film 9
パフォーマンスユニットcoin
シアター・バビロンの流れのほとりにて(東京都)
2026/02/13 (金) ~ 2026/02/15 (日)上演中
予約受付中
実演鑑賞
満足度★★★★
面白い。
表情と身体表現のダンスパフォーマンスだけだが、そこに自分なりの物語性を想像することが出来る、そこが魅力の公演。自分の内で物語が自由に膨らんでいく心地良さ。まさに「踊りで物語を紡ぐイマーシブ・ダンスショー」の謳い文句にふさわしい。前作「東京夜行」が素晴らしかったが、今作も観応え十分。
チラシとタイトルから映像(記憶や記録等)をモチーフにしたイマーシブ・ダンスショーを思い描いていた。確かにその通りのような気がするが、さらにダンスの形態そのものが物語に組み込まれている、いわば劇中劇のような表現になっている と感じた。
(上演時間1時間15分 休憩なし)
ネタバレBOX
会場入口側が正面、その左右にも客席を配した三面客席。正面奥には平台、上手奥にも別平台を設え、中央にアクティングスペース。正面右側にテーブル、収納BOXや飾棚があり、至る所にポストカードが吊るされている。下手の壁に「ナイン座」のプレート。
全体的に昏いが ダンサーの衣裳はデザイン違いの白色系で統一。人によってはグレー系格子状のワンポイント飾りを着けている。前作も色彩に拘っていたが、本作も同様。ラスト、この配色によって或る世界観を連想したが…。
始めは6人での群舞、お披露目的な意味合いもあるだろう。それから単独もしくは複数人によるダンスだが、それがクラシックバレエ・ソーシャルダンス・ダップダンスそしてコンテンポラリーダンス等といった多彩な形態で踊る。その度 衣裳を変えるが、基本は白・黒・灰の3色彩。
タイトルから 既成の8㍉filmとは違った「9film」という独自の世界を描いているのだろうか。「ナイン座」というホールもしくはショークラブといった所が舞台。始めの群舞は賑やかな頃のイメージ、それから各自のダンスはそれぞれがショーで踊っていた頃の想いを込める。何となくウエスト・サイド・ストーリーを連想させるようなダンスもある。すべてのダンスシーンに音楽/音響が寄り添うように奏でられる。その活躍は 今は昔、寂れ廃れた追憶に過ぎない。吹き荒ぶ風のような音、それが荒涼感を表している。
ラスト、7人目のダンサー(演出兼任の阿部さくらサン)が現れ 夜空に見えない星があることも忘れないでほしい といった言葉。ちなみにダンサーはノンバーバルコミュニケーションであるが、時々 詩の朗読が挿入される。衣裳の白は生、黒は死、灰は生死の狭間をイメージ。昏い中で白衣裳で等間隔に横並びすると鯨幕のよう。
物語は 踊っていた若かりし頃、それがfilmに刻まれた記録と追憶になっている。皆が灰色のワンポイント飾りを外し舞台に置く、その行為はこの世(未練)と決別し昇華していくような清々しさ。人や物に永遠はなく、いずれ死や廃がくるが、他の人の中に思い出として生きる。それが見えない星のことを忘れないでに繋がるのでは…。舞台という視覚に訴える物語(虚構性)とは違ってダンスを通して、想像するという楽しみを味合わせてくれた好公演。
次回公演も楽しみにしております。
アオイの花
“STRAYDOG”
サンモールスタジオ(東京都)
2026/02/11 (水) ~ 2026/02/15 (日)上演中
予約受付中
実演鑑賞
満足度★★★★
面白い、お薦め。
理屈ではなく感情に強く訴える公演。内容的には重く苦しいが、舞台としては面白く観応え十分。物語は説明にある通り、いつもと変わらない日常が、突然1人の少年によって奪われる。「通り魔事件」に遭った女の子が娘・アオイ(=愛生)だった。生死を彷徨うアオイを家族は必死に看病するが、彼女は10年という短い人生に幕を閉じる というもの。
物語は、アオイが生きていた頃の平穏で幸せな日々と 亡くなってからの家族の悲しみ。さらに家族を取り巻く人々と(社会)状況、そのありがちなコトを点描し長い年月(12年、アオイの十三回忌迄)を紡ぐ。アオイが遺した思い、それを残された家族1人ひとりが、再び「真に生きること」に向かい合うまでを描いた感動作。それを“STRAYDOG”らしい歌(合唱等)やダンス、さらにヘルマン・ヘッセの名言を織り込むことで、叙情豊かな仕上がりになっている。
少しネタバレするが、上演前から数名のキャストが舞台上におり、次々に客席通路を通ってメンバーが集まりだす。皆が揃った光景は稽古場(楽屋裏)---メタフィクションイメージ、そしてその場で配役等を決め本編へ といった演出で始まる。冗談を言い合う素顔から役者(プロ)の顔へ、その和気藹々とした雰囲気が変転していく驚き。その雰囲気の落差が そのまま感情の大きな振れ幅になっていくよう。
(上演時間1時間50分 休憩なし)追記予定
迷光、あるいは、残照。
風雷紡
小劇場 楽園(東京都)
2026/02/11 (水) ~ 2026/02/15 (日)上演中
予約受付中
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。
心地良い緊張と緊迫感に溢れたサスペンス劇。説明にある「児童誘拐容疑で逮捕された箒木美津子、警察から精神鑑定を依頼される若き精神科医速水ひかる」を中心に物語は展開するが、登場する1人ひとりにも何らかの苦悩や葛藤を背負わせることによって解離性同一性障害という特殊性を浮き彫りにする。彼女の中で源氏物語に登場する姫達の立ち位置や性格などを多重人格の様相に重ね、照明と音響を巧みに使って人格変化を表す。
少しネタバレするが、事件を始め人々の背景にある心の深淵、その伏線をすべて明解に回収するのではなく余白というか余韻に浸らせるような紡ぎ方が好い。すべてが解明しきれるわけではない心の病、どうして解離性同一性障害を発症することになったのか という原因や過程をサスペンスとして観せつつ、根底にはヒューマンドラマが息衝いている。
劇場 楽園には中央に柱があり、それをどう使うかといった演出が試されるところだが、本作では 過去の記憶や情愛を表しつつ、現在の別空間を表現し表出させる妙。
(上演時間1時間55分 休憩なし)追記予定
ハッピーハードラック
sitcomLab
恵比寿・エコー劇場(東京都)
2026/02/11 (水) ~ 2026/02/15 (日)上演中
実演鑑賞
満足度★★★★
面白い。
受付スタッフの言葉を借りれば「イベント」公演になり、そのハプニング要素も含め 自分的には予想外に楽しめた。
表面的には、説明にあるように カリスマアーティスト---T2の自宅のリビングで、彼を取り巻く様々な人たちが怒涛の勘違いやすれ違いで巻き起こるスラップスティック・コメディ。しかし その裏に隠された人間的な、それもアーティストらしい苦悩や葛藤を吐露する。そこに薬物疑惑の真相も絡んでくる。その表裏一体となった可笑しさ、人間臭さが公演の魅力を倍加させている。
(上演時間1時間30分 休憩なし)追記予定
ネタバレBOX
