月と箱舟 公演情報 “STRAYDOG”「月と箱舟」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、今まで観てきた“STRAYDOG”作品とはちょっと違うテイストだったが、この混沌とした世界観は好きだ。公式サイトの「平成での上演を最後に封印していた混沌の怪物を、いざ令和の世に解き放つ!」という謳い文句に惹かれて観劇したが、何となく そういう意味なのかと 独り合点した。ひと筋縄ではいかない構成、独自の手法により魅惑的な世界観を創り出している。

    物語性は勿論あるが、その観せ方がミステリー、サスペンス、スプラッターホラーそしてコメディと変幻自在の演出で、情景・状況が目まぐるしく変化する。その何でもアリの混沌とした世界観、その不思議な魅力が物語を牽引する。根拠がある訳ではないが、何となく自由奔放イメージの中島らも 作品を連想、それは理屈を超えた勢いのようなもの。
    ちなみに人によっては気分が…トリガーアラートの案内があったほうが良いかも。
    (上演時間1時間40分 休憩なし)【さくら組】 

    ネタバレBOX

    舞台美術は、冒頭…若き考古学研究者の部屋。薄汚れた一室、上手に机台(シーツ) 下手にアイロン台が置かれている。正面奥は引き戸の出入口、その左右に見開き窓。場転換し17年後は廃棄物処理会社の事務所内…シーツを取り事務机、下手はテーブルと椅子を置く。
    前途洋々とした若き考古学研究者の梅宮だったが、今 廃棄物処理 それは人が嫌がる仕事であり地域住民との諍いが絶えない、そんな憤懣やるかたない状況下にいる。そうなった原因が物語の肝。

    物語は説明にある通り、17年前 考古学を学び、良き友そしてライバルであった松坂と梅宮、そして二人の間で一人の女性 古都 を奪い合う。月日は流れ 松坂は考古学の教授、梅宮は父の跡を継ぎ廃棄物処理会社の社長と、違う道を歩んでいる。この会社、更生施設のように前科者を多く雇っている。一癖二癖もある者、その心底にあるのは愛欲とお金。金で愛情を買い、愛憎が暴力を生むといった殺伐シーン。一方 妄想の世界に浸り、官能小説を執筆しながら朗読する濡潤シーン、そして被り物をした公務員の笑劇シーンなどバラエティなシーンの構成。物語はシリアス、コメディを行き来しながら、過去の在る出来事へ繋がっていく。

    廃棄物処理場に遺跡の発掘を絡ませ松坂と梅宮を邂逅させる。そして調査で発見される「瑪瑙(めのう)」や頭蓋骨、同時に起こる誘拐や身代金強奪等、そのミステリー性が物語を惹きつけて離さない。動的な殺傷シーン…血まみれの顔、血に染まった服など生々しい状況。最前列 客は役者の合図によってシートを持ち上げ血飛沫を防ぐ。静的なロマンー梅宮が松坂の助手に語るシーン…発掘された人骨から その人物が当時どんなことを考え、行動していたのかを想像する。その人に想いを馳せる。そんな動・静の対比シーンも良かった。
    ~公演中なので後日追記予定~

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    2025/01/18 00:27

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  • ありがとうございます。
    さくら組の舞台をここまで丁寧に読み解いてくださり、心から感謝申し上げます。
    「封印していた混沌の怪物を令和の世に解き放つ」という言葉の真意を感じ取っていただけたとのこと、制作者として何よりうれしいです。

    ご指摘の通り、本作は“STRAYDOG”作品としては異色の構成とトーンを持ち、ジャンルを横断する演出で〈混沌〉そのものを表現しています。コメディからサスペンス、ホラー、ロマンまでを自在に往来する構成は、混乱ではなく「生の不確かさ」を象徴させる意図でした。
    中島らも氏を想起されたとのお言葉も印象的です。理屈よりも勢いで突き進む衝動、その不条理の中に潜む人間の可笑しさや悲しさこそ、この作品の核でもあります。

    また、舞台美術や構成への詳細な観察に感服いたしました。狭い空間の中で、過去と現在を自在に切り替えるため、最小限の装置で最大限の想像力を喚起できるよう工夫しています。血飛沫の演出や観客との一体感も、現場でしか体験できない“ライブ感”を狙ったものです。

    率直で洞察に富むご感想、本当にありがとうございます。今後の作品づくりの励みといたします。

    2025/10/21 20:46

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