満足度★★★★
【初観劇】七鬼神編・五邪鬼編
七鬼神編、五邪鬼編ともに観劇致しました。
初めてのメガバックスさんだったのですが、前評判に違わずキャストの方一人一人の力量を感じました。
筋の通った脚本と、それを息づかせるキャストの皆さまの表現力、過去にさかのぼって何作も拝見したいと思う舞台でした。
細かい感想はネタバレにて。
ネタバレBOX
【七鬼神編】
先にこちらを拝見しました。
閉ざされた空間の中で始まるゲーム(と言っては田所さんに怒られてしまいますが)という、不謹慎ながらわくわくする設定を楽しませていただきました。
ルールを理解した後は、舞台前のボードの数字を計算して登場人物たちの心理を予想したりと、普通の芝居ではなかなかない楽しみ方をすることが出来ました。
初めの方で奥様が場を流すため、誰か(自分?だったでしょうか)に複数票を投票する際、旦那様が誰に入れたかを聞いて同じ人に投票すれば自分の票を無駄にせずに済むのにと思っていたのですが……
あれが、後々田所さんに入れたと思わせないように、「そういうことに頭が回らない人なのだ」と思わせるための伏線であれば見事でした。
ゆきさんの演技が、子供っぽさが鼻につくことのない自然な振る舞いで、素晴らしかったです。
お母様の台詞、「中学生になったら給食がなくなるんです」は、私がこれまで聞いた中で屈指の名台詞でした。
最後のどんでん返しでゆきさんを持ってきたところも、非常に心地よかったです。
ただその伏線がレイトン教授というのはあまりにも露骨すぎるようには思いました。
もうひとつ何か伏線があると、より唸らされたのではと思います。
そしてとても素敵な話であったのですが、新婚のご夫婦が、夫婦に見えなかったのが残念でした。
お互いに愛情があるように思えず、特に旦那様が本当に奥様を愛していらしたようには見えなかったため、ラストも今一つ迫るものがなかったように思います。
親子に関しても、ゆきさんのけなげさ(と、ある種の恐ろしさ)には胸を打たれましたが、やはり親子には見えませんでした。
特にお母様が、「いわゆる母親を真似ている」ように感じました。
他人同士が集まる空間だからこそ、元からの関係性が希薄になってしまったのは惜しいように思われます。
ただ、それを差し引いても、最後まで楽しむことが出来ました。
私はどちらかというと、七鬼神編が好きでした。
【五邪鬼編】
救いのない地獄絵図と伺っていたので、かなり身構えて見ていたのですが、そこまで悲惨でもなくほっとしました。
SONY社員の藤崎さんが銃を振り回すところでは、まるで自分がその場にいるかのような臨場感を覚え、次に銃口を向けられるのは自分なのではという恐怖すら覚えました。
一方、まりかさんの狂気はやや使い古された表現のように思いました。
一時期よくいたバトル・ロワイヤルの世界に憧れる女の子という印象で、もうひとつ進んだ狂気の表現を受け取りたいと感じました。
まりかさん周辺のどんでん返しはそれほど意外に思えなかったので、登場したばかりの頃などはもう少し分かりにくくしてもよかったように思います。
【二作を通じて】
全体的に、女性の衣装が合っていないように思います。
もっとキャラクターや本人の体型に合うものを選べれば、もっと作品に合う形で洗練されるのではと感じました。
キャラクターの作り方、関係性が、いずれもステレオタイプに感じました。
何かひとつずつでも要素(独自性)が加わると、この作品ならではの人物像になったのではと思います。
また上記に付随して、いわゆる優しい人→暴れる、母→子供を守るために冷酷になる、冷たそう→意外といい人というそれぞれの豹変が、基本的に予想の範囲内であったのが惜しく感じられます。
「極限状態に陥って本性が出る」を表現するならこうするだろうな、というステレオタイプな変化だったので、メガバックスさんならではの豹変(意外性)がもっと描かれるとよりのめり込めたように思います。
最後に、キャストの皆さまが兼ねていらしたスタッフの見事さに、本当に感動致しました。
きびきび無駄がなく丁寧で、一流ホテルの案内を受けたようにすら感じました。
時間通りに始まる舞台も、非常に心地よかったです。
これからも足を運ばせていただきたいと思います。
本当にありがとうございました。