
春に思い出す、夏の君はもう遠く
劇団皇帝ケチャップ
シアター風姿花伝(東京都)
2026/04/15 (水) ~ 2026/04/19 (日)上演中
予約受付中実演鑑賞
満足度★★★★
高校時代と それから12年後を交差して描いた歪な友情物語。いや友情と言えるか疑問であるが、共通の知り合いである男を巡ってマウントを取り合う。そのアプローチを現代的な問題と絡めて描き考えさせる。説明にある「2人は同じ芸能事務所『レインツリー』に所属し、コンビのように売り出されていた」という設定とその後が肝。少しネタバレするが、芸能界 しかも高校生のゴシップは…そんな えげつなさを垣間見せる。
スキャンダルを作り上げる、そういう状況を巧く捏造し相手を追い落とす。上っ面だけの薄っぺらい言葉の裏に、ドロドロとした陰湿な思いが込められている。しかし物語は女子高生という姦しさを前面に押し出すことで 和んだ雰囲気を漂わす。それがテンポよくといった印象になっている。場転によって時代を往還させ、高校生(18歳)と12年後の30歳前後の大人の女性を1役2人で巧みに紡いでいく。
(上演時間1時間55分 休憩なし)【夏】 追記予定

季真〆組『好きなだけじゃダメですか?』
グッドディスタンス
シアター711(東京都)
2026/04/10 (金) ~ 2026/04/19 (日)上演中
予約受付中実演鑑賞
満足度★★★★
面白い、お薦め といっても実質1日の公演。観ることが出来てラッキーだった。しかも最前列中央という かぶりつき席。
公演は、制作上の都合により朗読劇へ変更、それでも面白いから動きのある演技が加わったらと少し惜しい気がした。物語は、今奈良孝行さんのト書きで始まる。向かい合った部屋に住む2⼈の⼥性がベランダで話している。1人は前から住んでいる住人 美鳥(みどり=池上季実子さん)、もう1人は最近引っ越してきたばかりの中年女性 辰乃(しの=本田真弓さん)。ベランダ越しに 美鳥は人懐っこく辰乃に話しかける。自己紹介をし合って すぐ、自分は占い師で何でも占ってあげる、お友達になったんだから格安(お友達価格)でね と…。
ここから始まる会話は辰乃の心情は勿論、結婚に関する時事問題を織り込み皮肉や批判が鏤められ、上辺だけの恋愛相談に収まらない。そして日替わりゲストの和泉元彌さんが辰乃の(元)カレとして登場してからは更に会話がヒートアップしていく。役者陣の朗読力が凄く、会話がどこに辿り着くのか、そんな漂流する展開に惹(引)き込まれる。熱演とは、この役者陣のためにある言葉かと。
(上演時間1時間20分) 追記予定

煙が目にしみる
ジントサイン
インディペンデントシアターOji(東京都)
2026/04/15 (水) ~ 2026/04/19 (日)上演中
実演鑑賞
満足度★★★★
㊗ジントサイン produce vol.01。面白い。
物語は 説明にあるように、地方都市にある斎場の待合室が舞台。白装束の男二人、彼らはこれから火葬されようとしている死体の幽霊。これまでの人生に思いをはせているが、ボケ始めたおばあちゃんが故人の姿が見え、話が出来るという舞台ならではの奇跡が…。
何回か観たことがある作品。今作は、場面毎のメリハリを さらに強調することによって印象付けと余韻を残す。おばあちゃん曰く「この世の最期の友達、いや あの世の最初の友達が出来て」、全編ユーモアと情感に満ちた感動作。
(上演時間1時間30分 休憩なし) 【Aチーム】

賢治の風
劇団演奏舞台
演奏舞台アトリエ/九段下GEKIBA(東京都)
2026/04/10 (金) ~ 2026/04/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白い。
演奏舞台らしく端正に丁寧に描いた公演。プログラムとしては、宮沢賢治の詩集(8編)の朗読と朗読(音楽)劇「どんぐりと山猫」という構成。光と影と言葉が融合した作品。朗読と朗読劇とでは敢えて演出というか発声を変えたのであろうか。素晴らしい ということを前提に、自分のちょっとした拘りが…観客の好みの問題である。
(上演時間1時間15分)

