タッキーの観てきた!クチコミ一覧

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トリオ

トリオ

NonoNote.

シアター711(東京都)

2024/12/18 (水) ~ 2024/12/22 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

小劇場で笑劇を至近距離で観て楽しむ、そしてラストは衝撃的な そんな洒落の効いた公演。劇中とは言え、1970年代の寂れた劇場の楽屋や音曲漫才の雰囲気が味わえる。3者三様の歌声が軽快なリズムに乗せてこだまする。何と無くではあるが、かしまし娘を連想してしまう。楽器を奏でながら面白可笑しい話、そして時事ネタを盛り込む といった話術が懐かしい。

物語は 説明にある通り、舞台では息の合った漫才を披露する3人だが、楽屋へ戻ると日々 大喧嘩。原因は「トリオ」というあだ名の副支配人・鳥居一男の奪い合い。そして遂には刃傷沙汰へ…。表情豊か 誇張した演技が見どころ。小笑・爆笑など笑いの渦だが、時にオルゴールから流れる ゴンドラの唄がしみじみと。ちなみに この歌、大正時代の歌謡曲で、芸術座公演『その前夜』の劇中歌として松井須磨子が歌ったのは有名。自分は、映画「生きる」で主人公を演じた志村喬が この歌を口ずさみながらブランコをこぐシーンを思い出す。

音曲漫才師の3人は、それぞれ苦労を重ねて生きてきた。そして やっと一緒になりたい男を見つけたが、それが何と皆同じという悲劇。ゴンドラの唄の歌詞は♫恋愛讃歌のような、たとえ気心知れた仲良しであっても恋の路は譲れない。そこに普遍的とも思える「愛情」と「生活」が滲み出ている。

今回の演出は 武藤晃子女史。10年ほど前 この演目(LEMON LIVE vol.10公演)に役者として出演しているが、今回は演出を担当している。そして当日パンフには、NonoNote.主宰の璃音さんを称え、そして激励するような言葉を綴る。ノンストップ女3人芝居、そこに日替わりゲストが加わり、実に味わい深く紡いでいく。観応え十分、ぜひ劇場で。
(上演時間1時間30分) 

ネタバレBOX

舞台はムーンライトセレナード新宿座の楽屋。前説はトリオ(ゲスト 植田健一サン)が店の法被を着て担当。舞台の近くに特別に作らせた楽屋。正面の壁には着物が掛けられ、中央の少し高くなった平台に炬燵。上手に楽器(ギターやアコーディオン)置き場、下手に黒電話。年代的に携帯電話がないため、この電話が重要な役割を果たす。

3人は、Toshimi Saionji(小玉久仁子サン)、Ritsuko Sasanishiki(鈴木球予サン)、Orie Bando(璃音サン)、罵声 喧嘩のような会話から それぞれの境遇が分かってくる。問題は、トリオを巡る恋沙汰と この特別な楽屋を明け渡さなければならない状況、これらは姿を現さない支配人の胸三寸。さて、この劇場に長く出ているSaionjiは、ピン芸人であった頃、舞台の都度 衣裳替えをしていたため、この楽屋を作らせた。Sasanishikiはストリッパー、Bandoは売れない歌手といったところ。

場末とは言わないが、この環境から抜け出して好きな人と小さな幸せを、そんな細(ささ)やかな願い。しかし、この面白可笑しい騒動には ある思惑が…。この公演、漫才的にはトリオを巡る騒動がフリ、どんでん返しがオチ、そして何事もなかった いや少し心境の変化がフォローのような、そんな滋味ある作品だ。

本公演の内容とは直接関係ないが、 武藤さんが演じた時と今回とでは、個人的に意味合いが違うような気がしている。この10年間でコロナ禍の以前と以後、いつまた どのような災いがあるか分からない。少し大袈裟かもしれないが、コロナ禍(まだ完全終息ではない)で演劇を観るのは命懸け。この至近距離で大口開けて笑える喜び、それを ひしと感じる。それが 今を必死に<生きる>に繋がるような。
次回公演も楽しみにしております。
ちち

ちち

座・だるま水鉄砲

小劇場 楽園(東京都)

2024/12/18 (水) ~ 2024/12/22 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

面白い、お薦め。この旗揚げ公演は観応え十分。
増澤ノゾム氏の脚本・演出による記憶・追想を辿るような物語…人が持っている表し難い感情を上手く表した人間劇であり家族劇。登場人物は男女4人、それぞれの性格を繊細に 立場を丁寧に描き、今ある状況を巧みに描き出す。人が抱えた問題は、その時の生活状況や社会情勢によって影響を受ける。そして思わぬ行動に出てしまうこともある。その心情が痛いほど伝わる。そして 紡ネン を介して蟠りが少しずつ溶けていくような。

役者陣の演技が圧巻。何処にでもいそうな人物をさり気なく演じる、その自然体の演技が物語へ巧く誘う。冒頭から一瞬のうちに引き込まれる。登場人物が4人しかいないことから、それぞれの関係性が鮮明に そして濃密に描かれる。これによって 1人ひとりの人間性が浮き彫りになってくる。
物語は、行方不明だった父親が見つかり 兄弟のところに引き取られたところから始まる。兄弟が覚えている父は暴力的な人だったが、目前にいる男は 記憶の中の父とは別人の 天使のよう。そして兄の恋人も巻き込んで という設定が妙。
(上演時間1時間35分) 

ネタバレBOX

舞台美術は入口の対角線上にソファとローテーブル、右手にパソコン。登場人物に「紡ネン」とあるのは、完全AIで活動を続けるAI VTuberで、主にYouTuber配信を中心に活動。そのアイテムが物語の肝。家族という他者との会話を優しく綴った”新”家族物語。

登場人物は 父 水戸雉太郎と息子2人(長男:一馬、次男:嗣春) 長男の恋人 雨宮かりん という4人、そして夫々の思いを交差させることで表現し難い親子の情を浮き彫りにしていく。今の状況や立場、性格を丁寧に説明することで、しっかり人物造形が立ち上がってくる。そして過去と現在、父不在の間の母の死など、登場しない人物の心情まで伝わるようだ。自宅だが落ち着かず所在がない雉太郎、その話し相手が紡ネン。仲が良いのか不器用なのか そんな兄弟間。そこに現代的なアイテムを登場させ、人間味という 家族関係とは違う味わいを出す奇知。

雉太郎は、バブル期の元銀行員で多忙を極めていたが、或る日仕事に虚しさを覚え 出奔し家庭を捨てた。幼い息子に暴力をふるい、物心ついていた一馬は父を恨んでいた。嗣春も同様だが 幼かったこともあり、父の記憶があまりない。今、父はホームレスになり過去の記憶を失いー認知症等とは違い 記憶の欠如といったところー昔の面影もなく穏やかな性格。一方 一馬は、組織という会社勤めに馴染めず、自宅でYouTuber配信するなど ある意味 自由人。嗣春は、生真面目で高校の社会科(倫理担当)教員、結婚し子供もいる。そして一馬の恋人 かりん は家族とは違う立場で物事、成り行きを見ている。4人の関係が微妙に接近したり すれ違うことで心が蠢く。俳優陣…剣持直明サン、堀之内良太サン、仲村大輔サン、稲村梓サンは、激しく動き続ける心情を巧みに演じ、生臭い人間模様を丁寧に描き出していた。

一馬は、雉太郎の存在が鬱陶しい。早く自宅を売却し 都心のマンションで かりんと一緒に暮らしたい。父の失踪の解除手続や自宅売買に係る契約等はすべて嗣春任せ。その嗣春は息子ー妻の連れ子ーが中学で苛めをしており家庭事情で悩みを抱えている。かりんはガールズバーで働き、それゆえ嗣春は快く思っていない。しかし何気に優しくされて…。昔の面影のない父、いつの間にか息子と立場が逆になったかのような。しかし息子は子供から大人へ成長したことで、新たな思いを刻むことになる。その心の機微を実に上手く紡いだ秀作。
次回公演も楽しみにしております。
BACK FIRE WARS

