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死刑執行人 〜山田浅右衛門とサンソン〜

死刑執行人 〜山田浅右衛門とサンソン〜

世の中と演劇するオフィスプロジェクトM

座・高円寺1(東京都)

2015/01/21 (水) ~ 2015/01/25 (日)公演終了

満足度★★★★

「自分の職業は人殺しなんだ」と認めること
奇しくも日本人2名が異国の地で執行人とともに「死」の瀬戸際にいるニュースが報じられるなか1月21日の初演を観た。革命前フランス・パリの死刑執行人・サンソン一族、江戸時代の死刑執行人・山田浅右衛門、現代の法務省矯正局刑務官・オヤマダタダシ。「職業は人殺し」が共通点である彼らを通してとてもよく描かれているなと思ったのは「葛藤」だ。登場人物たちが殺すのは基本的に「罪人」で、時の権力者や社会システムから「殺人行為」の承認を受けているのに、やはり人を殺すことは周りの人間から"そういう目"で見られることから免れないんだなということがヒシヒシと伝わってくる。

死刑が良いか悪いか。死刑を廃止すべき存続させるべきか。ではなく殺人を職業とするということはどういうことなのか。人間が文明を起こして以来、脈々と続いてきた社会的な役割に就いた人々が感じた「心の内」を描き出し「あなたはどう思う?」と問いを投げかけることで、観客の心のなかにモヤモヤを生もうという脚本家兼演出家の仕掛けにまんまとはまってしまった自分がちょっと悔しい。

ネタバレBOX

そしてそのモヤモヤをラストで氷解させるの見事。最後の場面、現代の刑務官「オヤマダタダシ」はある決意を口にする。それがまたいい。彼は「えっ?」と思うほど当たり前のことをいう。でもその言葉は現代の死刑執行人としては「職業」を辞めるという意思にしか聞こえない。だけど、それでもなお彼の職業は刑務官なのだ。

「えっ?当たり前でしょう」と思う人もいるかもしれない。でもこう考えて見て欲しい。江戸の死刑執行人・山田浅右衛門は技を磨く。頭を支え骨の通った分厚い人の首をはねるというのはかなりの技量を要するので、罪人が苦しまず首を落としてやるためには訓練が必要だ。この訓練をしたことで人殺しである自分を職業人・社会人として認めることができた。

山田浅右衛門が技を磨いて「人殺し」を仕事へと変えたように、刑務官・オヤマダタダシもその決意を口にし刑務官であり続けることで「人を殺す社会人」としての覚悟を持って生きることを表明したのではないか。

ちょっと深読みし過ぎたかもしれない。でもこれくらい考えてしまうおもしろい芝居だったということは声を大にして言っておこう。
プロペラとスカーフ

プロペラとスカーフ

アトリエ・センターフォワード

シアター風姿花伝(東京都)

2013/11/15 (金) ~ 2013/11/25 (月)公演終了

満足度★★★★

「どうしようもない」それでも生きる
舞台は第一次大戦後の大正、日本初の空冷式発動機を手がける弱小飛行機研究所の物語。

作品の感想は一言でいえば「どうしようもなさ」。人生のどうしようもなさ、時代のどうしようもなさ。とは言ってもけっして悲観的ではない。ポジティブな舞台だった。

飛行機乗りになりたいお嬢様。その飛行機乗りになっても虚しさを捨てきれない女。戦争で夫をなくした未亡人。開発している飛行機を戦争に利用されたくない元軍人などなど。

それぞれ人にはやりたいこと、やりたくないことがある。時代が味方をしてくれて、やりたいことができることもあるが、そっぽを向かれることは多い。現代は大正の昔より可能性を追求できる時代にはなっているが、やはりつまづくことはあり人間関係に悩み、人生の進む方向に悩む。

何かを選べば、何かと捨てることになる。それでも時代のうねりのなかで希望を見つけ決断して生きていくしかない。そういう「どうしようもない」ながらも強く生きる生命力を作品全体から感じた。

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