短編集 さよならバイバイ。また逢う日まで
アクト計画(株式会社バランス企画)
アトリエ三軒茶屋(東京都)
2026/03/28 (土) ~ 2026/03/29 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
今の時季に相応しい「別れ」をテーマにした短編3作。表面的な「別れ」以外に、べつの「別れ」があるような そんな深読みが出来る物語。また「旅立ち」といった 次のステージへのニュアンスが含まれているようにも感じた。3話とも2人芝居 その会話で紡いでいくが、内容的には分かり易く 肩ひじ張らずに観ることができる。
初めて行った会場、舞台は小さく 定員28名と少人数のため会話劇が適しているよう。本公演も至近距離での観劇で、表情やちょっとした仕草も見逃すことはない。逆に言えばキャストの方が緊張しかねない。しかし等身大ともいえる設定、自然な演技によって その場に立ち会わされているような感覚になる。
3短編のタイトルは次の通り。
「いまこそわかれめ」(脚本:目崎 剛 氏)
「ウルドル」(脚本:池田智哉 氏)
「沼袋第3号踏切にて、3月」(脚本:池田智哉 氏)
できれば、もう少し繋がりのある連作集 にしたら もっと「別れ」というテーマが重層的になり、印象深かった と思うと惜しい。
(上演時間1時間)追記予定

Once more,
VOGA
北千住BUoY(東京都)
2026/03/27 (金) ~ 2026/03/29 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。
未見の団体(VOGA-舞台芸術集団)だったが、観応え十分。公演を敢えて前半と後半とした場合、前半はダンス(VOGAでは「動作」と呼ぶ)、後半は物語(演技)といった観せ方だが、その視覚的違いが融合していくような面白さ(独特の世界観)がある。実は前半の動作は 公演における情景であり心情を表しており、後半の物語で血肉の通った人物像が立ち上がっていく。
物語は人の生き様、自然環境から社会平和まで広範な問題を提起しており、その提示する出来事が現実に起こり得る そんな隣り合わせにあるもの。それだけに興味深く 怖さもある。フライヤーに主宰の近藤和見 氏が「境界に寄せて--というタイトルで『と、ある港町の物語』・・それは現在から未来の日本のどこかの港町」とある。しかし劇中では過去でも未来でもない、今の物語と言う。それは風景的な 曖昧な境界ではなく、人間の曖昧な選択 もっと言えば誤った選択に警鐘を鳴らしているようだ。
VOGAの特長である「動作」、その体幹はしっかり鍛え上げられ、纏う衣裳等にも意味合いを持たせている。例えば海の表現、2026年(現在)は「深い海」という役名で浮遊感ある布地にエメラルドグリーン、2066年(未来)は「浅い海」で同じような布地だがライトブルーといった違いがある。その40年の間に環境が悪化し漁業の生態系が変化したことを表している。映像や音響/音楽そして照明など演出にも細かい工夫が凝らされ 実に見事。
(上演時間2時間15分 休憩なし)追記予定

おくらいり
ゼータクチク&ACTACTION by TEAM HANDY
新宿眼科画廊スペース地下(東京都)
2026/03/27 (金) ~ 2026/03/31 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
説明に「ゼータクチクは、良くも悪くも、平気で観客を裏切る集団ですからね。真相は、現場で確かめてください」…観ました。そしてネタバレにならないよう書くには難しいことも確認。物語の世界観というか構造は、理屈が合っているかではなく感覚・感情で観る舞台。その内容は面白い(伏線は回収)し 惹き付ける 力、魅力がある。予想以上の面白さで、良い意味で裏切られた。
面白いと言えば パンダの被り物をした前説、スケッチブックをフリップ代わりに捲っていく。缶ビールやペットボトルのお茶が無料でもらえる。フリップには「一杯ひっかけて観るぐらいが ちょうどいい芝居」そして「まじめに観られると緊張するから」と。被り物をしているから、代わりに観客の1人に 非常口の場所やトイレへの案内等の注意事項を発話してもらう。本編以外での客弄りだが、仄々として面白かった。ちなみに観客は先客を見て「おはようございます」と挨拶、何となく同業者が多く来ているような。そう言えば発話していた観客も場馴れしていた。
この会場はウナギの寝床のように横長(奥行)、それを上手く使って物語を展開していく。多くのダンボール箱を使って 或る光景を表しているが、さらに その側面を利用しスクリーン代わりにする。それらの小道具をパンダが事前チェックするように歩き回る姿が愛らしい。上演前のサービス、そして和ませる雰囲気作りに好感が持てる。
(上演時間1時間40分 休憩なし)本編は ネタバレに追記する

