
『残響』
白狐舎、下北澤姉妹社、演劇実験室∴紅王国
シアター711(東京都)
2025/08/06 (水) ~ 2025/08/12 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/08/12 (火) 14:00
安倍晋三銃撃事件に想を得たフィクション(推定)。
密接な関係の人物7人であの事件のバックグラウンドを描き、日常の中から浮かび上がる「不穏さ」を感じさせるのが巧み。
そして事件の顛末を知っているだけに「その時」が近付いてくる緊張感とか動機に絡んだ「あの団体」のやり口とかがリアル(身近?)に感じられるというのもまた上手い。

『意味なしサチコ、三度目の朝』再演
かるがも団地
吉祥寺シアター(東京都)
2025/08/08 (金) ~ 2025/08/11 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/08/11 (月) 14:00
十代を過ごした団地取り壊しのため引っ越しの準備にしばし秋田県能代市に帰省した主人公の過去・現在、そして……という内容だけに複数の過去と現在を往き来して進むが、転換や暗転なく時が変わるのに観客を戸惑わせないのが絶妙。
また、転校生への対応(σ(^-^) も4つの小学校を転々とした身だ)を筆頭に懐かしいというかあるあるというかなあれこれに共感……というのは4年前の初演時と同じだが、今回は幸恵とサチコの絆/互いを想う気持ちが刺さる。
そして舞台サイズ・客席数とも今回の1/4程度という王子小劇場(現・インディペンデントシアターOji)で濃密に「浴びる」ことができたのは至福の経験だった、とも思った。
あと、明転すると誰もいない舞台に蝉の声だけという最終場もイイ。
ちなみに初演はσ(^-^) の2021年個人的TOP10入りだった。

aging/#不確かな或る日展
フロアトポロジー
Gallery Conceal Shibuya(東京都)
2025/04/03 (木) ~ 2025/04/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ある女性の「或る日」に同時併行的に他の複数の女性の「其の日」も交えて一人芝居的な演技に音響効果・映像を加えて描いた実験的な65分で「不確かな或る日展」の中の企画公演的なものとしてそれぞれの「或る日」を「展示している」感覚。
で、会場の雰囲気に改装前のギャラリー・ルデコを想起したり、途中の「あのシカケ」や上演中に移動可なことに泣かないで、毒きのこちゃんの「手口」に通ずるものを感じたり「記憶の煤払い」的な?(笑)

是々非々【揺・騒】
teamキーチェーン
中板橋 新生館スタジオ(東京都)
2025/08/05 (火) ~ 2025/08/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/08/09 (土) 16:30
Cチーム【騒】を観劇。
舞台中央に被告、下手に検察官、上手に弁護人、奥(傍聴席)には被害者と被告の兄という裁判官席から見た刑事法廷の様子を基本配置に随時犯行再現場面を交えて描く集合住宅での騒音問題に端を発する殺人未遂事件の顛末。(以下ネタバレboxへ)

『醜悪』
道楽息子
アルネ543(東京都)
2025/08/06 (水) ~ 2025/08/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/08/08 (金) 14:00
青年が父親を刺殺した事件を取材する記者を狂言回しに関わった者を悉く不幸にする疫病神のような人物を軸とした怒声と悲鳴あふれる物語。
鵺的の実在の事件をモデルにした作品群に通ずる味わい(人間関係や人物の感情が妙に生々しくてリアルに感じられる、とか)もありつつ、幻影に惑わされる人など「古典的怪談」的手法も駆使しさらに笑いまで盛り込んだ多彩なダークファンタジー。要素の配分によって必要以上に(?)ダークにならない匙加減が巧い。
ところでこれ、考えようによっては「リアル呪怨(スミコ=伽椰子説)」じゃね?(笑)
あと、28ページに及ぶwebパンフレットが見事♪

