タッキーの観てきた!クチコミ一覧

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せかいをみてくる

せかいをみてくる

アンティークス

小劇場 楽園(東京都)

2026/06/17 (水) ~ 2026/06/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「これから」観劇。
今どんな世界の物語を観させられているのか、その不思議感覚が公演の魅力。どんどん惹き込まれ、最後まで興味が尽きない。2015年杉並演劇祭大賞受賞作、11年ぶりに蘇るアンティークス幻の代表作は見応えがあった。少しネタバレするが、「ただいま」「おかえりなさい」「元気だった」 という何気ない言葉が物語のカギを握る。意識した記憶と或るモノによって覚醒させられた無意識が交差した時、主人公 しのぶ と母 ゆみこ の想いが溢れ出る。

表層的には SFで夢落ちのような印象だが、それとは別に人のいろいろな感情が押し寄せるといった現実の重み。当日パンフにテーマは「旅」とあり、人生を「意識=魂」の旅と仮説したとある。現在(2015年)と過去、その時の繋がり交わりこそが人と人の絆、それが優しくも悲しい、そして残酷だ。
(上演時間1時間35分)【チーム海】㊟ネタバレ

ネタバレBOX

舞台美術は、中央に木製のテーブルと箱馬、入り口の対角線上(角隅)に飾り棚とピアノ。上演前は衣類が散らばっている。飾り棚の上にミニサボテン。

しのぶは就職活動をしているが、うまくいかない。母は そんな娘を明るく元気に励ます。「ただいま」「おかえりなさい」の繰り返し、しのぶ はサボテンに向かって元気だった?と話しかける。とにかく生き生きと活動し 愚痴と慰みが微笑ましい。母と娘2人の家に父と妹と名乗る親子が入り込む。ケケケケという言葉しか発しない奇妙な者、闖入者のように思えたが、母は自然と受け入れる。しのぶは混乱するが、いつの間にか不思議な力に魅入らされている。しのぶの親友 くるみとの交流、父母妹との家族旅行といった穏やかな暮らしを点描する。

お父さんや妹さっちゃんの不思議な力、いつの間にか母が18歳の時代へタイムスリップ。しのぶは 自分が生まれる前の世界を俯瞰している。母から 父は事故死と教えられていたが 実は違う。父と思しき人 学(マナブ)と母は結婚するはずだったが…。ゆみこは眠り病という難病に罹っていることが判明し、一芝居打って自ら別れた。堕胎するつもりだったが、結局は産んで育て始めた(しかも記録用の映像まで撮影)。

ゆみこは記憶障害に陥りながらも、しのぶが18歳になるまで一緒に暮らした。実は しのぶも3年間眠り続けた。眠り病は遺伝し、その間にゆみこは目覚め、しのぶに「おかえりなさい」と話しかけていた。一方、今しのぶは目覚め ゆみこに向かって「ただいま」と。無意識下(眠り)にいる母または娘に向かって交差する想い=記憶の混濁、母と娘の無意識の交信のようなもの。居るのが当たり前と思っている人、その日常がどれほど大切で愛しいことかを痛感する。人の滋味をしっかり味わわせてくれる秀作。

或るモノ=父と妹は、地球人ではなく遠い星からやってきた異星人のよう。自星に戻ることもできず、眠り病⇨記憶障害の(忘れっぽくなった)母=ゆみこの意識下に潜り込み、タイムスリップさせることで、2人の想いを繋ぐ。ピアノの生演奏、照明の絶妙な諧調が情景を支え、心情を印象的に表す。それが魂と魂の共鳴にピッタリな演出になっており見事。
次回公演も楽しみにしております。
隕石

隕石

SPIRAL MOON

「劇」小劇場(東京都)

2026/06/11 (木) ~ 2026/06/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

思(想)いを伝える いや寄り添うといった心温まる物語。冒頭は限界集落からの逃避的な印象だが、その後 不思議な出来事が…。この公演が面白いのは、表層の可笑しさの奥にある哀惜が透けて見えるところ。少しネタバレするが、場面は突然転換し 全然違う話が展開しだす。しかしラストは緩く繋がり余韻を残す。

もう1つの面白さは、眼前で繰り広げられている物語を通して、自分なりの別の物語が立ち上がってくるところ。色々な想像力を掻き立ててくれる好公演。自分の中では「隕石」は比喩、もっとも劇中で隕石が落ちてという台詞があり 大きな音が響くが。隕石は抗えない運命のようなもの、その時 人はどのような選択と判断をするのであろうか。
(上演時間1時間20分)

ネタバレBOX

舞台の後景は白幕、照明効果によって木や枝のシルエット。始めのシーンは やや下手側に木のベンチが1つ。次は中央にテーブル 椅子そして天井に飾り電球1つ。このシンプルな装置は別役実の芝居でよく観られるもので 何となく不条理を連想してしまいそう。

始まりは各駅停車しか停まらない駅舎(ベンチ)。この街で生まれ育った女 榎本が外の街 とりあえず東京へ行ってみたいとやってくる。ベンチには先客(男=駅員)がおり、何故か榎本を街から出ないよう引き留める。いや強硬手段を用いて阻止しようとする。乗ろうとする電車が近づいてきた その時、派手な服を着た男 布袋(自称 税理士)が現れ「遺産相続人に選ばれた」と奇妙なことを言い出す。金品ではなく、出来事の遺産相続、それを体験してほしいという。