舞台美術…T2の自宅のリビング、全体がオフホワイトで明るい。中央に大きな応接セット、上手に段差が設えてありT2の寝室への扉。その壁には3本のエレキギター。下手奥には横長の藍色幕。いくつか使われない装飾(例えば 中央壁の絵画風のオブジェ等)もあるが、同時上演中の「幻のイントルーダー」で使うのかと想像したり…。シンプルな造作であるが、ドタバタというアクションスペースを確保するため。
「イベント」公演というのは、ユッコ役の日永麗サンが体調不良になり、作/演出の佐野瑞樹サンが台本を持ち代役を担う。自虐のように おっさんの姿のまま 野太い声で登場すると説明、その通りで登場するが 一応可愛らしくバブーシュカ風透かし編帽子を被っている。劇中ハプニングらしきこともあったようだが、それはそれで楽しめる。まさに演劇というライブ感の醍醐味。
~以降 追記予定~
少年少女
あわぷれ
新宿眼科画廊(東京都)
2026/02/06 (金) ~ 2026/02/10 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白い、お薦め。
ありそうな情況の中でフッと陥る人間の寂しさ 孤独、それを笑いを交えて描いた珠玉作。
あわぷれ の旗揚げ公演(作品)であるが、先日の「若手演出家コンクール2025」の最終候補作(優秀賞受賞者)の1つで、前後しての上演になっている。
上演時間が短く、ワンシチュエーションにも関わらず 男女2人の面白おかしい会話の中に強烈な癒しを感じる。少しネタバレするが、冒頭 女がスマホを打ちながら独り言を言う、それによって瞬時に情況が解る。そして説明にある宅配業者の男との奇妙な触れ合い?が見所。
(上演時間30分)
ネタバレBOX
舞台は3面客席。会場入口と反対側、壁側面に沿って2列。壁側客席から見るとベット、ソファとミニテーブルが置かれ、服やゴミが散らかり雑然としている。その乱れが 女の心を表しているよう。
暗がりの中、スマホの液晶光だけで女の顔が浮き上がる。30歳 ニート 処女 (パチンコ)ギャンブル好き 借金300万、そして母一人…ずっと母一人だったがその母が昨日亡くなった。女がブツブツ物悲しい独り言を言っている。そこへ宅配業者(男)がやってくる。女の首に太い輪ゴムが巻き付いている。自殺しようとしたが 輪ゴムが足りなくアマゾンで購入(936円)した。この状況を男に話 代金を払ったが、男はとっさに1円を隠し935円しかないと言い掛かりをつける。
女にもう金が無く、男に(金を)負けろ とか1円を貸せと迫るが…。女の繰り言に対し 男も3か月前迄は引き籠り それも17年間。もちろん童貞。どちらが不幸なのか競い合っているような可笑しみ。男は突然 女を飲みに誘う。あなたは「タイプなんです」。そして女の顔をビンタする。女の痛いという言葉に反応して、「痛い」と思うのは生きたい証だという。ほんとうに死にたいのか自分に向き合うように言い、それを宿題とし1円の支払いを猶予した。
1人の女が自分のことを話しているだけ、それなのに一気に引き込まれてしまう面白さ。孤独な空間に放たれる言葉は同情を誘わず、むしろ傷だらけになっても何とかなる。そんな開き直りを温かい眼差しを持って描いている。この作品は魂を救済する。ラストの余韻が見事!
次回公演を楽しみにしております。
闇の六重奏 Dark Sextet
✴︎ソライロハナビ✴︎
Paperback Studio(東京都)
2026/01/30 (金) ~ 2026/02/01 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。
観応え十分の公演の魅力をどう表現するか、自分の語彙力の無さが悔しい。表層的には説明にある通りだが、前提となる物語性がいくつも重なり、議論が行ったり来たりするが少しずつズレていく。まるで螺旋階段のようにクルクル回りながら上る又は下るが、微妙に見え方 聞こえ方が違う。その歪で軋んだところに面白味がある。敢えて物語性としたが、それは 物語を積み重ねることによって 別の物語を描こうとしているように思えたため。それにしても「不協和音の室内重奏楽」とは上手い謳い文句だ。
(上演時間1時間25分)
ネタバレBOX
舞台美術は 客席に向かってオフホワイトの椅子が6脚 半円を描くように置かれている。後ろの壁もオフホワイト。登場するキャストはデザインこそ違うが皆 黒基調の衣裳で統一。奥壁の前に横並びすると まるで鯨幕のよう。
説明にある「亡くした子供に再び会うための具体的な方法を検討すること」は グリーフケアを指しているが、冒頭 読書会又は戯曲の読み合わせのような始まり方。物語の重なりのように感じるのは、箪笥の引き出しがいくつもあって それごとに物語を持っているよう。議論が対立しているようだが、少し視点もしくは発想を変えてみると違った光景(思考)になる。万華鏡を覗いて 少し手元を動かすと次々と違うようなもの。
説明の「議論の目的は・・・超常的な力を用いて」という手段の方に重きが移っていく。例えば 劇中にある宅配便(荷物は手錠)、相手に届けることによって完結するが、置配便は手交できる相手がいても指定の場所に置いてくる。目的よりも手段が大切になっている。自ら手錠をかけ非正常を表す。コールドスリープ、降霊術、超能力、タイムスリップの実現可能性…それは亡くした子供に再び会うための手段の優位性を議論している。その議論は専門的で少し難しいが興味深い。
いつの間にか グリーフケアが「現実」のことなのか、劇という「虚構」のことか判然としなくなる。また物語よりは そこに登場する人物が重要だという。現実であれば人物が大切で、その歩みこそ人生という物語になる。しかし 舞台であれば物語の中で初めて登場人物の名前や役割が決まる。議論は条理と不条理、倫理と狂気をまたいでいるが、その前提となる世界はどこにあるのか。役者陣の圧倒的な演技力に飲み込まれて、混沌とした世界観に誘われるようだ。
今日取り上げる戯曲 作者はシェークスピア、そして「マクベス」。物語はこの台詞から始まり 終わる。「マクベスに子供がいない?」ことがグリーフケアに繋がってくるようだ。
役者陣の演技力は勿論、照明の諧調によって明暗を そして壁に映像 ノイズといった不気味で不安を想起させる演出が巧い。
次回公演も楽しみにしております。
菊五郎と天狗の冬
劇団 枕返し
OFF OFFシアター(東京都)
2026/01/30 (金) ~ 2026/02/01 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
生き別れた母を探す少年と、不良中年男との一冬の旅と交流を描いたロードムービー的な物語。
題名と設定から自分が思っていた映画に準えているが、どうして天狗に育てられることになったのかが カギ。劇団のコンセプト「真面目にふざける、必ず妖怪が登場する、なぜか漂う昭和感」の通り、今回の妖怪は「天狗」だが、それ以外の「存在」が重要。また物語は 古き良き時代を思わせるような郷愁に溢れている。ちなみに下北沢では「第94回 下北沢天狗まつり」が開催されている。
緩い演出と演技だが、不思議と物語を引っ張る力は強く、心に響いてくる。小道具などは 学芸会かと思ってしまうものだが、笑いの中にしっかりと情景を表出する巧さ。なにしろ9歳の少年という設定にも関わらず、中年男より体格がデカい。それでも いつの間にか少年と大人の間柄に見えてくる。
