再びこの地を踏まず 公演情報 再びこの地を踏まず」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    偉人の意外な素顔
    野口英世と言えば、学校で教わる日本の偉人だ。大やけどの話、お母さんとの関わりなどで語られ、そういう側面でしか知らない人がほとんどではないか。
    戯曲の前半は、とんでもない浪費家で大酒飲み、しかも女癖が悪いという意外な素顔で展開する。資料は踏まえていると思うが、マキノノゾミの創作も多少は入っているかな。米国留学資金を得るために資産家の娘と婚約して婚礼金をいただくというエピソードも。その後、米国人と結婚したということは、このお金(当時の金額で300円)は返したのだろうか?

    だが、このトンデモ男には、人生の節目節目で支援者があった。これは野口の才能を見込んでというか、おそらく援助したいと思わせる人間的魅力があったのだろう。舞台ではそのあたりも含め、野口が相当な名声を得た後もなぜ危険を冒して、アフリカへ渡ってさらなる研究へと走ったのかが語られていく。

    とても分かりやすい筋立て。盛り込まれているたくさんの笑い。楽しめる戯曲としてはとても完成度が高い。

    野口が生まれ故郷の家の柱に刻みつけた文字である、タイトルの「再びこの地を踏まず」が舞台転換にうまく使われ、とてもかっこいい。

  • 満足度★★★★

    偉人を支えた人たち。
    野口英世というと、真っ先に浮かぶのは彼のお母さんですが、この舞台ではお母さんは登場しません。あえて登場させなかったお母さんの影響力は多大なものだったと思うのですが、彼を支えた多くの友人たち、恩師たちの温かで、おおらかさに、人の偉業というものは、必ず多くの人たちの支えがあるのだとあらためて思いました。1幕は事実に基づき、2幕は資料の少ない奥さんとの生活の一部を想像(?)で・・・・興味深い物語でした。

  • 満足度★★★★

    人間とはいびつなもの。
     人物設定や劇構成にはいろいろあるかもしれませんが、作者の、人の見方捉え方がそのまま反映されているおもしろい評伝劇。
      人というのはいびつなもので、その度合いが大きいほど人間的な魅力も大きくなる。が、同時にそれに関わる人々も大きく振り回されることになる。そんなことを感じさせてくれる作品でもありました。
     上演時間は約2時間30分(途中休憩15分含)。

    ネタバレBOX

     途中いろいろあるけれども全体としては人間を明るい面から捉えようとするマキノさんらしい描き方の作品だったと思います(もし例えば鐘下さんあたりが同じようなモチーフで描いたらどのような作品になるのだろうかとちょっと想ってみたりもしました)。また、耳で聴いていてやや難しい表現や専門用語(例えば、感作など)を含むセリフが少なからずあったようにも思います。ただ、「鬱勃たるパトス」(北杜夫ファンにはおなじみですが)にはにやりとしました。

     第一幕の舞台は伝研時代から渡米するまでの日本での生活を描き、第二幕はアフリカに渡るまでのアメリカでの生活を描いています。

     「研究というのは投機や賭けのようなものであたればでかい。同じ苦労するなら、思い切って大物にぶつからなきゃつまらん」といいきり、渡米後破竹の快進撃を続けるものの、人生を賭けた大博打に打って出て結局は負けてしまうのですが。

     「人の天分というものは人それぞれ違うものだ。人間というのは、その半分がまことであればそれでよいのだ。世の中というのは、五分のまことに、二分きょうき、あとの三分は、ちゃめで暮らすものだ(うろ覚えで正確ではないと思いますが)。」
    という劇中のセリフが印象に残っており、これが作者の野口英世の見方を表していたのかも知れません。

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