タッキーの観てきた!クチコミ一覧

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せんがわ劇場×桐朋学園芸術短期大学自主上演実習公演

せんがわ劇場×桐朋学園芸術短期大学自主上演実習公演

桐朋学園芸術短期大学芸術科演劇専攻

調布市せんがわ劇場(東京都)

2026/07/11 (土) ~ 2026/07/12 (日)公演終了

実演鑑賞

ここ数年、桐朋学園芸術短期大学自主上演実習公演を観ているが、今年は残念ながら1日(2演目)だけ。しかし 未見の作品で潤色しているとは言え 観応え十分。それだけ学生の演出と演技が素晴らしい。
公演は教員の監修のもと、学生が自ら作品を選び 上演する。学士「芸術学(演劇)」取得の審査対象になり、上演作品の映像を独立行政法人大学改革支援・学位授与機構に提出することになっているため、★評価はしない。

●「またここか」(作:坂元裕二 潤色:片野彩加) 
●「夢を見る」 (作:石原燃 潤色:小野七実、小野萌香)

(上演時間「またここか」85分 「夢を見る」60分)追記予定 

迷妄曲論

迷妄曲論

藍澤慶子一人芝居

東中野バニラスタジオ(Vanilla Studio)(東京都)

2026/07/07 (火) ~ 2026/07/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

或る女性の小学生から三十代半ば迄、その綴られた日記の舞台化のよう。藍澤慶子さんの一人芝居 そのモノローグは内省と激情の繰り返し。ダイアローグ その姿の見えない相手は衣類という小道具を使って対話する。Kという女性の伝聞というスタイルで語っていくが、実は語っている本人の物語と言う。登場する人物そのものの存在があやふやで、一見 迷妄していくようだが…。早い段階で 性格の欠点が語られるが、そうなった原因は 今 社会問題になっていること。それ以降の彼女の人生に大きな影を落とし生き辛くしている。紆余曲折しながら懸命に生きてきた女、その成長譚のようでもある。

公演の魅力は 勿論 藍澤さんの演技力だが、その熱演を邪魔しない演出が好い。一人複数役を担うが、その情景・状況作りは飽くまで一人。音響はなく 音楽も奏でることなく、最後に一曲流れるだけ。照明も過度な照射はなく 淡く柔らかい光が射す、そんな僅かな諧調のみ。それだけに芝居の中の人物がくっきりと立ち上がる。
(上演時間1時間25分)追記予定

夏のおどり

夏のおどり

東京レビュー

浅草花劇場(東京都)

2026/07/09 (木) ~ 2026/07/11 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

魅力的なパフォーマンス。「夏のおどり」ということもあり「南へ!」をキーワードに構成した12演目。日本の沖縄民謡だけではなくブラジルのサンバまで幅広く取り入れており、踊る姿態と衣裳の華やかさは眼福。レビューの魅力は華やかさであるが、幕が下りれば夢(酔い)から醒めたような虚無感、その儚さ潔さが好い。だからこそ踊っている最中は夢中になって観る、その姿を目に焼き付けようとする。

本公演、実はすでに音源がない演目もあり、残っている映像で音源を再現したらしい。そんな努力と苦労が実を結び、ダンサーは熱量と鼓動が共鳴し合い、力強いステップが地響きのように会場を揺らす。個々人の力の調和が「生きている」を主張しているよう。
(上演時間1時間)

煙の汽水域

煙の汽水域

ムシラセ

小劇場B1(東京都)

2026/07/11 (土) ~ 2026/07/19 (日)上演中

実演鑑賞

満足度★★★★

人は その時々の状況や環境に対して 抵抗したり受容したりしながら生きている と思う。そんな人の生き方をタイトルにある汽水域として捉えているよう。もっとも その人の本質は変わらないようでもある。

物語はある男の30年間ー20歳・35歳・50歳ーの時々を切り取った話。必ずしも一般的にある状況ではないが、隣の隣 さらにその隣ぐらいにはあるかも知れない、そんな微妙な距離感の設定。時代に応じた三場面だが、薄暗がりの中でキャストだけで場転換している。その無言の人影に時の流れを感じさせる。まさに演出の妙。

公演の魅力は、現実と虚構の境界線上を揺蕩うような描きで、その世界を役者の自然な演技が飄々と紡いでいくところ。淡々としているが何故か生き活きとしており観入ってしまう。台詞にもあるがデジャブ、そこに目に見えない家族(父と息子)の絆というか不思議な縁を感じる。
(上演時間1時間20分)追記予定

おいしいディストピアの作り方

おいしいディストピアの作り方

MEMELT

すみだパークシアター倉(東京都)

2026/07/08 (水) ~ 2026/07/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

AIを通して人間とは、その存在の在り方を描いた野心作。テーマを物語の中へ巧みに落とし込んで観(魅)せている。そのエンターテインメント性--櫓状の回転舞台、モニター映像などを駆使し役者の躍動感を巧く演出し立体的に展開していく。AIの功罪を印象付けるため敵国という存在を作り、AIの戦術的利用価値を設定。敵国と時間軸の変化が 何となく臨場感を誘う。一方、もともとAIの使用目的とは…その有用性まで台詞で説明したのは丁寧なのか描きすぎたのか、観客によって好みが分かれるかも。
(上演時間2時間15分 休憩なし)追記予定