冒頭の緞帳代わりの幕開けを始め、小道具の乱れが(悪)目に付き勿体ない。少し辛口の★3
(上演時間1時間30分 休憩なし)
ネタバレBOX
舞台美術は 段差があるだけの素舞台。
準えた映画は「菊次郎の夏」(北野武 監督)で、それに伝承「雪女」の後日談を組み合わせた異界作のよう。競馬(映画は競艇だったような?)やヒッチハイク等のエピソードは準えているが、母親が子供と別れた理由はべつ。劇団の謳いである〈人間と妖怪を共存〉させたオリジナル作。
物語は、赤ん坊を抱いた女から別の女が子を取り上げ、天狗に渡す(預ける)ところから始まる。後々わかるが子を奪ったのは、祖母にあたる。母は雪女でその母である祖母も同じ。雪女の産んだ子が 女の子であれば(雪女として)育てられるが、男の子(人間)の場合は殺(凍死)してしまう。そんな悲しい定めから泣く泣く我が子を手放した。今 母は女の子を生んで幸せに暮らしており、その姿を見て冬彦は諦めがついた。
ちょっと可笑しくて 切ない旅、そこに天狗の下にいる兄弟のような子供が絡んでユーモアとサプライズに満ちたロードムービになっている。天狗の下で修業し神通力を身に付けようとしているが…。人の心が読める、色々な音(声)が聞き分けられる等 6つの神通力があるらしい。その片鱗が寄り道だらけの旅を助ける。冬彦だけの旅ではなく、仲間との絆を深める機会にもなっている。冬彦の孤独感や菊五郎の温かさを 優しさ溢れる眼差しで紡ぎ、笑いと涙を誘う爽やかな感動作に仕上げている。また菊五郎は、介護施設に自分を捨てた母の様子を見に行くが…その親子の情が彼の成長譚にもなっている。冬彦、菊五郎ともに大人(母)の事情によって捨てられたが、それでも力強く生きていこうとする。
布を張り合わせた緞帳代わりの幕(中央に墨痕で「枕返し」と書かれている)が開き切らず、冒頭のシーンが観えない。また錫杖の先頭(遊輪)部分が抜け落ちる、競馬の番号札(ゼッケン)が落ちるなど小道具の乱れが散見されたのが惜しい。
次回公演も楽しみにしております。
野良イス物語
FREE(S)
ウッディシアター中目黒(東京都)
2026/01/28 (水) ~ 2026/02/15 (日)上演中
実演鑑賞
満足度★★★★
椅子を通して人の思いを知る そんな不思議な内容。舞台は 雰囲気のある骨董店、店主ハナの孫ミナトは両親の死のショックで不登校。「いつも聞いてくれてありがとう」…彼女の再生を優しく見守る人々の心温まる物語。椅子職人の拘りと会社(工房)のビジネスがぶつかり合うシーンが母と娘を繋げる肝。まさに展示なのか陳列なのか。
なお、気になったことが…。
(上演時間2時間 休憩なし)
ネタバレBOX
舞台美術は、いくつかのステンドグラスのゴシック装飾窓、中央には後々スクリーン代わりになるパネル壁、下手にはカウンターや飾棚、中央にはテーブルと丸椅子。主に上手側にマッサージチェア、長椅子、折畳椅子等 いろいろな形状の椅子が置かれている。骨董店の雰囲気を漂わせている。
会場入り口側が 骨董店の出入り口になっており、更にその横奥に別空間を作り込む。
個人的に見所は2つ。
まず、椅子制作の拘りは、長く座っていても疲れない そんな座る人のことを考えたもの。一方、商品として販売するためには量産体制に合わせた製作が必要。椅子は過去の思い出に浸るモノではなく、また戻ってきて座る そんな 人に寄り添った描き方である。ここに骨董店にした意味がある。娘(ミナト)と母の想い、量産された椅子や商品(歴史・芸術的)価値だけではなく 人それぞれに思い出のある椅子が置かれている。勿論 ここにある椅子も いずれ新たな買主が現れ 新たな歴史(記憶)を刻むのかも知れないが…。
もう1つ、オンラインゲームという現代的な繋がりを見せつつ、実際会って相手の顔なり様子を見ることの大切さ。日常 SNS等の不確かな情報を摂取し、その集積に翻弄されアイデンティティ・クライシスに陥ることがある。自我は幻想になり空虚な感情を抱いたとき 孤独を感じるのではないか。物語では頻繁に先生を始め友人が店に来て ミナトを気遣う、そんな見守りに心温まる。
気になっていた2つ、両親の死に方(原因:交通事故)と母が友人へ宛てた手紙の内容が最後に明かされる。それもエンドロール後というのは、余韻付けのような演出を狙ったのかも知れないが、ちょっと中途半端な仕掛けになったようで惜しい。
次回公演も楽しみにしております。
坊や、花火だ。逃げろ、空が落ちてくる
ルスバンズ
シアター風姿花伝(東京都)
2026/01/22 (木) ~ 2026/02/01 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白い、お薦め。
4幕もの だが途中で休憩を挟まない。3幕目までは同時期であり4幕目でその後を描くという展開で 少し時間軸をずらしている。少しネタバレするが街灯もなく買い物も車がないと不便な村が舞台。まだ何者にもなれていない者が、何とか世に認められるような人物になりたいと…。一方 東京である程度有名になった人、しかし その人にも内心忸怩たる思いをしていること、そんな夫々の苦悩や葛藤を描いた群像劇。チェーホフの「かもめ」を本歌取りしているようだが、現代日本の不寛容な状況の中で もがく人々を広田淳一氏がオリジナル作品として冷静に描いている。
現代社会は他人と比較し、自己実現や成功に向かって走り続けなければならないというプレッシャーを感じることが多い。この気持に苦しみながらも、どうにか前に進みたいと思う。しかし「何者にもなれない」という感情は、ただの劣等感や不安ではなく、人生の方向性の再考を促すもの。3幕目まではその社会的な要因、心理的な要因の背景となっていることを描く。3幕までの個々の話と4幕の その後を観ると、チャップリンの「人生はクローズアップで見れば悲劇だがロングショットで見れば喜劇だ」という言葉を思い出す。
(上演時間2時間10分 休憩なし) 追記予定
土砂降りの太陽
24/7lavo
RAFT(東京都)
2026/01/23 (金) ~ 2026/01/26 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。
工事現場の休憩室で交わされる緊張と緊迫した会話劇。いくつもの正しさが対立するが、それは誰の 何のためなのかを考えさせる。少しネタバレするが、熱い意見を戦わせるが 全て納得ずくと言うわけではない。どうしてそういう結末(結論)に至ったか説明し切っていない。その空白とも言える 正しさを観客に委ねたようだ。その問い掛けこそが妙。
対立するのはトンネル工事に関わることだが、それを日常の身近なこと---ゴミの分別を端緒にしているところが面白い。公共事業ということもあり 自治体(地域住民)や個人の思惑、科学的根拠と心情的嫌悪等、色々な問題が絡み合い どういう結末になるのか興味を持たせる。登場人物は6人、しかし その後ろには大勢の人々がいる。その人たちの喧々諤々とした意見を、それぞれが代弁しているかのような説得力がある。