場面は変わって、夫婦と夫の兄の3人の会話。妻 幸子が突然 夫 賢二に別れ話を切り出し、兄 健一は傍観している。妻曰く好きな人ができた の一点張り。夫婦の漂流するような別れ話、そのうち 夫が自由の身になることへの喜びを見出す。逆に妻はそれがおもしろくない。兄は自分の病(stage-1 手術)のことが心配で 弟夫婦の会話は二の次。場面は変わり 結局 榎本は或る事情を知り、この街に留まる。さらに痴呆が進んだ奥様が現れ、再び布袋が現れ遺産相続の話へ。

自分の想像は膨らむ。隕石はいろいろな災害(人災も含む)の隠喩で、人は運命に抗うことができない。突然のことで言えなかった思い〈遺産〉を その人に代わってどう伝え〈相続〉るのか。その人が選択したこと、そして記憶に留めること そんな人に寄り添った心温まる物語。同時に、冒頭の場面は限界集落になるという事情だけではなく、その地が掛け替えのないほど大切(見守りを含め)な場所 ということが浮かび上がってくる。人の思いを じんわりと噛みしめる好公演。
次回公演も楽しみにしております。
借金大王

借金大王

中央大学第二演劇研究会

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2026/06/11 (木) ~ 2026/06/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

バブル経済崩壊の20年後、そして今から20年前というから2006年頃の物語。説明にある雇用が安定せず、社会には大きな格差と不安が生まれたことは事実、しかし そこから成長するもの…国は「ギャンブル推進法」を制定し 一発逆転のチャンスは国の支援もあり急速に成長は虚構(貯蓄から投資〈運用〉を推奨するが)。この虚実を巧みに織り込んで展開する。
(上演時間1時間20分)

ネタバレBOX

段差の小さい素舞台、周りは黒い壁や暗幕で全体的に薄暗い。上演前は靴音が響き不気味な雰囲気を醸し出す。物語は総理大臣の国政演説のようなシーンから始まる。

国民の姿を描いているようで、実は国の施策を皮肉っている。国の施策に翻弄される国民、その貧困化はそのまま国力の衰退に繋がり、タイトルにある「借金大王」は国民というよりは国家そのもの。いや借金は後世代へのツケ回しで、その時(現在)だけではなく、未来への負債。そんな世相を切り取った物語。ギャンブル推進を表したパチンコ場面、確変を望むがなかなか こない。そこから地に足をつけた施策への転換。

物語に「運 貸し」というビジネス(ラックバンク)が出てくるが、「運」を「金」に読み替えれば 都合よく貸付、状況が悪くなれば貸し剥がしといったリアルが立ち上がる。それを国政で取り上げるという、まさに運否天賦で茶化すような話。物語で描きたいことは 何となく解るが、表層的で深く切り込めていないのが惜しい。「ギャンブル推進法」や「国民努力評価法」等、言葉(台詞)の裏にある重みが もっと真に迫ればよかった。

演技はオーバーアクションで少し粗く、表現力に難があったのが残念。今までの中大第二演劇研究会の公演は奇知にすぐれて といった印象だが、本作は解りやすいが 有り触れた内容(単純な対立軸)のように思えた。
次回公演も楽しみにしております。
半神

半神

早稲田大学演劇倶楽部

早稲田大学学生会館(東京都)

2026/06/04 (木) ~ 2026/06/07 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

久しぶりの学生演劇。演目「半神」に惹かれて観に行ったが、予想を超える面白さ。勿論 原作/脚本の魅力もあろうが、演出(客席も含め)が面白い。少しネタバレするが、シャム双生児姉妹を通して人の心にある願望というか欲望をあぶり出す物語。姉妹の外面や内面を醜/美や知/痴などで対置させることで、人の心の在りようを描く。生まれた時からいつも一緒、離れることも出来ない。その気持が「孤独」を欲する。しかし 歳月が二人の運命を分つ といった内容。

出ハケを含め 物語の外観を表す動きは十字(縦横の直線)、心情表現はぐるぐる回るような動き、その変化によって物語の状況を分からせる工夫。また姉妹の対比は登場人物の色彩(例えば服や靴など)や可動する対になった木材櫓で表す。櫓は、台詞にある半螺旋階段であり灯台の象徴であろう。その装置を合体したり分離させることで、二人の情況を演出する。
(上演時間1時間50分 休憩なし)追記予定

外のことはわかりません

外のことはわかりません

ポポポ

シアター711(東京都)

2026/06/03 (水) ~ 2026/06/07 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

面白い、お薦め。
間取りという限られた空間を通して、人が大切にし 何を優先したいかを描いた良作。そこに人それぞれの思考、生活様式や社会的な問題を絡め、幅と深みのある物語を立ち上げている。

どうして「子供部屋、いらないです」なのか が肝だが、ラストはその言葉の裏返し(真意)が心に響いてくる。実演では表現し難い場面、それをポポポらしい影絵(手遊び)演出で効果・印象的に観(魅)せる巧さ。
(上演時間1時間50分 休憩なし)追記予定

ツイスト・アンド・対話

ツイスト・アンド・対話

南京豆NAMENAME

シアター風姿花伝(東京都)

2026/05/27 (水) ~ 2026/05/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

ホームシアターで二画面ドラマを観ているような感覚。舞台美術と物語が上手/下手に分かれて(同時)進行する。少しネタバレするが、タイトルにある「ツイスト」が上手で進行する小さな劇場の楽屋裏、「対話」が下手の同棲しているカップル。この2つの物語はラストになって ようやく緩く繋がる。

なぜ2つの物語を交互に描くのか、そこに人間関係の妙が透けて見える。楽屋裏は個性豊かな役者が揃い賑やかだ。どんな芝居をしているのか定かではないが、そこに居る役者の存在こそが重要。役者を通して 時代劇、恋愛劇、アイドルといったジャンルを表し、その多様さが一般的な楽屋を指している。演劇はたとえ一人芝居であっても、スタッフ等 様々な人と関りがある。