BACK FIRE WARS

KOTH

中板橋 新生館スタジオ(東京都)

2024/12/17 (火) ~ 2024/12/22 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

当日パンフにKOTH主宰の柾木信広 氏が「STAR WARSオタクの友情」がテーマと記しているが、まさにその通り。世の悪戯・悪事 対 STAR WARSオタクを対峙させるが、大立ち回りのようなアクションがあるわけでもない。あくまで友情 その絆の物語である。

説明にあるジェダイナイトに憧れ、真摯にジェダイの掟を守る真田・清水・小島の仲良し三人組。レイヤ姫のような女性に出会ったことで、三人の絆に陰りが見え、仲違いをする話。掟をないがしろにし始めた2人と決別して新たな仲間 その怪しいサークルの話。それぞれの話が緊密に結びついて展開するわけではなく、ニュース等でよく話題になる典型的な悪を点描する。最終的に その矛先は政府に向かう。

劇的というよりは淡々と進み、大きな盛り上がりといった場面がなく印象が弱い。もう少し対決色を強める等、観せ場を作ってほしかった。全体的に平板で、タイトルにSTAR WARSが付いている割にはダイナミックさに欠ける。
「STAR WARSオタク」ではあるが、オタク=変人もしくは世間知らず といった偏見ではなく、仕事に就き 社会人としての常識は持ち合わせている。それゆえ突拍子もない物語ではなく、むしろ日常に見られる光景が描かれている。
なお「STAR WARS愛」が伝わるような情報、その蘊蓄が随所で語られるが 分からなくとも それなりに楽しめる。そして某社への批判的なことにも踏み込んでいるが…。
(上演時間1時間30分)【Bチーム】 12.20追記

ネタバレBOX

前面が幕になったフィッティングルームのようなものの連なりをコの字に並べ、場面に応じて幕を上げ 中から小物を取り出し場景を作る。基本的には素舞台に近い。上演前からスター・ウォーズのテーマ曲が流れている。

物語は、STAR WARSオタクの3人が、あるイベント後に歓談しているところから始まる。「スター・ウォーズ」…自分は映画だけしか知らなかったが、映画を始め、アニメーション、小説、コミック、ゲームなど複数の媒体で展開しているらしい。それらを嬉々と話している3人のところへ、見知らぬ少女が近づき 怪しい男に付けられているので助けてほしいと。

始めは皆で会っていたが、いつしか1対1という個別で会う。そしてバレンタインチョコの返礼に高級なバッグをねだりだす。STAR WARSイベントは3人で行く掟だったが彼女も連れて行くことで仲間割れ。インターネット上の交流サイトではないが、ロマンス詐欺を連想させる展開へ。

一方 仲間割れした男は、別のSTAR WARSファンと関わる。その団体は、困っている人のために募金活動をしたり、サプリメントも販売している。STAR WARSファンを公言している割には 詳しくない。怪しい行動は、マルチ商法そのもの。

悪戯・悪事に深く加担することなく、何となくオタク3人組に戻る。 映画「スター・ウォーズ」シリーズは非時系列的に製作されており、この公演の<悪>も特に関連付けていない。世にある悪とオタクを対峙させた構図であるが、そこから先の劇的な面白みが描けていないようで残念。
次回公演も楽しみにしております。
昭和歌謡コメディVol.20

昭和歌謡コメディVol.20

昭和歌謡コメディ事務局

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2024/12/17 (火) ~ 2024/12/22 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

「江藤博利プロデュース『昭和歌謡コメディVol.20』笑い続けて丸10年!遂に最終回」…観てきた。いつも通り 1部は芝居、2部は歌謡ショーという二部構成で、最終回だからと言って気負うところはない。観(魅)せて笑わせる いつものスタイルにホッとする。

これも いつもの光景であるが、コアなファンが熱心に応援している。お揃いの法被もしくはTシャツを着込んで 声援を送り、紙テープを投げ サイリウムライトスティックを振る。自分も2014年3月の旗揚げ公演から断続的(今回含め12公演)に観ており、ずいぶんと楽しませてもらい 癒されたものである。理屈ではなく 如何に楽しむか、そして演者と観客が一体となって会場を盛り上げる。そんな公演が見納めになるとは残念だ。
感謝を込めて★5つ。

(上演時間2時間20分 途中休憩15分含む) 

ネタバレBOX

1部(芝居)の舞台美術は、上手/下手に白壁を思わせる衝立、舞台が 築地の老舗すし店「ひろ寿司」という設定であるから、カウンターとテーブル席、そして新聞があるだけのシンプルなもの。

今回はレギュラーキャストの山下若菜さんが脚本を担当。物語は、ひろ寿司二代目のヒロトシ(江藤博利サン)と妹まるみ(白石まるみサン)の兄妹喧嘩から始まる。ヒロトシと妻ゆみこ(田中由美子サン)は結婚35年、それを祝って何かサプライズがあるのか。ヒロトシは、ゆみこを始め 娘みゆ(小松みゆサン) や まるみといった家族、そして近所の人たちからも煩がられている。そんな彼をさり気なくサポートしてきたのが妻である。その彼女を蔑ろにするヒロトシを まるみは許せない。そこで一計を案じ、ゆみこが急逝したと。そして巻き起こる騒動を笑いと滋味をもって描く。勿論 奇想天外ながら大団円である。ラストの歌「蒲田行進曲」が実に印象的だ。

2部の昭和歌謡ショーは、入り口で配布された多色彩のサイリウムライトスティックが美しく輝き出演者を応援する。また紙テープが乱舞するように空を飛ぶ。昭和歌謡を始め、アイドル歌謡、アニソン、演歌など多彩な曲目。コントやパロディ、客弄りをしながらのモノマネ、バルーンアート等で笑わせる。隣席の人は口遊むように一緒に歌っていた。本当に残念だ!
荒野に咲け

荒野に咲け

劇団桟敷童子

すみだパークシアター倉(東京都)

2024/12/15 (日) ~ 2024/12/24 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

面白い。
或る事件や伝承的な出来事といった題材ではなく、身近な家族・親戚 いや人間の心に蠢く羨望や嫉妬といった思いを描く。それを家族崩壊と街の衰退を重ねるように紡いだ群像劇。本作は劇団創立25周年記念ということもあり、あえて劇団員のみの公演にしたと。

この劇団の特長である仕掛けのある舞台装置、本作でも その迫力と印象付けといった効果は十分に発揮している。それが 新作公演とはなっているが、過去公演からの繋がりのようで 地続きの光景を思わせる。物語の中心人物 篠塚香苗役を大手忍さんが演じているから、なおさら その思いを強くした。話としては、ありふれた と言っては語弊があるかもしれないが、桟敷童子公演としては実にリアルだ。当日パンフに「オリジナルの物語であるが、モデルはある」と。ただ、話の肝になるであろう父親の行為、その動機なり理由の描き方が足りないような気がする。

ちなみに 少しネタバレするが、タイトル「荒野に咲け」の「荒野」とは「この世」の意、まさに地に足をつけたような公演。社会(派)的なダイナミックさはないが、人それぞれの感情が弾け飛ぶ。観応え十分。
(上演時間1時間55分 休憩なし) 12.20追記

ネタバレBOX

舞台美術は、両側に階段を設え 奥で渡り廊下の様に繋ぐ。その中間に 大きなヒマワリのモノクロ絵が天井から吊るされている。シンプルなシンメトリー。

舞台は 九州 玄界灘近くの田舎町。かつては炭鉱で栄えた町であったが、今は人口が減少し鉄道は廃線、駅舎は郷土資料館になるなど すっかり衰退している。そこに機関車IKIRUが展示されている。往時を偲ばせる巨大な煙突が数本残っているだけ。この舞台、炭鉱三部作を連想し 地続きの今を描いているよう。巨大な煙突は炭鉱町のシンボル、そしてヒマワリ畑(色彩の違い、原色・モノクロ)や機関車(大きさの大・小)といった 往時と現在を比べた象徴的なもの。