音響・音楽や照明といった舞台技術はなく、まさに骨太な会話の応酬。見応え十分。
(上演時間1時間25分)
ネタバレBOX
舞台美術は、長テーブルに丸椅子がいくつか。隅にコーヒー等の飲物がある置台とその横に分別ゴミ袋。シンプルにすることで会話劇を引き立たせる。
物語は、県議会議員が父で 28歳で現場監督になっている吉田(平井泰成サン)とベテラン作業員 東(金 成均サン)の労働環境に関する議論から始まる。吉田は予算(金)と納期(時)を前提に作業指示を出し、東は安全と健康を守ることを主張する。登場しないが火薬責任者の近衛が肺を患い入院した。夫々の立場で譲れない建前と本音がぶつかり合う。それを新入りダンプカー運転手 小日山(今井未定サン)に状況を説明するといった形で描く。
この現場で猫を飼いだしたが、その顔が2つ 厳密には腫瘍が大きくなり顔が2つに見えるよう。そんな時、発破した影響で湧水という事故が起き、近くにウラン鉱床らしきものが発見される。その真偽が確認されないまま、今迄通り残土を廃棄しに行ったが…。その地が作業員 羽生(秋山拓海サン)の実家がある土地。ウラン鉱床であれば放射能汚染は必至で 猫の奇形という伏線、残土廃棄の意義を言い出した羽生。科学的基準値以下だとしても汚染という心理的嫌悪感は払拭できない。実際残土をどうするか 実家以外の土地なら構わない というエゴが透けて観える。
さらに、近衛に代わって火薬責任者になった重光(風見玄サン)とゼネコンから派遣されている布施(佐神寿歩サン)が付き合っており、妊娠していることが発覚。産むか否かといった判断が迫られている。トンネル工事という公共事業、完成すれば渋滞は解消され地域住民には喜ばれる。しかも莫大な費用を投じており 今更中止には出来ない。しかし現場は作業員の生死は勿論、生まれてくる子供への悪影響が懸念されている。謳い文句にある「安全・理想・工期・未来・環境・矜持---いくつもの正しさに静かな対立が積み重なる」がしっかり描かれており、誰のどの主張も納得と共感ができる。ここで暗転後、場転換する。
トンネルの発破掘削は続けられ、向こうに微かな光が見える。劇中、東が苦しいトンネル工事の中で2回だけ喜びがあると。1つは県境を越えた時、もう1つは貫通し光が見えた時と語っている。あれだけ喧々諤々と議論したが、ラストは結論ありきで終わる。暗転以降の空白とも言える議論の過程は観客に委ねている。この考えさせる という投げ掛けは、トンネル工事というリアルな現場劇であるが、演劇という虚構の中で紡がれている。観客は 鑑賞眼が求められ、池田智哉(演出家)さんがそこを理解して舞台を創ったのだろう。自分の頭で補うという楽しみが残されたようで、その意味で充実した公演だ。
次回公演も楽しみにしております。
はなたば。
インプロカンパニーPlatform
高円寺K'sスタジオ【本館】(東京都)
2026/01/23 (金) ~ 2026/01/25 (日)公演終了
実演鑑賞
インプロということで、その即興の違いを楽しむため初日と千穐楽の2回観劇した。物語のフレームワークは、チラシにあるように「電車で旅する女がさまざまな乗客との出会いと別れ 『しゅうちゃく』駅を目指す物語」。台本2割インプロ8割ハイブリット演劇という謳い文句だが、肝心の会話が洗練されていないため、心に響いてこない のがもどかしい。
紙が椅子の上に置かれ 上演迄に 「好きな言葉」等を書き込んでスタッフに渡す。キャストにとって、それが切符代わりであり観客からの「お題」になる。乗客はタイトルにちなんで皆 花の名前、電車内で会話を交わし 降車駅で1人また1人と別れていく。別れを惜しむかのように 全員が一旦駅に降り停車時間(2分)に別れる人の即興劇を観る。電車の旅という 人生に準えた枠組みは良かったが、とりとめのない会話に終始。もう少し味わい深い(演劇的な)内容を観たかった。今回はお試し版といったところか。
(上演時間45分)追記予定
聖母像の見た夢
劇団B♭
座・高円寺2(東京都)
2026/01/22 (木) ~ 2026/01/24 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
人の生きる拠り所のような場所、それを2つの時を隔てて紡いだ物語。1つは明和9年2月29日に起きた江戸の大火、もう1つは昭和20年8月9日に投下された原爆、何方もその出来事を忘れないために遺しておきたい象徴的なもの。その在り様を硬軟取り混ぜて描く。重たい内容であることから、敢えて笑わせることによって観せる工夫をしたのであろうか。
物語は2つの時代を交互に描き 交わることはなく、ラストになって ようやく(輪廻)転生を思わせる奇跡のような繋がり。先に記した江戸の大火で焼け残った一本の銀杏の木と原爆で焼け残った浦上天主堂の遺壁(悲しみの聖母像)の存否への思いが肝。銀杏の木は、大火によって新芽が出ないため奉行所が伐採すると決めた にも関わらず残り、東京大空襲を経て今もある。一方、浦上天主堂の遺壁は市議会で保存が可決されていた にも関わらず、取り壊された。その違いは何か を問うているよう。伐採や破壊をすれば 二度と戻らない、そのことをしっかり認識しておくことが大切。
当日パンフに「第二回にして、役者の平均年齢が半分以下になった・・・役者が若返ったのではなく若い人が増えただけ」とあるが、それだけに演技力に差が観えたのが惜しい。これは場数の問題でもあるから劇団としての伸び代。ちなみに若手は「劇団綺畸」(⇦如月小春らが結成した劇団)から出演している。
(上演時間2時間10分 休憩なし)
ネタバレBOX
舞台美術は中央に山(三角オブジェ)を模し、その後ろの上手/下手に等間隔に木平板が立っている。ほぼシンメトリーだが、下手の上にステンドグラスの窓があるのが唯一の違い。山と記したが、劇中では主に江戸時代の火消し<纏>が屋根に上っている様子。また 木平板は卒塔婆を連想した。舞台セットは作り込んでいないが、それは2つの時代を交互に描くため場景(情景)を固定させないためだろう。
物語は、江戸の町火消(を)組の纏持 七五郎が或る火事で屋根から落ちて、高い所が怖くなって火事場で冷静な判断が出来なくなった。周りは皆 知っているが、本人はどうしてもそれを明かすことが出来ない。を組の娘(養女) 安寿と結婚したが、彼女は幼い頃 母を火事で亡くし、銀杏が母の代わりとなって彼女を守ってくれた。それが浅草寺の御神木。纏持として安寿の心の支えになりたいと…。
一方、長崎への原爆投下によって街は壊滅し死者が、そんな中 七瀬は幼い娘から母が火傷で水を欲しがっている旨懇願される。しかし どうすることも出来ずその場を立ち去った。そのことを悔い苦しみ 修道院の懺悔する。聞いていたシスター杏珠は記憶の底から或ることを想い出す。この場面が涙を誘う。一刻も早く 焼失した浦上天主堂の跡地に新たな天主堂を建設したい。そのためには「悲しみの聖母像」を壊さなければ…。