塵芥屍
舞台芸術創造機関SAI
ウエストエンドスタジオ(東京都)
2026/03/18 (水) ~ 2026/04/30 (木)上演中
予約受付中実演鑑賞
満足度★★★★
㊗20周年記念劇場本公演。
混沌とした世界観、自分の中で想像が膨らみ 色々な物語を創っている。表層的には幻想・幻覚・迷宮そして夢オチなど あやふやな概念ばかりが浮かぶ。しかし観(魅)入ってしまう中毒性のある公演、それが最大の魅力かもしれない。
メイクが異様で、そのビジュアルから この世のモノ 出来事ではないよう。しかし 世の中の不条理がリアルな光景として浮かび上がってくることも否定できない。この虚実に思える不思議な感情を抱いたまま 疾走するように駆け抜ける。
(上演時間2時間15分 休憩なし)追記予定

遠津川の両雄
祭文庫
シアター711(東京都)
2026/03/20 (金) ~ 2026/03/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
歴史に「もし」 や「仮に」といったことがあったらと思わせる、事実と虚構の境界線にある物語。その想像させるところが舞台らしくて面白い。タイトル「遠津川」は現在の奈良県にある十津川、そして両雄とは そこに居る郷士(下層武士)の指導者2人。時は戦国時代、その時代を生きる2人の考え方、生き様--鉾/盾といった関係を描いている。内容は、内輪揉めや矛盾とも違う、謂わば矜持のようなもの。
少しネタバレするが、物語の中に出てくる「擬死再生(ギシサイセイ)」という台詞 これが肝。初めて聞く言葉で 当日パンフには「山岳信仰や修験道において山や霊地を他界と見なし、そこを巡歴する厳しい修行を通じて、一度死んでから新たに生まれ変わるという概念や宗教的行い」とある。客席の中段まで傾斜した花道を設えているが、これによって山深さ 古(山)道を表しているよう。公演は、小劇場にもかかわらず 客席数を減らした花道で分かり易く、小道具や衣裳(和装)等のディテールに拘り 丁寧に観せるところが魅力。ただ 殺陣が窮屈に観えたのが惜しい。
(上演時間1時間45分 休憩なし)

「ミカンの花が咲く頃に」2026
HOTSKY
座・高円寺1(東京都)
2026/03/18 (水) ~ 2026/03/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。
パンフに「農地を分断された九州のミカン農家の実話を元に社会を見つめ、今を生きる人々の姿を描いた舞台」とある。高速道路建設に伴う猿ケ実村の立ち退き問題を描いた群像劇。何でもかんでも国-行政の施策を反対ばかりしていては発展は望めない、しかし それを無批判に受け入れるばかりでは当事者の生活や環境は成り立たない。この公演、表層的には立場や思惑といった違い 二項対立のような展開になりそうだが、少し観点をズラしたところが巧い。それがチラシにしっかり書かれている。「考えてるんだ。どうすればみんなが悲しくない未来が来るのか、考えてる」、この台詞を言った人物の背景(経歴)と思いが重しとなっている。
2015年秋。母 野枝の十三回忌に出席するため、長女の拓未を伴って訪れた美羽。共に生きていくことはできないかと模索する村の人々の姿が、美羽や拓未に変化をもたらしていく と。村の当事者の立場から距離を置いた2人の心情、しかし 拓未の中に燻っていた自立心に繋がる。物語は 社会的な問題を描きつつ、人間ドラマ しかも夫々の成長譚も浮き彫りにする。
少しネタバレするが、物語は現在と過去を交錯させ、さらにラストは未来をも描く。時の変化は、登場人物とその衣裳 そして喋り方に特徴がある。冒頭は方言(台詞)が聞き取れないところもあるが、取るに足りないこと。
少し気になったのが、2015年という設定。タイトルにもなっているミカンの木がある山の崩れ、山腹にあった奉納神楽の神社が崩壊した。その災害の根本原因は何か?神社は避難場所に指定されていた と。何となく東日本大震災を連想したが…。
(上演時間1時間50分 休憩なし)

