arugoが投票した舞台芸術アワード!

2025年度 1-10位と総評
音楽劇 金鶏 二番花

1

音楽劇 金鶏 二番花

あやめ十八番

実演鑑賞

初日を観劇(あと2回は観るので、観たらもうちょっと書き込みます……結局、4回観ました)。
あやめ十八番さんは、言うことなしっていうか。称賛のみなんですが。

演劇の面白さ、魅力、華やかさ、美しさがこれでもかと押し寄せてくるんですよ。
今作は珍しく、かなり陽性の作品でもあって。
数々の歌や身体表現も良かったなあ。

本、演出、美術、役者、楽隊(生の音響)、照明。
全部、すげえわっていう。

自分の受け止められるキャパシティの問題なんですが、あまりにも盛沢山で。
ちょっと飽和して、どこに視点を置いたらいいのか迷子になりそうだったってのは、ありましたね。
いや、どのエピソードも強火で気持ちをもってかれて、それが次から次なので。
圧巻すぎて、疲労しちゃったっていうか。

初見はそんな感じだったんですが……リピートすればするほど発見があって、どんどん体感時間短くなっていきました。
二幕の連続するドラマも本当に感動的で涙する場面多いんですけど。
一幕のオープニングにあたる、人形劇と影絵と歌謡ショーが全部重なるようなところが個人的には感動して落涙ポイントだったかも。
なんてロマン的で美しいんだって。

動かせる範囲自体はかなりシンプルだけど、舞台中央を横断する稼働デッキによって、奈落の位置が移動するみたいな造りになっていて、存分に使った演出は見事だったな。
その稼働デッキの移動だけじゃなくて、歌って踊って、人によっては楽隊にも参加して、色んな役になるアンサンブルの尊さ、見事さ。
芝居にもシームレスで参加する、生演奏、生効果音の楽隊は、あやめ知ってる人なら言わずもがな。
照明も凄いんだよな。照明みるだけでも後方席の価値ある。
役者もねえ、いい人ぞろいで、誰が目立つってこともなく、みんな凄い。
最高でした。
今年も総合点だと、あやめ十八番が一番かな。

がらんどうのしにすとら

2

がらんどうのしにすとら

‐ヨドミ‐

実演鑑賞

ヨドミは毎回凄まじい芝居なんですけど、今回も凄まじい。
作・演の藤丸亮(あきら)さんは、儚い希望を見せてから急転直下ジェットコースターでどこまでも落とし続けるみたいな作風でして。
この物語る強さは、自分が知ってる中じゃ一番だと思う。
エンタメや芸術の枠を超えて、普遍性のある神話に届いてる気すらしております。
団員のみなさまも、客演のみなさまも、名優を超えた怪優と呼びたくなる人ぞろいでして。
今回はファンタジーで外面的な美しさも凄くて、目を背けたくなるようなシーンもまだマイルドな気もするので、割と見やすいほうかも。
照明、衣装含めた美術も素敵。
抽象的な、思わせぶりな表現で煙に巻くようなわかりにくさも無く。
劇伴のクラシックに力負けしない、強い芝居。

草創記「金鶏 一番花」

3

草創記「金鶏 一番花」

あやめ十八番

実演鑑賞

元来、自分は複数回観ても感想は一回にしとく派なんですが。
こちら、彗星・満月とダブルなので、もう一回書き残しておきます(計4回観ました)。

あやめさんのダブル公園。そのやり方も面白いのよね。
朽葉の時は、メインキャストが逆班ではアンサンブルっていうの、ドキドキしたし。
今回の主役の二人が逆になるのも、エモいと思った。
メインの役どころある人が他の役も兼ねるってのも、メタ的に含みのあるの面白い配役だったり。
単純に2チームあるっていうだけの面白さじゃないところがあるんだよな、あやめ十八番だと。

vol.41 「廃墟」、vol.42 「そぞろの民」

4

vol.41 「廃墟」、vol.42 「そぞろの民」

TRASHMASTERS

実演鑑賞

一週間ぶりで、『そぞろの民』を観劇。
こちらも強烈な芝居で、時代が近いってこともあって、より抉られた感じがあります。
配役表を見ないで観ていたので、最後に焦点が当たる人物に愕然としました。
最後の心中は察するに余りあって、それは自分への問い掛けにもなっていきました。
ほんと凄い芝居。
どちらも凄い芝居。

水星とレトログラード

5

水星とレトログラード

劇団道学先生

実演鑑賞

2回観ました。
1回目は展開の面白さに満足しつつ、家族の情にもほろりとした感じで。
2回目は、物語の前向きさに元気もらえたような感じになり。
そこから一日たった今、このお話は、現実の痛みを緩和するためのファンタジーだったのかな、とか想像してます。
いや、まあ、自分は家族の介護経験や死を見取った経験がまだ無いので、ほんと想像ですが。

最初観た時よりも、だんだん評価が上がってる感じ。

『パンとバラで退屈を飾って、わたしが明日も生きることを耐える。』再々演ツアー2025

6

『パンとバラで退屈を飾って、わたしが明日も生きることを耐える。』再々演ツアー2025

趣向

実演鑑賞

生の伴奏、数々の歌、繊細な描写。
観終わった後に、椅子から立ち上がるのが一苦労(余韻にやられて)ってのは、今年二回目。
ただ、絶賛もおすすめも、あえてしたくない……とゆうか。そういう評価するみたいなのが似合わない芝居だと思った。
強制力じゃなくて、自然な形で、出会って欲しい芝居とゆうか。