野火

野火

世田谷シルク

サンモールスタジオ(東京都)

2026/07/08 (水) ~ 2026/07/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

面白い、お薦め。
小説 原作の力もあろうが、演出とテキレジが秀逸、それを体現する永井秀樹さんの演技が凄い。舞台は敗戦間近のフィリピン・レイテ島、肺病を患った田村一等兵の飢えと孤独を凄絶に描いた力作。いまだ戦争は終わることなく、世界のどこかで勃発し 不安定な状況にある。それだけに80年以上前の最悪な不条理ではなく、今を考える作品といえる。

登場人物を1人にすることで心情表現を際立たせ、同時に語りをすることで客観的というか俯瞰的に眺めているといった感覚。戦争を実体験として知らない後の世代、だからこそ主観と客観を織り交ぜた描き方にリアリティを感じるのでは…少なくとも自分は怖さを覚えた。また信仰は極限(飢餓)状態の人間(精神)を救えるのか、その内なる葛藤も見どころの1つ。

公演の魅力は、小説と違い生身の人間(俳優)が極限状態に置かれた人物を演じ、その心情に迫ろうとするところ。フライヤーの永井さんの表情(頬コケ、無精ひげ等)、その外見から圧倒的な存在感の田村一等兵を立ち上げる。そして ほぼ素舞台を森林・原野のように見立て動き回るさまは狂気そのもの。その姿を効果的な照明と音響・音楽が支えている。
観応え十分、必見の作品。
(上演時間1時間30分) 追記予定

マクガフィンを待ちながら

マクガフィンを待ちながら

ゴセキカク

水性(東京都)

2026/06/30 (火) ~ 2026/07/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

近未来の不思議な物語、しかしその奥には人の複雑な思いが見え隠れする。本人とクローン、<記憶>まで受け継いだら そんな複雑で微妙な思いが静かに揺れる。捉え方によっては、クローンを通じて記憶の中にある思(想)い=確執の氷解どころを探しているようだ。案外それが〈マクガフィン〉だったりして。

人の心は得てして多面的で、時々の心境の変化で異なった思いをする。本作は、記憶に謎を絡ませており、登場人物の繋がりに深みを持たせている。この謎が分かったようで分からない、そんな曖昧さが記憶に重なる。

現実には、まだクローンを身近に受け入れていないが、物語では日常の延長として描いている。書類上の手続き等も描かれているが、あくまで〈心情〉を抱きしめた公演。観応えあり。
(上演時間1時間30分)

ネタバレBOX

舞台美術は、会場の特徴である正面のカウンターを活かしたカフェ。カウンターの上にあるミニ本箱に置かれている絵本。中央にテーブルと椅子、上手に机と椅子。下手に飾り棚。シンプルな作りだが物語を紡ぐには十分。時間の流れは、照明の諧調や衣裳替えで表現する。

カホ(祖母)、里佳子(母)、美生(孫)の三世代の女性が紡ぐ記憶の話。カホの葬儀のため実家に戻ってきた里佳子と美生の親子。そこへクローンを扱う団体の若林が訪ねてくる。カホはクローンを嫌っており、何かの間違いではと訝る2人。そんな2人の前にカホを名乗る若い女がやってくる。今度は戸惑う2人を尻目にカホと名乗る女が居つく。女の正体を探るため思い出話をするが、いつの間にか懐かしさがこみあげ 親近感を抱き始める。

カホは人が亡くなっても クローンによって それまでと変わらぬ日々が耐えられない。不遜のように思え、人のアイデンティファイはどうなるのか、といった素朴な疑問を持っている。一方この店の常連客 大塚広大は亡くなって 今は彼のクローンがやってくる。大塚は死ぬのが怖くクローン生成を行ったと。人の思いや考え方は千差万別、もちろん記憶もそうなのだがクローンによって記憶まで共有できてしまう。カホと里佳子の長い間の確執はクローンを巡っての対立。里佳子はクローン生成に携わっており、若林との会話から それとなく分かる。何故 カホがクローンを受け入れたのか、そしてカホと里佳子がいずれ美生にも話さなければ といった意味深な会話が関心を引く。

里佳子と美生は既に亡く、今いるのは彼女たちのクローンでは?と想像した。大切な人にもう一度会いたい。カホは今までの考えを翻し2人のクローンを望んだ。人としてのカホと里佳子はクローンの在り方で対立したが、クローンの2体は記憶の中での対立はあるが、今の在り様から受容は早い。曖昧な感情は、その時々で変容する そんなシュールさを思わせる公演。
次回公演も楽しみにしております。
HUG!!!

HUG!!!

