くりそつ人間論 公演情報 くりそつ人間論」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
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  • 満足度★★★★★

    クローン
     時代のテーマを重過ぎない形で提示していると同時に、内容について良く勉強している。シナリオで展開される論理も中々のもの。演出面でも役者のキャラクターをエッジの立ったものにしたことで、劇的効果を高めている。役者陣の演技も各々を仕事をきちんと果たして良いレベルだ。

    ネタバレBOX

     先進国の間でクローン技術開発競争が熾烈を極める中、我が国に於いてもヒトクローンの技術開発は秘密裏に行われていたが、出来上がったクローンの中には脱走するものも現れた。某年某月3度目の脱走に成功したクローンは、その規模に於いても、また、♂型、♀型というタイプ別に於いても最大規模のものであった。またインターネットの普及率が高まったせいで、情報は簡単に共有されるようになり、情報リンク、また関係部署への責任追及についても、そのような機関へのアクセス容易性についても格段の進歩を遂げていた。そのような状況下にあってのマスコミリークが発端となって、3度目のクローン脱走については、隠蔽体質の政府も流石に隠蔽し切れなくなった。因みに、1度目のクローン脱走は5年前、♂型クローン「1人」は、未だ潜伏中である。2度目の脱出でも♀型クローン1体が、未確認である。
     物語は政府から委託されて、クローン技術を研究するラボで進展するが、表向きは美容や健康に寄与する為にクローン技術を研究することになっている。然し、実態は、無論、軍事を含めた、人の嫌がる仕事への代替が基本である。その結果、差別は必然となった。
     ところで、クローンが脱走したことが、何でそんなに重大問題なのか、ということだが、遺伝子の転写の際、どうやら攻撃衝動を抑える機能が働かなくなっているようなのである。それで、かっとすると、躊躇なく相手を殺してしまうのだ。研究所の専任スタッフは、無論、このことを知っている。
     3回目の脱走騒ぎの折も折、自分はクローンだと名乗る♂から電話が入った。ラボサイドでは、当初パラノイアからの電話だろう、と高を括っていたのだが、電話口で語られる内容は、素人の域を超えていると同時に整合的でもある。結果、合理的に相手の要求を断ることはできないと判断したラボサイドでは、できの良い秘書に対応を任せた。秘書は、来初した♂に会って一通り話を終えた。その結果、例え客がパラノイアであるにしても、相手の話は、とても高度で、実際に起きた逃走事件とも符合していることから、客が人間なのか、クローンなのか確証を得たいと考える。だが、客もDNAを採取されることを恐れ、手袋をしたまま決して取ろうとしない。而も、勧められた茶も警戒して飲まない。最初、お茶を出したのは、臨時雇いの元倶楽部ホステスなのだが、彼女の色気攻撃にも客はひるまず、茶を飲むことは無かった。元ホステスも依怙地になって何とかじゃんけん勝負に持ち込み、漸く1勝を挙げて、頬にキスをさせ、そのままラボに戻ってくるが、DNAを取り出すには至らなかった。
     そこへ、掃除の臨時雇いが入って行く。客が茶を飲んで居ないのを見て、「折角、人が茶を淹れてくれたのに飲まないのは、相手の心を無視することだ」と諭し、冷たい茶を飲ませることに成功した。試料は直ぐに国立研究所で解析されることになった。だが、結果が出るまでには時間が掛かる。客は居座っている。而も客が、クローンである場合、攻撃本能が抑制されないので、躊躇なく破戒行動を実行してしまう。
     彼の要求は「所長に会わせろ」である。いつまでも会わせなければ、本当に客がクローンの場合には、リスクを覚悟しなければならない。彼の妻が、連絡をよこしていたのだが、到着までには、20分ばかりある。終に所長は腹を決めて客に会うことにしたが、客は「クローン産生を中止せよ」と要求する。所長が、あれやこれや、話をずらして逃れようとするが、客の論法鋭く、変形ロシアンルーレットをやる羽目になってしまう。最後の2回になった時、銃弾を発射したのは、秘書であった。客は、倒れる。然し、傷はかすり傷で済み命に別条はない。サイレンが聞こえる。秘書が自殺した。彼女が、このラボに来たのが、3年前であった。彼女はクローンであったのだ。而も、凶暴性を抑えることのできる。

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