それぞれの話が交互に描かれ交わらない。その観せ方は、重いテーマでありながら 敢えて笑いを挿入し気が滅入らないよう工夫している。漢字は違うが、江戸時代の火消し夫婦は七五郎と安寿、昭和時代は七瀬とシスター杏珠、時代を超えて2組が輪廻再生し想いを果たす奇跡のような物語。残したい想い、それは戦禍を忘れないという”象徴”となる「悲しみの聖母像」ではなかったのか。なぜ移設出来なかったのか、そんなことを考えさせる好公演。
次回公演も楽しみにしております。
ナベ・ストーリー2026
Project To Do
シアター風姿花伝(東京都)
2026/01/14 (水) ~ 2026/01/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白い。「すき焼き鍋」観劇。
説明の「人気とプライドをかけた鍋具材合戦…果たしてこの戦いを勝ち残り、人気No1となる具材は如何に。今ここに、鍋の具材たちによる鍋具材戦争が始まる」から展開と結末が予想出来そうで、実際 思った通りなのだが それでも観入ってしまう面白さ。いつの間にか勧善懲悪のようになり大いに盛り上がるラストシーン!そして具材の見た目と特性を表したビジュアルにも拘りを観(魅)せる。
鍋という今の時期に相応しい設定が妙。しかし人間の社会に置き換えても十分通じる内容であり、むしろ人間関係そのものを描いているよう。同じ具材でも1つ1つに名前があるという。例えば 白菜は「風味委員長」と名付けられ、その特長(味)は鍋全体(具材間)の調整する役割を持っていると。もちろん(国産)牛肉の存在は大きく貴重、しかし その具材だけでは鍋の味わいは出せない。鍋は具材の調和で成り立っている。キムチ鍋バージョンでは違う具材が、そう思うと その特長を生かした適材ならぬ配材(料)の面白さを十分に引き出した好公演。
(上演時間1時間30分 休憩なし)
ネタバレBOX
舞台美術は 中央奥にスクリーンとその下に直方体が横倒しになっているだけ。客席寄りは大きな空間になっているが、アクションを大きく見せるためスペースを確保している。そこで鍋の具材を擬人化した役者陣が生き活きと動き回る。衣裳も具材をイメージした柄や色彩という拘りを見せる。例えば 焼き豆腐役は茶系の格子柄、白菜役は白っぽい衣裳などイメージし易い。またスクリーンに文字等を投影し 場景等を説明する丁寧さ。
物語は 白菜が「ここはどこ?」と 訝しがるところから始まる。ここから登場するのは全て冷蔵庫の中で、ラストシーンだけ鍋の中という設定。白菜は冷蔵庫の奥---通称「忘却の淵」という場所にいる。同じ場所には 焼き豆腐など鍋料理でメインにならない具材が置かれている。一方、牛肉とその取り巻き具材の玉葱やうどんは冷蔵庫の入り口---通称「冷淵の園」という目立つ所に置かれている。かくして冷蔵庫内の場所取り、つまり鍋具材の主役を巡っての戦いが始まる。
具材の戦いは、人間の戦いと違いその特性等が武器になる。例えば、国産牛肉であれば その滋養と高価格で他を圧倒する。その具材を腐らせないため冷蔵庫の中でも目立つ所に置かれる。実は 焼き豆腐はキムチ鍋の時に使われず、一緒に買われてきた絹豆腐が使われた。焼き豆腐は 冷蔵庫の奥に忘れられた存在、それが悔しかった。特異な具材としてトマトが登場する。その風味を活かした存在のようだが、謎めいていて面白い(何故か眼帯をしている)。
ラストは悪=灰汁(アク)が登場し、鍋全体の味覚と風味を壊していく。この巨大(多くの黒襞が付いた衣裳)な敵を全具材が一致協力して排除しようとする戦いが面白い。大きな灰汁取を皆で持って救い上げるような仕草、そこに今までの蟠りが嘘のように無くなる。大団円は想像出来たが、まさか灰汁が登場して鍋(具材)の調和を図るとは、見事!なお、暗転の時間が少し長いような気がしたが…。
次回公演も楽しみにしております。
リアル、ちょっとムズい。
友池創作プロジェクト
駅前劇場(東京都)
2026/01/14 (水) ~ 2026/01/20 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白い。
説明にあるように現実と虚構が交差し 混沌とした世界に迷い込むような錯覚劇。しかし虚実の区別は役者の演技は勿論、衣裳等メリハリをつけ 分かり易い観(魅)せるエンタメ作品になっている。
ヒロイン美月が 現実では仕事も続かず家に引きこもる日々、そのワケ(原因)が肝。それが大人の会話というか人間関係の悩みの背景として描かれており、少し切ない。劇中の台詞にも何回か出てくる「なんとなく」といった曖昧さ、気軽に繋がれるようになった現代、それでも信じられないことが多い。いや気軽だからこそ危ない といった描き方でもある。
何でも明確な境界(線)を引き スピード感を求める、そこに現代社会の息苦しさが浮き彫りになる。それでも人は もがきながら生きている。美月が 拠り所としたのが仮想世界、そのアクションシーンが見所の1つ。
人と少し違っているだけで仲間外れ 疎外感を感じてしまう、それがエア縄跳びの光景。理解されづらい人たちを描いており、情況・状況は違っても 自分と重ね合わせてしまい考えさせられた。ちなみに舞台美術はシンプルだが、RPG世界+自縄自縛を思わせるようなもので興味深い。
(上演時間1時間45分 休憩なし)
ネタバレBOX
舞台美術は上手に金網状の壁、下手は引戸があり場景変化に利用。上演前は下手に横にした直方体の上に服が散乱している。引き籠っている美月の部屋の様子であり心の乱れといったイメージ。金網(RPGの世界)の中に閉じ籠り、心を閉ざしている。一方、引戸は外に通じる道であり多くの人が出入りする。そこに救いの手が差し伸べられているようだ。
前に働いていた職場で仕事の段取りが出来ず迷惑をかけ、そのトラウマから働くことが怖くなった。いつの間にか引き籠りになりRPGの世界へ逃避し始める。美月は、ゲームの世界ではヒーローで居心地が良く抜け出せない。そんな彼女を心配する母 真矢は、何とか社会に適合させようと、知人にホームセンターでの仕事を紹介してもらった。ここにも美月と同じように仕事がうまく出来ない中年男 津田がいた。その姿を見た美月は自分に重ね合わせ愕然とする。
表は 当たり前の日常を生きることが難しい、そんな心の孤独を描いた逃避行。その裏でRPGで活躍する仲間とのアクションが生き甲斐にもなっている。その表裏が彼女の現在の在りのまま。彼女を心配する母親は、世間的には著名な教育評論家で まさか娘が引き籠っているとは言えない といったジレンマを抱えているような描き方。この母娘の確執を思わせることによって、単に社会不適合というだけではなく、支配と服従といったことも…。
母の「ADHD検査を受診」という言葉から、彼女の状態がそれとなく解り、母は毒親ではなく真に心配していることが後々分かる。美月の周りを気にし流される、そこに現代人の心の弱さ、確固たる自我を持っていると思っていても、実はそれが幻想でしかなく、空虚さが顕わになったとき自分自身を見失うよう。その表現し難い不安定さが浮かび上がるような好作品。
次回公演も楽しみにしております。
タバコの害について
劇団夢現舎
新高円寺アトラクターズ・スタヂオ(東京都)