SHOW MIGHT GO ON
演劇ユニット【オクチナオシ】
上野ストアハウス(東京都)
2025/07/30 (水) ~ 2025/08/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★
鑑賞日2025/08/01 (金) 14:00
起死回生のため有名劇場での公演を企画し人気俳優やアイドルの出演にも漕ぎつけたが、当日になり実は別の劇場だったと知りどうにかそこで公演をしようとする主宰……なバックステージ系コメディ。
エキセントリックな人物造形や小劇場界の内部事情的な部分は悪くないのに当日まで劇場が違うことに気付かないという設定はさすがに「芝居のウソ」の範囲を逸脱しているし終盤の「湿っぽい展開」も強引な感がある(私見)のが残念。
また、理由はどうであれ開演が10分以上遅れたのに開演前、終演後ともそれについて全く触れないというのはいかがなものか?(これにより星1つを減じた)

寺山修司生誕90年記念認定事業「盲人書簡◉上海篇」
PSYCHOSIS
ザムザ阿佐谷(東京都)
2025/07/24 (木) ~ 2025/07/30 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/07/28 (月) 14:00
寺山修司による江戸川乱歩「少年探偵団」の二次創作を軸とした奇妙なキャラ大行進な幻想譚。半世紀も前のクラシカルな作品をイマの演出でという温故知新的コンセプトは庵野秀明・樋口真嗣による一連の「シン・○○」に通じ「シン・アングラ」なのではあるまいか?(真顔)
で、改装前の Gallery LE DECO 4階を想起させるイントレの装置や、開演前の観客誘導などこの会場を知り尽くした使い方は特筆もの。
なお、天井桟敷による初演(1973年)は暗闇の中で演者が渡したマッチを観客が擦って観る演出だったそうだが、かつてサブテレニアンで観たアムリタ「死に至る眼、光る(2015年)」の「観客がペンライトで照らす」演出は本作を知ってのことだったのか?という疑問を抱いた。
あと、別役実「マッチ売りの少女(1966年)」との関係とか。

パビリオンをください
電動夏子安置システム
赤坂RED/THEATER(東京都)
2025/07/25 (金) ~ 2025/07/29 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/07/27 (日) 13:00
「しょーもないこと」を理路整然としたと言おうか論理的なと言おうか(理屈っぽいとも言う)な会話で笑わせるパターンはいつもながら、今回はある部分について「ナンセンス度」が高かった気がする(笑)。ま、半世紀以上先のことだしそんなこともあるかも……なワケあるかい(爆)。
で、あれこれ真逆ではあるが前々日に観た avenir'e「#VALUE!」と一脈通ずる感があってビックリ!(私見)
あと、葛西甚の衣装(背中のアレ)と、それをネタにした終わり方がまた好みだった♪

秘密保持!
劇団ヨロタミ
萬劇場(東京都)
2025/07/24 (木) ~ 2025/07/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/07/26 (土) 13:00
精進湖畔(だったっけ?)のペンションを舞台に「あること」を隠そうとするオーナーを発端に聞きかじった情報からの的外れな憶測をして事態をこじらせる宿泊客らを描いたコメディ。
基本に忠実な展開(ならびに伏線を回収しての落着)にラップや歌(一部は三声のハーモニーまで)も加えた楽しさはまさにベテランの味。結成23周年の第29回公演というのも伊達じゃない、今後の活動にも期待♪

#VALUE!
avenir'e
OFF OFFシアター(東京都)
2025/07/23 (水) ~ 2025/07/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/07/25 (金) 14:00
情報量過多というかσ(^-^) には受け取れきれないほどの内容だったので未整理ながらとりあえず。
AIと人間の三角関係的な「デジタル怪談」の印象だが、2年前の初演(未見)に人間ドラマ的なものを加えて上演時間も30分長くなった(アフタートークより)とのこと。初演はどんだけコワかった(不気味だった?)んだか?(笑)
また、いくつかの会話/台詞が非常に論理的に感じられたが、それは ChatGPT が会話の一部を創った(アフタートークより)ことによるものか? そしてそれが終盤で明かされる「あること」の伏線になっているのがスゴい。
あと、劇中の「医療用AI」と「家庭用AI」では人間との受け答えから「世代が違う」ものなのだろうなぁ、などと思いながら観るのも一興。

