満足度★★★★
(大幅修正)前知識を求める事は殆どないが、知識も何もあの柳美里である。そして福島の高校生の出演、初めてとなる北千住BUoY・・払拭しても付いてくる色で先入観まみれの観劇だった。自分が三十分早く来場していた事に席に収まってから気づいたが、暖色照明を受けたステージ奥をぼんやり眺めながら、柳美里の足跡や福島の事を思い巡らしていた。演技エリア(教室の机・椅子が置かれてある)のさらに向こうに、BUoYの特色らしい元浴場を壁の(富士山の絵でなく)見事なレリーフごと残した空間と、湯船から突き出た潅木が褐色に浮かんでいる。つまりかなりの奥行きになっている。潅木は持ち込みであるから何らかの意味を持たせている、とすれば教室の外、つまりグランドを表す目印か。潅木は桜の木の記号・・時々紙の花が舞っている。
記憶を遡ったが柳美里の小説は一冊も読んでいない(映画化された「家族シネマ」はみた)。演劇との所縁はもっと後に知ったが、戯曲を一つ読んだだけ。それでも20代から知る同世代(多分)の存在は頭の片隅に居座っていた。小説の道を見出す手前、出自である在日家族のあれこれを、それに圧殺されないための防衛手段のように舞台に投げ込んでいたに違いないと想像されるその時期、即ち彼女の生涯年譜の時期区分を示す名称が、私にとっての「青春五月党」。言わば符丁に過ぎなかったこの劇団名が現実に姿をみせるとは。。
さて舞台に立つのはふたば未来総合高校の演劇部(演劇科?)の生徒たち。私の観た回は女子バージョン。十代の子が舞台上で驚くべき臨場感を持つことがあるが、この舞台も例に漏れずである。広義の現代口語演劇の範疇。ただ演劇チックな演技を回避できたナチュラルな身体は、正直を旨とし、気持ちに馴染まない台詞は小さくなる。役者を自負する俳優であればどうにか正当化して明瞭に発語するだろう。だが彼女らの武器はこのナチュラルさ、というより存在そのものである。
小学校低学年で震災を体感した彼女らが、ふと3・11について語る言葉・声の疑いようのなさは、役者が十人束になっても作れそうにない。描写力がある、のではなく身体そのものが媒体となり、当時の事と、その時から現在へ彼女らが船となり船荷に運び来った「それ」が、観客の中に「当たり前のように既にあったこと」であるかのようにスゥッと流れ込んで来る。
構成面の拙さは否めない。言葉の静かな力が劇的に表出した後、同種の展開が反復されたりするのが勿体ない。構成とは時間上の場面配置という事になるが、配置を決める根拠となる何か、演劇の形式特有の原理があるのに違いない。
この舞台に登場するのは高校生の俳優の他、多摩高合唱部のメンバー。彼らが歌う讃美歌は冒頭で音だけが流れるが、姿を見るまでは大人のプロの既存音源を使ったのだろうと思った。ラストではステージ奥に登場し、同じ讃美歌を歌った。防護服のTAICHI企画5名のヒト形ビニルのパフォーマンスが異化をもたらしていたが、原発事故の象徴的イメージは本体ドラマとは一定距離を置きながらもドラマの通奏低音に共鳴し、不思議なマッチングだった。これら協力出演と、協力スタッフ、彼らと共に一介の客もまた、このプロジェクトを、というかこの舞台を、暖かい心で支えたい気にさせる何かが、エーテルのように場を包んでいた。あくまでそれは極私的な、私固有の感覚であった可能性は高いが...。
この公演に関するtwitter
初日1週間前から「団体名」と「公演タイトル」を含むツイートを自動表示します。
(ツイート取得対象にするテキストは公演情報編集ページで設定できます。)
先週は青春五月党『静物画』2公演、今週は安東量子氏の『海を撃つ』トーク2daysと、福島方面が充実。
6年弱前
柳美里『静物画』、角川文庫『魚の祭』(岸田賞受賞作が文庫化される幸福な時代があったの…)に収録されている方を読んでいるけど、こないだ観たやつと全然違うので、読み比べを強くオススメします。そしてこれはまだ現実に迫られたことのない、「四半世紀経った戯曲に手を入れること」を考えさせる。
6年弱前
そういえば 青春五月党『静物画』 を観た。 今まで自分も、直接的間接的に震災を扱った作品に出て、震災を体験していない東京の自分が演じ得ることって果たしてなんだろ。と悩んでいたけど、 当事者たちの演劇を観て、しかしどう受け止めていいか戸惑う。 これはまだ、判断保留だなと思う。
6年弱前
青春五月党『静物画』東京公演の熱気も冷めやらぬうち、『町の形見』の映像上映会が、ベルリン・セミナーハウスで開催中である。行くとしたら、土日のどちらかになる。映像記録があるということは、頒布の可能性があるということ。FHDもしくは4… https://t.co/v4aTj94oqP
6年弱前
