
火男の火
「火男の火」製作委員会
紀伊國屋ホール(東京都)
2013/08/03 (土) ~ 2013/08/06 (火)公演終了
満足度★★★
骨太な作品です。
熱演は伝わってくるのですが役者さんの演技力にばらつきがあり登場人物の個性が微妙に表現しきれていない印象が感じられました。
ただ、作品自体は、人によって相当好き嫌いが分かれると思いますが、報われることのない境地にありながらも胸にくすぶるなにかに火をつけようと懸命にもがく主人公を含めた人々の姿と運命の非情さを描いた骨太な作品で、人間の深部をえぐりだしてゆくストレートな描き方やラストへ向けての話の展開の仕方などはなかなかよくできていると思いました。

龍馬が翔ぶ
神田時来組
中目黒キンケロ・シアター(東京都)
2013/07/24 (水) ~ 2013/07/28 (日)公演終了
満足度★★★★
熱演が伝わってくる娯楽作品
タイトルの前に付けられたネオ知覚時代劇という意味が最初よく
分かりませんでしたが、舞台を観ていくうちにそれに込められた
意味がなんとなくですが分かってくるような気がしました。
内容は説明にあるように現代と江戸時代が交錯するドタバタ爆笑
時代劇ですが、登場人物のイメージに合うように配役がされ役者
の皆さんの熱演もあり、肩肘張らずに気楽に楽しめる娯楽作品に
なっていたと思います。

虚人の世界
公益社団法人日本劇団協議会
劇場MOMO(東京都)
2013/07/19 (金) ~ 2013/07/28 (日)公演終了
満足度★★★★
好き嫌いが分かれると思いますが。
この類の作品は作者自身があまりにのめりこみ過ぎて必要以上に観念的になったり話が拡散したりして複雑で難解なものになってしまいがちですが、人の世界と"虚"人の世界の対比を軸とした丁寧な物語展開のおかげで最初思っていたよりは話について行くこと自体は難しくなかったようです。
ただその分、目には見えない"虚"人の世界を限られた舞台の上でいかにリアルに感じ取れるようなものにみせていくかという点で、演出陣、俳優陣にかかる負担は大変で相当なものがあったでしょうが、今回拝見して皆さんの並々ならぬ意気込みが伝わってくる作品になっていたと思います。

ジュリアス・シーザー
華のん企画
あうるすぽっと(東京都)
2013/07/11 (木) ~ 2013/07/16 (火)公演終了
満足度★★★★
シンプルだが心に残る
子供も含め現代の日本人でも話の流れが理解しやすいように脚色、演出がされています。派手なセットとかはなく机と椅子を使うだけのシンプルでさらに一人何役もこなす演出法ですがそのためかえって役者さんの力量が如実に現れ一寸たりとも手が抜けない作りになっています。
今回の場合、シーザー暗殺までは前説的なちょっとしたもたつき感がありましたがその直後からブルータスを軸にして話が展開しあっという間に2時間経ったのも忘れるくらいに引き込まれていたというのが正直な感想です。
暗殺直後のブルータスとアントニーのローマ市民への演説の場面は、巧みな言葉のレトリックと論理力(というか説得力)によってころころと心変わりしてしまうというか操られてしまう虚ろげな大衆の様が実によく表されていたと思いますし、またラストの、人々が倒れ崩れてゆくシーンも音楽と相まってこれ以降のローマの歴史を暗示しているようで大変印象的でした。

ヴェローナの二紳士
ハイリンド
吉祥寺シアター(東京都)
2013/07/08 (月) ~ 2013/07/15 (月)公演終了
満足度★★★★
淡白なシェイクスピア?
後の数々の名作につながっていくシェイクスピアの片鱗が垣間見れるような作品です。今の観点からすると、話の展開に不自然さや強引なところもあります。例えば、終盤で、ヴァレンタインがプローティアスに仲直りの友情の証として、本人の同意もなく、シルヴィアを譲ろうとし、それを見ていた変装したジュリアが卒倒する場面などはいきなりこんなのアリ?と思ってしまいます。一貫性のなさこそがまさにシェイクスピアらしさということでしょうか。
が、新訳をひっさげてのスーピーディーな台詞回し、吉祥寺シアターの劇場空間をうまく使ったきびきびとした演出もあって、喜劇としてみればあっててもいいのかなと思える飽きのこない作品に仕上がっていたと思います。
ただ、スピード感を重視しすぎたこともあるのでしょうが、もう少しじっくり観たいかなというところもあっという間に進んでしまいあっさりし過ぎている場面が多々見受けられたのは、もったいなかったかなという気がしました。
また、最初のキャッチボールから始まる意味不明?の場面は最後の場面につながりますので、それは観てのお楽しみということで。