満足度★★★★
「挽歌」に続き湘南台文化センターでの観劇。コロシアム式の客席のわりと端の方で、ステージの間口の外側に位置する席だったが、前にせり出したステージの比較的手前の方で演じられる場面が多く、殆ど支障なく観られた。
倉持作品は(作演出とも)二度目で一度目は随分前、自劇団(pppp)を観劇。今回その実力の程を垣間見た気がした。本は「リアル」ベースで書かれ、題材も「創作の現場」。シナリオライター(演劇出身)が監督とプロデューサー、そして出資者の狭間で苦悩するという物語自体はシンプルな作品だ。脚本執筆という仕事、引いては芸術に取り組む上での根本的な問題を抉り出していて、深く頷かずにいられなかった。
何か大きな事件が起きる訳ではない。出資者(竹中)の介入の仕方には独特なものがあるが、常識を著しく逸脱した態度を見せる訳ではない(最終的には出資者という立場が持ち得る力を巧妙に発揮する事になるのだが・・)。まだ形を成していない作品、つまり「未来」への投資を、「実質」化する任を担った人間が、味わうべくして味わう辛酸がそこにある、と言って良いかも知れない(映画『バートンフィンク』を思い出す)。本来スポンサーとは先行投資者なのであり、会社における株主も同様、「お金」を持つ者が未来への投資を行うのは、新たな時代、局面を切り開く名誉に与るためであるはずであって「確実に儲けが出る約束」の下になされるものではない。
この作品では、出資者の関心は「儲け」ではなく書かれる脚本の中身にある点が、逆に抗えない桎梏となって脚本家を苦しめる。それは出資者のやむに已まれぬ情熱のなせる所だからだ。
劇の終局近くは悩める主人公の心理劇の様相を呈して、一見夢オチと見まごう展開があるが、現実である事も仄めかし、恐ろしい。元々ある力関係の構造も要因の一つながら、この劇の出資者という人物の奥行が、それに輪をかけている。財を成すに至るまでに恐らく存分に行使しただろう「他者を操る術」がそこかしこに垣間見える。主人公(脚本家)にとっての「恐ろしさ」はこの人物に照準されるが、作者が巧妙であるのは、出資者自身も「出資者」としての「やむに已まれぬ何か」に突き動かされてその言動を形成していると見せている点だ。脚本執筆という作業が構造的に持つ危うさへと、観客の理解は促される。
満足度★★★★★
鑑賞日2016/12/22 (木)
座席1階J列
こういうブラックな作品大好きです。
心理的にジワジワ追い詰められて吸い寄せられていく。胃がキリキリしてくるような内容でした。
お話は分かりやすくてラストを含め素直に腑に落ちました。
開演前から不安を煽る演出が非常にうまいですね。
不安定に積み木を積み上げていくような、そしてそれがいつ壊れるのかとずっとヒヤヒヤしていました。
加賀谷は竹中直人さんならではって感じだったなぁ。怖い(>_<)
満足度★★★★★
カリスマ経営者であるスポンサーの出資のもと、
天才芸術家の人生の映画化企画のため、ホテルに缶詰めになった
演劇脚本家の苦悩と葛藤の日々。
作者である倉持さんの経験談が元ネタでもあり、
あるあるネタ満載の展開に笑ったり笑えなかったり、
そして結末とそこから想像できる未来に恐怖した!
何といっても竹中さん演じるスポンサーの存在感がスゴイ。
その発言と行動から垣間見る彼の人生、人柄、いかにもいそうなリアリティ。
自分の作家性をとるか、スポンサーの意図を優先するか・・・
上手く折り合いをつけながら創造活動を継続するのが現実といったところでしょうか。
気になるのは田口トモロヲさん演じる監督。何が起きた!?
長谷川朝晴さん演じるプロデューサーの”ノリ”も好きです。
話は変わりますが、全座席換装後の本多劇場で初観劇、快適です!本多さんに感謝。
満足度★★★★
鑑賞日2016/12/21 (水)
脚本家を精神的に追いつめて行くスポンサーが、そんなに自覚なくそうしてるようなところが怖かった。竹中直人怪演。やはり金を出してくれる人には頭があがらないのか?
満足度★★★★★
胃が痛む
加賀谷が何を言い出すのか?絶えずその発言に神経をすり減らしていくものたちの緊張感に、観ているこちらも引きずられ、終始神経がキンキンしていた。自分のやりたいものと、スポンサーの意向、この間で追い詰められていく柳井の切迫感、胃が痛くなるような錯覚を覚えた。本音と建て前の業界事情がよく現れた舞台。そして、最後に柳井の取った行動が、また、実にその道のものらしい気がして、哀れにも思えた。明かりが入る前と入ってからのセットの面変わりがまた、意味深で魅力的だった。