
誰々
劇団5454
すみだパークシアター倉(東京都)
2026/07/31 (金) ~ 2026/08/11 (火)上演中
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。
チラシにもあるがテーマは「役割」、同時に「立場」といった言葉を連想した。意識的であろうが無意識であろうが、人は或る状況下で色々な判断をする。その連続が生きていくこと と考えれば実に面白い着想の公演。分かったような分からないモヤモヤとした感情、劇団5454のコンセプトでもある「日常で見聞きする事物をテーマにして、誰もが無意識に受け入れている感覚を物語化」を見事に表しており、まさに劇団の真骨頂をみるようだ。
タイトル同様、登場人物は姉・母や彼氏・彼女そして友達・先輩・後輩といった一般的な呼称を使っている。そこに誰もが持つ「役割」であり「立場」が透けて見えてくる。それは観客の誰にでも当てはまるものであり、共感しやすい設定が巧い。それを視覚的に分かり易くした舞台美術がよかった。演出も「役割」を着ている、その表現を上着を着ることによって場転換していく。お母さんの「ご飯食べた~」の台詞は、日常を示している。文字で表現し難い内面を演劇という役者の体現をもって観せた秀作。
(上演時間1時間55分 休憩なし)

『コインランドリーカタルシス』
πTokyo
πTOKYO(東京都)
2026/07/25 (土) ~ 2026/07/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「また会おう」 そう言って別れたが…。冬、東京の或る街にあるコインランドリーでの奇妙な話(抒情劇)。3年間同棲した彼女と別れて2年、いまだ未練を残す俺。家に洗濯機はあるが、彼女と閉店間近のコインランドリーに行っていた習慣だけが続く。
彼女曰く「(洗濯機は)くるくる回る」 同じように見えるが、少しずつ違っている。それは2人の意識や生活を表している。俺はカフェバーで働く夜型人間、稼ぎも少ない。彼女は結婚し子供もほしいようだが、俺は踏ん切りがつけられない。そんな彼に関心を持った男が話しかけてくる。前(深)夜から翌日の同じ頃までを描いた物語。
(上演時間1時間20分) ㊟ネタバレ

cogito
O企画
小劇場 楽園(東京都)
2026/07/23 (木) ~ 2026/07/26 (日)公演終了
実演鑑賞
公演は二部構成、一部はチラシにある説明の物語。ニ部は観客も加わった哲学対話。千穐楽に観劇したことから、「おわり」とは というテーマ。発言してもよし、しなくても構わない。けっこう多くの人が発言し、なかには複数回 発言していた方もいて参考になった。同時に自分の考えもまとまった気がした。
ほぼ素舞台。楽園の中央にある柱の下の周りに芝と石。舞台上も含め 囲み客席で 中央に丸太2つ。上演後 哲学対話がしやすい配置になっている。また観客は「石」という設定らしい。そういえば当日パンフの重しに石が置かれていた。物語がもっと人の機微に触れ、想像力が膨らむような空間演出が出来れば…。多少の間(ま)があっても、それは物語の余白であり余韻。小説でいえば行間を読むといった感覚だろうか。
物語は、偶然同じリックサックを背負った 見知らぬ女と男が 街中の公園で出会う。観客は石であるから、公園内(客席通路)を上り下りする。お互いが気になるが話しかけるキッカケがない(間の広がり)。男が裸足になって、直に土の上を歩くといった行為を通して、「感動」「もやもや」といった心の在り方を語り合う。いつの間にか2人の会話は現実と幻想、「生きること」「死ぬこと」といったことが交錯し、曖昧なまま哲学問答へ繋げる。上演内容を深化させるような手法に思えた。
(上演時間1時間 上演と対話の間が休憩か)【A】

血の婚礼 【劇団うつり座】
劇団うつり座
上野ストアハウス(東京都)
2026/07/22 (水) ~ 2026/07/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。
篠本賢一 氏が、ロルカの「血の婚礼」を慣習に縛られた日本の寒村で起こった悲劇にアレンジして描いた愛憎劇。物語の概要こそ原作を準えているが、その奥底にあるドラマは違った印象だ。
見所は、日本を舞台にして慣習や道徳を解放と自由といった別の視点で浮かび上がらせるところ。もう一つは 足の運びに見る能の様式、和楽器による生演奏といった観(魅)せ聴かせる演出がすばらしい。
(上演時間2時間10分 休憩なし)