ギギ

早稲田小劇場どらま館(東京都)

2026/07/02 (木) ~ 2026/07/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

観る者に媚びを売らず、それでいて飽きさせない 力 のある公演。一瞬 パンクロックのような印象を受けたが、描かれているのは 時の流れに身をゆだねながらも 懸命に生きている若者像。若気の中にチラッと見える気恥ずかしさ、真っ直ぐな情熱の迸りが綯交ぜになったよう。会場に入ると、そこはクラブ(自分世代だとディスコ)の空間、天井には大きなミラーボール、演奏ブースにはDJらしき人物が円盤を回す(ターンテーブル)。重低音が響き、会場が振動しているような錯覚。スモークの中に照明の強烈な明滅、その光景は幻想的でもある。

登場人物は2人、若い俳優の瑞々しさが 観ていて気持ち良い。色々な話を断片的に繋ぎ脈絡があるのか否か、そんな不思議な物語を展開していく。妙なリアリズムが観客の心を捉え、観終わってみればエッジの効いた物語だ。よく動き回るかと思えば、並んで立って接客しているだけ。メリハリのある動/静演技、そしてモノローグ的な表現によって伝える。もう病みつきになる公演。
(上演時間1時間15分 途中休憩3分)

ネタバレBOX

舞台は正面奥にスクリーン、真ん中に演奏ブース。その前に学校のスチール机と椅子1つ。客席は半円形にして囲むような配置。ここは東京の渋谷 道玄坂にあるクラブという設定。出演は川合凛さん、笹川幹太さんの2人、狭い空間だがワイヤレスマイクを使う。

●このクラブでボーイをやっている幹太サン、卓球界では知られた存在。場転して後景にスクリーンに真っすぐな道の映像。そして凛サンは二卵性双生児の幹太サンを探していると。2人は交わらず それぞれモノローグで話は進む。
●上から制服(上着)が投げ入れられ、着替える2人。今度は2人並んでコンビニで接客している。そのうち名前を始め、自分自身のことが分からなくなって戸惑う。何者にもなっていない若者の不安や焦燥といった気持を表しているよう。
●突然 舞台中央に円形を組み 2人+他のメンバーを加え合奏。優しく心地良い音色、そのしっかり聴かせる上手さ。

色々な観せ方、パフォーマンスは試行錯誤の実験的な公演といった印象。ジャンル問わずの表現、そこに怖いもの知らずといった若者の特権を見るよう。実にアグレッシブな。チラシにある「月面に行きたい」は未知への挑戦であり、公演の表現そのもの。
次回公演も楽しみにしております。
 杏仁豆腐のココロ

杏仁豆腐のココロ

演劇ユニット「みそじん」

阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)

2026/06/30 (火) ~ 2026/07/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い、お薦め。
タイトルにある 杏仁豆腐のような柔らかく甘いといった内容ではなく、けっこうシビアでヒリヒリするような印象。説明にもあるようにクリスマス・イヴ、離婚を決めた2人の漂流するような会話劇。物語はどこに辿りつくのか分からないが、離婚する原因が切ない。

脚本の面白さ、演出の巧さ、役者の演技(体現) その総合力が観客の関心を惹き 飽きさせない。最後の夜、思い出すのはどうでもいいことばかり。日常の些細なことから旅行先での出来事、そして身の上話からだんだんと身の下話へ変化し…。会話の流れに 離婚する理由が見え隠れしてくる。
ちなみに 前説が面白い仕掛け。
(上演時間1時間25分)🟠橙チーム

ネタバレBOX

舞台美術は引っ越し間近の居間。中央に炬燵とソファ。周りに多くの段ボール箱。後景の窓/カーテンが斜めになっており、半円形の舞台と相俟って何となくゲルの中といった感じ。下手の置台に電話、時々鳴るが留守番電話に設定。そこに吹き込まれるメッセージが前説になっており、既に物語は始まっているよう。寒風吹きすさぶ音や犬の遠吠えが聞こえ、深々とした静けさが伝わる。

小夜子の実家/稼業は廃業し、年明けには引き払う予定。同居している達郎とも離婚し新たな生活を始めようと…。小夜子は弁当屋で働き、達郎は仕事を辞め2年、今では 立派な主夫。性格も違いルーズな小夜子、ストリクトな達郎、引っ越しの手際にも表れている。そんな2人だが、いざ別れるとなると名残惜しい。

小夜子の実家は ちんどん屋、しかし父の放蕩等で廃業、母は父を見限り若い時に家を出て再婚。そんな母が認知症になり徘徊を始めた。一方、達郎は再就職が儘ならないことなど、それぞれの近況を話す。しかし 離婚する決定的な理由は語られない。そのうちセックスレスという身の下話へ。実は小夜子は死産を経験しており、妊娠することが怖い。達郎は死産した子の葬儀を執り行う。死産を通して それぞれが違った辛さ悲しみを抱えていた。自分も達郎の悲しみ、そして遣る瀬無さが何となく解る。

物語に明確な前・後半があるわけではないが、始めはコミカルに飄々とした語りだが、セックスレスあたりから様子が一変し、2人の激情がぶつかる。それまでの建前的な会話から本音が…そこに劇的な要素が仕込まれており 観応えある物語になる。何と言っても 大石ともこサン、菊池豪サン、2人の熱演がみごと。
次回公演も楽しみにしております。
ディアマイドクター

ディアマイドクター

演劇ユニット「暇つぶしチェルトン」

萬劇場(東京都)

2026/07/01 (水) ~ 2026/07/05 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

