約2時間50分、休憩15分含む。精神病院が舞台だが病や狂気が主軸ではなく、初演とは全く違う印象!世知辛い現代社会で目まぐるしく変転する人間関係を、俳優3人のスリリングな演技で堪能。対面客席の小空間で贅沢な時間♪
満足度★★★
精神病院での、二人の白人医師と、一人の若い黒人患者の、3人のパワーとして面白く感じた。統合失調症の治療法をめぐる対立、正義と保身の対立という風に、どこかに正解を期待していると、肩透かしを食う。
階級・人種などの社会的背景を絡めた少人数のパワーゲームというのは、イギリス演劇が好きな主題なのだろうか。ピンター「管理人」「誰もいない国」、ヘア「スカイライト」と、最近見た舞台がいくつも連想される。
濃密な会話に2時間半(90分、休憩15分、65分)どっぷりつからせられる、見終わってくたくたになる芝居である。
満足度★★★★
2000年にジョー・ペンホール(Joe Penhall)の脚本でイギリスで上演されたものを2010年に日本語化した。その再演である。二つの日本版のキャストを下にまとめておく。
28日間の入院治療を経て明日は退院予定の精神病患者と治療は終わっていないという研修医、そして患者は治っていると退院を促す上司の3人による会話劇である。
舞台は、要領を得ない回答を繰り返す黒人の患者クリスと、苛立ちつつも言葉で納得させようとする白人の研修医ブルースの会話から始まる。最初からなめられているブルースは言葉が多すぎてしばしば失言する。何も考えていないような態度から一転して相手の言葉のスキを鋭く突いてくるクリスにはハッとさせられる。
このような揚げ足取りとか騙し合い、本音と建前の暴露合戦、主導権の奪い合いなどに私は面白さを感じた。何気ない会話が後でTPOを無視されて再現されたときの怖さ、は私も経験することであるし、TV・新聞・雑誌はそういうことのオンパレードである。
私は3人が実は皆、精神科の患者だったというオチなのかもとずっと思っていた。まあそれではアマチュア演劇なのだろう。前に何かで見たような気もするし。
それにしても、これはイギリスで上演されたロンドンの精神病施設の話であることに驚く。何も言われなければアメリカの話かと思ってしまうだろう。現在はイギリスもBREXITで大混乱の最中で政治的にもすっかり我々のレベル(以下?)にまで落ちてきてしまった。グローバリゼーションが世界をフラット化することの一連の途中経過なのだろうか。
二つの日本版のキャストは以下の通りである。中嶋しゅうさんが2017年に亡くなられた関係で配役がシフトしている。
コンサルタント(主治医?):ロバート、患者:クリス、研修医:ブルース
2010年 中嶋しゅう、 成河(当時はチョウ・ソンハ)、 千葉哲也
2019年 千葉哲也、 章平、 成河
演出はどちらも千葉哲也、翻訳は鴇澤麻由子から小川絵梨子に変わっている。
2010年の公演で成河は第18回読売演劇大賞優秀男優賞を受賞している。