物語は、3姉妹が嫁いだ先の家族のそれぞれの様子、暮らしぶりを点描していく。長女 澄江は町で食堂(今は弁当屋)を営む古橋家へ嫁ぐ。町の衰退とともに経営は縮小したが子供たちを大学へ進学 卒業させた。また数人の従業員も雇ってそれなりの暮らしぶり。次女 孝子は、篠塚家へ嫁ぎ 貧しいながらも一家で登山やキャンプに行ったり平穏な暮らしぶり。息子が学校で苛められていたこともあり、無理やり進学校へ行かせようと。三女 勝代は離婚し、今(稲森姓)の夫と再婚したが、夫は働かず勝代がパートを掛け持ちして生計を支えている。夫の先妻の娘とは折り合いが悪い。3者三様の暮らしの断片を切り取り<家族とは?>を考えさせるよう。冒頭、孝子の娘 香苗が詐欺に騙され多額の借金を背負う。一家で夜逃げ同然のように町を出るが…。

時は流れ、香苗の父は自殺(気が弱かった?)をし、母は壊れ荒れた生活をしていた。篠塚家はバラバラになり音信不通状態が何年も続いていた。3姉妹が嫁ぎ先で築いた生活、その家族の幸福度の比較や確執などが切ない。家族という他者との関りが 蟠りをもって描かれている。浮浪者同然で探し出された香苗は、古橋食堂で働き始め 自身のトラウマを克服しようとする。しかし複雑化されたトラウマ、町の閉塞感など、この環境に馴染めず また町を出て行こうとするが…。

ラスト、産業廃棄と書かれた機関車IKIRUが、炭鉱最盛期に活躍した機関車DOROBANA51号に立ち向かうような。そこに「荒野」という「世の中」で生きていこうとする逞しさを感じる。自分が観てきた公演すべてについて、どんなことがあっても「生きる」といった根本が描かれており、それは劇団の一貫した思いのようだ。
次回公演も楽しみにしております。
S(さりげなく)F(fiction)~知る由もない彼らの人生~

S(さりげなく)F(fiction)~知る由もない彼らの人生~

藤一色

中野スタジオあくとれ(東京都)

2024/12/14 (土) ~ 2024/12/15 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「藤衛門」観劇。
時間軸の長い、というか悠久の時の中に無常と悲哀を紡いだ一人芝居。チラシにもある通り、藤衛門は江戸時代の からくり、機械人形である。性別があるわけではないが、「彼」と書かれている。そして彼を蔵で見つけたのが小学4年生だった少女 タビノちゃん。

物語はタビノちゃんやその友達と過ごした変哲もない日々、それを藤衛門が回想する形で展開していく。機械人形でありながら感情を持ち合わせたような、現代でも開発できていない高度なロボットである。藤一色が掲げる「遠くないファンタジー」、そこで描かれているのは「ささやかで切実な異聞奇譚」…珠玉作。

一人芝居であることから必然的に一人称で語る。ロボットであるから壊れなければ、ずっと一緒、しかし命ある人間は いずれ死ぬ。チラシには「いつか時が流れて必ず辿り着く、少しだけ不思議な、普通だった頃のお話」とある。ラストに流れる音楽「美貌の青空」(作曲:坂本龍一)が少し切ないような余韻を残す。
(上演時間50分) 

ネタバレBOX

舞台美術は大小形の違う椅子が積み重なっている。下手奥にあるドアから懐中電灯を照らしながら防護服・ガスマスクをした男が入ってくる。防護服を脱ぐと上は着物、下はズボンというアンバランス。全体的に薄暗い中、ランタンの明かりが柔らかく灯る。先の椅子が登場人物の代わり、それらに語り掛け 頷くことで会話を成す。

この場所が どこか明らかにされない。そしてタビノちゃんに見つけられたこと、その友達を紹介され 小学4年生の時の出来事、それから5年生・6年生・中学生・高校生そして大人といった、それぞれの時代にあったエピソードを語る。今となっては、その時々の思い出は楽しく懐かしいもの。タビノちゃんは小学校時代の友達と結婚し歳を重ね…。いつしか誰もいなくなり、藤衛門だけが取り残される。勿論 記憶も失わない。この独特とも言える世界観が好い。

小説か映画だったか忘れたが、親を喪うことは過去を、配偶者を喪うことは現在を、そして子を喪うことは未来が無くなると。親族をはじめ親しき者を喪うことの喪失感、しかしロボットはいつも見送る側で、無常を感じ続けるという定め。これを無理やり自分の物語として受け入れて納得させる悲哀。

舞台技術は、何かを打ち固める または破砕音のような不安・不穏を煽るような音が 終盤ずっと鳴り響く。一方 ピアノの音色が包み込むように奏でられる。ラストは、冒頭のようにマスクをして入ってきたドアから出ていく。衣裳の上下、着物とズボンには物語(=歴史)があるようだ。そこに時の流れ、悠久を感じるのだ。
次回公演も楽しみにしております。
明日、宇宙人になります

明日、宇宙人になります

劇団銅鑼

銅鑼アトリエ(東京都)

2024/12/14 (土) ~ 2024/12/15 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

昨年の試演会「ガラスの動物園」が良かったので、今年も観にいったが とても面白かった。説明の「人間が地球外生物になる?世界中が大騒ぎ・・明日、宇宙人になるかもしれないこの時に…」からSFを連想したが、もっと最近の出来事を描いているように思えた。未知ゆえに その対処法が分からず右往左往、そして混乱・迷走した施策を思い出す。

とても劇団員補とは思えない演技、当日パンフを見ると他の劇団研究所出身者が多く、その実力は肯ける。登場人物は5人、それぞれのキャラや立場などをハッキリ立ち上げ、多様な人間性を描き出す。明日、宇宙人になるかもしれない不安・恐怖といった状況の中で、思い残したこと 気掛かりなことを味わい深く紡ぐ。究極的なことを言えば余命宣告されたような、しかし物語はそこまで追い込まず余韻を残している。試演会ということもあろう、最小限の舞台セットと照明・音楽で効果を出していた。

宇宙人になります…大きな観点で見れば地球人も宇宙人。しかし、敢えて その違いの中に排他的もしくは差別的な意味合いが込められているよう。勿論「世界中から原因不明の痒みが報告されている。検査をしたところ、体内から検出されたのは地球に存在しないDNA」という件に関連してくる。私ごとで恐縮だが、この検査とその後に係る業務に就いていたことがあり、とても考えさせられた。
(上演時間1時間 休憩なし) 

ネタバレBOX

舞台セットは、ビニールのようなカーテン幕で囲い、上手に折り畳みのテーブル1つ、ベンチ2つと いくつかの椅子。検査結果を待つ待機所といった所。地球に存在しないDNA、人間感染しないと言いつつ、ウイルス感染防止を思わせるような作り。

地球に存在しないDNAの症状、体のどこかが痒くなり我慢できなくなる。一時的に痒みを抑える薬を服用することで症状を抑えている。その小康状態を保っている時の一夜の物語。そんな中、名を伏せて手紙を出そうとしている男がいる。しかし封筒に手紙は入れず、差出人名も書かない、しかも書留郵便。そこに どんな理由や意味があるのかが謎として、物語の成り行きに並走する。

手紙を出し続けている男(親子)、会社のプロジェクトの成否が気になる男(社会人)、世界中を放浪している男(自由人)、宇宙人になった息子に会いたい女(母親)、そして待機所に詰めている男(組織人)…この典型的な5人が思い残したことなどを語り、どうなったか想像(orシミュレーション)する。特に手紙を出しているのは、仲の悪い父へ。書留郵便ならば必ず配達局員が受領印(サイン)を確認する。孤独死しても放置されることはない。一人ひとりが想像の話を繋げ紡いでいく。その時にスポットライト、そして優しいピアノの音が流れる。