下手のカップルは10年以上の付き合い、最近は倦怠期なのか会話も弾まない。日常の淡々とした営み、そこに少し奇妙な話を織り込むことによって刺激と関心を誘う。どちらともなく会話をするための工夫、そこに無理が透けて見える。

楽屋を「動」とすれば、カップルの部屋は「静」になる。人間関係の距離感の難しさ、それを演劇(対比)を通して色々な態様を描いている。また それぞれの笑いの質のようなものも違う。南京豆NAMENAMEの独特の表現方法であり世界観の構築、そこは楽しめた。
(上演時間1時間40分 休憩なし) 追記予定

五十嵐先生

五十嵐先生

コケズンバ

サンモールスタジオ(東京都)

2026/05/26 (火) ~ 2026/05/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い、お薦め。
物語は あらすじの通りだが、話の構成というか構造が秀逸。「スーパー学園コメディ」と謳っているがサスペンス的な要素もあり笑いと緊張といった硬軟ある描き方が上手い。また教師それぞれの立場や人物像を個性豊かに立ち上げ、会議劇の醍醐味を味わわせる。この公演、あらすじ以外を記すると すべてネタバレになりそう。

敢えて記すとすれば 「五十嵐先生」は登場しない。映画「桐島、部活やめるってよ」のように 先生方の会話から五十嵐先生の人物像を連想させる。同時に 不在が謎を深め観客の関心を誘う。また会話を通して先生方の思考ー教職とは といったことが浮き彫りになる。例えば 教頭の個人(男性)的な趣味/趣向と教員としての信条ー生徒の夢を叶える手伝いをすることーのギャップも可笑しさを誘う。ぜひ劇場で…。
(上演時間1時間45分)追記予定

亀と潜水艦

亀と潜水艦

劇団桟敷童子

すみだパークシアター倉(東京都)

2026/05/22 (金) ~ 2026/06/04 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い、お薦め。
1946年夏、日本最大の引揚げ港 博多を舞台に 戦争の哀しき傷跡を描いた物語。 1945年11月に設置された博多引揚援護局から引揚者の一時宿泊施設の協力要請を受けた「萬年荘」、そこに居る人々と二日市保養所から来た女の哀しい出来事を絡めた叙事であり叙情。戦争は特に女、子供といった弱い者を犠牲にした。物語でも望まぬ妊娠をした女性、また登場こそしないが萬年荘の老女たちを通して戦災孤児にも想いを馳せる。

今回の公演は、今まで観てきた公演に比べると光(照明)と響(音楽)が印象的で、心情表現に優れていた。一方 ラストの大掛かりな舞台装置の(動的な)転換は小さい。しかし舞台技術と相俟って表れた光景は、やはり桟敷童子らしい見事なもの。そして何といっても三婆の愛嬌と悲哀といった相反する感情が物語を力強く牽引する。観応え十分。
(上演時間1時間45分 休憩なし)追記予定

じべた

じべた

椿組

小劇場B1(東京都)

2026/05/25 (月) ~ 2026/05/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い、お薦め。
過去でも現在でも未来でもない、しかし いつの時代にも隣り合わせにある 謂わば普遍的ともいえる物語。以前はネジ工場だったが、今は国策に貢献するモノを忸怩たる思いで作っている人々の群像劇。早い段階で、外波山文明 氏が じべた(板)に耳を当て(胎動を感じ)動いていると、その台詞に物語のすべてが集約されている。まさに大地は母であり命の源と言えよう。少しネタバレするが、その象徴がラストシーンに現れ印象付ける。地続きの じべた の上に国があり 街があり 家族がある。そして人の営みがあり人間模様を綴っていく。

物語を支えているのが舞台美術であり、照明や音響/音楽といった舞台技術である。この劇場の二面客席を活かした壁面への映像は、ワイド画面になり迫力を増す。また薄汚れた情景は、状況のそのままであり人の荒んだ心を表しているよう。この工場で働く人々の思考のあれこれが、リアルな感情として迫ってくる。
(上演時間1時間50分 休憩なし)追記予定

空(くう)

空(くう)

空(くう)公演

RAFT(東京都)

2026/05/14 (木) ~ 2026/05/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い。
戦禍を避けるために地下へ逃げ込んだ家族(人間)の業を描いた濃密な朗読劇。朗読だが、台本を持ち小さな動きをすることで状況を補足する。あらすじ にある一家、この家族形態こそが物語のカギ。

少し気になるのが、脚本 蕭勁強(シウ・キンキウ)氏と演出 インディー・チャン氏が当日パンフに共通して「『戦争』の苦しみ」と記しているにも関わらず、人間と戦争そのものの関りに距離があること。勿論、地下という閉塞した状態に追い込んだのは戦争に違いないが、そこから先は家族内での生存をかけた闘い。どちらかと言えば人間の醜悪さが浮き彫りになっていく。タイトル「空」はいろいろな捉え方ができて 言い得て妙。
(上演時間1時間15分) 

ネタバレBOX

客席はⅬ字型。舞台セットは木のベンチとミニ椅子とラジオ。戦争というか内乱による戦禍から逃げるため地下へ。ここはフードセンターの地下であり、わずかではあるが食料(缶詰)が手に入る。その缶詰(サイズ)も時間が経過するに従い、だんだんと小さくなっていく。全体的に昏く地下といった雰囲気が漂い、それが閉塞感を助長している。

