満足度★★★★★
説明文にドキドキして
わたしの子どもは、きっと男の子だと思う。その子が歩き始めたら、ヒールのついた靴を履かせて、遠くに行けないようにしよう。大きくなったわたしの子どもが、わたしの頭をヒールで叩いて、わたしのことをすっかり忘れて、生きていってくれればいい。死ぬほどに幸せだった、バラ色の人生。
ワカル。ワカラナイ。分かる。いややっぱり分からない。
そんな不思議な感覚と独特の美しい雰囲気に惹かれ、二度目の小竹向原へ。
ネタバレBOX
舞台に足を踏み入れる。「セブンスター」のセットの、普遍的な幻想性のようなものは感じない。ありふれた生活空間の情景。と、横たわる男性ーーーの足には人目をひく赤いハイ・ヒール。奇妙さはあれ、心惹かれるかと訊かれるとこれまたわからない。あれこれ考えているうちに劇が始まる。
だしてぇーーーーからの激しいミュージック、そして何事もなかったかのように始まる日常の一場面。何とも演劇的。イイ。
ドアから入ってくる女性、菊地さんが「フツウ」に映るのは亀山さんのいでたちがあまりにも強烈で美的で、物語性を持っていたからに違いない。そして女性が「フツウ」であればあるほど状況の異常性は真に迫って伝わってくる。銀の食器の上にはけばけばしい色の縫いぐるみ、これは何かの象徴だろうか。生々しさ…?弱肉強食、動物的な営み、そうとって差し支えないのであれば、この作品の肖像も自然と浮かんでくるのではないか。
ーー愛に束縛され、愛を束縛する、それがマンションのワンルームで繰り返される、それもまた運命に束縛されていること。マンションのワンルームとはまさしく胎内である。
男はおそらく二度とは部屋には戻らない。そしてふたばは、子どもにわかばと名付けるのだろう。愛する男の約束に縛られて。
この何とも言えぬ肉迫感は噛めば噛むほど味が出て楽しいものだ。
けれど、そこに至るまでの流れが長かったようにも感じられる。
一向に動かない場面。男の感情はラストに近づくまで掴み難い。
説明文を台詞の中でほぼそのまま読み上げていたように感じてしまったのも少し残念。
とはいえ説明文の(わかばでありふたばの)思いのようなものはちゃんと垣間見えたような気がするし、ふたばちゃんの痛々しいまでの可愛らしい愛情にキュンときたので、今回の劇は大満足である。
個人的にはふたばちゃんのウエディング・ドレス姿が大好きだ。