朗読劇『シロノオト』
m sel.プロデュース
アトレノワ(東京都)
2026/03/19 (木) ~ 2026/03/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白い。心を強く揺さぶる物語。
舞台は 冬の東京、路地裏にあるバーでの或る夜の話。客の愚痴とも嘆きともいえる独り言、それを聞かされる いや聞く店員との滋味溢れるお話。物語は5話から成っており、訪れた客には見知った者もいるが 常連客ではない。フラッと立ち寄り酒を飲んで思いを吐露する。顔なじみではない店員だからこそ愚痴がこぼせる。静かに淡々と話す姿、そこに内面を滲ます巧さ。照明の諧調とピアノの音色が優しく包み込むような演出。ちなみに5話にサブタイトルが付いていたのか聞きそびれた。
話に共通しているのは「決別」といった悲しみ、胸に去来する想いを振り切るかのように酒を飲む。客によって酒の嗜好や種類が異なる。その酒に纏わる話が物語の内容に深く関わっており印象深い。キャスト(全員 女優)はデザイン違いであるが皆 白色衣裳で統一。椅子が2脚あるがそれにもシルクの布。台詞の中に 雪がちらつくと…。全体的に白をイメージさせ、そこに浮遊感と透明感を表す。同時に抒情的な印象。
(上演時間1時間25分 休憩なし)

牡丹の花は匂えども
遊戯空間
上野ストアハウス(東京都)
2026/03/18 (水) ~ 2026/03/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。観応え十分。
三遊亭圓朝の落語にかける情熱というか覚悟、そして息子 朝太郎との親子関係を中心に描きつつ、明治時代における世相や風俗そして芸能史を浮き彫りにする 端正で重厚な物語。その時代感覚を観客にも体感させるような…この劇場で履物を脱いで入る のは遊戯空間の公演ぐらい。明治期の(落語)寄席は座敷布団だったこともあり、その雰囲気を味わわせる工夫のよう。
舞台上に 捲りがあり、さらに語りが 年代順に話(出来事)のさわり を分かり易く話す。キャストは18名、そのうちシングルが6名だけ。多くのキャストは複数役を担うが、情景が混乱することはない。それだけ場景の内容が それぞれ独立した見せ場を持っており魅力的なのだ。もちろんキャストの演技力は確かで、照明や音響/音楽といった技術が効果的に支えている。
朝太郎の悪行(すりの手先)が新聞沙汰になり、その様子を表すかのように客席に「東京曙新聞」を配布する。その新聞に「コレラ流行--感染が拡大--死者が十万人を突破した」という記事、そしてコレラで客が寄席(落語)に来ないと嘆く。まだ記憶に新しい コロナ禍という現代の(芸術)活動に重なる出来事も点描する。圓朝個人のことだけではなく 社会との関りといった幅広さ奥深さも観せている。
秀作。
(上演時間2時間30分 休憩10分)追記予定