面白い、お薦め。
脚本・演出は勿論、ミュージカルと謳っているから歌も見事。
公演は、当時(明治期)の状況や風潮を背景に 初めて医師免許を取得した3人の女性たちが、どうして医師免許を目指したのかを描いた 虚実綯交ぜのフィクション。物語は、3番目に医師免許を取得した高橋瑞をモデルにした高水せい を中心に、彼女たちの生い立ちや性格などを描き、女性にとっての閉塞感を浮き彫りにする。誰もがそれぞれの事情を抱えながら今を必死に生きている。無情な不条理に叫ばずにはいられない。

彼女たちが受けた体験や仕打ちが、医療(対象患者)に対する違いを鮮明にする。それでも台詞にある「道は違えども、すべては患者さんのために」、その精神は現代に通じるもの。現代といえば、3人が医師になってから起きた感染症の大流行、それをコロナ禍と重ねることで、いつの世の人の心の在り方を巧みに織り込む。
(上演時間2時間15分 途中休憩10分)【B】

ネタバレBOX

舞台美術は、段差を設え 左右非対称の壁。それが古色蒼然としており当時の雰囲気を漂わせている。また 衣裳やサーベル等の道具にも時代を感じさせる拘り、その丁寧な作りに好感。舞台技術の照明も柔らかく、丸みを帯びた光の中で人物が生き生きと映る。そして無人のときは美しい光景として印象付ける。

没落士族の家に生まれた 高水せい(一役2人〈青年期・中年期〉)、子供の頃から好奇心が旺盛で知識欲もあった。しかし 女に学問は不要で 早く良縁に巡り合い嫁になること。そんな時代閉塞に不満を募らせる。いつしか 人の命の大切さ、それを出産の手伝いをすることによって知る。同時に医療行為は出来ないという現実にぶつかる。

荻野 吟子(女医1番)モデルの萩原ギン子は、夫のせいで不妊になった。当時は男の医者しかおらず辱めを受けるようで受診しなかった。彼女が対象にした患者は女性や子供といった弱き者。生沢 クノ(女医2番)役の吉沢クノは、精神疾患の患者を死なせてしまい医療行為に自信を失っていた。高水せい は、性別や年齢に関わらず困っている人。3人の生き様と医療への考え方の違い、それでも互いを認め合う。そんな高く深め合う姿が尊い。

男社会や家制度、今でいうパワハラ・セクハラといったハラスメント問題を点描する。その生き難い時代にあって、人間らしく生きたい、人の役に立ちたい といった熱い思いを歌で表現する。台詞という直接的な言葉ではなく、歌の歌詞にのせて しなやかに 強かに しかも情感豊かに表現する。そこにミュージカル劇としての真骨頂がある。

明治30年代に流行したペスト、その対応に奔走した女医たち。それを令和のコロナ禍に重ね、疫病に対する庶民の無理解が不安や不寛容を煽り増長させる。公演では、生き方や社会との向き合い方、それを 明治という150年ほど前の出来事を今に生きる我々にも分り易く伝える。その意味では一種の教育劇のようでもある。
次回公演も楽しみにしております。
ラーメンロック!!

ラーメンロック!!

KENプロデュース

シアターシャイン(東京都)

2026/06/30 (火) ~ 2026/07/07 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

ロックに例え、自分の(心の)中で音が響かなくなった。その虚無感を乗り越え成長していく姿を描いたヒューマンドラマ。KENプロデュースは「チューボー」(第十三回公演)で池袋演劇祭優秀賞を受賞しており、料理関係を描いたら実に味わい深い。本作もラーメンという庶民の味、それを一般的な人々に準えているよう。

ラーメン修行=物事に打ち込むことによって得られる充実感、それを反目し競い合いながら技量を高め信頼も深めていく。店内という狭い空間が人間模様という大きな器をもって展開していく。ロック(音楽)は自分を表現する方法、今はラーメン(料理)を作る音が聞こえる。それは幼い時から聞き慣れた父の(寡黙な)後ろ姿でもある。なによりラーメンは自分を映す鏡で、味がそのまま出る怖さ。

冒頭のダンスや生歌で観客の興味を惹き付ける上手さ。物語は、ラーメン チェーン店の社長の社訓が心に響く。味の旨さは勿論、経営としての採算性も大切。何より客に喜んでもらえるような店であること。
(上演時間2時間 休憩なし)【醤油班】追記予定

Days Of Grey Sunlight

Days Of Grey Sunlight

空想実現集団TOY'sBOX

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2026/06/26 (金) ~ 2026/06/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

千穐楽観劇、面白い。
動物の観点で「自由」や「自立」といったことを分かり易く描いた物語。ストーリー性もさることながら、メイクや衣裳等で魅せ ダンスや躍動感ある動き、そのエンターテインメントとしての要素が魅力的。そして擬人化した動物たちの愛らしさが 実に好い。また音楽は動物たちの動きに合わせたテンポ、そのピアノの奏でが優しく効果的。

物語は 概ね説明通りで、舞台は アナタの街から隣の隣の隣ぐらいの隣街…要は身近で普遍的な話ということ。人間に飼われて育った犬・レトは 寝食に事欠かないが 外の世界を知らない。その意味で 知識や経験等は浅い。一方 野良猫のシッシは、日々の寝食を心配しなければならないが、仲間に囲まれ広い世界を見ている。生きている環境が違う犬、猫が触れ合うことで見えてくる情景や心情が観客の心を優しく包み込む。