少し時間がたってしまいましたが、先週は青春五月党「静物画」を観劇しました。透き通ったものが身体に染み込んでくる、とてもよい時間を過ごしました。静かに静かにいろんなことを考え続けています。
6年弱前
先日、お誘い頂き『青春五月党「静物画」』観に行ってきました。 東日本大震災が題材のお話。 目を背けたくなる時もあるけどこれが現実。胸か潰される思いでした。 戯曲も買ったから後で読むううう👁️📗 https://t.co/DSQKbMbznC #柳美里 #青春五月党
6年弱前
青春五月党「静物画」も素晴らしい舞台だったっすけど、それを思う時、どうしてもぼきん中では2年前の「数直線」を引き合いに出して来ちゃうんすよね。そしてその舞台の細部までもが、今でもありありと甦って来るんすよ。震災から6年の、今から2年前の言葉たち。時は必ず、めぐり続ける
6年弱前
青春五月党「静物画」のパンフレットを読んでいて驚いた。劇中のバイオリンが、戸川純 with Vampillia の宮本玲さんだったとは! 柳さんに戸川純の話をしたことが懐かしい。 https://t.co/Qtw0O9KeW3
6年弱前
青春五月党「静物画」東京公演には、「町の形見」のキャスト、尾崎宇内さん、浅井浩介さん、田島ゆみかさん、佐山和泉さん、山中志歩さんが観劇に訪れ、「なんだか同窓会みたいだ」とフルハウス副店長が喜んでいました。 ご来場、ありがとうござい… https://t.co/YwxGbreFGD
6年弱前
青春五月党『静物画』。ふたば未来学園演劇部のみなさん素晴らしかった。彼等の身体、声を通して出逢うことのない人達の生を感じる瞬間が幾度もあった。林檎の花びらが風に舞い、窓辺から入り込む。目に見えない傷、聴くことのできない声、口籠って… https://t.co/ClOLegEIJr
6年弱前
先日、青春五月党「静物画」全公演が終了いたしました。 たくさんの方々に出会い、たくさんの経験をさせてもらい、本当に感無量です。 また、機会があれば皆さんとご一緒できれば幸いです。 柳美里さんから、こんなものまで頂いてしまいま… https://t.co/q0Qw5rdOZL
6年弱前
青春五月党「静物画」東京公演を見事に演じ切った女子のみんなー、ごくろーさまー。友衣っちはその独特の雰囲気を、夢姫っちはその類い稀なる肺活量を、歩未っちはその天真爛漫さを、萌々子っちはその落着いた台詞回しを其々駆使して、先輩なき後のこれからのふたば未来演劇部を引っ張ってくださいねー
6年弱前
青春五月党「静物画」東京公演に、いしい君も観に来てたんすね!
6年弱前
3.15 青春五月党『静物画』女子版 厳しくしっかりとした演劇…今現在なにかを思っている人がしっかりいて、ふさわしいやり方でつくりあげている それに応え共同作業でつくりあげた少年少女たち その心に空いた埋めようのない穴をどうしたら… https://t.co/XOezBBu7DH
6年弱前
改めまして、青春五月党「静物画」無事に全8ステージが終了いたしました。 ご来場いただき、ありがとうございました。 劇場、出演者、スタッフ、そして沢山のお客様との出会いに心より感謝申し上げます。 https://t.co/AwiVAW7ugA
6年弱前
青春五月党「静物画」無事に全8ステージが終了いたしました。 ご来場いただき、ありがとうございました。 劇場、出演者、スタッフ、そして沢山のお客様との出会いに心より感謝申し上げます。 https://t.co/aceCFnZQkO
6年弱前
柳美里「静物画2018」で一番好きな一節。〈遺書。わたしは一日三回ごはんを食べる。そして、一日三回歯をみがく。わたしがもし八十五歳まで生きるとしたら、あと、七万四四六〇回、歯をみがく計算になる。そんなに歯をみがいたら、わたしの歯はすり減ってしまう。〉つづく
6年弱前
青春五月党『静物画』。男子版を観て最初ちょっと飲み込めずにいたのが続いて女子版を観ることですっと「腑」に落ちてきた。女子版を観終えて後ろを振り返ると、先程男子版に出演していた男子達がボロ泣きしていたのが印象的。いずれの版でも丹念に掘り起こされ解き放たれた言葉達がずしりと重かった。
6年弱前
柳美里主催青春五月党「静物画」鑑賞記をアップしました。 お目通し下さいますと幸いです。 青春五月党「静物画」鑑賞記|梅﨑信一「夜の一人芝居」|note(ノート)https://t.co/EMdh3MRObX
6年弱前
青春五月党『静物画』北千住BUoY 男子版。同級生であるが視覚聴覚そして生きる感覚の焦点が個々で違い、その振れ幅が生死のレベルまで広がってしまう悲しみ。ギミックに頼らない分直截に迫ってくる。 https://t.co/XhuhaguhLK
6年弱前
さて、青春五月党「静物画」の、本日の感想など。上演があるのなら、また観に行きたい。きっとその度に、何か違うものが得られるから。そんな舞台。成長した彼らの姿も、また観てみたいものです。 https://t.co/emk6ZDMtw8