初めは兄と弟の2人が隠れていた。後からギターを抱えた女(嫂)、そして父と娘(妹)が加わる。本当の家族ではなく疑似家族として助け合うはずが、いつの間にか食料や水が底をつき、自分が生き延びるため エゴを剝き出しにする。極限状態における人間の醜悪さ と同時に恐ろしさ。(疑似)家族同士で殺し合い、屍の人肉を喰らって生きようとする。そこには常識や倫理等はなく人間の皮を被った獣がいる。こんな状況になるのは「偶然」ではなく「必然」、そこに物語の肝が透けて見える。

兄は元警察官、素性の知れない嫂は流れ者、父と娘は金持と貧困の愛人契約。もともとが歪で脆い人間関係。気になったのが、戦争を背景にしているが、厳密には体制と反乱(むらさき旗)という内戦状態。疑似家族内でも金持や元警官といった体制側、一方 嫂や弟、愛人にならざるを得ない女は反乱側という構図ではなかろうか。閉塞状況にある家族構成こそが戦争(内戦)そのものを生んでいる。

極限状態における人間の恐ろしさを描いているが、持つ者と持たざる者といった階級闘争的な背景をもっと押し出すことで物語の広がりと深みが増したのではないだろうか。最後は出て行った嫂が 若い女性(姪)を連れて帰ってくる。そして空いた天井部から光が差し込んで…そこに将来的な暗示が込められているようだ。ホッとするような物足りないような微妙な印象を残す。タイトルは、空腹であり天井の穴(空)であり、空(希望)を表しているようだ。
次回公演も楽しみにしております。
萼解きの詩

萼解きの詩

Cloche note

北池袋 新生館シアター(東京都)

2026/05/14 (木) ~ 2026/05/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

リアルとフィクションが交錯した世界観。本作は3名のストーリーテラーのエピソードを主宰の倉橋 鈴さんが1つの物語(脚本)にまとめたもの。構成は違和感なく抒情性に溢れていた。少しネタバレするが、 山崎初と菅井彩葉は高校時代の親友 そして初の死によって更に深い(不思議な)結びつきをする。その臨死的な、いわば物語の根幹とも言える設定が弱いようで 惜しい。

海で背中合わせに座っている2人(フライヤーでは立っている)が赤いリボンで結ばれている。同性愛という訳ではないが、ラストに「愛しているよー」と叫ぶシーンは甘酸っぱい青春ドラマのよう。ちなみに初の赤いリボンは「死因」であり「遺品」、彩葉の赤いリボンは「拘束」を意味しているらしい。ストーリーテラーのエピソードに共通しているのは関わり、その繋ぐ想いが切なく紡がれている。タイトル(萼解き=ガクホドキ)は 或る花の形と花言葉 そして想いを象徴しているよう。また思いを伝える古典的手段も微笑ましい。

舞台美術をはじめ衣裳や小物がフワッとした感じ、いわゆる浮遊感が漂うといった印象。そこに現世と来世の狭間、さらに巫女も登場し…。また劇中で歌うシーンが2か所。我が子をあやすために歌う「一番の宝物」(遥佳ver)と彩葉が初のために作詞した歌「一番の宝物」をアイドル結珠が歌う。その歌シーンはもう少し力がほしいかな。
(上演時間2時間 休憩なし)🥀…金井明日佳出演回 

ネタバレBOX

舞台美術は、暗幕に何枚かの白紗幕、そして客席寄りに大きさの違う岩の腰掛が2つ。きれいな花びらが一面に。浮遊感はこの世とあの世の狭間であり海を表している。それは照明の色彩と音響の効果によって一層際立つ。

話の1つは、高校時代の親友 初と彩葉はいつも一緒にいる。初は家族崩壊を苦に自殺し、その魂は彩葉の魂をも縛り付けて離さない。フライヤーにあるリボンで結ばれた2人の姿、人の心は複雑で 時に自分自身をも翻弄する。2つ目はアイドルに憧れているが、自分なんか と自己肯定感の低い斎藤麗世と彼女を応援したい母 遥佳のちょっとした確執。母としては平凡で安定した職に就いてほしいと内心思っている。3つ目は麗世が所属したグループの先輩が自分のアイドル価値に見切りをつけて辞める。自分とファンが求めるモノ、その需要と供給が一致しなくなった。

不思議な話が、奇妙に結びつき 夫々が前に歩み出そうとする。ファンタジーでありリアルでもある、共通しているのは人の思い。初が持っているのは菖蒲の花、その萼は花(相手)の自由を縛り付けるよう。死者の想いが生者の生き方(自由)を束縛するという暗示。2人が生きている時、海で拾った空き瓶、その中に未来へ向けて手紙を入れる。ベタな青春ドラマのようだが、ラストの朗読シーンは、時を超えて届いた手紙が繋ぐ切なくて温かい友情そして家族の物語へ昇華。
次回公演も楽しみにしております。
優しい劇団の大恋愛 Volume11『もっと愛してくれよ節』

優しい劇団の大恋愛 Volume11『もっと愛してくれよ節』

優しい劇団

吉祥寺シアター(東京都)

2026/05/10 (日) ~ 2026/05/10 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

前日の「夕焼け色のダイダラボッチ」が過去と現在を描いているとすれば、本作「もっと愛してくれよ節」は未来を描いている。優しい劇団 初の時代劇と謳っているが、登場人物の名前や衣裳がそれらしいだけで、あまり時代劇(情緒)という雰囲気はない。むしろ 劇団の特長でもあるスピードとパワフルさを活かして力強く紡ぐ。物語は、2人ずつ9組(それに瓦売りのばんちゃんと戯作者を加えた全20名)がそれぞれの愛を語らうという形で展開していく。

