月まんじゅう 罪人お鶴の微笑み 公演情報  月まんじゅう 罪人お鶴の微笑み」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.5
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  • 満足度★★★★★

    この劇団の公演は2回目。そして今回は劇団初めての本格的時代劇を謳っている。原作は森鴎外「高瀬舟」という短編小説であるが、その世界観(広がりや深み)は読者によって異なると思う。本公演は舞台美術が素晴らしく、視覚という効果を利用し観客を一瞬のうちに物語の中へ誘う。
    さて、公演は小説の主人公を男から女に変えているが、もともと普遍的な主題を扱っており、”テーマ小説”と言われるているから違和感はない。それどころか女性だからこそと思える(情念)ような描き方をしており、主題に情緒という面が加わり観応え十分である。
    また、性別を変えたことから、女性差別(遊女)という今日的な問題も浮かび上がるようだ。
    (上演時間1時間45分)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、牢屋(現在)、大店の呉服問屋・島原遊郭(回想)を場面毎に転換させ、状況を瞬時に解らせる。現在と回想の行き来を通して、主人公姉妹の境遇を心情豊かに説明していく。セットがそれぞれに見事に作られ、それだけで江戸時代・京都の町を思わせる。そして町の賑わいが遠くに聞こえるという細かな演出が巧い。また衣装・小物から鬘姿や同心の2本差しなど時代考証も見られ、本格時代劇を思わせる。

    物語は、牢屋で同心・羽田庄兵衛(高槻純サン)に妹殺しの罪人・お鶴(渡邊宰希サン)がなぜ妹を殺すことになったのか、事の顛末を話す。普通の罪人と違い、天命に安んじているような姿に興味を示し身の上話を聞くことになった。その境遇を通してテーマが見えてくる。
    主人公の設定は男から女に変えているが、普遍的という観点でみれば、「人間の欲望」と「安楽死」というテーマが横たわっている。

    人間の欲、その満足の度合いは人によって違う。欲望は際限なく1つが満たされれば次の望み、次から次へ欲望が生じる。この公演では、”財”を命に直結した”食”で表しているようだ。冒頭、同心が豆腐を買い、その代金を巡り同心の女房と遣り取りするシーン。そして牢屋で甘酒を飲むシーン。ラストの月をまんじゅうに見立てるシーンと要所要所に貧しくても生きるための”食”という欲望が象徴されていたと思う。貧に苦しんできたが、罪人になったことで衣食住の煩わしさから逃れられたことを喜ぶ。甘酒を飲むシーンがリアルで泣ける。
    同心の大店からの袖の下、女房が倹約できないことなど自らの家庭生活を振り返り、不平の絶えないことを省みる場面は、下級役人でさえ持つ欲望を浮き彫りにする。

    もう一つが「安楽死」…妹・お冬(桔川結有サン)が病気に罹り、姉に苦労させまいと鎌で喉を刺したが死にきれない。苦しんでいる妹の喉から鎌を抜いたことで妹殺しの罪になった。善良な意思でやったことが法律に触れるという矛盾。この安楽死という難問を一庶民の人生に見出している。当時の裁きでは死罪らしいが、遠島送りに止まったところに奉行の裁量とみた、と同心は述懐している。
    役人の傾聴(客観)されたリアリズムの描写(ストーリーテラー的な役割か)、姉妹の心情(主観)という対比した観せ方も巧い。

    演技…物語は原作(小説)も良いが、この公演は女の情念が見事に表現されていた。姉妹(お鶴・お冬)、同心・羽田庄兵衛他2名がシングルキャスト、それ以外は皆2役を担っているが、セットが別に設えていることもあるが役柄を十分体現しており楽しめた。また三味線など和楽器の音響効果も印象的であった。
    ”足りるを知る心”を持つお鶴。ラストシーン…高瀬舟に乗り込む役人・罪人。お鶴が浮世で悶え苦しんだ塵を払い、月という”まんじゅう”を美味しそうに食しながら闇に溶け込んでいくシーン、その余韻が何とも清清しく思えた。

    次回公演も楽しみにしております。
  • 満足度★★★★

    鑑賞日2017/10/26 (木) 19:00

    初日、観させていただました。着物や小物、時代劇の雰囲気楽しませていただきました。初日のせいかな?現代の雰囲気が少し…。悪役はもっと悪になりきって良いんじゃ?不幸はどん底まで不幸になって、月まんじゅうの笑顔に意味が?熟成に期待です!

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