自分は、新型コロナウイルス感染症に係る出来事を連想した。陽・陰性の判定、その結果による隔離・入院までの過程のよう。連日、感染者数や死亡者数が報道され、有名人が亡くなると衝撃的な そんな状態が続いた。そして感染=秘密にしなければといった風潮があった。宇宙人になることが幸なのか不幸なのか。宇宙人が多数を占めれば良いのに という台詞が印象的だ。
次回試演公演も楽しみにしております。
その男ホーネット加藤

その男ホーネット加藤

映像劇団テンアンツ

「劇」小劇場(東京都)

2024/12/11 (水) ~ 2024/12/22 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

㊗上西雄大さん 60周年記念公演…面白い。
タイトル「ホーネット加藤」、その面白可笑しい前説で盛り上げ そのまま本編に入るが、そこでの生業も前説という設定である。公演の魅力は、父親の娘を思う気持ちと胡散臭い男を見るような娘、その心情的な距離がどう縮まっていくのか。そんな物語をテンポよく展開し、時にボケとツッコミの漫才のような場面を挿入し楽しませる。テンアンツらしい笑いと泣き、その感情の揺さぶりが凄い。

手際のよい舞台転換によって、瞬時にその状況や情景へ誘われる。少しネタバルするが自転車を使った場面などは映画のワンシーンを見ているような感覚。またスナックでのカラオケ場面を始め、所々で歌を歌い和ませる。「劇」小劇場という空間、そこに1970年代のカンフー映画へのオマージュというかパロディのような世界観を持ち込んだエンターテインメント。ホーネット加藤の顔つきやアクション、そして衣裳がその映画を連想させる。上演時間は2時間を超えるが、アッという間の感覚だ。勿論「vol.1 燃えよ前説ドラゴン」も観たくなる。
(上演時間2時間15分 途中休憩なし)【ドラゴン孤独の鉄拳】

星降る教室

星降る教室

青☆組

アトリエ春風舎(東京都)

2024/12/07 (土) ~ 2024/12/15 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い。深みある味わい。
大自然、そしてノスタルジックで夢幻のような雰囲気が漂う中、或る女性教師の回想を通して紡がれる心温まる物語。青☆組公演の魅力は、物語に新たな息吹を吹き込んだような世界観(今回は宮沢賢治の世界観に呼応)を舞台美術や技術で表出し、観客の心を揺さぶるところ。発語を意識 そして大事にしたといった印象だ。

今回は劇団初のクリスマス公演らしく、シンプルだが美しく、優しく、そして温かい雰囲気をしっかり演出していた。キャストはスカートやベストなど、どこかに格子柄がある衣裳で揃える といった拘りもみえる。
(上演時間1時間)

ネタバレBOX

舞台美術は正面奥の幕に電飾、その下にミニツリーや蝋燭が置かれている。色彩は、全て暖色の単彩だから温かく優しく感じる。中央には いくつかの丸椅子が置かれ場面に応じて動かす。上手にはト書きと演奏を担当する吉田小夏さんが座る。
ちなみに、役者は動き回り 時に椅子に上がるなど情況を表現(演技や歌唱)する。

本作は、吉田小夏さん が2016年にラジオドラマ作品のために書き下ろした物語、それを青色文庫の様式にして舞台化(朗読劇)したものらしい。

教師の森山雪子(32歳)は、20年前に卒業した雫の森小学校の恩師から1枚のはがきを受け取った。それは卒業生代表として卒業式での祝辞を依頼するもの。しかし転校を繰り返していた雪子にとって、6年生の1年間しかいなかった雫の森小学校での思い出は断片的でしかない。雪子は、人間の言葉を話すウサギに導かれて だんだんと奇妙な世界へ誘われていく。雪子の記憶の底に沈んでいた、卒業式当日の出来事が…。

園田喬し氏とのアフタートークで、オノマトペの駆使、マイクを使用しないこと、またテキストは完全に覚えるのではなく、例えば音楽で譜面を見ながら演奏するような感覚で朗読、といった興味深い話をしていた。そんな情感を大切にした朗読劇。

宮沢賢治の童話らしいアニミスティックな世界観、そこに30歳代になった女教師のリアルな心情を持ち込んだようだ。転校を繰り返し 故郷らしき所がない。雫の森小学校は既に無いが桜の木が…確かに自分がいた場所がある。自然云々といった世界観と雪子の今の状況(暮らし)を照らし合わせ、忘れてしまった記憶の中に大切なものがあったことを気づかせる。そこに、このドラマの新たな息吹を感じる。
次回公演も楽しみにしております。
東京夜行

東京夜行

パフォーマンスユニットcoin

パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)

2024/12/07 (土) ~ 2024/12/08 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

観(魅)せるを強く意識したダンス公演。印象としては、振付が先なのか音楽に合わせたのか分からないが、ダンスと選曲がピッタリ。そして照明や衣裳・小物の配色にも気を配る。勿論 ダンスの力量は確か(観応え十分)。
舞台はメインとサブステージが二か所。サブステージは少し段差を設え、別の場所であり時間もしくは俯瞰といった違いを表現する。また絵空箱にあるBARカウンター内も利用し、この会場全体を使って舞台化している。

ダンスパフォーマンスゆえ、何か物語性があるという訳でもないと思うが、ある出来事をイメージしてしまう。心象であり日常の光景、そして再生といった時間の流れを感じる。当日パンフには「夜の東京を旅する 賑やかで、静かで、華やかで、孤独で そして儚い私の街」とある。しかし、自分は別の出来事(イマーシブ・ダンス)を連想してしまう。
(上演時間1時間5分 休憩なし)

ネタバレBOX

上演前は立入禁止のYellow Tapeでメイン舞台を囲い、所々に脚立や箱馬が置かれている。上演直前にそれらを取り除き、素舞台にする。天井には色違いの短冊状の紗幕、月・星状の飾りが吊るされている。

曲は「ルージュの伝言」「銀座カンカン娘」など全19曲、ダンスはそれに合わせた振付。冒頭 全員がデザイン違いだが白い衣裳に赤い靴下で統一。ダンスは、その紅白が躍動そして浮遊するような。そして黒いスーツ姿で満員電車や会社での仕事(電話やパソコンを操作)をしているような日常の光景。またカジュアルな衣裳は無邪気な様子が窺がえる。「地獄タクシー」の曲とダンスなどは 漫画「笑ゥせぇるすまん」の「喪黒 福造」の苦悩している現代人のちょっとした願望を叶えてやる、といった可笑しみと怖さを感じる。途中で入るナレーションは心の彷徨であり嘆き、そして救いを連想させる。ラストは再び全員が冒頭の衣裳へ着替え、1人を囲んで…。その手には赤いバラ(花言葉:あなたは私の唯一の人)、終始 配色に拘る。

白い浮遊感ある衣裳、それは心象風景…東日本大震災で犠牲になった友人への鎮魂のように思えた。始めは、楽しかった震災以前、それから東京で生活(日常の忙しさの中に埋没した暮らし)、ふと寂しさが込み上げる東京の夜空。ラストは、友人の死を受け入れ、亡くなった友人たちが応援するような、そんな天を仰ぎ見るようなダンス。もしくは東京の一人暮らしの寂しさか。ダンスを通していろんなことを連想させる公演、その意味では面白い。
次回公演も楽しみにしております。
十二月、田中、がんばれ!

十二月、田中、がんばれ!