物語の構造が意外とミステリー的でして。
まず、目の前の集まりがなんなのか。
そして、最後に一つの事実が……っていう。
そこが見どころじゃないけど、効果的でした。

『幻書奇譚』

7

『幻書奇譚』

ロデオ★座★ヘヴン

実演鑑賞

世界最古の本をめぐる、ワンシチュエーションのミステリー劇。
まず脚本が面白く、役者陣も素晴らしく、会場との親和性も抜群なので入り込めます。
10年前の作品の再再演になるそうですが、古びておらず、むしろ今だからこそって感じすらありました。
二面の客席の作り方もよく考えられていて。色んな意味でスキが無い芝居だなって。
ピリピリした芝居じゃなくて、息抜き出来る場面もちゃんと多数用意されてるんですよね。

昨年11月に、同じ新宿眼科画廊で”平坂村事件”(同作家による。これもめちゃ面白かった)を観ていたのは、幸いだったなって思います。
観劇後に知ったのですが、この2作は構造的に盾の表と裏って発信がSNSであったんですね。
うんうんって感じ。お話に繋がりがあるわけじゃないですけどね。

今さら綻ばれても

8

今さら綻ばれても

江古田ぐるぐる

実演鑑賞

客席はL字の二面です。
制限ある場所だけど、色々と小気味良かった。
チラシのゆるいイラストやタイトルから感じる芝居とは良い意味で違った。

とぼけたコメディテイストだけど、まさかのミステリー。
二転三転する真相とリンクして、色々と引き寄せられたり考えられたりする。
シビアな部分を描いてるけど、深刻な作風にはせず。
社会派と言うにはミニマムでして、道徳的ミステリーと呼びたい感じ。
中学生、高校生にも観てもらって、色々と思考を巡らしてもらいたいなって思える芝居。

隣の芝が青すぎる

9

隣の芝が青すぎる

コヒツジズ

実演鑑賞

こちらの団体、初見です。
コントと演劇をさまよえる集団って枕詞?
コントと短いコメディの違いって僕にはわからないのですが。
僕はこれは演劇だなあって思った。

場面場面で、短めのコントが連続で連なってるような構成ではあるんですが。
突飛な世界設定、自己主張も個性も強すぎるキャラたちが、子供の喧嘩してるみたいな味わい。
でも、根底にはスジが通ってるようで、わからないんだけどわかるんですよね。
物語はシリアスなんだと思うんだけど、突飛な設定でギャグ連発してるというか。

単なる不条理や難解、ナンセンスなんて幾らでもあるけど、この味わい、演劇だとあんまり無い感じ。
変な本(褒めてます)に見事に命与えてる役者陣、凄いなあって思った。

手作り感あるダンボールの美術は色んな場面で実に効果的で。
伴奏、効果音を、ずっと生でやりながら時には芝居に参加しちゃうのは、ちょっとあやめ十八番の楽隊を思い出したり。

めちゃんこ面白かった。
描かれたものが、公演期間中の現実とシンクロし過ぎてるのは、やるせない。

ろりえの暴力

10

ろりえの暴力

ろりえ

実演鑑賞

めちゃ良かった。まだ公演日があるので、取り急ぎ。
タイトルとあらすじ読んでも、どんなのかわかりにくい。
青春バトルものです。
何で闘うかというと、ハモネ〇゜(隠す必要無いかもだけど)
ダンスもあるんですが、ほぼ全編、歌につぐ歌。
(だから、あやめ十八番の吉田能さんの名前が監修にあるんだね)

アカペラ合唱がぶつかり合います。
さながら、ハ〇ネプ版のアパッチ野球軍。

テンポが非常に良くて、”省略”ってセリフがそのまま出てきたりします。
あとね、男性陣が本当に縁の下的に頑張っていて。
アンサンブルでは無いけど、アンサンブル的に大活躍で、これが演劇的に面白かったな。

最高潮に達する終盤近くまでは、今年観た芝居の中で一番頭悪くて、最高!!だった。
(最高峰の褒め言葉として取って欲しい)
そこからの……、
急転直下、現実ともリンクして、ビターな味わいに。

でもそこで終わらずに舞台は続いて、しっかりと描き切られます。
僕の好みだと、この終盤は色々と匂わす程度で、想像力に任せるくらいがよいのですが、きちんと描かれます。
それは観てる人にとっては、青春の追体験、仮想体験にもなるのかも。
自分もちょっとウルっと来ました。

総評

今年も大変楽しい観劇の一年でした。
正直、10作品じゃまったく足りてないです。

ここ数年自分の作・演出のツートップは、あやめ十八番の堀越涼さんとヨドミの藤丸亮(あきら)さんでして。このお二人が携わった作品はどれも質が高く、正直、もっともっと挙げたい作品がたくさんあります。『近松心中物語』『一握の紲』なんかも強烈な印象残ってます。

このお二人以外にも、おぼんろさん関連や玉造小劇店さん、劇団スポーツさんや松森モヘーさんの一連の作品とかも挙げたかった。

観劇パズルに悩みまくるっていう、贅沢な悩みにさんざん頭使ったし、実際観て面白かったのもたくさんありました。来年も良い芝居に出会えるのを期待しております。
みなさま、良いお年を!

このページのQRコードです。

拡大