冒頭、出演者がそれぞれ「たまや(玉屋)~」と叫び 上(空)を見上げる。なぜ夜空に輝く星々があるのに、一瞬で消えてしまう花火を打ち上げるのか。それが地球(平賀源内が登場するから江戸時代のようだが、あまり時代は関係ない)のみならず宇宙という壮大な世界と結び繋がっていく。星は 遥か昔の光が 今地球で輝いて見える。花火だって 今は一瞬で消えるが、何十年、何百年もっと先の時代で一瞬の輝きが見えるかも…。愛だってその時代に結ばれなくても、遠い将来にまた出会い愛するかもしれない。

前作同様「出演者の顔合わせから本番まで、出会いと別れを一日で行う「大恋愛」シリーズ」、その謳い文句のような言葉「たった一日しか会えないあなたを想って書いた 愛の言葉の弾丸が心臓を撃ち抜く‼」。舞台構成と演技の観(魅)せ方は、基本的に同じだが、設定(時代)と役者陣が違うと やはり全然違った雰囲気になる。役者の演技力や魅力を十二分に引き出す演出はみごと。自分は本作のほうが好み。
(上演時間1時間30分 休憩なし)追記予定

優しい劇団の大恋愛 Volume10『夕焼け色のダイダラボッチ』

優しい劇団の大恋愛 Volume10『夕焼け色のダイダラボッチ』

優しい劇団

吉祥寺シアター(東京都)

2026/05/09 (土) ~ 2026/05/09 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

武蔵野演劇祭2026参加作品。優しい劇団公演は、2024年 高円寺K'sスタジオ本館で「歌っておくれよ、マウンテン」を観たのが初めて。上演スタイルは基本 舞台の建込みはせず、照明は持運び出来るキャンプ用のライト、音響/音楽も持運び出来るスピーカーで行う。今回の吉祥寺シアターでも同じだが、会場の広さが違うためキャスト陣の演技(動き)もダイナミックに観える。名古屋の劇団で 主宰(尾﨑優人 氏)が 事前に台本を送付し、役者は個々人で稽古をし、公演日朝に顔合わせ、稽古そして本番を迎え、当日のうちに撤収するという慌ただしさ。

物語は 覚えていないくらい久しぶりの同窓会、そこに集まった人々の回顧や郷愁、それを2人ずつ8組(それに花配りと合唱部長の2人を加えた全18名)の人間模様として紡ぐ。学校での出会いと別れ、それを 舞台という その日限りの出会い(役者は勿論、観客との一期一会)に準えているよう。この大恋愛シリーズは「演劇の持つ出会いと別れの成分を凝縮したその日限りの演劇作品」をしっかり体現している。

ちなみに同窓会は過去と現在で、未来はどうなるのか。ラストは、タイトル「夕焼け色のダイダラボッチ」に思いを込めているよう。夕焼け…昼と夜の境のわずかな時間、それを愛おしむようであり少し寂しい感じの中、人の影が伸び…。未来は予測不可能、その得体の知れない不安をダイダラボッチという巨人の影で象徴しているようだ。
(上演時間1時間30分 休憩なし)追記予定

朗読劇『もしも8才の子供が大統領になったら』

朗読劇『もしも8才の子供が大統領になったら』

スリービッツ

サンモールスタジオ(東京都)

2026/05/07 (木) ~ 2026/05/10 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い、お薦め。
朗読としての力、滑舌がよく発音もしっかりしているから聴きやすい。その明瞭さが物語を立ち上げ 面白さをしっかり伝えている。物語のようになったらいいな という願望が込められた公演のようでもある。話の魅力は、当日パンフにも書かれているが、「原作『こどもの大統領』が産声を上げてから、二十余年の歳月が流れました。しかし、この物語が内包するメッセージは色あせるどころか、混迷を極める現代において、より一層の輝きと新たな示唆を私たちに与えてくれます」と、この文に尽きる。まさに8才の子供と軍人や政治家の大人が対話する場面が肝。子供と大人の「議論」ではなく、子供の素朴な「疑問」が「戦争と平和」の在り方を浮き彫りにしていく。ラスト、8才の子供が どうして「この国の軍隊を全部無くしまーす」という発想になったのかが明らかになる。

少しネタバレするが、大統領になった男の子の母親が「人間の諍いが戦争を起こす」という。人は成長するにしたがい建前や柵(シガラミ)、そして欲望や思惑が…。なぜ軍隊が必要なのか、その公益は何かを大統領に説明するが、逆に 人を傷つけたいのか、復讐という負の連鎖が断ち切れない といった非情を思い知らされる。大人は理論武装をするため、往々にして小難しい論理や理屈を持ち出す。しかし子供の素朴で率直な疑問と意見は、問題の核心を突く。

物語の中で 隣国では、タチツトット国が軍隊を解散した真意を知りたく諜報活動(スパイが登場)をしているが、本心だから裏事情はつかめない。今国会では「国家情報局」に係る議論がされ、時代が追い付いてきたといった感じだ。まさに時宜を得た公演といえよう。なお、朗読劇であるが、照明や音響での効果付け、そして最後は出演者全員での合唱。物語の骨太なテーマを舞台技術で魅せるのも上手い。
(上演時間1時間5分)追記予定

「エイリアンは嘘をつかない」「Rは決して爪を噛まない」

「エイリアンは嘘をつかない」「Rは決して爪を噛まない」

かーんず企画

シアター711(東京都)

2026/05/02 (土) ~ 2026/05/06 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「エイリアンは嘘をつかない」観劇。
人の本音と建前、それをホントとウソに置き替えたら、関係性の中で滑稽に生きている人間の姿が浮かび上がってくる。表裏があるのが人間ならば、事実という表面 上っ面しか見ていない宇宙人は…。日常の空間に何気なく入ってくるSF的な話。自称 宇宙人、その存在を直ぐには信じられない人々、しかし不思議な出来事を見せつけられ といった物語。