物語が動き出すのは、「野良犬ゼロ作戦」が始まろうとしていた―。何となく 殺処分をイメージし、外に出たレトは飼い犬から野良犬に間違われ といった緊張感がうまれるが…。人間以外の動物と人間の思惑、その描き方によって物語が全然違った印象(結末)になる。観客が欲している内容、その捉え方によって少し評価が分かれるかも。
(上演時間1時間40分)追記予定

空の下の約束

空の下の約束

劇団龍門

シアターシャイン(東京都)

2026/06/24 (水) ~ 2026/06/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

面白い、お薦め。
さすが劇団龍門、社会派劇でありヒューマンドラマを硬軟織り交ぜて描いた秀作。説明では「都会の片隅にある『富山公園』に住み続けているホームレス」とあるが、台詞から東京の山谷が舞台になっていることが分かる。その地の歴史を通して 今ある貧富/格差・不平等・生き辛さ等を浮き彫りにする。同時に或る事情で関西から逃れてきた女性の出自から、特定の地だけではなく どこにでもある問題を示唆する。

全体的に昭和という時代、そのノスタルジックを漂わせた公演。登場人物から「義理」や「人情」といった台詞が飛び交う。敢えて昭和から地続きの現代を風刺しているように思える。
(上演時間1時間40分)

ネタバレBOX

舞台美術は 後景にメッシュパーテーション 、その前にベンチ1つ。上手/下手は非対称の壁でその前にゴミの山。下手はブルーシート等で覆われたホームレス げん(村手龍太) さんの住処。この構図は龍門の基本型のよう。

富山公園を再開発し 大手資本による商業施設を誘致する。そのためには住み続けているホームレスを退去させる必要がある。いろいろな事情を抱えた人々がいるが、個々の事情は深堀しない。敢えて 水商売を嫌って関西から逃げてきた女を匿う様に受け入れたことくらい。この女曰く 関西でもホームレスが住み続けている地があると。舞台のモデルと思われる「山谷」は、げんさん曰く「戦後復興、高度成長期を支えた人々が住んだ街」であり、今の日本(経済)の礎を築いた地でもある。土地には歴史があり、人の活気が息づいている。

一方、ホームレスは生産性がなく人権など無いに等しい。行政は経済至上に則り、強制執行してでも立ち退かせようとする。ホームレスと国との板挟みになる区職員 たかいち の苦悩がリアル(リバタリアニズムの模索?)。生活保護や就職斡旋のような寄り添った対応、しかし立ち退きに応ぜず遅々として事は進まない。業を煮やした国は…。昔気質の極道や ヤクザから公務員になった男など、立場が人を作っている。アウトロー的な観点だが、けっして正邪/勧善懲悪といった描き方ではなく、自分の正義(信念)を貫けといった生き様を問うている。

登場する一人ひとりの見せ場を作り、日常の暮らしを点描することで多様な人間模様を紡ぐ。人に個性があるように生き方も様々。げんさん流に言えば風の吹くまま気の向くまま、しかし空はどこまでも繋がっており、どこに居ようとも人の縁は繋がっている。
何と言っても 区職員 たかいち さなえが捲し立てる激情が庶民の本音、そして切実な思いであろう。それにしても げんさんの機密事項は何だったのだろう、気になる。
次回公演も楽しみにしております。
海ねこ症候群 結成5周年企画第2弾 スタジオ公演

海ねこ症候群 結成5周年企画第2弾 スタジオ公演

海ねこ症候群

王子スタジオ1(東京都)

2026/06/25 (木) ~ 2026/06/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

㊗️結成5周年企画第2弾 面白い。
初の外部脚本家(3人)による「メゾン江古田103号室~きゅんきゅんしたい~」というテーマによる競作。フライヤーにある謳い文句「最高に贅沢で挑戦的なオムニバス」は楽しめた。当日パンフに 主宰/演出の作井麻衣子さんが「何とも難解なテーマでお願いし」とあるが、見事にその世界を表していた。

当日は 台風予報で足元が悪かったが観に行って正解。観たのは Aチーム「すさまじい おやさい」と Cチーム「壮大でささやかな二人芝居」の2本。作井さんが出演する「ふたりは(最高の)ともだち」が観られなかったのが心残り。
(上演時間1時間15分-2本 作品間に休憩なし)

ネタバレBOX

正面に何枚ものポスターや絵が貼られているが、劇中(物語)のことを表している。上手壁際に冷蔵庫や本棚、ハンバーラック、ベット。中央奥にテーブルと椅子。下手にソファが置かれている。客席天井部にミラーボール。雑然としているが、全ての小道具/小物は使用する。
物語の概要は 説明にある通り。