墓場、女子高生
あるいはエナメルの目をもつ乙女
テアトルBONBON(東京都)
2026/03/18 (水) ~ 2026/03/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白い、お薦め。
自分は未見であったが、全国で上演が繰り返されている人気戯曲(作:福原充則 氏)らしい。演出はイトウシンタロウシ 氏、当日パンフに「令和の今、土の下から掘り起こし、皆様に手渡し」とあり、「オリジナルの初演よりも、わかりやすく、まっすぐに、伝わるように」とある。奇妙な話であるが、思春期の女子高生の表し難い心情が 物語を通して浮かび上がる面白さ。
亡くなって幽霊として彷徨っている女子高生、その彼女の墓で屯(たむろ)する友人たち、そこに地に足の着いた あるある女子高生の生々しい感情が揺れるよう。物語は、女子高生(合唱部)たちと亡くなった友人、そして異界の…が繰り広げる奇妙な話。女子高生たちは、今日も学校の裏山にある墓場で授業をサボって戯れている。やはり説明にある「残された人間は、何をもって死者との関係に区切りをつけるのか」が肝か。
彼女の死の理由・原因は何か、その謎を抱えつつ物語は展開する。しかし この「死」という関心事が 逆に「生」を考えさせる妙になっている。少しネタバレするが 序盤で「生/死…実は死が前提にあって生きている。死から生がうまれる」といった旨の哲学的な台詞がある。そして終盤に「私が死んだ理由を みんなが決め直して」という理不尽な別れに、1人ひとりが答(応)える。最後の1人が「(これで)私たちの死ぬ理由が一つ減った」には唖然、さらに この答えに亡くなった主人公が十字を切って「赦す」と。この独特の世界観、そして劇場という空間でしか味わえない妙味、怪作ならぬ快作だ。
(上演時間2時間15分 休憩なし)追記予定

言の葉サーカス#02
Tokyo Artist Circus
北とぴあ ドームホール(東京都)
2026/03/19 (木) ~ 2026/03/19 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
観応え十分。
前回「言の葉サーカス#01」は 星の言葉に準えたような印象を受けたが、今回は星(座)そのものの特徴を示しているような感じ。6短編はどの話も滋味あるもの、共通しているのは 悩み迷い 時計の針が止まったかのような人々が紡ぐ極上の味わい。
宇宙は暗く そして広い、そんな空間に比べれば人間の苦悩など たかが知れている。しかし 人の暮らしはそんな ちっぽけなものの繰り返しの中にある。人と人が繋がり 前向きになった思考や感情には明るい未来が、そんな力強さが滲み出ていた。
今回は朗読の中に 歌や楽器の生演奏が入る。もちろん朗読力は確かだが、楽器(ヴァイオリン)演奏も上手い。なにより その選曲が物語の内容に合っており実に自然な感じだ。北とぴあドームホールという円形の劇場は、朗読の声だけではなく 楽器の音色が心地良く響いて、それだけで幸せな気持になる。
(上演時間1時間15分)

ふれる、文豪
水中散歩
ホワイエ江古田(東京都)
2026/03/12 (木) ~ 2026/03/15 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白い。この3短編小説の選定と朗読順が妙(テーマ性含め)。自分は3編とも未読だが、一度読んでみたいと思った。
昨年は戦後80年ということで、戦争そのものを描いた作品(例えば 特攻や沖縄戦または物質的困窮等)が多く上演されたが、本作は戦後の精神的疲弊といった物語。そして地続きの現代にも通じる世界が…。
物語は、太宰治「トカトントン(昭和22年作)」 小川未明「明るき世界へ(大正10年)」 林芙美子「雨(昭和21年作)」の3篇で、太宰と林の作品は戦後 間もなくの状況を描いているが、小川の作品は大正期で様相が違う。「明るき世界へ」は<小さな芽>と<幸福の島>から成っているが、その世界観は虚無に通じる。戦後 間もなくの2作品(状況)を橋渡しすることによって、その(間にある)精神構造は特殊なことではなく、いつの時代にも起こり得ることを表しているよう。大正期に書かれているにも関わらず、自分は <幸福の島>が戦時中の或る状況に重なるようで怖い。
役者陣の朗読力は確かで、小説という紙媒体の中の人物が血/肉ある生身の人間として立ち上がる。また声質が異なり 歌う場面(トカトントンの中の「インターナショナル」)では、意図したのか分からないが、語り手以外の5人でミニ混声四部合唱になっており驚いた。舞台セットは箱椅子が7つあるだけ、舞台転換はない。物語の場景・状況に応じて座るまたは立つ位置が違う。全員が黒または濃紺の衣裳(靴も含め)で統一しており、話に登場する人物を 外見で特定しない工夫。朗読に傾注した公演、観(聴き)応え十分。
(上演時間1時間25分)追記予定