BAR店内が舞台、常連客が知り合ったばかりの男(宇宙人ならば性別はないかも)を連れてきた。その男は自分は異星人だと言い出す。初めのうちは誰も信じなかったが、自分は時間を制御できるという。そのうち半信半疑になり、客たちは己の欲望を剝き出しにしていく。そこには本音もあれば建前もあり、複雑な人間模様が立ち上がる。

一方、異星人は そんな人間の醜悪さに嫌気がさすが、すべて金で願い事を請け負う。自分の星では、みな平等で貧富の差はなく平和に暮らしていると。地球は臭い というからには環境も優れているよう。異星人(エイリアン)はウソをつかないと言うが、なぜ文明や科学が発達した星から地球へ来たのか。それは 彼を追ってきた同じ星のエイリアンが説明する。地球人の心根の優しさに心打たれたかのようだが、実際 接してみると…。
(上演時間1時間10分)

ネタバレBOX

舞台美術は、上手奥にBARカウンターと椅子2脚、客席寄りに幾つかの箱馬があるだけ。この店は午後6時開店、その前に何度も訪ねてくる客、誰かを捜しているよう。

BARのママは高級酒瓶に安酒を入れる強かさ。常連客の大学院生は指導教授を伴って来店。媚びて大学講師への推薦を企んでいる。仕事熱心な女性客、その彼女と付き合いたい男の下心。その男が知り合ったばかりの人を連れてきた。また 後々わかるが教授の妻もいる。人間、何らかの欲望を抱いており本音と建前を使い分けて上手く世渡りしている。連れてこられた男、常連客に向かって 自分は宇宙人だと言い出したことから混乱した状況へ。

自星に比べれば地球の文明や科学は遅れている。自分は光を超える速さ、時間を制御出来るという。買い物も瞬時に行って帰ってくる。皆 半信半疑が 本当かもと信じだす。そして自分の欲望を剥き出しにする。ママは若返り往年の美貌を取り戻したい。大学院生は講師へ、そして異星人を連れてきた男は仕事熱心な女性と付き合えるようにと…。異星人曰く、いくら支払うのか といった金を要求する。異星人も地球人も欲の皮は突っ張ている。

冒頭、開店前に現れていた男は、異星人と同じ星から彼を捜しにやってきた。地球人は心根が優しい。例えば、沈没しそうな船 自分が残り女性を助ける。また隕石から地球を守るといった勇気ある行動を挙げる。常連客は一斉に 映画「タイタニック」「アルマゲドン」じゃないか と呆れる。どんなに文明や科学が発達しても、地球人の表面(虚像)しか見ていないといったオチ。同時に、異星人を通して 滑稽だがリアルな人間の生態が浮かび上がる。そして夢から醒めたように 何事もなかったかのように日常へ戻っていく。
とてもシュールな印象。次回公演も楽しみにしております。
劇的

劇的

ポッキリくれよんズ

浅草九劇(東京都)

2026/05/01 (金) ~ 2026/05/05 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

面白い、お薦め。
説明にある通り、吉村家の葬儀というノンフィクションをフィクションとして、劇中劇仕立てのように展開させる物語。公演の魅力は、葬儀に参列した人々の利害と思惑を緊密な関係と緊張した雰囲気の中で紡いでいくところ。しかも地方都市という設定から、その土地柄の特殊性を垣間見せ親族以外の者も親戚のように意見を述べる。遠くの親戚より近くの他人 を思い出す。さらに 葬儀の内容を 後々劇公演にしたいと目論む第三者(演出家)が、心情表現の深堀のため 親族への質問という形で物語を補足する。

事故のことを知るという来訪者、その者の出現によって葬儀の場だんだんと乱されていく。その者の真の狙いは何か、その思惑は達せられるのか といった不気味さに目が離せない。感情を押し殺し淡々と話す、それは葬儀の場に相応しいが、一方では不穏な様相を呈している。親族(いとこ)ということもあり名字が同じ、そのため名前で呼び合うので、関係性を把握するまで煩わしい。

舞台美術が秀逸で、柱だけで家(居間)の骨格を現し、隙間のある空間は親族の関係性そのものを表しているよう。そして後々の舞台公演として観せる構図にもなっている。ほとんどが この居間での濃密な会話で、次から次に知らなかった事実が明らかになる、その意味ではサスペンス劇といった要素も漂う。この居間の雰囲気とは対照的なのが、二階部を使った屋外の会話。気の置けないざっくばらんな話こそ本音のよう。この硬軟ある描き方にリアリティを感じる。
(上演時間1時間40分 休憩なし)追記予定

パズル2026

パズル2026

A.R.P

ウッディシアター中目黒(東京都)

2026/04/22 (水) ~ 2026/04/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い、千穐楽観劇。
物語は、いくつかの場面をピースとして はめ込むような展開で、まさしくタイトル「パズル」である。例えば、後方モニターに「権謀術数」「疑心暗鬼」等の文字が映され、そのイメージシーンがカット割りというか繋ぎ合わせのように描かれる。それぞれが独立して描かれるが、これがどう収斂されていくのか、実に巧い導入である。舞台セットや台詞から後々重要な関連が…そんな関心を抱かせる巧さ。

登場人物をパズルのピースと考えれば、誰が欠けても成り立たない。誰もが主役であり脇役、だからこそ立場や性格付けを最初からしっかり説明している。すぐ驚いて失神したり、思ったことは遠慮なく言ってしまう など人物の特徴が描かれる。物語はカット割りのような展開だが、体感的には一気に観(魅)せるといった面白さ可笑しさ。まさにコメディとしての醍醐味がしっかり味わえる笑作、いや秀作である。
(上演時間1時間35分) 

