Snowball Earth
劇団Peek-a-Boo
劇場MOMO(東京都)
2010/03/26 (金) ~ 2010/04/04 (日)公演終了
満足度★★★
A+Bプログラム
2040年から始まった氷河期をめぐるストーリーで、この日はAプログラム・劇団Peek-a-Booの「Blue Mola mola's Dreams ~蒼きマンボウの夢~」(約65分)とBプログラム・劇団居酒屋ベースボールの「pink irony」(約75分)のカップリング。(途中休憩10分)
同じテーマで書き下ろし競作というのは時々あるが、本作の場合は同じ世界を違う劇団・違う作家が連作中篇で描くスタイルで両編がリンクしているばかりか登場人物の一部は両方に登場しキャストが相互乗り入れしているというのが独特。
さらに「Blue…」は2040年から2090年までを年代記的に描いたタテ軸的なもので、「pink…」がその部分部分を描くヨコ軸になっている構成も上手い。
で、「Blue…」のラスト、火星へ移住せず地球に残ることを選ぶマスターに「滅びの美学」や「沈没する船に残る船長」など感じ、『コクーン』をもちょっと思い出す。
映画との関連では氷河期なので『デイ・アフター…』という表面的な部分でなく、未来に人類が直面するであろう全地球的災害を描くことにローランド・エメリッヒ監督の作品群を連想。
そんなワケでスケールの大きいSF作品ながらよくぞこのサイズに収めたもんだと感心。
また、居酒屋…は初見だったものの、それぞれの劇団の色がよく出ていたのではあるまいか。
才蔵-SAIZOH-
劇団 武士道
シアター風姿花伝(東京都)
2010/03/25 (木) ~ 2010/03/28 (日)公演終了
満足度★★★★
キャラが立っている登場人物たち
真田十勇士から抜けて素浪人となり、追っ手から逃れるべく放浪している霧隠才蔵が、立ち寄った故郷で巻き込まれる騒動…な王道系娯楽時代劇。
具体的に言えばまんま昭和の東映時代劇映画(←あくまで私的イメージ)のノリ、みたいな。(笑)
いやホント、前半の強い才蔵は60年代のヒーロー系時代劇全盛期のそれだし、後半の…(ネタバレ自粛)…はむしろ終盤は70~80年代のニューウェーブ系時代劇的な…。
で、思いのほか早く居場所をつきとめる猿飛佐助と対峙する才蔵とか、オイしいところをさらう才蔵の師匠(主宰の役得?(笑))とか、才蔵の兄弟弟子だた悪の首領とか、やはりオトコたちのドラマ。
が、そんな中に女性陣による「想いは伝えなくては意味がない」なんて恋愛論も出てきて華を添えるのが上手い。
上手いと言えば、喀血(沖田かっっ!!!(笑))を赤いサスペンションで表現したり、装置内のスライドする部分を右に寄せるか左に寄せるかで屋外と屋内を表現するとかも上手い。
それになんたって、それぞれキャラが立っている登場人物たちが良かった。
Cage.
劇団大富豪
ザ・ポケット(東京都)
2010/03/24 (水) ~ 2010/03/28 (日)公演終了
満足度★★★
一粒で二度オイシイ
交通課出身の女性刑事を主人公に、棋士である父の不審な死や出没する謎の人物を絡めた物語。なのでタイトルは「刑事」と「籠」のダブルミーニングか?と思っていたら案の定で、プロローグで「かごめかごめ」が…(笑)
中盤までは比較的オーソドックスな(?)犯罪サスペンス風ではありつつ、時々挟まれていた『M.I.B.』風の2人組や「ナニカ」に憑かれたような男などアヤしげな部分がオモテに出て来る終盤はガラリとオモムキを変えて「一粒で二度オイシイ」な感じ。
実は THE 黒帯の『妖怪レストラン』(未見だが作品の存在だけは知っていた)の番外編(あるいは外伝とかスピンアウトとか)的なものだそうで、こんなことならそっちも観ておけばヨカッタというのは後の祭り。
とはいえ、観ていればより面白かろうけれど、単品でも十分面白くそれなりに満足。ただ、135分というのはちょっと長い。それを感じさせなければ問題ないのだけれど、観ながら「2時間は超えているな」という気がしていたもんなぁ。
『垂れ下がるロープ、手の中のカラビナ』
ポムカンパニー
ギャラリーLE DECO(東京都)
2010/03/24 (水) ~ 2010/03/28 (日)公演終了
満足度★★★★
順調な船出を祝す
松木円宏によるプロデュースユニットの第1回公演で、楽園王+の長堀博士による「明るい夜」と碧田直による「ハンケツ」の書き下ろし2本立て。
三者会談において同じテーマで執筆依頼したとのことながら、往年のEPレコード(古いねどうも)のA・B面の如く(すべてがそうだったというワケではないが)ガラリと異なった作品のカップリングなのが面白い。
「明るい夜」は自殺を図った女性が目を覚ますと彼女の兄・姉・妹・叔父だという(見知らぬ)人々に囲まれているが、次に気付くと夫との生活をしており…な「胡蝶の夢」系。
楽園王+よりも一般向けでわかりやすい(笑)ものの、いかにも長堀作品なので頬が緩みっ放し。(チラリと句読点ズラしも出てきたっけ…)
一方「ハンケツ」は殺人事件のあった部屋に刑事が関係者を集めて、真相を解き明かす名探偵の到着を待っているが…なおハナシ。
ゴドー(=説明不要?)や不動(=じんのひろあき作品)などと同系統の「待ち系」(笑)かと思いきや、徐々に刑事が切れ者ぶりを発揮する本格ミステリー風で、その展開の意外性が○。
しかしまさかタイトルが「判決」(これも出てくるが)ではなく「半ケツ」だったとは…(笑)
で、いくつかの疑問が残る憾みはあったものの、その後のエピローグが「明るい夜」冒頭のリプライズであり両篇をジョイントするカタチだったので「終わり良ければ全て良し」的な?