ガラパゴス
キルハトッテ
水性(東京都)
2026/03/10 (火) ~ 2026/03/15 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
シュールな世界観、鋭い感性。
表層的には、生きる者と生かされる者といった自立と他律を中心に、周りの人々が振り回される姿を面白可笑しく描いているが、その底は怖い。説明では「日本における人工妊娠中絶を取り巻く事象を扱い、『私たちのSRHR』をテーマ」となっているが、もっと言えば「命」そのものを捉えている。それも人間だけではなく他の動物まで、だからこそ、その象徴としてのイグアナ を想像してしまう。
相手に寄り添った言動をしているようで、実は自分の思いや考えを押し付ける。その噛み合わない会話が不穏で不気味だ。演出は 登場人物の立場や性格をコミカルに描き、重たいテーマを緩衝させているよう。突拍子もない展開だが、この先どうなるのか興味を惹く 力 がある。
水性で何度か観劇しているが、この客席配置は初めてで、少し落ち着かない。物語に集中しようとするが、硝子戸1枚隔てた外の人々の覗き込むような姿/様子が視界に入る。集客や観やすさの関係で、普通の配置(風水の観点は別にして、戸を背にすること)は難しかったのだろうか。
(上演時間1時間25分)

これが私の世界
ViStar PRODUCE
テアトルBONBON(東京都)
2026/03/04 (水) ~ 2026/03/08 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
演劇愛に満ち溢れた公演。観たことがあるなぁと思って、観劇後に主宰で主演の星宏美さんの手書き挨拶を読んで納得。2021年初演「引き結び ~紬ぎ結ぶは はじまりの糸~」を観ており、今回はパワーアップしてタイトルも「これが 私の世界」として上演。舞台に賭ける執念というか情熱が犇々と伝わる内容、しかも前説から舞台用語を説明し「舞台用語集」まで配付する 力の入れよう。
2021年はコロナ禍、演劇を始め多くの活動が自粛を余儀なくされ、星さんの文章にある「芸術が淘汰されつつある状況で このまま演劇の世界に居ても大丈夫なのだろうか…」という不安・心配や閉塞感が世の中を覆っていた。それでも自分の好きな そして信じる道(演劇)を邁進している。その強い気持の表れが舞台から感じられる。勿論 1人の力だけではなく、家族や多くの仲間に支えられていることは十分承知していること。
物語は 舞台公演を行う迄のViStar PRODUCEのリアルと重なり、さらに劇中で 或る困難に立ち向かって という二重の可能性を切り拓くもの。観客は演技と分かっていても、目の前の芝居に心を奪われるのは何故か。それは物語や劇中の人物の中に役者自身の孤独や不安 または嬉々とした気持を感じ取っているからだと思う。この公演ではそんな”激情”を強く感じる。
(上演時間1時間50分 休憩なし)【紬チーム】

ナイト・オブ・ザ・ミミキングパンダ【東京公演】
yhs
インディペンデントシアターOji(東京都)
2026/03/04 (水) ~ 2026/03/08 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白い、お薦め。
説明にある通り 道東にある「猫部村(ねこっぺむら)」が舞台。最近、人や家畜が獣に殺害される事件が起こる。犯人は冬眠しない「穴持たず」と呼ばれるヒグマであろうと推測して警戒を呼びかけていた。そんな時、白黒模様のヒグマが罠にかかっている と。一頭のクマを巡り、村議会、猟友会、クマ殺し反対の人らが白黒をつけるため村役場へと集う。
台詞の中に「ウェンカムイ」という言葉(アイヌ語)が使われ 自然と生き物の共生を謳っているよう。その共存共栄が上手く出来るか否か、舞台セットに「5S活動」の張り紙。村の限りある財政、劇中 その費用対効果を巡る議論も併せて行い、容易に解決できない現実を突きつけている。先人からの言い伝え、鎮魂の意味もあった祭りまで止めてしまった。
人間と熊 いや自然の境界線、そして人間の暮らしを豊かにするため環境を破壊し その代償が自らの暮らしに跳ね返ってくることを描いた警鐘劇。表層的にはコメディだが、その底流にあるのは区別・差別。観たこともない可笑しな世界に笑っていても、何となくザラリとしたリアルな舌触りが残るような話。
(上演時間1時間35分)