ネタバレBOX

舞台は 画廊喫茶店内。上手奥にカウンターと腰高スツール、中央に店奥への出入り口、下手と客席寄りに丸テーブルと椅子が3組。壁にはいろいろな絵画が飾られ、ほぼ中央にスクリーン代わりの絵。この配置や絵にも物語上 重要な意味がある。

物語は この喫茶店で二組の客が話している。一組は恋人同士、もう一組は夫婦。恋人同士の語らい、男が資金繰りに困り 女(銀行員)が援助しようとしている。実は男は結婚詐欺師。夫婦は 後々分かるが子供が心臓病で大金が必要。結婚詐欺師には鑑定を仕事にしている彼女がおり 真剣に結婚を考えている。騙されている女の元夫は刑事(主任)で、結婚詐欺師を追っている。金の受け渡し、その現行犯として逮捕を…。一方 yu-tyu-baとして面白企画を考えているメンバーも喫茶店におり、それぞれの思惑が思わぬ方向で絡み合う。

店のマスター、従業員とその友達(臨時店員)などが接客を通して人間観察をするような言動と行動。内緒にしていること、特長・得意など 面白可笑しいネタを仕込み、次々に回収していく。例えば、臨時店員は空手の達人(黒帯)といったことを何気なく説明していたが、結婚詐欺師が逃走しようと店内を出たとたん、ヨロヨロと戻ってきた。買い物に出かけていた臨時店員が襲い掛かってきたと勘違いし正拳突きをしたと。一瞬なんでと思ったが、彼女の姿を見て合点。細かいところにも工夫を凝らす。

観客を飽きさせない、非現実(虚構)と解っていても物語の中へ引き込まれる没入感。その心地良さが この公演の魅力。次回公演も楽しみにしております。
リバースデイ騎士

リバースデイ騎士

無頼組合

オメガ東京(東京都)

2026/04/23 (木) ~ 2026/04/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

面白い、お薦め。
人気の「騎士(ナイト」)シリーズの番外続編公演として復活。このシリーズは、架空の都市(サウスベイシティ)を疾走するような早いテンポで進む。そこには鋭い社会性、それに挑む愛すべきキャラクターが生き活きと活躍し娯楽性に富んでおり、多くのファンを魅了してきた。6年ぶりの公演だが、その面白さは健在で観客を飽きさせない。
(上演時間1時間55分)

ネタバレBOX

この都市は 殺伐・退廃したイメージを持たせているが、一方 その佇まいのようなものはスタイリッシュ、洗練されているという感じもある。そんな混沌とした街で探偵業を営んでいる。

舞台はほぼ素舞台。シーンによって 探偵事務所の机やBarのソファなど簡易な調度品を運び込み場面を分かり易く作る。全体が走り回るようなアクションシーンであることから、ある程度のスペースを確保しておく必要がある。その情景・状況は役者の演技で体現しており、緩急ある動きは思索とアクションというメリハリを表している。

冒頭 風吹淳平(シラカワ タカシサン)が別の場所(あの世)からサウスベイシティを俯瞰しているところから始まる。今 リバース探偵社所長は柊ジロー(シラカワ サン二役)、淳平と同様 非合法な仕事以外は何でも引き受ける。話の展開は次元や時間を越えることなく、”今”という時の中で描かれる。それだけに分かり易いし ストーリーに集中できる。騎士シリーズファイナルで 大切な人と場所を失う悲しさ、それでも鶴田紅(小川直美サン=元風吹探偵事務所所長)は 淳平から「死にたくなるような孤独を乗り越えて生きていけ!」と励まされていた。その応援歌のようなセリフが心に響たものだ。その紅が 弟のような五代銀次(滝沢 信サン)と一緒にリバース探偵事務所に雇われて 今作の事件に関わっていく。上手く引き継ぎ 繋げている。

リバース探偵社に持ち込まれる、又は巻き込まれる事件をサスペンス/アクションとして観(魅)せていく。今回は この街を裏から支配している組織との対決。暴くための証拠は「黒革の手帖」にある。松本清張の同名小説を思わせるようだが、公演はピカレスクではなく、ヒューマンドラマとして展開する。黒幕は意外な人物であるが、その心情は自身の過去も含め 人材のサルベージに資するもの。コロナ禍を経て、6年ぶりの復活公演。演劇だけではなく多くの文化活動に影響が出た感染症、その逆境からの脱出が本公演のよう。リバース探偵社は、立ちはだかる奇妙な価値観や規範に抗い、時代の波に揉まれながらも活躍していきそう。
次回公演も楽しみにしております。
おにぎり

おにぎり

Antikame?

雑遊(東京都)

2026/04/22 (水) ~ 2026/04/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

【こんぶ】観劇、面白い。
新旧2作品×3公演 すべて観たが、その印象は 時々の時代背景を映しながら、人間を見つめ寄り添った優しい眼差しを描いているようだ。脚本の芯が おにぎりの具材だとすれば、その握り加減は演出であり役者の演技ではなかろうか。固く握ればシリアス調、緩く握ればコメディ調、そんな単純ではないだろうが…。勿論 その時 観る客の心境や状況によって印象が違うだろう。そう感じるのは、【おかか】で観た「背中を向ける」は、別公演で観たことがあるから。

さて、今作の「うらなえないし」と「わたし、笑える」は都会暮らしの女性の淋しさ侘しさが じわっと伝わってくる。

「うらなえないし」は、占い師(男)と客(女)の二人芝居。薄暗い中に「占い」と書かれた行灯が灯る。2人はミニ椅子に座り向き合っている。シンプルな舞台セットといい、何となく別役 実の舞台世界のような雰囲気だが、けっして不条理ではなく 仄々とした温かい空気が流れるよう。雨が降り出した地べたに 女性が突っ伏すように寝転び はしゃぎ出す。まるで青春映画のワンシーンを見るようだ。