劇団うぬぼれ

ART THEATER 上野小劇場(東京都)

2024/12/07 (土) ~ 2024/12/08 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

🔞 R-18朗読劇ということに興味を持って観たが、思っていた以上に面白かった。典型的な娯楽作。発想はエロいが、内容は極めてまっとうで惹き込まれてしまう。この劇団の特長であろうか、マンガを読むような感覚で 分かり易い演出が好い。その資料-両面35頁(非売品)を配布、笑ってしまうが なかなかの力作。衣裳は男女ともに白シャツに黒ズボンで、外見で惑わせることなく朗読力で聴かせるといった矜持を感じる。それだけに 冒頭は正確に読むことを優先し(心掛け)たかのような棒読みが惜しい。
この朗読劇、上野小劇場という比較的小さい空間だから面白味が感じられると思う。今後、別の劇場 どのような公演を行うのか。

27歳の中学校体育教師 田中純平が、なんとか今年のクリスマスに童貞を卒業したいと…。登場するのは純平をはじめ賢者・性欲・睡眠欲・食欲そして先走り宣教師、人間の三大欲を顕に悶々とした姿が滑稽に描かれる。
童貞を捧げたいのが同僚の社会科教師 岸野つかさ 29歳。口説くどころか まだ交際もしていない。クリスマスまであと一か月、岸野先生と懇ろになるための脳内シュミレーションが先走る。ちなみに説明にあるクリスマスアダムとは、早い段階で明らかになるが、先走り宣教師はラストにその真の姿が明らかになる。

少しネタバレするが、岸野先生を巡って同僚の音楽教師 中山金太郎(32歳童貞)という恋敵が登場する。そして中山先生や女子生徒との保健体育(避妊具の使用)に係る会話も興味深い。
シンプルな舞台美術と照明だが、朗読劇としては十分に その効果を発揮していた。
(上演時間1時間45分 休憩なし) 

ネタバレBOX

舞台美術は中央に階段、上った先にスクリーンが吊るされている。両脇は暗幕 そこが出ハケ口になっている。上演前は階段下に半裸のキューピー人形のようなものが置かれているだけ。照明はシンプルな暖色やショッキングな場面は朱色、いずれにしても単色の色彩。時々 スクリーンを上げ、その奥から階段を下りてくるといった観せ方もする。

物語はクリスマスに童貞を卒業したい純平 27歳の悶々たる物語。童貞を捧げたい女性にアプローチする過程を、人間の三大欲を擬人化し滑稽に描く。基本は朗読劇だが、スクリーンにラフスケッチのような絵を映し出す。漫画の吹き出しの代わりに言葉(台詞)を朗読で紡いでいく。冒頭、賢者と性欲の会話は少し緊張気味で棒読みのような印象だが、だんだんと感情が入ってくる。1人複数役を担っているため、話し方や声色等を変えるなど 工夫をしている。

メインは童貞卒業ではなく、それに向けての面白可笑しい行為(過程)だけに、純平の妄想が爆発するような感覚。純平という一人の男の中にある考え 感情などを賢者・性欲・食欲・睡眠欲といった4人が分担し、協力や対立をしながら童貞男を立派に立ち上げる。スクリーンに映し出される絵が情況などを表し、そこに台詞が加わるから実に分かり易い。

さて男女の交わり、その起源を遡るとアダムとイヴ。そして童貞卒業をクリスマスに定めているが、遅くともその翌日 クリスマス アダムという予備日までターゲットに加えた。自分の中で、理性的に分析し判断する人格らしきものがいる。それが先走り宣教師、欲望を制御したり発散させたり、それこそが田中純平という人間性(本性)を表している。
ちなみに分厚い資料は、スクリーンに映し出したラフスケッチ全画面である。
次回公演も楽しみにしております。
はんなま砦は夜更けまで

はんなま砦は夜更けまで

大統領師匠

駅前劇場(東京都)

2024/12/04 (水) ~ 2024/12/08 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

面白い、お薦め。
観(魅)せ 楽しませることを強く意識した快作。チラシにある謎めいた説明、その世界観そのものが物語の肝。そこが どこでといったことが「閉じ込められた真実」(ネタバレ)に直結する。

未見の団体。この団体、コア ファンに支えられているようで、観劇した日は最前列に多くの女性ファンが陣取っている。上演前には〇回観る予定など お喋りに花を咲かせている。グッズも見せ合っている。勿論 開演したら熱心に観て、時に大笑いする。一方 団体は前説で優しく和ませるような話(本来の注意/依頼事項含め)から本編へ、そのサービス(精神)が劇中から伝わってくる。

登場人物の性格や立場、その特技などの面白い設定が妙。そして舞台装置を可動させダイナミックに観せ、勇ましく煽るような音響/音楽、強い目潰し照明などを駆使する工夫。映像で観るようなイメージのものだが、舞台という至近距離ゆえ臨場感がある。興味を惹く内容、それをアップテンポで展開し 心地良く飽きさせない。
(上演時間1時間55分 休憩なし) 

ネタバレBOX

舞台美術は、中央に基板の配線のようなもの、左右は丸みのあるレンガ壁。この丸みのある壁を適宜動かし砦の中と外の状況を表す。全体的に怪しく そして妖しい雰囲気を醸し出す。頻繁に出てくる「ガマズミ」という言葉が印象に残る。花…その花言葉が 少し怖い「私を無視したら死にます」「結合」「私を見て」らしい。

説明にある 小さな砦とそこに住まう住民達は、ある人物の体内であり意識である。物語は、或る富豪が交通事故を起こし、莫大な遺産相続を巡って骨肉(姉妹)の争いが…。妹は昏睡状態、姉は既に脳死状態であり、二人のうち 妹 中山百合に全財産を相続させるという遺言書がある。精神医療研究所では、交通事故を起こした相手方-首相の息子の事故隠蔽をすることで高額報酬を得ようとする。そこで所員を彼女の意識に潜入させ記憶の消去・書き換えを目論む。無稽荒唐であるが、その奇知こそが公演の魅力。

一方、彼女の意識の中には色々な住民達がおり彼女を守っている。しかし、姉の意識が いつの間にか妹 百合の意識に入り込んで体を乗っ取ろうとしている。そして被り物の奇怪な棲き物が動き回る。端的に言えば、妹の意識下で彼女を守ろうとする住民達 対 姉の意識+奇怪な物の戦い。そして(体)外界の研究所員達の思惑が絡んだ三つ巴の戦いを面白可笑しく描いている。

砦(百合の意識)の中の住人達の特技or得物は、最強の剣士、痛みを取る黒子、姿を隠すマント、刃毀れを治す鍛冶、癒しの効用、何でも抜きたがる歯医者を擬人化させており、そこに どんな関連性があるのか興味を持って観ていた。一つ一つの存在では強力な武器には成り得ない、一致団結することで意味が…この奇天烈な行為が爆笑を誘う。どのようにして百合の意識下へ侵襲していったか、そんな伏線も丁寧に描く。
ちなみに 被り物は あみ子、姉は妊娠5か月で、その子が意識の外へ飛び出しているという設定である。
次回公演も楽しみにしております。
みえないもの

みえないもの

アンティークス

「劇」小劇場(東京都)

2024/12/04 (水) ~ 2024/12/08 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

㊗20周年公演。面白い、お薦め。
いくつかの小さな物語を意味深に描き、それらを大きく包み込むように紡いだ公演。アンティ-クスらしく丁寧に 優しく考えさせるような内容だ。現実と幻想、そして過去や現在の話を縦横無尽に綴り込み、重層的に描き出す。
この不思議な世界観、それが何なのか最後に明らかになる。演劇としては典型的な展開だが、何となく清々しく充実感を覚える。全体的に見守り 寄り添う、そんな包容力を感じさせる珠玉作。

当日パンフにテーマらしきこと、「あなたの大切な『存在』に捧げます」とある。つまり「生きる」「生かされている」ということではないか。たとえ亡くなっても、その人のことを忘れなければ、残された人々の心の中で生き続ける。タイトル「みえないもの」は人の<思い>であり<想い>、その感性のようなもの。言葉では言い表せないこと、それを演劇という虚構の中でリアルに表現して伝える。