A「すさまじい おやさい」
八百屋で働くわたし(カホ)は、あの人(りょうすけ)の部屋(テーマからするとメゾン江古田103号室)へ行くが 留守。部屋をきれいにしているところへ ルンバが話しかける。床に落ちている萎んだピーパンを拾ってほしいと。ルンバ曰く埃のような小さなゴミは掃除できるが 大きなゴミは掃除出来ない。「拾って」「嫌だ」の繰り返し、漂流するような会話が続き、カホがルンバに向かって部屋から出ていけと。実際 出ていこうとすると引き留める。

カホは 何でも熟し八百屋でも働き者、それゆえ仲間からは嫌われ疎まれている。一方ルンバは大雑把(ピーマンさえ拾えない)で何もしたくない。正反対の2人が一緒に過ごすうちに、ルンバが飽きてくる。「ゴドーを待ちながら」ではないが「りょうすけを待ちながら」交わす会話、反対の思いが交差することによって不条理が立ち上がるよう。時間の経過は、ミラーボールに照明を当て回転光の流れによって表わす巧さ。ルンバが人型ロボットなのか生身の人間なのか、一方 カホは萎んだピーマンに準えて劣化を恐れ冷蔵庫へ入ろうとするが…。何ともシュールな世界観。

Cチーム「壮大でささやかな二人芝居」
金ぴかのツナギ衣裳を着こんだ新型ロボットの彼氏。一方 ダンボール箱で作った旧型ロボットの彼女。ここ火星から見る地球は 黒い霧状に覆われている。早い情景転換と早着替えで 地球史であり人類史を駆け足で展開していく。人類誕生から最期の人間にして 彼女の製作に関わった博士との思い出まで盛りだくさん。博士が名付けてくれた名前は「ノア」、勿論「ノアの箱舟」を意識している。

人類は自分たちの行為で滅亡、博士は文献によって知り得た(歴史)知識を彼女に教え伝えた。それを持続可能にするため、博士がかつて結婚しようとした女性のために買った指輪をプレゼントした。それを売ってエネルギー補給するようにと。今、新旧のロボット 彼氏と彼女は博士が予言した時に地球を眺めている。黒い霧が晴れ 地球は青かった と そんな壮大な話を103号室で繰り広げて楽しんでいる2人の物語のよう。壮大なのか卑小なのか判然としない、謎めいたところが面白い。
次回公演も楽しみにしております。
『逸出・ハムレット』

『逸出・ハムレット』

演劇企画ヱウレーカ

インディペンデントシアターOji(東京都)

2026/06/24 (水) ~ 2026/06/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

面白い。初見の団体だが、演劇企画ヱウレーカ公演は凄い!また注目すべき団体を見つけた。

逸出とあるだけに、その描き方が多重に立ち上がり、観客の捉え方によって更に面白味が違ってくる。その世界観こそが妙味であり、どう書いてもネタバレになりそう。概要こそシェイクスピアの「ハムレット」だが、描かれているのは彼の内側(心)から捉えた21グラム=魂の彷徨。これにはシェイクスピアもビックリだろう。

物語を支えているのは、舞台美術でありメイクや衣裳といった外観で それだけでも楽しめる。また劇場の中二階部分も上手く使い俯瞰的であり劇中劇仕立てにも思わせる、そこにも逸出の意味合いが込められているよう。シンプルだがスタイリッシュで心情表現にはピッタリ。
(上演時間2時間) 【Team B】

ネタバレBOX

舞台美術は、入り口側に舞台を設え 反対側に客席、この配置によって観客は中二階部分を観ることができる。舞台上手に小さな段差、不規則に真鍮ポールが横並び。何となくハムレットの自縄自縛した心を閉じ込めている牢のようにも見える。全体的に薄暗いが、それだけに ちょっとした色彩ある照明の諧調は効果的だ。また和風音楽(小太鼓や拍子木の和楽器)や音響も効果的で物語を印象深くする。

物語は亡霊・先代王ハムレットが夜中に現れて 新王クローディアスに復讐するよう囁くところから始まる。説明にある「復讐の炎に身を捧げ、狂気に身をやつす。そうして炎に己も焼かれ、ついに自らも毒刃に倒れる」と。このハムレットには「To be, or not to be, that is the question」という有名(2者択一といった切羽詰まった)台詞はなく、「Fair is foul, and foul is fair」といった「マクベス」のオクシモロンの台詞。そして旅回りの一座や墓守といった者も登場する。

王城はハムレットの脳(城)内であり、登場する人物は自身の部分 分身であり己の葛藤を表している。例えば臣下で友人のホレイショーは<理性>、決闘したレアティーズは<迷い>といった化身を表している。脳内で掘っている穴は自身の墓であり、懊悩が伝わる。それを旅回り一座が茶化し劇中劇仕立てにして観せているよう。ハムレットという視点はブレないが、多重ともいえる構成が観る者の想像力を掻き立てるが、同時に翻弄するようでもある。

メイクや衣裳 そして小道具まで観(魅)せる工夫をしており、ハムレット物語の世界をしっかり表出している。花吹雪ならぬ血吹雪を連想させ、物語性を支える演出も好かった。ハムレットは生者なのか死者なのか その捉え方によって現在/未来、または過去といった世界観を表している。多重な構成によって色々な世界観を織り込んで観せた好公演。
次回公演も楽しみにしております。
せかいをみてくる

せかいをみてくる

アンティークス

小劇場 楽園(東京都)