桜舞~花征きて~
演激集団INDIGO PLANTS
R's アートコート(東京都)
2026/07/24 (金) ~ 2026/07/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
観応え十分、お薦め。
反戦劇、特攻を描いた作品としては秀逸。場内は嗚咽、天気も上演前はカラッと晴れていたが、終演後は豪雨で 空も泣いているよう。特攻は、その事実を忘れてはいけないが、美化してもいけない と。特攻「桜花」を題材にしており、その名は聞いたことがあったが、実態は知らなかった。資料が配付され、冒頭「桜花」の説明があったが、理不尽極まりない作戦であったことがよく解る。
この作品には多くの見所がある。まず物語のテーマ…死ぬ意味を探し求めている桜花搭乗員・秋山勇と生きる意味を問い続けている従軍看護婦・山際響子の出会いと別れ。命とは 生きるとは の意味を見つけていく重厚な内容。穏やかな日常と戦闘という非常時、そのメリハリの利いたシーンが物語に緩急をつける。
舞台美術は、「桜花」に因んで桜の大木を配し 全体的にスタイリッシュで美的に優れている。またラストのプロジェクションマッピングは見事な効果--印象と余韻--を発揮している。勿論 桜の木は靖国を象徴。特攻隊員が「靖国で会おう」と言いながら出撃したことが分かるシーンが厳かだが痛ましい。
次に方言等を使った演技・小物が臨場感を漂わす。鹿児島県鹿屋市の海軍航空隊を舞台にしていることから地元民の鹿児島弁(小物は鹿児島名産の月日貝)、そして秋山勇の出身地である広島弁で両親との別れ。そこに生きているという証、実感が感じられる。
戦時中の状況を点描し、いかに戦争が残酷で無情かを訴える。育てた息子との別れ、生きることの大切さを説いた女教師を特高警察が連行等、多くの不条理を描きつつ それでも「桜花」に乗り込まざるを得ない情況を切々に綴る。
(上演時間2時間 休憩なし)

大礼服・壜の中の鳥
巴プロデュース
南青山MANDALA (東京都)
2026/07/22 (水) ~ 2026/07/25 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「寺山修司ラジオドラマ選集」それを南青山MANDALA という優雅な雰囲気の中で聴く、いや~贅沢な一夜を堪能した。聞かせるだけではなく、観(魅)せるも意識しており、ラジオドラマだが、動き回り 衣裳替えも頻繁に行う。
寺山修司の20代に書かれた作品。後々のアングラ--カウンターカルチャーの片鱗が見えるようで、興味深かった。「大礼服」は1965年(昭和39年)作で 寺山29歳。冒頭 出演者全員でその時代の出来事を紹介していく。それによって作品が創られた世相なりの背景が分かる演出が妙。
(上演時間1時間30分 途中(作品間)休憩10分)

「水平線の歩き方」【Mura.画】
Mura.画
北池袋 新生館シアター(東京都)
2026/07/24 (金) ~ 2026/07/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白い、お薦め。
公演は 「Mura.画」の演劇研究会として2回目の上演。前回の研究会も成井 豊の作品で、丁寧な演出が印象的だった。本作の演出は 爽口穂夏さんで やはり素晴らしい。成井作品の面白さ-滋味溢れる内容、それを見事に描き出していた。
作品の肝は 世界観にある。どうしてという不思議さ、何故という謎をどう演出するか。物語に明確な前半・後半があるわけではないが、或るシーンを境に雰囲気がガラリと変わる。それまでのユーモアを交えた明るい話が、悲嘆にくれた落涙へ。研究会公演ということもあろうが、成井ワールド( 演劇集団キャラメルボックス)を忠実に表現した手堅さが観てとれる。
(上演時間1時間10分)【A】㊟ネタバレ

太鼓
劇団演奏舞台
演奏舞台アトリエ/九段下GEKIBA(東京都)
2026/07/23 (木) ~ 2026/07/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
お薦め、見応え十分の作品。
暗闇と静寂の中で語られる心情、その切々とした思いが重く響く。当日パンフによれば、1976年9月が初演で 約半世紀を経て6回目の上演とあるが、自分は初見。しかし世界のどこかで紛争や戦争が勃発しており、「平和」には程遠い。作品は色褪せることなく、今に通じる反戦劇であり心情劇。
説明にもある、最前線に歩哨として出された少年兵の耳に、どこからともなく太鼓の響がきこえてくる。それは鼓動であり生きたいと思う魂の叫び だと思う。漆黒・静寂だからこそ一層鮮明に感じる命の音。「戦争」という不条理に対し「生命」という命脈で向き合った力作。
重厚な物語…重苦しく緊張を強いる内容だが、演奏舞台の特長である音楽(生演奏)と照明の諧調が絶妙で印象的だ。また 昨年入団した佐竹駿さんが主人公の少年兵を演じているが、終始 愁いを帯びた涙目で熱演、好かった。
(上演時間1時間30分 休憩なし) 追記予定