少しネタバレするが、いくつかの話は日常、そして戦争や災害といった広がりがあるもの。しかし、それぞれの話を深追いせず点描することで「存在」というテーマを暈けさず 捉えて離さない。勿論、役者の演技力は確かで、物語を支える舞台美術や音響・音楽そして照明などは巧い。観応え十分。
(上演時間2時間5分 休憩なし) 

ネタバレBOX

舞台美術は、暗幕で囲い 中央に段差がある平台、上手/下手にも同じ高さの平台(大きさ や 形は違う)があり、中央の平台と行き来できる近さ。上手と下手に飾り棚があるが、形状は違う。ミニテーブルや丸椅子がいくつか。そして天井には網が吊るされている。全体は抽象的だが、いくつかの話を紡ぐため、夫々のイメージを固定させない作りが巧い。逆に 役者が演技で状況や情景を作り出す。なお 平台の天板部分が白、暗幕との関係で照明の照射角度によって鯨幕のよう。

冒頭は少女二人(みく と さな)が、ぬいぐるみを使って無邪気に遊んでいる。物語は入院している病室、たみこ ばあちゃんの(唐沢)家、宇宙からの訪問者、そして高校時代といった、脈絡があるのか否か判然としない話が交錯して展開していく。さらに高校時代の話は大人になってからも回想的に描かれ、空間と時代が重層的な広がりと厚みを増していく。「ちぎり絵」といった台詞から色々なシーンの重なりが物語を構成していることを示唆。

高校時代の虐め、最近は頻繁に報道され 問題の深刻さを伝えているが…。中学時代に虐められていた生徒が、高校へ入ってから虐められない防衛策として虐め側へ。そこには仲間外れになることが怖いという意識がある。そして大人になって後悔する、その負の連鎖が断ち切れない。

たみこの家では懐かしい光景、ばあちゃん・じいちゃん・養女とその幼馴染が仄々と暮らしている。両親ではなく祖父母、そして実子ではなく養女というところが妙。日本の原風景、そんな懐かしさの中に奇妙な家族関係を描いている。また訪問者たちは、宇宙からやってきた家族、こちらは両親と長男・長女・次女という構成である。
何となく平穏に暮らしていた家族、そこに突然の不幸が襲う。それが東日本大震災(災害)や太平洋戦争(戦災)を連想させる。そして引き取られた先、学生時代、そして病院のベットの上という繋がりが解る。

ラスト、昏睡状態から数十年ぶりに意識が戻る。その眠っていた間にみた話、そんな夢オチの物語。此岸と彼岸の狭間、よく聞く走馬灯のような想いを情感豊かに描いた作品。幸せの日々は失って、そして大切な人は喪って初めて気づく悲しさ 寂しさ。当たり前のようにあった日々や人たちの存在、そして自分も含めて皆かぎりなく愛しいのである。冒頭の さな、そして訪問者の次女(星那<さな>)は、みく の生まれてこれなかった妹である(母が妊娠中に被災したため)。

舞台技術…照明は真上から青白いビーム光線によって海中を、白銀(モノクローム)は過去・動かない世界を表現しているよう。音響は波音や鳥の鳴き声、音楽は優しいピアノの音色が印象的だ。状況(場面)に応じて衣裳を変えるなど、分かり易さに工夫を凝らしている。物語を印象的に そして余韻あるものに仕上げていることに好感。
次回公演も楽しみにしております。
ポプコーンの降る街2024

ポプコーンの降る街2024

劇団大樹

Route Theater/ルートシアター(東京都)

2024/12/04 (水) ~ 2024/12/08 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

初日観劇、ほぼ満席。
現実と夢想を交差させ、優しくも切ないファンタジー作品。それは心の彷徨のようでもある。梗概は説明の通りだが、その謎めいたことを記すとネタバレになってしまう。当日パンフによれば、本作は1992年 文化庁舞台芸術創作奨励賞佳作を受賞し、劇団大樹では2005年に初演したとある。そして20年振りの再演にあたり、新たなシーンを追加し更に深みが加わっていると。初演を観ていないから何とも言えないが、タイトルや説明にある「ポプコーン」が膨らんで弾けたような…映画を観ながら食べた記憶があるが、その懐かしき味わいと香りがするよう。

登場する中で、名前があるのは探偵・野放風太郎と助手・タキ、それ以外は女・男・老人であり正体が知れない。この抽象的な設定が肝かもしれない。人物の過去や現在など背負っているものを明らかにしていない。唐突にして曖昧な出会い方、緩い関係性の中で謎を膨らませていく。そして絵画の人物とは という謎へ繋げていく。途中から だんだんと事情が分かってきて、言葉の端々から滋味溢れる物語が構築されていく。全体的に抒情的な印象だが、物語とその雰囲気を支えているのがアコーディオンの生演奏、とても好かった。

コロナ禍を経て不寛容・無関心といった世の中になったような気がするが、本作は未練と想いが しっかり詰まっている。それは人間だけではなく身近な動植物に愛と情を注いでいるよう。少しネタバレするが擬人化した猫、そしてアンサンブルとして踊る姿が愛らしく、しかも力強いといった感じもする。そこに過去だけではなく未来が…。
(上演時間1時間50分 休憩なし) 12.08追記

ネタバレBOX

舞台美術は、上演前にキャスタ付の衝立4枚、1枚はドアで他はレンガ壁。そこにHOTEL REGRETの看板が掲げられている。上手にはビールケースが積まれている。開演すると衝立を回転させ探偵事務所内の淡い壁とドアに変わる。要は衝立の表裏は、外観と内装を表している。事務所内の中央にソファ、壁に女性の肖像画が飾られ、上手奥には桜の木、その幹は太く枝は天井を這うように伸びている。下手に演奏スペース。

或る日、突然 サラダオイルを持った女が探偵事務所に入ってきて、風太郎に向かって「私の後をつけていたでしょう」と詰問する。自分をつけていた男の風貌と行動を並び立て事務所を出て行く。その女、壁の肖像画の女に似ている。それから頻繁に事務所に来るようになる。いつしか街に鳥籠を持った老人が現れる。しかし籠に鳥は入っていない。この鳥を探して旅を続けているという。

女が、風太郎に20数年前の消印がある手紙を示し、差出人を探してほしいと依頼する。ここから風太郎と女、そして肖像画の女の関りが愁いを帯びて紡がれる。2人は高校の同窓生、といっても風太郎(20歳)は夜間、女(17歳)は昼間で会ったことがない。2人は同じ座席、風太郎が机に推理小説を忘れ、それを女が読み興味を持った。いつしか文通を、そして会う約束をするが…。その待ち合わせ場所に向かう途中で、風太郎はバイク事故で亡くなる。物語は風太郎の夢オチのよう。風太郎は女一筋だが、女は恋愛を重ね 結婚する。そこに生者と死者の愛情感覚の現実的な違い。

風太郎の夢想の中に女が入り込んだのか、女も死んだのかは判然としない。ラスト 男がサラダオイルを買いに出たまま帰らない妻を探すよう 探偵事務所を訪ねてくるが 廃墟。物語の中で既に時間軸が狂っている。何となく〈浅茅が宿〉を連想してしまう。助手・タキは風太郎の飼い猫。既に20年以上生きている。一方 街に来た老人には生または小さな幸せ(青い鳥)を感じる。女が売春婦に身を落としても生きることが大切。同じ街で、死と生という人が抗えない宿命を描いている。
次回公演も楽しみにしております。
サド侯爵夫人

サド侯爵夫人

プロジェクト榮

銕仙会能楽研修所(東京都)

2024/11/30 (土) ~ 2024/12/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

面白い、お薦め。観応え十分。
現代戯曲を能舞台で、その独特の空間の中で強靭な台詞が火花を散らすような緊張感。よく言われる言葉と無言といった舞台ではなく、心情を激白し合う感情劇。勿論タイトルから分かるが、サド侯爵夫人をはじめ周りの人々との会話を通してサド侯爵を浮き彫りにしていく。

