ロシア・クルガン人形劇場ガリバー『かぐや姫』 公演情報 ロシア・クルガン人形劇場ガリバー『かぐや姫』」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
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  • 満足度★★★★★

     たった1日だけの公演なのが残念!

    ネタバレBOX

     ロシアのクルガン人形劇場・、ガリバーによる1日だけマチネ、ソワレの公演だ。演目が「竹取物語」ということもあって用いられている仮面・人形やその所作については、日本人が関わり演出もサンクトペテルブルグ演劇大学で演出を学んだ日本人が担当している。ロシア側からは、人形遣い3人と人形遣いでもある照明担当、座長が来日。
     板上には、孟宗竹の林が、上手、下手とも舞台ほぼ中央手前に各々1つずつ。それぞれが回り舞台になっていて回転すると四阿が現れる。舞台中央の上方には満月。
     恰も一夜にして起こった物語、或いは長い夜の間に起こった物語であるかのように舞台上は基本的に終始昏い。人形遣い達は黒子の衣装を纏い時に応じて面を手に持ち布などで衣装を表現しつつもう一方の手でかぐやを抱くなどの所作を演じたり、状況によって面を顔につけたりと通常の面の用い方とはかなり異なる使い方をする他、時に全体の動きを自然でスムースに見せる為に独りの動きを複数の人形遣いで演じたりもする。物語自体は、演者の数が少ないこともあってか、5人の求愛者の内、帝だけで代表させるなど本質だけを取り出した分、シャープに仕上がっている。かぐやの成長のスピードが尋常でないことは、その人形のサイズと衣装、髪型などで表しているが、人形をチェンジする手際は見事である。また黒髪の美しさが異様なまでに強調されているのは、白人の神秘化したオリエンタリズムの一側面を表現しているのだろう。照明の変化で見事なのは、かぐやが月に戻るシーンで月が地球に変じる点だ。照明は随分工夫を凝らしたという。
     更に演出で際立っていたのは、開演直後の長い間である。この間は、最も古い物語の古層を示すと共に、ロシアと日本との距離、文化的相違、現代と往時との超え難い時空を表現して一挙に観客を物語世界に誘う。
     音響に関しては科白が一切なく、ロシアで考案されたグリュコフォンという楽器を中心にタンバリンなどを組み合わせた独自の音響で舞台を包み込む。神秘的であると同時にファンタジックな音響空間を創っている点もグーだ。
     演者達の姿勢で素晴らしいのが、表現様式や人形の形の違いより、大切なことは、人形は生きていると演者達が考えている点に在る。この姿勢があったればこそ、彼我の差を越えてこれだけの作品を創り得たのであろうが、ロシアにも「竹取物語」に似た「雪の娘」という民話があるというから面白い。

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