6年弱前
青春五月党「静物画」男子版を観劇。 彼らの体を通し語られる言葉ひとつひとつが、真っ直ぐに心の真ん中を突き抜いていきました。 故郷の大切な記憶を語る姿が、本当に美しかったです。真実を生きてるからこそ強かった。 観にいけて本当に良かっ… https://t.co/FiZunA8aYM
6年弱前
青春五月党「静物画」を観ました。ここまで直截に福島と震災が書かれた話を、こんなに飲み込めないと思わなかった。
6年弱前
昨日に観た、青春五月党「静物画(女子版)」について未だに咀嚼できていないのですが、(例えば、学生時代に戻れるとしても二度と戻りたくはない)の様な気分に改めてさせられて、未だ咀嚼できていない、というのが既に充分にエモい感想になってしまっているのでは、と、不可能性の提示として、、
6年弱前
青春五月党『静物画』観劇。 オーハシヨースケさんにお会いする。 ご縁にただただ驚き。
6年弱前
青春五月党「静物画」女子版にて。まことが、両親に向けた遺書を読み上げる時、感極まってしまった。あれは演者である、ゆきさんの素の姿だった。両親を想い悲しくなってしまったのか、両親との思い出が脳裏を過ってしまったのか。そこに、震災からの年月の重みがあったとするのは、穿ち過ぎだろうか。
6年弱前
3/16、17 青春五月党『静物画』。なおが「授業」で語る卓球部から文芸部への転部理由は、柳美里さん自身が語るこれからへの決意表明のようだった。速報で入っていた青春五月党次回公演の告知。東北への遠征費準備しつつ楽しみに待とう。夏に… https://t.co/sTkVONyxQw
6年弱前
3/17 14時 青春五月党『静物画』女子版。声を発する人よりも、声や声を生んでいるもの、そしてその先へ繊細に向けられる視線に惹きつけられた。その視線が声の迫真さを増し、集中して共感に溢れた会場の空気を生んでいたと感じた。それにし… https://t.co/HrPCSTjX1N
6年弱前
3/17 11時〜 青春五月党『静物画』男子版。小高での男子版と比べて、今回の方がぐんぐん引き込まれたのはなぜだろう?フライパンの上の黄身の色、乾いたように聞こえたお母さんの笑い声、畳の上に敷かれたプラレール、そういった言葉が喚起… https://t.co/AgvVgUCtgZ
6年弱前
北千住BOuyみたいな場所でスモーク焚くのは、自分は照明家として能無しです。って言ってると思っていいよね。青春五月党「静物画」
6年弱前
青春五月党『静物画(男子版・女子版)』BUoY 上演中、俳優が役を演じているのだとまったく思わなかった 役と俳優の区別自体はじめから存在しないみたいで不思議な体験 俳優が当事者だからだけじゃなく、俳優の誠実さが戯曲の言葉をうまく引… https://t.co/e4lv7e4qY7
6年弱前
青春五月党「静物画」 男子の部、女子の部を続けて観た。震災当時は小学生だった彼ら、彼女らの8年間の想いを、とても優しく丁寧に描かれていた。こういう奇跡のような作品を創られた出演者、柳美里さんに感謝です。学生の方々にも、大切なものが… https://t.co/MQwjhV9fri
6年弱前
足立区北千住の「北千住BUoY」って劇場に、青春五月党「静物画」を観に初めて行ったんすけど、なんとも味のある不思議な空間で、2階のカフェも素敵だなって思ってたら、元は銭湯とボーリング場で、廃墟になってたところなんだってさ。へえ。… https://t.co/lS9fHS1VM9
6年弱前
青春五月党「静物画」千穐楽、女子部の皆様お疲れ様でした。細かい感想は後ほど。そして全公演終了お疲れ様でした!福島に続き素晴らしい舞台でした。キャストの皆様、関わった皆様ありがとうございました!今度は是非「町の形見」を観てみたい。
6年弱前
青春五月党『静物画』女子バージョン @ 北千住BUoY、志賀理江子「ヒューマン・スプリング」展とこだまし合ってる感が凄い…。
6年弱前
青春五月党「静物画」拝見しました。以前からふたば未来学園高校演劇部の公演を見てみたいと思っていたので、今回の機会がとても嬉しいです。あの日のことやふるさとでの思い出を彼、彼女らの言葉で聞くことができ、あふれ出る涙にも胸を打たれました。素晴らしいお芝居をありがとうございました。
6年弱前
青春五月党「静物画」
6年弱前
3/16、北千住BUoYで青春五月党「静物画」を男→女版と続けて観劇。ユニット名と公演名を本当にそのまま体現したような、同時に、震災8年の今でしかあり得ないような演劇だった。終わりが近づくにつれて惜別の情みたいなものが湧いてきた。… https://t.co/ob4iGLZhAu
6年弱前