原作は三島由紀夫、台詞と構成そして登場する6人の心情がハッキリ解る。長い時間軸の物語にあって、心と時代の変化をしっかり感じ取ることが出来る稀有な公演。言葉の激流が俳優たちの身体を借りて愛憎という情念を描き出す。その迸るような激情が観客の意識を捉えて離さない。一瞬たりとも言葉を聞き逃すことが出来ない。

3幕/上演時間3時間(途中休憩10分×2回を含む)、少し緊張が解れるのが 場転換で奏でられる二十五絃箏。演奏によって場に流れた憎悪のような感情が昇華していくよう。能舞台に和の演奏は映え調和する。それは単に場転換の繋ぎというよりは、昂った観客の気持ちを和ませ、新たな場面への期待といった効果を感じる。勿論 照明効果もすばらしく、暖色と白銀の二段になった照射 更にその諧調によって場景の雰囲気を変える。
(上演時間3時間 途中休憩 計20分)追記予定

ロケット・マン

ロケット・マン

劇団鋼鉄村松

劇場MOMO(東京都)

2024/11/28 (木) ~ 2024/12/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

㊗30周年記念公演…面白い、お薦め。
宇宙という悠久のロマン、そこに関わる人々の思いを人間的そして国家的といった観点で描き出す壮大な物語。人間にとっては長い時間軸、しかし宇宙的な感覚からすれば瞬く間、それを硬軟ある観せ方で飽きさせない。まさに観劇はアッという間の感覚だ。

説明にある「人類は光速到達実験『プロメテウス計画』を開始」…科学的な専門用語(台詞)もあるが 物語の中で不思議と解っていく。小難しいことは抜きにして楽しめる。そして1人何役も担うが時間の経過とともに現れる(人物が違う)ため、混乱することはない。ただ 1人の宇宙船乗組員 カーフ(通称 ロケット・マン)の宇宙への思いと彼を地上から見守る人々の思いは なかなか重ならない。ロマンとリアルの思いの鬩ぎ合いのような…。

少しネタバレするが、冒頭に出てくる 世界最初の宇宙船乗組員である一匹の犬 ライカ、それがラスト、カーフと邂逅する。始めの台詞「スプートニク(ロシア語)」こそ、この物語そのものを言い表している。それは観客を<(宇宙)旅の同行者>として誘っている。勿論 某国の人工衛星打ち上げ計画に因んでいるが。
(上演時間2時間 休憩なし) 追記予定

ウソの歴史のツクリカタ

ウソの歴史のツクリカタ

劇団KⅢ

萬劇場(東京都)

2024/11/27 (水) ~ 2024/12/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

説明の「男も及ばぬ大力無双 毘沙門天の化身と言われる上杉謙信。その名を歴史に残した武将。史実に謎を残した男」から、何となく<ウソの歴史>の想像がつく。この設定は 根強く囁かれており、他の謙信を扱った舞台でも観たことがある。

本作は、戦国時代らしく影武者という存在を絡めることによって、心の深淵を覗き込むような深みを持たせている。特に中盤から終盤にかけての謙信と影武者、夫々の葛藤を激白する場面は面白い。それだけに前半の緩い冗長のような場面が惜しい。前半の柔らかさと後半の硬さ、その落差というかギャップで印象付けようとしたのだろうか。
スピード感ある殺陣、それを効果的に観(魅)せる照明、迫力を煽るような音響音楽は好かった。

タイトルは、現代的な問題も潜ませており興味深かった。戦国時代という生き残りをかけた修羅の時代、翻って 今は剣からペンへ、さらにインターネットという目に見えない武器を駆使して勝者となる。そこに風評という魔物が…。
(上演時間2時間5分 途中休憩なし) 

ネタバレBOX

舞台美術は段差を設え、後方に長尾家「九曜巴」と武田家「武田菱」の家紋入りの旗。さらに龍/虎が描かれた白布2枚が垂れ下がる。前面は広いスペース、段差の上り下りと相まって躍動感を出し 殺陣をダイナミックに観せる。

物語は上杉謙信の幼名ー虎千代を上手く使った設定。上杉謙信には、根強く女性説が囁かれている。他公演では、この説に基づいて始めから彼を女性として描いていたが、本作では本人(光)と偽者(影)が…。登場人物の多くは歴史に名を残す者であるが、フリーランス忍者 飛び加藤という架空の人物が肝。長尾景虎(後の謙信)と飛び加藤の殺陣から物語は大きく変わる。

戦国時代の跡目ー男系男子が家督を継ぐ、今でも似たようなことを聞く制度。越後がまだ完全に統一出来ていない時期、長尾家を継いだ景虎。幼い時 一緒に寺へ預けられ女 千代、2人で行う兵棋演習で景虎は千代に一度も勝てない。優秀であるが 女ゆえ景虎の影として付き従い、自分の存在・価値を示すことが叶わない。一方 景虎は毘沙門天の化身と言われるが、自分の才覚に自信が持てない。宿命の悪戯か、千代が景虎に成らざるを得い状況へ。

わずかな家臣しか景虎の容姿を知らない。鎧を身に着け顔を被い武田軍に立ち向かう。どちらが光で影なのか、しかし国や民を思う気持ちは同じ。そんな決意を示す千代のラストシーンが力強い。昔も今も風評(噂)は大切か。大将(景虎)の存在は絶対で、敵 武田軍に知られてはならない。苦肉の策が千代の身代わり。その嘘偽りこそが長尾(上杉)家の存亡を左右、延いては民のため。ウソから生まれた 慈しみや思いやりであっても、それが時を経て事実になることも…。
次回公演も楽しみにしております。
レットイットビーム

レットイットビーム

コメディアス

OFF・OFFシアター(東京都)

2024/11/27 (水) ~ 2024/12/01 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

RTA(Real Time Attack)のようなライブ感ある公演。確かに「光路を作り出す過程を描いた光学演劇、光VS人間のレーザーコメディ!」という謳い文句の通りなんだが…。
前説の中に設定を語らせ物語が始まる。しかし始まってしまえば設定等 ほとんど関係なく目の前の装置とアイテム入手に集中する。今まで密室や迷路からの脱出劇は観たことがあるが、シャレの意味で古さを省いた<光学>ならぬ<考学>といった公演。色んな意味で評価が分かれそうな気がする。

RTAといっても公演時間内には完結する。ちなみに装置は手動ではなくセンサーで反応させているため、機器の調子と役者の操作の加減によって上演時間が長くなるかも といった情報が前もって知らされた。公演情報では上演時間80分であったが、観た回は90分(途中休憩なし)だった。
全編を通してレーザーのパズルがどのように解決していくのか、その遊び心ある過程には観(魅)入らされた。

ネタバレBOX

舞台美術はレンガ壁の中央に埋め込まれた電子基板のような装置(当日パンフにも掲載)、その中心に「光の羅針盤」がありレーザーを照射している。他に箱馬が2つ。
この種の公演は、設定と装置が密接な関係にあり 奇知ある驚きが大切だろう。今回は装置の面白さに重きがありドラマ性が弱いような。

物語は1924年。大英博物館で見つけた古い冒険記、そこに記された神秘の装置<光の羅針盤>と<LET IT BEAM>という奇妙な走り書き。その謎を解くため、博士と財団の担当者が やって来たのがリビア砂漠にある古代文明の地下遺跡。神殿への扉(基板)を発見するが、それを開けるには…。ここからがRTAゲームのようなレーザーとの格闘。劇中の台詞でいえば「知育ゲーム」が始まる。これは観ないと臨場感が伝わらない。

終盤、問題をクリアーし 中から出てきた古代人。衣裳こそ それらしいが会話は現代そのもの。レーザーが武器へ利用される恐れ、それを担当者が先の大戦でと口走る。台本通りなのかアドリブなのか判然としない緩い会話。意地悪な見方をすれば、装置との格闘に手間取った時に、この古代人との会話シーンで時間調整をするような。
なお ライブ感を大切にしたのか、音楽で煽るようなことはしない。せいぜい始めと終わりに冒険譚を思わせる曲を流すだけ。
次回公演も楽しみにしております。
炎恋

