN HOLLYWOOD~ハリウッドでシェイクスピアを~
加藤健一事務所
本多劇場(東京都)
2016/08/31 (水) ~ 2016/09/14 (水)公演終了
満足度★★★★
カトケン喜劇
シェイクスピアの真夏の夜の夢の物語と、それを映画化しているアメリカハリウッドの映画制作の現場をないまぜンした喜劇。取り違えの喜劇が生きる設定だ。ドタバタで話は進むが、しっかり、ハリウッドの赤狩りの時事性(1950年ごろ)もとりいれていて二時間十五分飽きさせない。
カトケンの喜劇は例えば、見えない、ということなど舞台の約束事で強引に行くのだがそれがとおってしうだけの実績がある。惜しむらくは夜の公演がほとんどないことで(全部のうちたった2公演)、これでは若い人は集まらない。せっかく新しい客層を開いたカトケン事務所なのだから、若者にも宣伝して夜の客を増やさないと、旧新劇団のようにそっぽを向かれることになる。それは惜しい。若い人たちにもこういう芝居にも親しんでもらいたいと思うのだ。
三億円事件
ウォーキング・スタッフ
シアター711(東京都)
2016/09/03 (土) ~ 2016/09/11 (日)公演終了
満足度★★★★★
三億円事件
脚本が面白い。よく出来ている。内容は今までに聞いたようなことがある話ばかりだが、構成がうまいのであきない。お互いに不信感がある二組の刑事たちが最後にしがみつくように解決の情熱を燃やすところが切ない日本人論になっている。(ここは「東京裁判」も同じだったが)。余りこのように書く人がいないので今後も新しい切り口で見せてください、期待しています。今回は、それにないより、小劇場界を網羅したようなキャスティングがいい。野木さんのホンはいつもいい役者で見たいと思うが今回はかなり満足した。欲を言えばもっといい役者で、もうすこし大きい劇場で、いい椅子で見たい。本多は無理かもしれないが、トラムや東芸の地下。制作も大変でしょうが、治天の君がもう完売しているのだからこういう芝居の客はいますよ。