フランケンシュタイン対地底童子(クラボッコ)
劇団 枕返し
小劇場 楽園(東京都)
2026/07/16 (木) ~ 2026/07/20 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
公演は、話を多重構造にすることによってミステリアスさを、その関心・興味を惹き 観(魅)せるを意識しているよう。物語は主人公 実が5歳から23年後(28歳)の世界へ、しかし途中の過程はほとんど描かれない。時間(過去と現在)の往還と場所(実家と病院)の移動、その組み合わせにフランケンシュタインと地底童子(クラボッコ)を巧みに絡ませ重層的に展開していく。(無難に)辻褄合わせというよりは、勢いで持っていった印象。
フライヤーの絵柄というかデザインが昭和の映画ポスターのようで、おどろおどろした雰囲気を醸し出している。しかし公演は、怪物や妖怪が登場するにも関わらず 奇妙さの中にユーモアを交え楽しんで観ることができる。台詞は科学的な理論や理屈というよりは、こじつけや屁理屈として捉えたほうが物語を楽しめる。勿論 フランケンシュタインの物語そのものの体裁(書簡体形式)などを挿入していることは分かる。外見のビジュアルーメイクや衣裳などは、劇団枕返しらしい特長で好感。詳しく あらすじ などは書ず、どの公演もそうだが 特にこの公演は一見に如かず。
(上演時間2時間弱 休憩なし)

パール食堂のマリア
青☆組
吉祥寺シアター(東京都)
2026/07/17 (金) ~ 2026/07/20 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。
劇団化15周年の集大成として満を持しての上演。未見の作品で 仮チラシを手にしてから待ち望んでいた公演をやっと観ることが出来た。1970年代の横浜を舞台にした群像劇。そこにあるパール食堂を中心に 市井の人々を優しく見守るように綴った珠玉作。冒頭 全ての人物が舞台に上がることによって、この街が主人公と言っているよう。舞台美術がすばらしく、下手が変形遠近法を用いたようで、歴史の刻みと当時の世相が浮かび上がる。夏から秋にかけての物語、その季節の花である「芙蓉(フヨウ)」の響きが物悲しく聞こえる。
チラシにある「私は今日、死にました。この道、あの空。錆びた色のゴミバケツ」は、名もなき人々、特に女性 それも母に焦点を当てている。名も「無き」であり「泣き」そして「亡き」である。そこには戦後の影が色濃く投影されている。少しネタバレするが、白塗り娼婦ーハマのメリーさんーを連想させるMという女性が登場する。「GIベイビーを生み育てた無数の名も無き母たちの幻影を彼女に重ね、戦後の横浜を描く 傑作戯曲」の紹介文は誇張ではない。まさに鎮魂の祈り、人間賛歌を高らかに謳った作品。見応え十分。
(上演時間2時間 休憩なし)

あきらめて明日
青春事情
新宿眼科画廊(東京都)
2026/07/17 (金) ~ 2026/07/21 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
何となく生き、時だけが流れていくような、そんな惰性の暮らしに意味を見つけようとする物語。そこに緩いSFファンタジーといった要素を纏わせ、意味なんてそんなに重要ではない、生きていることが大切だと。「青春事情 Presents 群青劇シリーズ vol.1」…どこにでも居そうな人 ありそうな様相を坦々と描いているが、観ている人の心を満たしてくれる好公演。
明日こそは充実した日を過ごそう、そう願い足掻いている姿に微笑む。それは人の不幸を見て喜んで というよりは立ち止まり、彷徨いながら必死に生きていることへエールを送るような気持ち。どんなに悲しく辛く、そして挫折しても時は流れていく。過去に囚われていては…タイトル「あきらめて明日」は、拘りを捨てることによって 前を向く といった応援歌のよう。
(上演時間1時間20分)

せんがわ劇場×桐朋学園芸術短期大学自主上演実習公演
桐朋学園芸術短期大学芸術科演劇専攻
調布市せんがわ劇場(東京都)
2026/07/11 (土) ~ 2026/07/12 (日)公演終了
実演鑑賞
ここ数年、桐朋学園芸術短期大学自主上演実習公演を観ているが、今年は残念ながら1日(2演目)だけ。しかし 未見の作品で潤色しているとは言え 観応え十分。それだけ学生の演出と演技が素晴らしい。
公演は教員の監修のもと、学生が自ら作品を選び 上演する。学士「芸術学(演劇)」取得の審査対象になり、上演作品の映像を独立行政法人大学改革支援・学位授与機構に提出することになっているため、★評価はしない。
●「またここか」(作:坂元裕二 潤色:片野彩加)
●「夢を見る」 (作:石原燃 潤色:小野七実、小野萌香)
(上演時間「またここか」85分 「夢を見る」60分)追記予定