またこのエピローグでは姉のポジションが正編の主人公に代わっており、「もしやあの “家族” は、事ある毎に1人ずつ入れ替わってゆくのか?」などと想像させる余地もあるのが好み。
ということで、順調な船出を祝すとともに、今後どんなものを見せてくれるか期待。
大市民
ティーファクトリー
吉祥寺シアター(東京都)
2010/03/16 (火) ~ 2010/03/22 (月)公演終了
満足度★★★★
混沌の中を浮遊するのが楽しい
市民ミュージカルのオーディション場面から始まるものの、一転して駆け込み乗車や車内での携帯電話使用を阻止していた「特命女子」チームに与えられた新たな任務は自殺願望男の脳内にミクロ化して潜入し(惑星ピスタチオかっっ!!!(笑))その願望をなくすことだった…なんて突飛な展開になり、そこに
・日曜夜の某アニメそっくりな一家(ただし名前は海系でなく山系(笑))とその後
・外見と中身が入れ替わった成功者と貧乏人
・公費でロンドン留学させてもらう演出家
・猫が接客する違法カフェ(爆)
などのネタが絡んで混沌状態。もうこれはそのノリに身を任せたモン勝ちで、その混沌の中を浮遊するのが楽しいのなんのって。(元ネタを知っていればいるだけ笑えるし)
パロディ、ブラック、ナンセンスなど各種の笑いを揃えているのも良かった。
揃えていると言えばオーディションで選ばれた33人の出演者も芝居系やダンス系など幅広く、適材適所な感じ。
そんなことに会場サイズや出演人数なども含めて、KERA・MAP に近い感覚と言えるか?
また、久米大作による音楽が時としてはにわ(嗚呼、懐かしや!)っぽかったりするのがいかにもな感じだったり、冒頭のオーディション場面の曲(特に出だし)が某有名ミュージカルのものに似ていたりで、そっち方面でも満足。
追われろ!卑怯者!!
ロスリスバーガー
RAFT(東京都)
2010/03/19 (金) ~ 2010/03/21 (日)公演終了
満足度★★★★
その場の空気がしっかり伝わる
バイト従業員が1人で切り盛りする喫茶店のスケッチ風の55分。若干デフォルメされているものの会話がリアルで、文章で言えば行間に当たる「台詞の間合い」や「………」な台詞(?)からその場の空気(軽い気まずさとか)がシッカリ伝わってくる感じ。
COUPLE
プロデュースユニット四方八方
アイピット目白(東京都)
2010/03/17 (水) ~ 2010/03/21 (日)公演終了
満足度★★★★
イイ作品に巡りあえてシアワセ
結婚後僅か1週間で事故死した男の葬儀当日、故人の母、妻、妻の姉・弟と配偶者、故人の大学時代の友人グループなどが集まるが、故人の霊とそのガイド役らしき男もそこにいて…な物語。
チラシに書かれた内容から想像したものとは若干違っていたものの、急逝した人物が遺した者たちに想いを伝える、という基本的な部分は期待通り(※)で満足度大。
※ 「椿山課長…」的かと思っていたら「煙が…」(奇しくも約1ヶ月前にここで観た)風だった、みたいな?
