戀女房ー吉原火事ー 公演情報 戀女房ー吉原火事ー」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

     1911年4月9日に発生した吉原の大火に材を取って描かれた今作。

    ネタバレBOX

    吉原と根岸を対置する構図で持たざる者と物持ちを対比した作品だが、無論、鏡花らしく人の創る憂き世の哀れ、儚さ、酷さを堪えて生きる吉原の人情や、男女(浦松重太郎・お柳)の深く真摯な愛と重太郎の実母、重太郎の妹樫子とその婚約者、岩造など根岸の傲岸不遜で近代かぶれ、体裁と家紋にがんじがらめにされながら、エリート気取りで軽佻浮薄、而も冷酷な屑どもを比較して描く。
    第一の見所は、お柳が、吉原の花魁たちの墓に乱暴狼藉を尽くした岩造一味に鉄槌を下した頭たちを宥める場面で啖呵を切るシーンか。当に江戸っ子の心意気ここに在り、と思わせる名台詞。すっとこどっこいをぎゃふんと言わせ、心が晴れると同時に男社会で女伊達を張るお柳の覚悟のほどを見事に見せつけるシーンである。第二に、重太郎の妻となっていたお柳が、根岸を離れる際にもう一度啖呵を切るが、惚れた男の為に我慢に我慢を重ね、高いプライドを折って土下座して迄頼んだ願いを無下にされての無念、観ている観客の腸が煮えくり返る思いになる。終盤、浦松の婆と吉原を焼き尽くした赤い老魔者とが、人界と魔界で交感し合いながらお柳と重太郎を責め苛むが、鳶の頭らの助けもあり、遂には魔物に打ち勝つ大団円に持ち込み幕。
    トランプの差別的発言や、沖縄に対する或いは、在日の人々に対するヤマトンチューの差別発言が問題になる昨今、差別・被差別、強者・弱者をバイアスの無いというより弱者の側に立とうとし続けた鏡花的視点で見直してみる必要があろう。

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