迷妄曲論
藍澤慶子一人芝居
東中野バニラスタジオ(Vanilla Studio)(東京都)
2026/07/07 (火) ~ 2026/07/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
或る女性の小学生から三十代半ば迄、その綴られた日記の舞台化のよう。藍澤慶子さんの一人芝居 そのモノローグは内省と激情の繰り返し。ダイアローグ その姿の見えない相手は衣類という小道具を使って対話する。Kという女性の伝聞というスタイルで語っていくが、実は語っている本人の物語と言う。登場する人物そのものの存在があやふやで、一見 迷妄していくようだが…。早い段階で 性格の欠点が語られるが、そうなった原因は 今 社会問題になっていること。それ以降の彼女の人生に大きな影を落とし生き辛くしている。紆余曲折しながら懸命に生きてきた女、その成長譚のようでもある。
公演の魅力は 勿論 藍澤さんの演技力だが、その熱演を邪魔しない演出が好い。一人複数役を担うが、その情景・状況作りは飽くまで一人。音響はなく 音楽も奏でることなく、最後に一曲流れるだけ。照明も過度な照射はなく 淡く柔らかい光が射す、そんな僅かな諧調のみ。それだけに芝居の中の人物がくっきりと立ち上がる。
(上演時間1時間25分)追記予定

夏のおどり
東京レビュー
浅草花劇場(東京都)
2026/07/09 (木) ~ 2026/07/11 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
魅力的なパフォーマンス。「夏のおどり」ということもあり「南へ!」をキーワードに構成した12演目。日本の沖縄民謡だけではなくブラジルのサンバまで幅広く取り入れており、踊る姿態と衣裳の華やかさは眼福。レビューの魅力は華やかさであるが、幕が下りれば夢(酔い)から醒めたような虚無感、その儚さ潔さが好い。だからこそ踊っている最中は夢中になって観る、その姿を目に焼き付けようとする。
本公演、実はすでに音源がない演目もあり、残っている映像で音源を再現したらしい。そんな努力と苦労が実を結び、ダンサーは熱量と鼓動が共鳴し合い、力強いステップが地響きのように会場を揺らす。個々人の力の調和が「生きている」を主張しているよう。
(上演時間1時間)

煙の汽水域
ムシラセ
小劇場B1(東京都)
2026/07/11 (土) ~ 2026/07/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
人は その時々の状況や環境に対して 抵抗したり受容したりしながら生きている と思う。そんな人の生き方をタイトルにある汽水域として捉えているよう。もっとも その人の本質は変わらないようでもある。
物語はある男の30年間ー20歳・35歳・50歳ーの時々を切り取った話。必ずしも一般的にある状況ではないが、隣の隣 さらにその隣ぐらいにはあるかも知れない、そんな微妙な距離感の設定。時代に応じた三場面だが、薄暗がりの中でキャストだけで場転換している。その無言の人影に時の流れを感じさせる。まさに演出の妙。
公演の魅力は、現実と虚構の境界線上を揺蕩うような描きで、その世界を役者の自然な演技が飄々と紡いでいくところ。淡々としているが何故か生き活きとしており観入ってしまう。台詞にもあるがデジャブ、そこに目に見えない家族(父と息子)の絆というか不思議な縁を感じる。
(上演時間1時間20分)追記予定

おいしいディストピアの作り方
MEMELT
すみだパークシアター倉(東京都)
2026/07/08 (水) ~ 2026/07/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
AIを通して人間とは、その存在の在り方を描いた野心作。テーマを物語の中へ巧みに落とし込んで観(魅)せている。そのエンターテインメント性--櫓状の回転舞台、モニター映像などを駆使し役者の躍動感を巧く演出し立体的に展開していく。AIの功罪を印象付けるため敵国という存在を作り、AIの戦術的利用価値を設定。敵国と時間軸の変化が 何となく臨場感を誘う。一方、もともとAIの使用目的とは…その有用性まで台詞で説明したのは丁寧なのか描きすぎたのか、観客によって好みが分かれるかも。
(上演時間2時間15分 休憩なし)追記予定