みんないっしょ
職人集団バシコエンタープライズ
参宮橋TRANCE MISSION(東京都)
2025/07/23 (水) ~ 2025/07/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/07/24 (木) 14:00
小学生時代に「あること」をした担任教師に報復を企てた6人の若者の顛末。カラフルなチラシとは裏腹な過激かつハードな内容は横行するある犯罪とそれに対する刑罰の甘さに対する小板橋主宰の激しい怒りの顕れか? その怒りは激情にかられて箪笥を投げつけるレベル?(笑)
そして「精神世界内」的な表現やジャック・ニコルソンを想起させるキャラクターなどにニヤリ。そんなこんなで「面白かった」。
ちなみに観ながら脳裏をよぎった言葉は「罪」「罰」「私刑」「人を呪わば穴二つ」など。
あと、あの悲観的な終わり方も印象的(ヤだなぁ)。主宰の怒りはいかばかりか?

実態劇「Macbeth -マクベス」
OuBaiTo-Ri
東中野バニラスタジオ(Vanilla Studio)(東京都)
2025/07/17 (木) ~ 2025/07/21 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/07/21 (月) 15:00
(一般的な)劇場の舞台に客席を設置したような距離感で10人(だけ)の出演者で演じられる「ちゃんとしたマクベス」。
マクベスは「悲劇」ではなく魔女の言葉を信じ妻に尻を叩かれて分不相応な野望を抱いた小心者の自業自得的な末路と従来思っていたが、本作はそのあたりが前面に出ていて、その意味で黒澤明監督「蜘蛛巣城(1957年)」を想起。
また、役者がいくつもの役を演じるので、その割り振りはパズルのようで香盤表的なものでも作ったのかしらん?などと想像するのも楽しからずや。

グロリアストラベル
桃尻犬
浅草九劇(東京都)
2025/07/16 (水) ~ 2025/07/20 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/07/20 (日) 14:00
青森で開催される「こどもパン祭り」に参加すべく向かうが渋滞に囚われたパン屋一行(+α)の物語。
「ドライブ中あるある」を誇張したような会話だけでも楽しいが、後半で「底が抜けて」からの展開に度肝を抜かれる(笑)。
さらに、もしかして危機?と思わせた家族の絆復活を思わせる終わり方が心地よい。
あと、前半での2台の車内を表現するシンプルな装置も舞台武術として見事。

携帯と太陽
演劇企画ユニット劇団山本屋
新宿シアタートップス(東京都)
2025/07/16 (水) ~ 2025/07/20 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/07/19 (土) 13:00
どこからか宅配便で送られてきた古い携帯電話をきっかけに故郷の「島」に帰った男(とかつての同級生たち)が「過去のある人物」を救おうとするが……な物語。いやまさか時間ものであろうとは。
そうして語られる東日本大震災犠牲者への鎮魂歌、カーテンコールでの山本主宰の挨拶も含めて胸に迫るものがあった。
また、終盤の津波の舞台表現も見事。
なお、主人公よりも先に他のメンバーが同様の体験をしていることに最近観た某映画を、また、救えるまで何度も繰り返すことに近日公開の某映画を連想。(笑)

或る阿呆ゥの終活
らむらどぅプロデュース shared with 怪奇月蝕キヲテラエ
インディペンデントシアターOji(東京都)
2025/07/17 (木) ~ 2025/07/21 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
燃え尽き症候群的なものか現世に「飽きた」男がVRゲーム内で様々な死に方を試して……な物語。
終盤で生きがいに関してシリアス(悲観的?)にもなるが2人の男(主人公/裏主人公)が前向きになったことを示して終わるのが優しい。
また、アフタートークでらむらPの「幸せの絶頂を感じた時に死にたい」という考え方が本作の原点と聞き、その考えには賛否両方感じつつ三浦さんがそれをくみ取ってこういう形に昇華させたことに感心&大いに納得。
さらに怪奇月蝕キヲテラエのホームグラウンド的な新宿眼科画廊よりもシカケを使うことができるこの会場では「こんなこと」もできるんだ、と感心。
今後の怪奇月蝕キヲテラエの劇場公演への期待を煽ることでも有意義な公演だったのではあるまいか?