2026/01/08 (木) ~ 2026/01/12 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
千穐楽観劇。新春版なのか 気を逸らせない工夫なのか、いずれにしても客いじりをしながら物語を展開していく。ただ話の核心はブレることなく心に響く。
(上演時間1時間20分)
ネタバレBOX
舞台美術…レンガの幕絵のようなもので囲い 上手はBARカウンターのように洋酒が並んだ幕絵(畏まった場所ではないことの意?)。中央に演台が置かれ「タバコの害について」と演題が書かれている。その傍に大きな脚立と反対側に小さな置台と木椅子が1つ。上手/下手にロシアやソビエト連邦の歴代の皇帝/大統領のパネル写真が貼られ、客席の一部にプーチンの写真と取扱注意の字。講演者は くたびれた燕尾服を着たニューヒン先生(益田喜晴サン)、その助手(橘紗モカ サン)。ニューヒン先生曰く、自分は大学教授でもなければ と謙遜しつつ講演を始めようとするが…。
先生はもったいぶった話し方とまわりくどい説明で、「たばこの害について」講演しようとするが、なかなか本題に入らずパネルの人物評とユーラシア大陸と日本の領土の大きさや人口密度を比較し、彼の地と日本の違いを観客を弄りながら本題と関係ない話を繰り広げる。しかし いつの間にか社会的なこと自然的な話から自分の家庭(娘や妻)の話へ替わっていく。特に日頃 自分を虐げている妻へと話の矛先を向けていくが…。
物語は、在りし日の自分が抱いていた夢と、それとは乖離してしまった現在に苦悩する男(先生)の悲哀を面白可笑しく描いている。チェー ホフは、誰しもが抱くであろう人生の悲哀を「滑稽」であると捉えたよう。それが物語の核心であろう。
劇団夢現舎では、独自の解釈と演出(観せ方)によって「たばこの害について」の講演を劇中劇仕立てにし、一方で観客を講演を聞いている聴衆に見立てている。同じ場所(行灯パブろびっち)でありながら、公演を観劇していることと参加(ウォッカならぬ赤ワインが振る舞われ 皆で乾杯)しているという違った感覚、その不思議な空間に立ち会わされているようだ。観客弄りも新春版の演出の1つ。
何度も妻から講演するよう強要され辟易している先生の愚痴話へ。長年同じ話を繰り返してきた人生に対する嘆きが哀愁となって…。妻の呪縛の象徴、それが結婚式で着た 今ではよれよれの燕尾服。それを脱ぐことで呪縛から解放され清々しさ。一方で、妻は亡くなり 述懐することで その寂しさを紛らわせているかのようにも思えた。公演は、如何様にも解釈(捉えることが)出来る そんな幅広な独自性を感じる。
「たばこの害について」は、劇団夢現舎にとって別のガイ つまり遣り甲斐になっているようだ。平成二十八年から取り組んでおり、夢現舎にとって成熟した公演になっているのではないか。特に公演が憚られるコロナ期はこの作品に支えられたとある。本来一人芝居であろう物語、それを漫才の掛け合いのように助手を登場させ、難なく違う方向へ話を持って行く巧さ。
次回公演も楽しみにしております。
猿博打presents 優しい劇団の大恋愛volume賽『レイト・キャロル』
猿博打
インディペンデントシアターOji(東京都)
2025/12/30 (火) ~ 2025/12/30 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
今年の観劇納め、勢いのある面白い公演。超満席、16時の回は当日客でも増席して なんとか全員観劇。(劇場)定員との関係で色々あろうが、そのサービス精神は嬉しい。上演中のスマホでの写真・動画撮影も可。
猿博打、優しい劇団のそれぞれの公演を観たことがあるが、良い意味での化学反応が表れていた と思う。
猿博打と優しい劇団によるコラボ公演…猿博打の3人が、「今、一緒に舞台に立ちたい役者」をそれぞれ1名ずつ呼んで、尾﨑優人氏の脚本・演出で一日限りの特別公演を実施。まさに演劇らしい一期一会、俳優と観客だけではなく俳優同士も同じ。物語は軽快に進むが、演じる俳優陣には刺激と緊張感が感じられた。
公演は、その日に会って稽古して本番を迎えたとは思えない面白さ。俳優の地力のような演技がガッチリ組み合っているよう。途中で台詞を忘れたかのような、それが本当なのか演出なのか判然とさせず、客席にも聞こえるプロンプターの声に笑いが起きる。観客を巻き込んで 場内一体となった楽しませ方が実に上手い。
(上演時間70分)
ネタバレBOX
素舞台で、照明は持ち込みのキャンプ用ライト、音響/音楽は持ち運び出来るスピーカー。全編 何らかのバックミュージックを流し 雰囲気を盛り上げている印象だ。演劇の持つ出会いと別れの成分を凝縮したその日限りの公演。猿博打の公演であるが、優しい劇団主宰の尾﨑優人 氏が開場からずっと前説を兼ねた話をしており、そのまま上演へ。
物語は4つの小話を交錯させ、それをクリスマスに因んでトナカイの姉・弟(本当は友達という設定のようだが、下野はな さんが思わず姉と言ってしまい、尾﨑さんが その台詞に合わせたよう)の会話で包み込む。猿博打(メンバー)だけで描く話と メンバーが一緒に舞台に立ちたい役者(3人)を客演として呼び、猿博打メンバーと呼んだ客演をそれぞれペアにして3組の話を描く。
①猿博打だけの話、兄弟は 12月27日が誕生日の姉に誕生祝いを言い忘れ、姉は(クリスマス)プレゼントを渡し忘れる。しかし遅くなっても感謝の言葉は伝えるもの、その思いは日を過ぎても必ず通じる。②若社長と社員/運転手は、時計代わりに社員が予定を管理している。社員が遅刻すれば若社長も同じ、そのため社員は気を遣っている。③漫画家の先生とアシスタントは、いつも締め切りを叫ぶ助手の存在が気になる。この叫びによって先生の信頼と信用が成り立っている。④喫茶店の客と店員は、スイーツが嫌いな客のために 甘さの供給を止めてしまおうとする店員。オムニバスのような話は 交錯し怒涛のように展開していくが、その底流には 相手を思いやる優しさと感謝の言葉。
トナカイはサンタへプレゼントしようと毎年考えているが実行出来ずにいる。今年こそはと意気込んでいるが…。皆 心では感謝をしているが、それを言葉に出していない。冒頭 兄弟が寒い寒いと言いながら登場するが、その実感は自然と言葉になる。そんな素直な気持になれるような心温まる物語。ラストはトナカイ(尾﨑サン)が扉の奥にハケたメンバーにその気持を尋ねて…。アップテンポで気を逸らせない展開は、当日出会って 実質半日の稽古だけとは とても思えない。その瞬間だけ輝く清々しさ。
次回のコラボ公演を期待しております。
通る夜・樽水家の場合
劇団芝居屋
中野スタジオあくとれ(東京都)
2025/12/26 (金) ~ 2025/12/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白い。
説明にある通り、樽水家当主の故 勝利の四十九日 納骨式を行うまでの約85分をリアルタイムで描いた物語。この話には 大きな山場が2つあって、まず当事者同士の憎悪・確執による口喧、次に 自分自身の存在に苦悩する人物の激白によって、その場にいない人物の思いが立ち上がるよう。少しネタバレするが といってもキャスト6名は記されている。登場しない7番目の人物として故 樽水勝利の人柄なりが浮き彫りになってくる。始めの山場は伏線であり、激白した人物と人知れず寄り添った人物の思い、それが北国の しかも厳冬にも関わらず、心温まる話へ。