帰ってきた?! 新版:プレイス・リバティ
海ねこ症候群
小劇場 楽園(東京都)
2026/03/05 (木) ~ 2026/03/08 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
普遍的で分かり易いテーマを等身大で描いた物語。チラシに 主人公にとって「3階奥にある女子トイレは誰にも邪魔されない聖域」とあり、当日パンフに主宰で作/演出の作井麻衣子さんが、「『孤独』は誰しもが抱えているものであり、ふとした瞬間に素知らぬ顔で隣にいる 」と記している。自分の居心地の良い「場所を見つける」ことは大切。
また「(孤独と)上手く付き合えたらいいものを…私はまだまだ仲良くなれていません。追い込まれてる時こそ、視野を広く持てたらいいな」と。劇団は コロナ禍に旗揚げし5周年。コロナは人の物理的な距離はもちろん、無関心・不寛容といった心の壁 人間関係を作ったようにも思う。話は「ひとり」という当時の情況を反映しているようで興味深い。
物語は、主人公にオカルト研究部と生徒会の三者三様の思惑が絡み合い展開していくが、さらにチラシには書かれていない謎の女子高生が…。最後には謎の女子高生の正体も明らかになるが、その背景が深堀されていないのが惜しい。孤独が好きなのか、孤立させられる怖れ によって描き方が違ってくる。
物語をどう捉え その展開を楽しめるか否かが カギ。
さて 公演は孤独な作業と いろんな縁で出来た多くの仲間ーキャスト・スタッフと歩んだ現在地。この作品は 2023年に初めて筆を執ったもので、今回の再演にあたり大幅改訂したらしい。その瑞々しさが随所に観られる。演出は 舞台(学校中)をくるくる回るように走り、椅子に上がり歌ったりと躍動的。
(上演時間1時間40分 休憩なし)

虚無という名の楽園
シタチノ
「劇」小劇場(東京都)
2026/03/04 (水) ~ 2026/03/08 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白い。表層的にはスタイリッシュ、内容は骨太といった印象。ほぼ満席。
心が折れた時から立ち直り方を忘れてしまったか、無関心を決め込むことで 心穏やかに過ごす、そんな虚無の楽園にいる主人公 一ノ瀬律。その彼がいるアイドルユニット「crest(クレスト)」で問題が起き、少しずつ心の変化が生じ 後悔しないように生きていくことを模索する成長譚。公演は、劇中にアイドルユニットのパフォーマンスとして歌・ダンスを挿入し観(魅)せているのも見所の1つ。
煩わしいことに関わらず 心を閉ざしていれば気楽。しかし世の中、人との関りを閉じることは難しく いつの間にかユニット内の問題に巻き込まれていく。諦めない人への愛情、後悔・反省だけではなく希望を糧として生きようとしだした人々への応援歌でもある。その描き方が現代的なアプローチで面白い。説明にある「彼に会ってしまってから何かがおかしい」の「カレ」が肝。
少しネタバレするが、ユニットが所属する事務所の対応、それがリアルな芸能事務所と重なり興味を惹く。理不尽なことには拳を握り大声で叫び弾糾する。しかしSNSなど特定し難い人々へは…情報があふれる社会の中で「何を信じ、または信じないか」「どう生きるか」を選択することは容易でない。情報に翻弄されながら、それでも自分の信じる道を歩もうとする物語。それをキャストの熱演がしっかり支え紡いでいく。
自分好みの公演。
(上演時間2時間10分 休憩なし)