「わたし、笑える」は、当日配付したペーパーに「Antikame? でこのような演劇を扱うことは今後もないでしょう」とあり、幻の作品になってしまうのか?⇒それだったら惜しい。コロナ禍から急速に流行りだしたウーバーイーツ、人との接触を避け 利便性を求めた仕事だったと思う。今作では 人との出会いや縁がなく 繋がることが少ない独身女性の滑稽な思いをリアルに描いている。
(上演時間1時間10分) 

ネタバレBOX

●「うらなえないし」
宇都宮のギョーザ会社に勤めている素人占い師。週末だけ占い師をやっており、以前 占った女性の鑑定評判が良かったことから、その女性がまた来た。占い師はノート(占いKNOW-HOW本?)と女性の手相を見比べ悪戦苦闘、占い始めて3時間になろうとしていた。女は彼氏に振られ淋しくヤケにもなっている。会話の間(ま)と洒脱な台詞が実によい。

突然雨が降り出し、占い師は傘を差しだすが、女は地べたに突っ伏して転がる。青春映画などで雨の中で といった甘酸っぱいシーンを見たことがあるが、今作では戯れであり自暴自棄といった印象のシーン。小雨になり 女は男(占い師)を誘惑するような口ぶり。男に向かって結婚しているの? 男はしばらく無言…恋の駆け引きのようであるが、刹那的でもある。唐突に男は女をおんぶして歩き出すが、その行先は…。

●「わたし、笑える」
独身女性がウーバーイーツを利用して、配達員(男)とちょっとした会話を楽しむ。好みの男性が届けてくれるのを心待ちにする。大人の女性が少女のようなトキめき。舞台は女性の部屋に見立て、配達員は オートロックを解除してもらい、周り(廊下)を回って女性の部屋の前、そのシンプルな動作の中に ありふれた日常が垣間見える。独身女性の友達は呆れているが、淋しさを紛らわすには必要、その便利=割切感が現代的だ。また健気で切実さがリアルに映る。

当日配付ペーパーには「オーディションから起用した俳優さんに向けて、ヒトとの繋がり方の現代的な不気味さを描こうと」とある。人間関係の築き方は、(対面の)コミュニケーションが大切だと思うが、今はインターネット等を通じて非対面の交流も盛ん。コロナ禍が人との物理的な距離だけではなく、精神(心)的な隔たりも出来てしまったかのよう。その意味では不気味さ=無関心・不寛容といった疎外感が表れた物語。乾いた環境から潤いのある繋がりを求めて…。
次回公演も楽しみにしております。
おにぎり

おにぎり

Antikame?

雑遊(東京都)

2026/04/22 (水) ~ 2026/04/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

【おかか】観劇、面白い。
ぼぼ素舞台、しかし作品によって異なる空間を演出する驚きと面白さ。「背中をむける」(2023) と「中間的、に於いて」(新作)は、その舞台となる場所(空間)と向き合う人の距離感が対照的、そして時代的なものが浮かび上がる。一周まわって主張する奥深さ!ーハザマと向き合う—とは何か?

少しネタバレするが、「背中をむける」は大学教授と教え子の濃密(蜜)な会話を通して危険な関係が漂い始める。そして その教え子の妹が教授に向かって…。「中間的、に於いて」は街中もしくは駅のホームという大勢の人が行き交うが皆無言。ただ歩き 初対面の待ち人を捜しているよう。敢えて比べるとすれば、教授の部屋という或る密室空間、一方 街の中という開放的空間が巧みに立ち上がる。
(上演時間1時間10分) 

ネタバレBOX

●「背中をむける」(2023年)
教授と教え子の ただならぬ関係を匂わす、そこに優越的な地位を利用したセクハラ問題があることは すぐ解る。しかし地位や立場を抜きにすれば、男と女、そして年齢の違いがあるだけ。2人の付かず離れずの言葉遊びのような会話が面白い。そして教え子の妹が現れ、教授を告発すると半ば脅しにかかる。教授と姉の熱い対話、一方 妹とは冷たい会話、同じ話し合いでも状況によって全然違う光景が見えてくる。

「Sign of the times」の公演で観た時と全然違った印象、それは姉妹の関係による。今回は姉妹という関係があまり感じられなく、それぞれの女優が姉と妹を演じているよう。同じ物語でも演出と演者が違うと また違った味わいになる、そこに演劇の一期一会といった醍醐味を感じた。

●「中間的、に於いて」(新作)
無言(劇)、それでもドラマは立ち上がる。音響によって街中の騒めきや駅ホームの放送案内が聞こえる。場所が重要なのではなく、そこに行き交う人々の(無)関係が絶妙に描かれていること。歩く人は誰かを探しているのか、待ち合わせているかのよう。スマホを手に持っており、人と繋がっているようで 実は孤独といった都会事情が透けて見えてくる。

当日配付のペーパーには「抽象的、実験的な演劇で、思索を促すもの」とある。演劇は必ずしも視覚だけではなく、聴覚(例えば朗読劇など)に訴える表現もある。その意味では無言劇という表現もあり得る。映画でいえばサイレントムービーで、そこで映さ(描か)れる物語は、奇妙・奇抜であっても楽しめる。自分の中では、きわめて現代的な しかも大都会といった光景がリアルに描かれていた と思う。今、街には声が溢れている、しかしお互いの声は届いているのだろうか?実にシュールだ。
次回「こんぶ」公演も楽しみにしております。

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