死刑執行人 〜山田浅右衛門とサンソン〜
世の中と演劇するオフィスプロジェクトM
座・高円寺1(東京都)
2015/01/21 (水) ~ 2015/01/25 (日)公演終了
満足度★★★★
「自分の職業は人殺しなんだ」と認めること
奇しくも日本人2名が異国の地で執行人とともに「死」の瀬戸際にいるニュースが報じられるなか1月21日の初演を観た。革命前フランス・パリの死刑執行人・サンソン一族、江戸時代の死刑執行人・山田浅右衛門、現代の法務省矯正局刑務官・オヤマダタダシ。「職業は人殺し」が共通点である彼らを通してとてもよく描かれているなと思ったのは「葛藤」だ。登場人物たちが殺すのは基本的に「罪人」で、時の権力者や社会システムから「殺人行為」の承認を受けているのに、やはり人を殺すことは周りの人間から"そういう目"で見られることから免れないんだなということがヒシヒシと伝わってくる。
死刑が良いか悪いか。死刑を廃止すべき存続させるべきか。ではなく殺人を職業とするということはどういうことなのか。人間が文明を起こして以来、脈々と続いてきた社会的な役割に就いた人々が感じた「心の内」を描き出し「あなたはどう思う?」と問いを投げかけることで、観客の心のなかにモヤモヤを生もうという脚本家兼演出家の仕掛けにまんまとはまってしまった自分がちょっと悔しい。
プロペラとスカーフ
アトリエ・センターフォワード
シアター風姿花伝(東京都)
2013/11/15 (金) ~ 2013/11/25 (月)公演終了
満足度★★★★
「どうしようもない」それでも生きる
舞台は第一次大戦後の大正、日本初の空冷式発動機を手がける弱小飛行機研究所の物語。
作品の感想は一言でいえば「どうしようもなさ」。人生のどうしようもなさ、時代のどうしようもなさ。とは言ってもけっして悲観的ではない。ポジティブな舞台だった。
飛行機乗りになりたいお嬢様。その飛行機乗りになっても虚しさを捨てきれない女。戦争で夫をなくした未亡人。開発している飛行機を戦争に利用されたくない元軍人などなど。
それぞれ人にはやりたいこと、やりたくないことがある。時代が味方をしてくれて、やりたいことができることもあるが、そっぽを向かれることは多い。現代は大正の昔より可能性を追求できる時代にはなっているが、やはりつまづくことはあり人間関係に悩み、人生の進む方向に悩む。
何かを選べば、何かと捨てることになる。それでも時代のうねりのなかで希望を見つけ決断して生きていくしかない。そういう「どうしようもない」ながらも強く生きる生命力を作品全体から感じた。