2019年夏『夢の旧作』(SAF vol.13 優秀賞受賞作品)
作品紹介
作・演出より
「セリフのない演劇」
半年前のことです。ある劇団の海外公演に俳優として出演していた私は、オーストラリアへ渡りました。作品を観ていただくうえで俳優と観客の間や、作る過程に生じる俳優同士の言語の壁に苦しめられました。しかし同時に私は、演劇は言葉を超えうるのではないかと、小さな手応えのようなものも感じていました。
次回、作・演出をする際には、あの時の手応えをかならず確信に変えたい。そんな折に、『夢の旧作』をつくることが決まり、私は作品のコンセプトを「セリフのない演劇」に設定しました。台本はあるのに、セリフがないのです。
俳優の肉声と肉体、そして数編の詩から世界を紡ぎます。私は、劇場では非日常を提供すべきだと考えており、これは私が演劇をつくるうえで常に気に留めていることです。『夢の旧作』には、そのような非日常が詰め込まれています。近くて遠い、まるで夢のような劇世界をどうぞお楽しみいただければ幸いです。
作・演出 宮澤大和