2026/06/17 (水) ~ 2026/06/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

「これから」観劇。
今どんな世界の物語を観させられているのか、その不思議感覚が公演の魅力。どんどん惹き込まれ、最後まで興味が尽きない。2015年杉並演劇祭大賞受賞作、11年ぶりに蘇るアンティークス幻の代表作は見応えがあった。少しネタバレするが、「ただいま」「おかえりなさい」「元気だった」 という何気ない言葉が物語のカギを握る。意識した記憶と或るモノによって覚醒させられた無意識が交差した時、主人公 しのぶ と母 ゆみこ の想いが溢れ出る。

表層的には SFで夢落ちのような印象だが、それとは別に人のいろいろな感情が押し寄せるといった現実の重み。当日パンフにテーマは「旅」とあり、人生を「意識=魂」の旅と仮説したとある。現在(2015年)と過去、その時の繋がり交わりこそが人と人の絆、それが優しくも悲しい、そして残酷だ。
(上演時間1時間35分)【チーム海】㊟ネタバレ

ネタバレBOX

舞台美術は、中央に木製のテーブルと箱馬、入り口の対角線上(角隅)に飾り棚とピアノ。上演前は衣類が散らばっている。飾り棚の上にミニサボテン。

しのぶは就職活動をしているが、うまくいかない。母は そんな娘を明るく元気に励ます。「ただいま」「おかえりなさい」の繰り返し、しのぶ はサボテンに向かって元気だった?と話しかける。とにかく生き生きと活動し 愚痴と慰みが微笑ましい。母と娘2人の家に父と妹と名乗る親子が入り込む。ケケケケという言葉しか発しない奇妙な者、闖入者のように思えたが、母は自然と受け入れる。しのぶは混乱するが、いつの間にか不思議な力に魅入らされている。しのぶの親友 くるみとの交流、父母妹との家族旅行といった穏やかな暮らしを点描する。

お父さんや妹さっちゃんの不思議な力、いつの間にか母が18歳の時代へタイムスリップ。しのぶは 自分が生まれる前の世界を俯瞰している。母から 父は事故死と教えられていたが 実は違う。父と思しき人 学(マナブ)と母は結婚するはずだったが…。ゆみこは眠り病という難病に罹っていることが判明し、一芝居打って自ら別れた。堕胎するつもりだったが、結局は産んで育て始めた(しかも記録用の映像まで撮影)。

ゆみこは記憶障害に陥りながらも、しのぶが18歳になるまで一緒に暮らした。実は しのぶも3年間眠り続けた。眠り病は遺伝し、その間にゆみこは目覚め、しのぶに「おかえりなさい」と話しかけていた。一方、今しのぶは目覚め ゆみこに向かって「ただいま」と。無意識下(眠り)にいる母または娘に向かって交差する想い=記憶の混濁、母と娘の無意識の交信のようなもの。居るのが当たり前と思っている人、その日常がどれほど大切で愛しいことかを痛感する。人の滋味をしっかり味わわせてくれる秀作。

或るモノ=父と妹は、地球人ではなく遠い星からやってきた異星人のよう。自星に戻ることもできず、眠り病⇨記憶障害の(忘れっぽくなった)母=ゆみこの意識下に潜り込み、タイムスリップさせることで、2人の想いを繋ぐ。ピアノの生演奏、照明の絶妙な諧調が情景を支え、心情を印象的に表す。それが魂と魂の共鳴にピッタリな演出になっており見事。
次回公演も楽しみにしております。
隕石

隕石

SPIRAL MOON

「劇」小劇場(東京都)

2026/06/11 (木) ~ 2026/06/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

思(想)いを伝える いや寄り添うといった心温まる物語。冒頭は限界集落からの逃避的な印象だが、その後 不思議な出来事が…。この公演が面白いのは、表層の可笑しさの奥にある哀惜が透けて見えるところ。少しネタバレするが、場面は突然転換し 全然違う話が展開しだす。しかしラストは緩く繋がり余韻を残す。

もう1つの面白さは、眼前で繰り広げられている物語を通して、自分なりの別の物語が立ち上がってくるところ。色々な想像力を掻き立ててくれる好公演。自分の中では「隕石」は比喩、もっとも劇中で隕石が落ちてという台詞があり 大きな音が響くが。隕石は抗えない運命のようなもの、その時 人はどのような選択と判断をするのであろうか。
(上演時間1時間20分)

ネタバレBOX

舞台の後景は白幕、照明効果によって木や枝のシルエット。始めのシーンは やや下手側に木のベンチが1つ。次は中央にテーブル 椅子そして天井に飾り電球1つ。このシンプルな装置は別役実の芝居でよく観られるもので 何となく不条理を連想してしまいそう。

始まりは各駅停車しか停まらない駅舎(ベンチ)。この街で生まれ育った女 榎本が外の街 とりあえず東京へ行ってみたいとやってくる。ベンチには先客(男=駅員)がおり、何故か榎本を街から出ないよう引き留める。いや強硬手段を用いて阻止しようとする。乗ろうとする電車が近づいてきた その時、派手な服を着た男 布袋(自称 税理士)が現れ「遺産相続人に選ばれた」と奇妙なことを言い出す。金品ではなく、出来事の遺産相続、それを体験してほしいという。