炎恋

星巡黎

阿佐ヶ谷アートスペース・プロット(東京都)

2024/11/20 (水) ~ 2024/11/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

心の奥深くに響く心情劇。魅力は、珠玉の台詞が鏤められ抒情的な感じ、しかし なぜか指の隙間から言葉がポロポロと零れ落ちてしまう。言葉・台詞に酔いしれたと言ってもいい。逆にインパクトある言葉がなく、印象が弱いといった感じがする。惜しい。

女優7人が 横一列に並べた椅子に座り朗読する。大きな動きはなく言葉と表情で紡ぐ。7人は姉妹であったり幼馴染または飼い猫などで、その関係性はバラバラで 当初演じている性別も判然としない。登場する人間や動物が、自分の思いを正直に言えなかったり、相手の気持ちを推し量ってしまう。その結果、自分の気持ちに正直になれない、要は本音で語ることが出来ない。本音と建前という遠慮の世界で生きている。そこに生き辛さが浮き彫りになってくる。

公演の魅力は、夫々の関係性の中で語られるドラマ、それを情感豊かに朗読する。時に語っている人物を皆が凝視するように覗き込むため姿勢を変えたり、逆にそっぽを向くような仕草。また舞台後ろの暗幕を利用し、色彩豊かな照明を巧みに諧調し、情景と状況を描き出す。
(上演時間1時間20分)【恋チーム】

ネタバレBOX

横並び…上手から先生・幼馴染・久遠・君・妹・猫・姉の順で台本を持って座る。
物語に脈絡があるのか分からない。別々の話が入れ子のように紡がれているが、複雑な人の思いと関係性は伝わる。

葬儀は、故人との関係にもよるが 一般的には悲しいもの。物語では、お葬式で二人だけが泣けなかった。その違和感のようなものを契機に、他の出来事や関係性を次々に膨らんませていく。泣いていなかったのは、君と久遠の二人。全員女優であるから登場人物は女性という先入観を持っていたが、そうではないようだ。例えば衣裳で、君は白地のワンピース、久遠は黒のパンツスーツ、猫は耳付きの白い帽子とボアスリッパ等、外見をそれらしく観せていたが、すぐには気が付かない。

久遠と幼馴染は 文字通り幼い時からの友達、いや少なくとも幼馴染は久遠に恋愛感情を抱いていた。しかし別の女性と結婚することにした。二人は同性愛かと思っていたが、幼馴染が結婚する相手が妊娠していると告げた。久遠は中性的な雰囲気を漂わせており演技上手だ。

姉と妹は文字通り実姉妹。妹は、何らかの事情で家を出て暮らしている。姉妹間で何らかの確執があり、関係が好くない。その原因・理由がハッキリしないのが惜しい。

姉をはじめ何人かが心を病んでいるようで、先生に相談している。当初、先生は占い師 もしくは電話相談者のような印象を持っていたが、心療内科医として考えれば納得。

そして猫、久遠の飼い猫のよう。猫は 人間の寂しさの慰み物に、そんな冷めた目で見ている。猫の客観・観察的な立ち位置が物語を落ち着かせる。

全員が直接または間接的に繋がり 物語を紡いでいく。それを静寂という対話、皆が同時に喋るような雑音の違いで聞かせる。そこに心情と日常(世間)が溶ける様に交じり合う。まさにHSP傾向のような、他者との心の境界線が上手く保てない もしくは歪んだ関係が浮き彫りになる。
次回公演も楽しみにしております。
永遠色 - トワイライト -

永遠色 - トワイライト -

劇団導

コフレリオ 新宿シアター(東京都)

2024/11/21 (木) ~ 2024/11/24 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

若さ溢れる女子高生の心霊劇であり心象劇。物語は、概ね説明に書かれている通りであるが、何かしら違和感を覚える。公演は、プロジェクションマッピングを使って柔らかみ ファンタジーな雰囲気を醸し出す。演出は勿論 演技も丁寧で、しかも登場人物は皆女優でフレッシュであり華やか、しかし描かれている世界観はここから先は行き止まり といった悲しみが…。それをどう乗り越えるかと、女子高校生の友情がモノローグ的に紡がれる。

先の違和感は物語の核とも言うべき内容で、自分の勘違いなのか、もしくは観逃したか聞き逃したか。劇中も書かれている説明も同じで、その設定と展開の理解が追い付かないところが惜しい。自分の拘りかも知れないが、物語のテーマを語る上では重要だと思うが…。
(上演時間1時間45分 休憩なし)【空色チーム】

ネタバレBOX

劇場に入ると、正面にプロジェクターを使って色彩豊かな絵(夕暮れ時の東京駅舎のような)が映し出されている。上手/下手の壁際にベンチ、下手に二重(前後)の衝立とカーテンが掛けられいる。舞台中央は広いスペースを確保し、女優陣が生き活きと演じる。
いつもの場所/いつもの時間に待ち合わせ。それが時計台の下/トワイライトの時間帯。いつまでも続くと思われた北川女子高校 写真部員の友情。それが夏の遠征(長野県八ヶ岳山麓)途中で、バス転落事故で7人全員が亡くなる。ガラ携帯を使用しているから、時代設定は少し前か?

7人の被害者の中の1人-藤崎真由は双子姉妹。母親の美沙は明るくけなげな真由を大切に育て、妹の真里は頭を抱えた。そして真里は 真由の死を受け入れられず壊れた。事故のニュースを見て、母親が「真里ちゃん、真由が死んだからお葬式しなくちゃね。あなたはお姉ちゃんなんだから」そして「彼女は“姉”となった」。物語は、ここからが見所。
3年後、真里は真由里(=真由と真里)という多重人格を作り出し、嘘の明るさを取り戻した。虚証ならぬ虚笑する姿がそこにある。自分の存在とは、そして母の真由への思いとの兼ね合い、複雑な心模様を自問自答という形で描く。それは自分が作り出した小川由紀、山本結衣、谷口彩花という幻影との会話。さらに亡き写真部員-イマジナリーフレンドの6人-道乃木遥香、藤堂玲奈、椎名紗希、天城彩乃、神崎遥香、黒崎由美が、真由里の心に居座る。幻影とイマジナリーフレンドが真里を心配し励ますが、それが現実なのか幻影なのか、その世界観が混沌とし曖昧になる。

3年経ち 幻影とイマジナリーフレンドの存在は、真里の慰め/癒しとしての役目を終えようとしている。そしてイマジナリーフレンド6人(体)が夫々思い残したことを吐露し、真里から離れ成仏する。本来であれば 姉の真由の吐露があって、真里が真に自分自身を取り戻すことが出来るのではないか。人はいつか死ぬ、しかし亡くなった人のことを忘れなければ、残された人の心の中で生き続ける。これは母親にとっても同じ。真由の思いが、母と真里を再生に導くのではないか。その核心が描かれていない。勿論 1人2役でという演劇的な難しさもあろう。しかし、イマジナリーフレンドが6人で肝心な真由の存在感がない。そして母と妹への惜別の言葉がないのが残念。

また真里がショックで ドッペルゲンガーに、といったことも考えられるが その兆候らしきものが描かれていない。ただチラシには「心の中で彩った人々と偽物の人生は交錯し、ついに まぼろしは表へ出てきてしまう」とあり、姉妹はほんとうに双子なのかという疑問も残る。それを意図したならば、なかなかに手強い公演だ。

さて イマジナリーフレンドの心残り…例えば、椎名紗希(村山桃圭サン)は、研究ファイルのパスワードを伝え忘れたこと。事故・災害等が起きた時、衛星通信を利用して場所を特定するシステム…物語の事故と絡め、更に現代的な課題の広がりに繋がるようで面白い。
次回公演も楽しみにしております。

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