始めの山場の後、一息ついたところで露天商組合長 瀬村五郎(作・演出 増田再起サン)が現れると、口喧していた者同士が「男なんて しょうもない」と共闘しだす。このコメディーリリーフ的な役回りを通して 次の山場に繋げる上手さ。人の機微を巧く表す役者陣、劇団芝居屋の真骨頂を覗くようだ。
(上演時間1時間25分)
ネタバレBOX
舞台美術は、上手/下手に引き戸、中央奥にストーブ、その前(客席寄り)に大きな座卓と座布団の2セット。全体はシンメトリーで外では吹雪(または寒風)いているような音が寒々と聞こえる。また各人の年齢を明らかにし、関係した歳月の長さと 年齢相応の喜怒哀楽を表現しているよう。
舞台は、大乗寺の本堂に通じる控えの間。11時から四十九日 納骨式が始まる迄の物語。故人 樽水勝利(行年79歳)の妻である辰子が早々にやってくる。その後 故人の長女 (水原)弘子が来て、母に父との馴れ初めを聞き始める。辰子は この街の売れっ子芸者で、父が通いつめ求婚してきた とまんざらでもない様子。そこへ亡き父と駆け落ちした愛人 森田裕子(還暦)がやってくる。驚いた辰子は裕子を詰り罵るが、逆に裕子は辰子の知らないことを言い出す。勝利は更年期障害で悩んでおり、裕子が気遣っていたと打ち明ける。そして男女の仲へ…。諍いの張本人が亡くなり 今更揉めても しょうがないと諦める2人。そこに辰子の気っ風のよい芸者ぶりが表れている。表層の丁々発止だけ観れば、この場面だけが山場のようだが…。
そこへ村瀬五郎(80歳)がやってくる。女2人の口喧が収まり 一息ついたタイミングでの登場。故勝利の女癖 女遊びは村瀬が教えたことと 辰子と裕子が一緒になって責め立てる。それが「男なんて しょうもない」という呆れ文句。先の修羅場を和ませ 次に登場する人物の激白をお膳立てするかのような場面。
最後に裕子の息子 森田幸助(24歳 市役所勤務)が仕事の合間を縫ってやってくる。納骨式が終わり次第 仕事に戻るため作業着に喪章をしている。彼は勝利と裕子の間に生まれた子、弘子(46歳)の腹違いの弟になる。辰子と裕子の間だけの問題で簡単に解決出来ればよかったが、自分が生まれたことで浮気事情が複雑になった。自分のせいではないが、それでも自身の存在に悩み苦しんできた と泣きながら激白する。故勝利は生前 弘子に腹違いの弟がいることを話し、彼女はそれとなく年の離れた弟の様子を覗っていた。故勝利の最期は誰にも看取られず孤独死。
故人は、幼い息子(幸助)のことを心配し 腹違いの弘子に話してしまう。結婚する時の忠実(まめ)さ、女癖の悪さ その割に優しく謝り上手で ついつい許してしまう等、悪口とも惚気ともつかない会話で故人を偲んでいるような。登場しない人物の人柄が四十九日にしみじみと語られる人情劇。それを役者陣が実に上手く表現しており見事。ちなみに、ストーブや音響(吹雪or寒風)から冬を連想するが、死因が熱中症で 四十九日の季節感に合致するのかな?
次回公演も楽しみにしております。
サラリーマン!!!
床の間企画
中板橋 新生館スタジオ(東京都)
2025/12/25 (木) ~ 2025/12/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
物語への思い、当日パンフの主宰 相馬優輝 氏によれば「相馬の集大成を観て、家族愛のほっこりとした温かさ、アクションや魂の籠った言葉の熱さを ぜひ感じてほしい」と。表層的には、普通のサラリーマンがヒーローに憧れた娯楽劇のよう。ヒーローがいるということは悪者も登場し 勧善懲悪的な展開、それが夢オチかと思えば リアルな世界。子供の頃から腕力的には強くないが、正義感は強い、その思いは今でも変わらないが...。この物語で描き 伝えたかったことは何かが暈けてしまったようでもったいない。
少しネタバレするが、物語は 会社で「もう(午後)9時か」と呟き、他に誰もいないことを確認し 変身もしくはファイティングポーズのような動作をし悦に入っているところから始まる。勤続20年のベテラン社員?、しかし事務ミスや電話応対の不手際などを繰り返し、後輩の上司(課長)に注意される始末。ピーターパン症候群でもセルフ・ハンディキャッピングでもない普通人(サラリーマン)の世界。悪者も世の理不尽なことの比喩かと思ったが、そうでもない。
パンフにもある「生きづらくしている」のが何なのか。主人公 ハジメが、会社や家庭で何となく上手くいっていない状況を描いているが、その原因や理由の掘り下げが十分練れていたのだろうか。あたり前のように不安・心配・憂慮といった心の在り様を前提にしているため、埋めるべき課題や問題が暈けてしまったかのような印象。アクションはキレもスピードもなく、泥臭く立ち向かっていく姿、そこに妙な愛情を感じる。その必死さが格好悪くてもヒーローで、日常のことをあたり前のようにするサラリーマンこそ…。
(上演時間1時間25分 休憩なし)【ゲネプロ マフラーチーム】
ネタバレBOX
舞台美術、後景は中央に出ハケがあり 上手/下手は白紗幕で隠されている。上手は(黒い)段差、下手は(白い)長方体が4つ。情景に応じて会社の机や飲み屋、喫茶店のテーブルに見立てた小道具が搬入される。白と黒の配色は善と悪といった対比であろうか。
会社では後輩が上司になり、ミスをしては小言を言われる。家庭では高校生の娘に無視され妻ともしっくりしない。何となく旨くいかない日々、小学校からの親友と飲みに行き愚痴る。子供の頃は 弱い者を見ると助けに行って といったエピソードを話す。そんな義憤のようなものを今でも持って、自分がさもヒーローであるかのような幻想であり錯覚に陥っている。
悪の組織が、よく知られたチェーン店の 〇貴族、〇〇珈琲、〇〇良品を副業として営んでおり、その事業形態(実態)がブラック企業そのもの。昼は喫茶店、夜は居酒屋、合間に日用品販売と休む間がない。その悪の組織がハジメの娘を誘拐し身代金を要求する。そして妻まで拉致されてしまう。ハジメは自分がヒーローになったつもりで助けに行くが…。ヒーローの格好をした本物が現れ悪の手下を遣っつけてくれた。そしてボスも倒してほしい と他力本願。しかしヒーローに諭され自分が戦い勝利する。人にばかり頼るのではなく、自分で奮起する気概のようなもの、そこにハジメの成長を見るのではなかろうか。その前提としてピーターパン症候群やセルフ・ハンディキャッピングといったコト、もしくは自信を喪失したコトが描かれていないため、ハジメという人物の深層と魅力が表れてこない。
次回公演を楽しみにしております。
取調室ABC
はらみかプロデュース
JOY JOY THEATRE(東京都)
2025/12/25 (木) ~ 2025/12/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白い。