場面は変わって、夫婦と夫の兄の3人の会話。妻 幸子が突然 夫 賢二に別れ話を切り出し、兄 健一は傍観している。妻曰く好きな人ができた の一点張り。夫婦の漂流するような別れ話、そのうち 夫が自由の身になることへの喜びを見出す。逆に妻はそれがおもしろくない。兄は自分の病(stage-1 手術)のことが心配で 弟夫婦の会話は二の次。場面は変わり 結局 榎本は或る事情を知り、この街に留まる。さらに痴呆が進んだ奥様が現れ、再び布袋が現れ遺産相続の話へ。

自分の想像は膨らむ。隕石はいろいろな災害(人災も含む)の隠喩で、人は運命に抗うことができない。突然のことで言えなかった思い〈遺産〉を その人に代わってどう伝え〈相続〉るのか。その人が選択したこと、そして記憶に留めること そんな人に寄り添った心温まる物語。同時に、冒頭の場面は限界集落になるという事情だけではなく、その地が掛け替えのないほど大切(見守りを含め)な場所 ということが浮かび上がってくる。人の思いを じんわりと噛みしめる好公演。
次回公演も楽しみにしております。
借金大王

借金大王

中央大学第二演劇研究会

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2026/06/11 (木) ~ 2026/06/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

バブル経済崩壊の20年後、そして今から20年前というから2006年頃の物語。説明にある雇用が安定せず、社会には大きな格差と不安が生まれたことは事実、しかし そこから成長するもの…国は「ギャンブル推進法」を制定し 一発逆転のチャンスは国の支援もあり急速に成長は虚構(貯蓄から投資〈運用〉を推奨するが)。この虚実を巧みに織り込んで展開する。
(上演時間1時間20分)

ネタバレBOX

段差の小さい素舞台、周りは黒い壁や暗幕で全体的に薄暗い。上演前は靴音が響き不気味な雰囲気を醸し出す。物語は総理大臣の国政演説のようなシーンから始まる。

国民の姿を描いているようで、実は国の施策を皮肉っている。国の施策に翻弄される国民、その貧困化はそのまま国力の衰退に繋がり、タイトルにある「借金大王」は国民というよりは国家そのもの。いや借金は後世代へのツケ回しで、その時(現在)だけではなく、未来への負債。そんな世相を切り取った物語。ギャンブル推進を表したパチンコ場面、確変を望むがなかなか こない。そこから地に足をつけた施策への転換。

物語に「運 貸し」というビジネス(ラックバンク)が出てくるが、「運」を「金」に読み替えれば 都合よく貸付、状況が悪くなれば貸し剥がしといったリアルが立ち上がる。それを国政で取り上げるという、まさに運否天賦で茶化すような話。物語で描きたいことは 何となく解るが、表層的で深く切り込めていないのが惜しい。「ギャンブル推進法」や「国民努力評価法」等、言葉(台詞)の裏にある重みが もっと真に迫ればよかった。

演技はオーバーアクションで少し粗く、表現力に難があったのが残念。今までの中大第二演劇研究会の公演は奇知にすぐれて といった印象だが、本作は解りやすいが 有り触れた内容(単純な対立軸)のように思えた。
次回公演も楽しみにしております。
半神

半神

早稲田大学演劇倶楽部

早稲田大学学生会館(東京都)

2026/06/04 (木) ~ 2026/06/07 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

久しぶりの学生演劇。演目「半神」に惹かれて観に行ったが、予想を超える面白さ。勿論 原作/脚本の魅力もあろうが、演出(客席も含め)が面白い。少しネタバレするが、シャム双生児姉妹を通して人の心にある願望というか欲望をあぶり出す物語。姉妹の外面や内面を醜/美や知/痴などで対置させることで、人の心の在りようを描く。生まれた時からいつも一緒、離れることも出来ない。その気持が「孤独」を欲する。しかし 歳月が二人の運命を分つ といった内容。

出ハケを含め 物語の外観を表す動きは十字(縦横の直線)、心情表現はぐるぐる回るような動き、その変化によって物語の状況を分からせる工夫。また姉妹の対比は登場人物の色彩(例えば服や靴など)や可動する対になった木材櫓で表す。櫓は、台詞にある半螺旋階段であり灯台の象徴であろう。その装置を合体したり分離させることで、二人の情況を演出する。
(上演時間1時間50分 休憩なし)追記予定

外のことはわかりません

外のことはわかりません

ポポポ

シアター711(東京都)

2026/06/03 (水) ~ 2026/06/07 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

面白い、お薦め。
間取りという限られた空間を通して、人が大切にし 何を優先したいかを描いた良作。そこに人それぞれの思考、生活様式や社会的な問題を絡め、幅と深みのある物語を立ち上げている。

どうして「子供部屋、いらないです」なのか が肝だが、ラストはその言葉の裏返し(真意)が心に響いてくる。実演では表現し難い場面、それをポポポらしい影絵(手遊び)演出で効果・印象的に観(魅)せる巧さ。
(上演時間1時間50分 休憩なし)追記予定

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