役に立たない言葉が欲しい
GORE GORE GIRLS
駅前劇場(東京都)
2025/07/16 (水) ~ 2025/07/20 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/07/17 (木) 14:00
優雅なサロンを思わせる凝ったツクリの装置の中で繰り広げられるのは「全寮制のマナー教室(!)」の参加者たちと講師による会話劇。
「そんなマナーが!?/んなワケねーだろ!」な劇中マナーは昨今跋扈する自称マナー講師に対する揶揄に感じられ、また、一見丁寧であるが失礼なことをどさくさに紛れて言うのがフェイント的で楽しい。まさしく「会話劇の妙」か。

テン9
ペキニーズ・ドットコム
OFF OFFシアター(東京都)
2025/07/15 (火) ~ 2025/07/20 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/07/17 (木) 14:00
会場に入ると新作公演に向けた稽古の休憩中らしき小芝居(笑)が既に演じられており、開演定刻に稽古再開、という出だしから「鳥皮節」全開だが、以前のようにアイデアが迸るのに任せた(暴言気味)というか制御しきれないというか、な感(それはそれで面白いのだが:為念)が薄れ、物語としてのまとまり(?)もある感じ。
特に終盤、実際の観客を劇中に取り込むという得意技(笑)や怪談風味も交えつつ「報われなかった公演の怨念」的なものをああいう形で描くのがまた巧い。

海と日傘
R Plays Company
すみだパークシアター倉(東京都)
2025/07/09 (水) ~ 2025/07/21 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/07/15 (火) 13:00
往年の松竹映画に通ずる(私見)「全てを語らずな奥床しさ」が特徴的な戯曲だが、2012年の SPIRAL MOON は「劇」小劇場、2018年の えうれか は古民家ギャラリーしあん と、いずれも小規模な会場での公演で具象的だったのに対してこちらは広めの舞台空間に畳6枚とその周りの「どの側からも縁側に使える」黒い板の間的な正方形の装置のみなのでかなり印象が異なる。
好みは別として演出・装置によってここまで変わるのか、というのが舞台演劇の面白いところ。早くも次回公演に期待。

音楽劇 金鶏 二番花
あやめ十八番
座・高円寺1(東京都)
2025/07/07 (月) ~ 2025/07/13 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/07/11 (金) 13:30
レビュー系でのオーケストラピットと客席の間に横向きの花道があるものを想起させる(しかも一部は可動式の)舞台と上手上方のレフ板のような白い大きな円型の装置、舞台後方中央から下手に下げられたカーテン状の布等が特徴的な空間で語られるのはテレビ放送黎明期の逸話。
その内容はもちろんだが個人的には冒頭場面をはじめとして先述の円型装置・布などを活用した影を使った照明効果に心惹かれる。
また、実在のものをベースにしたのではなく完全オリジナルな(推定)劇中歌にも感嘆。
さらに戦争が人々に残したものをさりげなく盛り込み声高ではなく反戦を訴えたのもイイ。
あと、狂言回し的な役どころを演ずる金子侑加・中野亜美お二方のメインパート(過去)と現在パートの老若の演じ分けも見事。
これだけのものがB席3000円ってウソだろ!?

ちはる塾〜「怖気2025」
制作「山口ちはる」プロデュース
下北沢 スターダスト(東京都)
2025/07/08 (火) ~ 2025/07/13 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/07/10 (木) 14:00
女3男1の宅呑みで徐々に浮かび上がる「あれこれ」。コミカルで和やかな場面から始まるが次第に不穏になり「あんな結末」を迎えるのはジェットコースター感覚?
それにつけてもやはり「一番コワいのは人間」だよねぇ(真顔)。
また、途中から登場する人物の設定/見せ方/表現が絶妙で舌を巻く。終盤で明かされた時の「そうだったのかぁ、ヤラれたぁ!」感たるや♪
山崎洋平脚本、さすがだよなぁ。