前半は故人の霊があまり登場せず、遺された者たちそれぞれの故人に対する想いが語られてしみじみ(←「予想よりシリアスなのか?」とさえ思ってしまった)、後半は笑いと感動が交互に押し寄せる、という構成もなかなか良く、「煙…」のおばあちゃんのように霊が見えるの?な妹が実は見えていないとか、想いを伝える方法がかなりチカラ技とか、そんなところも斬新で愉快。
またもやイイ作品に巡りあうことができてシアワセ。
おばあちゃん家のニワオハカ
鳥公園
市田邸(東京都)
2010/03/17 (水) ~ 2010/03/23 (火)公演終了
満足度★★★★
現実・夢・回想・幻想などの間を変幻自在に
川上弘美のちょっとフシギ系な小説を想起させる出だし以降、現実・夢・回想・幻想・そのどれでもないナニカ(笑)などの間を変幻自在に往き来し、時にシュール、時に優しく、時にワケ解らなく(爆)展開するさまが独特。
また、いかようにも解釈でき、深読みや誤読(笑)の余地が非常に大きく、逆にσ(^-^) はしなかったが「ワケがワカラン」と解釈を放棄して突き放しても許してくれそうな(爆)作風が面白い。
フジヤマタイガーブリーカー
MCR
駅前劇場(東京都)
2010/03/17 (水) ~ 2010/03/22 (月)公演終了
満足度★★★★
マシュマロ・ホイップ・パンク・ロック
当日パンフやPPTでさかんに「下ネタ」と言っていたがそんなことはなく(←私見)「艶笑」に昇華させておりそこにエミの過剰な気の遣いかた(櫻井智也自身が反映されているに違いない)や、彼の友人たちの優しさ、短い余命による切なさなどを絡ませて、なかなかの出来。
入れ替わる感覚が性的快感(アダルト版『転校生』とか?(笑))だけでなく痛みもなので「じゃあ何が入れ替わって何が入れ替わらないの?」という疑問や、暗示にとどめているとはいえ最終的にエミが救われないことでちょっと重い余韻を残す点など憾みがないでもないが、総じて満足。
あと、痛みが入れ替わるという点で斎藤久志脚本・監督の『いたいふたり』(02年)を思い出す。
フジヤマタイガーブリーカー
MCR
駅前劇場(東京都)
2010/03/17 (水) ~ 2010/03/22 (月)公演終了
満足度★★★
Track Back System
寒風吹きすさぶ冬のデパートの屋上でのヒーローショーの「中の人(バイト)」たちを中心にしたコメディ、今まで同系統のものも何本か観ているものの、そのどれとも切り口が違っていて、これもまた愉快。
責任者(?)が告げたキャラの人気投票の結果に(自分の責任というワケでもないのに)フテるレッド役なんて発想が楽しいし、しかし結局人気を挽回するでもなく、成長するでもなく、あってはならないことなどを起こしつつ、ショーは繰り返されてゆく、な終わり方に若干の物足りなさを感じなくもないが、お台場SHOW劇場用の作品で上演時間90分以内という制限があったことを鑑みればむしろ上手い終わらせ方かな?とも思う。
Dear My ANGEL
こちらKGB
相鉄本多劇場(神奈川県)
2010/03/18 (木) ~ 2010/03/22 (月)公演終了
満足度★★★★
ハートウォーミング大会(笑)
09年08月の『斬(きらず)』が本格娯楽時代劇だったのに対して今回は現代が舞台のハートウォーミングファンタジー。
前半は3つの流れそれぞれのつながりが見えづらく、時系列的な関係も読みにくいので戸惑ったものの、それらが合流して1つの大きな流れ(奔流?)になる後半はハートウォーミング大会(笑)で、これまたツボを突かれる。
で、その内容にしても演出(選曲も含む)にしても、よく観る(よりによって前日も観た(笑))某人気劇団に通ずるものがあり、初演を観ていない上にチラシなどの説明は漠然とした短い文章だけで事前情報が乏しいのにもかかわらずどこか懐かしい感覚(あるいは既視感?)があったのは、そのためもあるかも?