野火
世田谷シルク
サンモールスタジオ(東京都)
2026/07/08 (水) ~ 2026/07/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。
小説 原作の力もあろうが、演出とテキレジが秀逸、それを体現する永井秀樹さんの演技が凄い。舞台は敗戦間近のフィリピン・レイテ島、肺病を患った田村一等兵の飢えと孤独を凄絶に描いた力作。いまだ戦争は終わることなく、世界のどこかで勃発し 不安定な状況にある。それだけに80年以上前の最悪な不条理ではなく、今を考える作品といえる。
登場人物を1人にすることで心情表現を際立たせ、同時に語りをすることで客観的というか俯瞰的に眺めているといった感覚。戦争を実体験として知らない後の世代、だからこそ主観と客観を織り交ぜた描き方にリアリティを感じるのでは…少なくとも自分は怖さを覚えた。また信仰は極限(飢餓)状態の人間(精神)を救えるのか、その内なる葛藤も見どころの1つ。
公演の魅力は、小説と違い生身の人間(俳優)が極限状態に置かれた人物を演じ、その心情に迫ろうとするところ。フライヤーの永井さんの表情(頬コケ、無精ひげ等)、その外見から圧倒的な存在感の田村一等兵を立ち上げる。そして ほぼ素舞台を森林・原野のように見立て動き回るさまは狂気そのもの。その姿を効果的な照明と音響・音楽が支えている。
観応え十分、必見の作品。
(上演時間1時間30分) 追記予定

マクガフィンを待ちながら
ゴセキカク
水性(東京都)
2026/06/30 (火) ~ 2026/07/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
近未来の不思議な物語、しかしその奥には人の複雑な思いが見え隠れする。本人とクローン、<記憶>まで受け継いだら そんな複雑で微妙な思いが静かに揺れる。捉え方によっては、クローンを通じて記憶の中にある思(想)い=確執の氷解どころを探しているようだ。案外それが〈マクガフィン〉だったりして。
人の心は得てして多面的で、時々の心境の変化で異なった思いをする。本作は、記憶に謎を絡ませており、登場人物の繋がりに深みを持たせている。この謎が分かったようで分からない、そんな曖昧さが記憶に重なる。
現実には、まだクローンを身近に受け入れていないが、物語では日常の延長として描いている。書類上の手続き等も描かれているが、あくまで〈心情〉を抱きしめた公演。観応えあり。
(上演時間1時間30分)

HUG!!!
ギギ
早稲田小劇場どらま館(東京都)
2026/07/02 (木) ~ 2026/07/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
観る者に媚びを売らず、それでいて飽きさせない 力 のある公演。一瞬 パンクロックのような印象を受けたが、描かれているのは 時の流れに身をゆだねながらも 懸命に生きている若者像。若気の中にチラッと見える気恥ずかしさ、真っ直ぐな情熱の迸りが綯交ぜになったよう。会場に入ると、そこはクラブ(自分世代だとディスコ)の空間、天井には大きなミラーボール、演奏ブースにはDJらしき人物が円盤を回す(ターンテーブル)。重低音が響き、会場が振動しているような錯覚。スモークの中に照明の強烈な明滅、その光景は幻想的でもある。
登場人物は2人、若い俳優の瑞々しさが 観ていて気持ち良い。色々な話を断片的に繋ぎ脈絡があるのか否か、そんな不思議な物語を展開していく。妙なリアリズムが観客の心を捉え、観終わってみればエッジの効いた物語だ。よく動き回るかと思えば、並んで立って接客しているだけ。メリハリのある動/静演技、そしてモノローグ的な表現によって伝える。もう病みつきになる公演。
(上演時間1時間15分 途中休憩3分)

杏仁豆腐のココロ
演劇ユニット「みそじん」
阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)
2026/06/30 (火) ~ 2026/07/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白い、お薦め。
タイトルにある 杏仁豆腐のような柔らかく甘いといった内容ではなく、けっこうシビアでヒリヒリするような印象。説明にもあるようにクリスマス・イヴ、離婚を決めた2人の漂流するような会話劇。物語はどこに辿りつくのか分からないが、離婚する原因が切ない。
脚本の面白さ、演出の巧さ、役者の演技(体現) その総合力が観客の関心を惹き 飽きさせない。最後の夜、思い出すのはどうでもいいことばかり。日常の些細なことから旅行先での出来事、そして身の上話からだんだんと身の下話へ変化し…。会話の流れに 離婚する理由が見え隠れしてくる。
ちなみに 前説が面白い仕掛け。
(上演時間1時間25分)🟠橙チーム