凍結しても死なない 公演情報 凍結しても死なない」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
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  • 満足度★★★★★

     タイトルに惹かれて初めて拝見した劇団だが、公演回数といい、戯曲の描く世界の本質性といい、役者陣の演技といい、演出といい、金が無いなりに工夫された舞台美術や観客への心遣い、礼儀といい、実にしっかりした劇団である。(追記後送タイゼツおススメ!)出掛けなければならないので、ほんのちょっと。
     演劇だから、当然演じてはいるのだが、とても自然で“実体”を感じる。このような経験は初めてのことだ。上手いのだが、文学座的な上手さというより、良く自分を見つめた上で練習を重ねた自然体なのである。観るベシ!(最終追記12.27)

    ネタバレBOX

    会場は、今回カジュアルレストランの入った建物の微妙な位置から狭くおんぼろな階段を上り詰めた3階。階段途中には、踏板と直ぐ上の段の側板の間が空洞になっているような段さえあり、物語の内容と会場が実にしっくりと噛み合っているばかりでなく、余りにも立派で整然と組み立てられた建築物を一見した時はその素晴らしさに打たれるものの、東洋人の我々には直ぐその単調性が我慢できない代物に変わるような飽きは来ない。公演が始まると上って来た階段への入り口ドアは閉じられ、漫才コンビのライター・フルヤが原稿書きに用いる部屋になったり、或いはサイドストーリーが展開する場所、個的作業の行われる部屋として用いられる。
     物語のメインストリームは、この漫才コンビ、ニッタとフルヤの確執を中心に展開する。フルヤ、ニッタ共に高校時代の登山部メンバー。漫才好きの2人は寄ると触ると漫才談義に耽っていたのだが、遂にコンビを結成するに至った訳だ。以来10年、フルヤは矢張り登山部出身の彼女と同棲していながら、貧しさ故に殆ど何処にも彼女を連れていってやっていない。而も彼女は、彼が一所懸命己の道を追及し充実した生活を送っているので幸せであった。然し、何年もコンペに参加しては2回戦迄で敗退、ニッタは、創作の可能性を広げる為に新しいことにチャレンジさせようと様々な手を尽くすものの、フルヤは己の拘りを絶対化し聞く耳を持たない。後輩からも批判され、彼女にも愛想を尽かされて尚彼は創造の要諦を掴む為に、己を関係の坩堝に開いてゆくことができなかった。この為、ニッタは終に新たなネタ探しの為冬山に挑んで遭難、帰らぬ人となる。このメインストリームに絡んで劇団海賊団が、フルヤらが練習に使っているスペースの共同使用人となったり、後輩の漫才グループは解消した後、ボケはユーチューバーとなり、ツッコミは新たに彼女と組んで夫婦漫才を始めたりのサブストリームが絡んで展開する。サブストリームとの絡みもかなり自然で納得できる内容だ。遭難したニッタからのメッセージが伝えられるラスト部分に、希望が込められることによって決定的な悲劇になることを避けている点でも若者らしさが現れていて生命力を感じる。

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