テンペスト イン マーズ
CAPTAIN CHIMPANZEE
ザ・ポケット(東京都)
2010/03/17 (水) ~ 2010/03/22 (月)公演終了
満足度★★★
作劇論的な部分も楽しむ
沙翁の『テンペスト』を火星を舞台に展開させようという大胆な試み。とは言っても、原典の物語をほぼそのまま未来の火星で繰り広げるのではなく、いくつかの設定を使って新たなストーリーを創り上げた、な感じ。
とか知ったかぶって書いているが、原典は毎度の wikipedia で予習しただけだったり…(爆)
しかしその予習はムダではなく、原典の複数のキャラを1人に混ぜ込んだり、純日本的(ナニワブシ的?(笑))な『瞼の母』的要素も取り入れたりという翻案に『荒野の7人』の手法を想起し、作劇論的な部分も楽しむ。
原典が大好きでそれをどう火星で展開させるのか?な観かたであれば肩透かしを喰らったかもしれないが、ほとんど知らなかったことも幸いしたと言えるか。
『クロノス・ジョウンターの伝説』~『ミス・ダンデライオン』『南十字星(サザンクロス)駅で』~
演劇集団キャラメルボックス
サンシャイン劇場(東京都)
2010/03/12 (金) ~ 2010/04/04 (日)公演終了
満足度★★★★
南十字星駅で
原作を読んでいず原作と脚色・演出の境界線が不明ながら、冒頭で賢治作品(の一部)を引用しているのでいきなりツボを突かれる。(笑)
また、過去4作のキーパーソン…ってかクロノス・ジョウンターの発明者である野方自身が過去に跳ぶことで「完結編」的意味合いも持ってきますわな。
本作のミソは遥か54年(だったか?)昔に跳ぶ方法で、極論すればあとは「以下同文」的、マンネリを避ける意味でもやはり完結編か。
そんなワケで物語のハイライトが前半にあるものの、やはりストーリーテリングが巧みだし、70歳代後半を演ずる西川浩幸の説得力ある演技(本当に足腰が弱っているように見えてハラハラするくらい)の功績もあって後半パートもダレず。(そもそも上演時間がカテコを含んで70分余だし)
『クロノス・ジョウンターの伝説』~『ミス・ダンデライオン』『南十字星(サザンクロス)駅で』~
演劇集団キャラメルボックス
サンシャイン劇場(東京都)
2010/03/12 (金) ~ 2010/04/04 (日)公演終了
満足度★★★
ミス・ダンデライオン
原作を読んでおり06年4月の初演も観ていたが、今回はギャグが増えてより甘みが強くなった感じ?
そこのところに木に竹を接いだような若干の違和感あり。客席にはウケていたのであくまで個人的な好みの問題だが。
さて、何が世界を終わらせるのか
リブレセン 劇団離風霊船
ザ・スズナリ(東京都)
2010/04/21 (水) ~ 2010/04/28 (水)公演終了
空から降るほんの小さな愛
ジ~パンズ
銀座みゆき館劇場(東京都)
2010/04/23 (金) ~ 2010/04/29 (木)公演終了
満足度★★★★
前作よりPMCっぽい
恋愛沙汰から遠ざかって久しい身(爆)として擬似体験と言おうか昔を思い出すと言おうか。
あれやこれやが落ち着くべきところに落ち着きめでたしめでたしか…と思わせてのオチも上手い。
なお、前作よりPMCっぽいと思ったのはσ(^-^)だけではないそうで。(笑)
おるがん選集 春編(上演台本付き/カフェ営業あり)
風琴工房
ルーサイト・ギャラリー(東京都)
2010/04/26 (月) ~ 2010/04/29 (木)公演終了
満足度★★★
【藤】編
先攻後攻を入れ替えて和ものが先で洋ものがあと。
時代性がよく出た太宰の「親友交歓」、ある拷問具を想起させるカフカの「流刑地にて」とも桜の二編と異なり、それぞれに面白い。
おるがん選集 春編(上演台本付き/カフェ営業あり)
風琴工房
ルーサイト・ギャラリー(東京都)
2010/04/26 (月) ~ 2010/04/29 (木)公演終了
満足度★★★★
【桜】編
モーパッサン原作の「寡婦」(約30分)は翻案による和洋折衷ぶりが面白い。
永井荷風の「墨東綺譚」(約50分)は江戸情緒の残る昭和の下町風情満載でモノクロの大映映画的な味わい(個人的なイメージです)がステキ。
それにしても「寡婦」と「荷風」…いや、何でもないです。(笑)
※ 4月21日からスタイルを変え、ツイッている一口レビューをまずアップして後日加筆することにしました
双碧星物語
流星揚羽
萬劇場(東京都)
2010/04/21 (水) ~ 2010/04/26 (月)公演終了
満足度★★★
女性作家らしからぬ(笑)力強さ
水軍の心意気や終盤の殺陣など女性作家らしからぬ(笑)力強さアリ。
また、斬り合いの中で肘打ちやパンチを出す武士ではないがゆえの「ケンカ剣法」の表現も○。
ただ、両バージョンにそれほど大きな差がないのは残念。
背伸び王(キング)
コマツ企画
小劇場 楽園(東京都)
2010/04/21 (水) ~ 2010/04/25 (日)公演終了
満足度★★★★
コマツ式『ワンダフル・ライフ』?(笑)
いわばコマツ式『ワンダフル・ライフ』だが、まさかこの題材をこのように展開させようとは…(笑)
また、75分の上演時間も程良く8連続マチソワ半ばの身には一服の清涼剤的な(爆)。
ただ、今後「Butterfly」を聴く時にヘンなバイアスがかかりそうで心配(笑)