説明にある通り、3つの取調室ABCで行われるオムニバス形式の会話劇。少しネタバレするが、警察で Aは詐欺罪または風営法違反、Bは道路交通法違反、Cは少年の傷害罪をそれぞれ取り調べるが…この3話に共通する人物がカギ。
それぞれ違う描き方によって、1話ごとにA.奇異な滋味、B.喧しい情熱、C.深い愛情といった人間模様が浮かび上がる。取調室だけにシンプルな舞台装置、そこで繰り広げられるのは軽妙・洒脱・濃密といった会話。公演の見どころは 何といっても会話の応酬と展開の面白さ。物語の通底には優しさ、それが滲み出るような味わいある作品。
(上演時間65分)【TEAM VENGUARD(現役チーム) 公開ゲネプロ 】 ㊟ネタバレ
ネタバレBOX
舞台美術は、中央にテーブルとパイプ椅子。その後ろに調書作成のミニテーブルと椅子。ミニテーブルは取調室ABCの順によって、下手・上手・中央の後ろに置かれる。それによって取り調べる刑事の立ち位置も決まる。
A.スナックげんこつが ボッタクリ営業をしており、客である建設会社 社長の妻が警察に被害を訴えた。水割り一杯2万円など法外な請求をしている。しかし社長はそれを承知でスナックへ通っている。取り調べを受けているのは、派手な服を着たママとチーママ。髪留めにチュッパチャプスという奇妙な出で立ち。取り調べているのはエリート女刑事だが、ワケありのよう。建設会社といっても中小または零細企業の社長、接待(経費)として支払い、スナックは水増し請求分を中元・歳暮に還元(主に飲料水)している。会社は それを従業員へ配給している。税法に抵触しない範囲の苦肉の策で、客と店は 持ちつ持たれつの関係。
B.緑川公園付近で大型ワゴン車が長時間停車している。しかも窓ガラスにはスモークフィルム、そして車内から大音量の音楽が流れている。近隣住民からの苦情で事情聴取。車の持ち主は共同名義の主婦3人。コスプレ好きの漫画オタクで、家族に内緒で執筆するため車を購入し、秘密基地のように使っている。取り調べをしているのは、自分も若い頃は小説家を目指していたが 挫折したというベテラン男性刑事。主婦たちの願いで 漫画の原作を提供することに、刑事もまんざらでもない様子。
C.引き籠りの少年(17歳)が、2階から道を歩いている男に向かって水晶玉を投げ 大怪我を負わせた。少年の母が事情聴取されており、普段は大人しいのに何故そんなことをしたのか。取り調べは ベテランの女刑事で、寄り添うような対応をしている。
全ての取調に立ち合い記録をしていた婦警が、3つの取調室の出来事から或る推理をする。最近管内で不審者が徘徊、緑川公園付近で女子高生が襲われそうになり 悲鳴を上げ、その様子を見ていた少年が男(犯人)に向かって水晶玉を投げたらしいと…。
取調をする刑事は、皆 黒いスーツで隙のない恰好。A.ではエリートらしいが最近起きている事件の捜査には関わらせてもらえない。B.は燻り続けている文学への憧れを忘れられない。C.では息子がかつて暴走族で警察沙汰になったと。一見ハチャメチャのような取り調べを通して、刑事の人間らしい面を浮き上がらせる。A.杓子定規のエリート意識が和らぎ、B.文学への思いを取り戻し 刑事と両立、C.自分も息子との関りで悩んだことがあったと弱みを漏らす。取調室という厳めしいタイトルとは逆に 優しさに溢れた内容。
オムニバスの取調室ABCが収斂し、まったく別の隠れた犯罪を炙り出す。調書を作成(記録)していた婦警が、事件の全貌を推理し 管内で起きていた不審者による犯罪が解決。警察の縦割り組織という弊害も浮かび上がる。しかし あんなにミニスカートの婦警がいるかなぁ(ミニスカポリスじゃあるまいし☜古い?)。
次回公演も楽しみにしております。
怪物の家
日本映画大学 身体表現・俳優コース
サンモールスタジオ(東京都)
2025/12/19 (金) ~ 2025/12/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
面白い、超満席。舞台と通常の客席との間にミニ椅子、さらに その前に座布団席。そして何故か大物芸能人も観劇していた。
説明にもあるが 笑いを交えた風刺劇。現代の政治を 或る政治家一家の跡目争いに絡めて描いているが、物語も面白いが、その舞台美術の造り込みが見事。この劇場で ここまで造り込んで、さらに変形させるという驚き。政界では「怪物」と呼ばれる大物政治家(88歳)が梗塞で緊急入院。留守の間に孫たちが跡目(地盤)争いをして立候補を画策。大物政治家の息子は自死し、その子供(孫)3人が虎視眈々と…。と言っても全員が政治家志望ではないようだが、その腹の内は分からない。
物語は どす黒くなりそうな設定だが、今 政治ネタを巧く取り 入れ分かり易い。偶然であろうか、高市総理(発言)を彷彿とさせるような場面などは、その現実と相まって迫力がある。もっとも右翼・左翼・中道といった分かり易い色分け(主張)が、その人物の性格や立場として描かれているが…。
(上演時間1時間20分 休憩なし)
ネタバレBOX
舞台美術は、怪物と言われている政治家の家(居間)。中央奥はレトロガラス戸、座敷中央に大きな座卓、上手は神棚と床の間・床脇で掛け軸等・違い棚等。下手は襖の出入口。ちなみに上手 書院には茶室に入る にじり口のような隠し戸がある。
暴力団とも繋がりのある、というか自分も暴力行為をしていた。色々な意味で怪物として恐れられていた政治家である。彼が梗塞で緊急入院し、孫たちが跡目を話し合うために集まったが....。長女は結婚しており その夫は落選続き、弟で唯一の男は政治家には関心がなく、末妹は(衆議院)被選挙年齢になったばかり。しかし見せ掛けだけでも軍備増強を訴える。長女の夫は我が強くなく 主義/主張がはっきりしない。しかも突然寝てしまうという奇病もち。誰が祖父の後を継いで立候補するか喧々諤々。
登場人物は祖父(怪物)と孫3人と配偶者、そして女中と使用人の7人。女中の亡き母は入院した祖父と訳アリの関係。使用人は暴力団当時の祖父を尊敬していた といった一癖二癖もある人たちばかり。そんな騒動の中で祖父は後遺症がある体で政治家を続けると、しかも女中と結婚するという。女中の家系と怪物の家は確執があり、劇中の台詞では「ロミオとジュリエット」のようだと。女中は末妹と同じ歳(被選挙年齢=25歳)ということになる。使用人が 渡世気質が失せ 大人しくなる祖父の姿を見て幻滅し、日本刀で切りつける。狭い居間が 阿鼻叫喚の地獄絵図に化すが、何故か可笑しみもある。主義/主張なきテロ者の存在が一番厄介だと言う。
この乱闘騒ぎで次々と切られ死んでいく。政治という表舞台で自己主張を目論んでいた者達が、政治に無関心な男に殺され野望が潰える。その惨劇…襖が斜めに切り落とされといった見た目の驚き、しかも奥のガラス戸が鶴翼するように奥へ引き広がる。そこには庭の光景‐‐上手から松・灯篭・柳が配置され日本庭園のよう。最後は皆死んで 生き残ったのは部屋に居なかった長女の配偶者だけ。皆 舞台から下(降)りて横一列になって庭に並ぶ。選挙(立候補)という表舞台から降りて…そこに公演としてのシュールさを感じる。
次回公演も楽しみにしております。