表現を楽しむ
最前列中央ブロックの席でした。
役者さんの表情や息遣い、舞台装置にパペットたちの素材などよく見えました。
両端の字幕は首を傾けないと見えませんでしたが、皆さんストーリーはほぼ頭に入っていての観劇だと思うので、問題ないと思います。
ミュージカルなど大掛かりな舞台装置を駆使して表現するには舞台が小さすぎるし、かと言って観客全員に役者の表情や身体で終始観客を魅了するには会場が大きすぎる印象です。
原作ありきの舞台というのはどこを抽象的に表現するか、具体的に見せていくかのバランスがとても難しいなあとしみじみ感じました。
大規模な装置が無い分あらゆるシーンの表現を役者の手で行います。
パペット、ダンス、エンターテイメントや現代アートからヒントを得た表現方法もあったと思います。
ネタバレBOX
とにかく役者さんがすごい働いています。
例えばカヤ役の方は、カヤ→タタラ場の女→モロのパペット中の人
といった具合で。
モロのパペットのときは声も出していました。
(モロなどの神さまに片足突っ込んだけものは、2・3人の俳優さんで声を作っています。深みがあって素晴らしかった)
場面転換も多いし移動も多いし役者による表現も多いからかなと思いますが、もっと"静"の場面を大事にしてほしいと思いました。
例えば、物語の後半、アシタカがサンを抱きしめるシーン。
デイダラボッチが首をはねられて暴走している中でのシーンとなりますが、
周りがうるさいし照明も全体を均等にあてているしで、2人にまったく集中できないのです。
(ディダラボッチはビニールとテープを駆使して多くの役者さんによって舞台いっぱいめに表現されています。最前列からだと迫力もありました)
私はこのシーンがとても好きで、
「ここは2人の役者(シーン)をがっつりたっぷり見たいんじゃ」
という欲求がだいぶフィルターかけてますが、
ディダラボッチの存在感と照明で舞台がうるさくて、とてもじゃないけど役者さんの演技に集中できない。
最前列にいるのに2人の声を聞くのにちょっと一生懸命だったので、音も結構出てたと思います。
こんな感じで、もっと視点や見せ場・集中して観るポイントを案内してほしいと思う場面があると思えば、逆に表現を照明や音や観客の想像力にゆだねてほしいなー、と思う場所もありました。
そういえば、ジコ坊の傘とサンの槍は今にも取れそうでした。
(傘は竹の部分が割れていたように見えたし傘ヘタってるし、槍は刃が飛んでいきそうに見えました)
舞台奥にオーケストラピットがあって生演奏なのは嬉しかったです。
役者さんの声や息遣いが効果音になっている場面もいくつかありました。
一番好きなシーンは、サンがタタリ神になりそうになっているところです。
おもしろい。
この舞台化を試みたカンパニーと、表現に尽力された役者さん方に心の底から拍手です。
役者さんの演技を観るというよりは、映画を舞台化する手法をみるのが楽しいお芝居でした。
千秋楽はニコニコ動画で生放送されるようですが、劇場で見たほうが楽しめる人、動画のほうが楽しめる人と分かれると思います。
視点を固定されない方が楽しめる方はぜひ劇場へ。
舞台が遠くても表現だけで楽しめると思います。
役者さんの演技を見たい人は動画の方がおすすめかもしれません。