満足度★★★
匿名の英雄
〈原風景〉の演劇化を目指していたのだと思う。過剰な「名付け」にこだわっていた私たちは実は「名付け」によって失われたものにこそ目を凝らすべきなのかもしれない。名付けから滑り落ちることの中に真実がある。名付けや人称にこだわることは滑稽なのだ。無名の中にこそ真実は立ち現れる。だが私たちはそのかすかに見えてきたものにもすぐ「名」を付けたがるのだが(笑)。近代を超える時代劇なのだと思う。スゴイ脚本だ。
だが、この公演が成功したかは疑問だ。時代に抗して観客を巻込むほどのエネルギーが感じられなかった。この40年の日本の歩みはまさに逆向きだったのだから。吹雪をものともせぬ凄まじいばかりの団結力(?)が必要だった。
満足度★★
足し算のプロデュース公演
期待して行ったが、マジックは起きなかった。
チケット料金に見合う保村・奈佐・塩野谷・伊藤・沖田・イワヲ氏の
貫禄あるプレイ。でもそれは観る前からわかっていたこと。
ミラクルがほしかった。
また、初演時とは時代の空気感が異なる現代に再演する意味を
考えてしまった。どのくらい原作に忠実なのかわからないが、
脚本を半分書き換えるくらいの大胆なアレンジが必要だったかもしれない。
シーンの美しさ、面白さは伝わるのだ。
面白いシーンはたくさんある。迫力も美しさもある。たとえば、冒頭の河原乞食のシーンや、島原の乱のシーン、塩野谷さんの殺陣の美しさや、沖田乱の動きや存在感、栗原茂の歌、甲津拓平のザピーナッツ風の歌とか、などなど個々のシーンは美しく成立しているのだが…。