いかものぐるい 公演情報 いかものぐるい」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    地域振興、痴呆、介護、ニート、創作芸能での生き辛さ、家族分裂、不倫、ストーカー…世の中のあらゆる問題を「ごった煮」にし、誘致活動、落語、アイドル、バンド、漫画等の様々な媒体を通して、そのまま舞台に投影。まさしく「如何物食い」状態でしたね。印象で繋がるモチーフを敢えて消化せずに、一鍋に放り込んで連鎖させるかのような感覚は、観客の脳内を触媒にして、各々に何らかの闇を想起させる感じがあります。

    ネタバレBOX

    充足されぬ、ジンワリとした抑圧の中、人々の様々な足掻きが全編に漂い、蠢く。その空気感を何よりも雄弁に語るのがメインキャストの周りを彷徨うコロス(アンサンブル・キャスト)の一団でした。
    表を演じているメインキャストの"脳内"を表出させるが如き、暗黒舞踏さながらの動きと、象徴的な黒いテープ・ビニール布、更にそれを照らす照明が、もやもや~とした心の内を見事に映して、観る者の印象を支配していましたね…

    軋轢が一点に集約して起きた悲劇…。とことんまで崩壊した後に残る「家族ゴッコ」が、現代が軽んじてきた形式の真意を暗示するかのようでもあり、理想と乖離していても尚、断ち切るべきでない繋がりの尊さを感じさせます。
    敢えて解放のモチーフに凧を選んでいるところが意味深なんだねぇ…

    壊れなければ気づけない、優しくもなれない… あまりにも切ないですね、人間ってヤツは。

    【雑感】悩んだ末の正面下手席。文乃さんのマヨネーズ和えが死角でよく見えない代償に、ラストシーンのジワリとうつろう文乃さんの表情の芝居が間近でラッキー。席で目にするものが相当に違う演出も面白い趣向だけど、生演奏のいちろーさんも見切れた!
    ポン輔。何ゆえ彼は、何もかも背負い込むことになったのか…
    単なる引きこもりでは説明のつかない重荷と足枷が、説明されないからこそ醸造される深みと強固さをもって伝わってきました。こういう芝居をさせると今津さんはハマるなぁ。
    悪食プリン。劇本2のニノさん作品は本作からのスピンオフだったんだね。客席上空の高~い位置での生演奏は迫力満点で贅沢だった。あと、永遠の17歳おナツさんのアイドル姿、もっと観たかったぁ。そういえば、ミソゲキでセーラー服だったよなぁ(笑)
    大脇ぱんださん。ご本人は癒し系の微笑ましいキャラクターなのに、ごっつうシビアな狂気まとうオバさん役で、存在感ハンパなかった。女優なんだなぁ…と痛切に感じた。
    うぇってぃさんの進撃の巨人スーツに大ウケ。もっと暴れて欲しかった。
  • 満足度★★★★

    楽しめたが、爽快感はない。

    ネタバレBOX

    ■全体評

    大きく分けて、三つあった。
    ★ストーリーは、分かりやすい
    ★キャラの気持ちが伝わりづらい
    ★派手な演出は、好き
     
     
    ★ストーリーは、分かりやすい

    家族のストーリーと、街のストーリー。
    家族は交流がうすく、なんとなくつながっている。
    街は、リニア誘致活動としてアイドルや地元の名産をPRしている。
    そこを縦糸として、友情や愛情、憎しみを横糸にしている。

    引きこもりの主人公が、おじいさんと過ごす毎日。そのおじいさんが、認知症になってゆく。
    ロックボーカリストな姉は、着ぐるみを着ている変な彼氏と別れてくる。
    母は、勤め先の社長と不倫している。
    父は、農家づとめで、さえない男。
    だんだんと家族が壊れていく様が、派手な芝居に隠されて描かれている。

    街は、浮かれている。
    アイドルライブ。誘致の掛け声。景気のイイ話。
    夢をバラまき、にぎやかで幸福な時間をみせる。

    バラバラな家族と、団結する街角。
    別々のシーンが平行し、やがて交わる。
    不幸と幸福が顔をみせ、事件により突然の結末を迎える。

    アフタートークでは、日常と非日常(ケとハレ)と脚本家がネタばらし。。
    落語やダンス、歌をつかった派手な見せ方は、素直に楽しめた。
     
     
    ★キャラの気持ちが伝わりづらい

    一番感情移入すべき主人公たちが、分かりづらい。

    まず、理性で分かる行動理由が、希薄。
    学校にいかず、引きこもる理由。引け目、負い目、恥ずかしさ。何でもいいけど、セリフに表されたら。

    感情でいうと、仕草が分かりづらい。
    ヒロインに「次、いつ会える?」と聞かれても、「1年後」。これは、落語ネタにつながるのだが、照れ隠しとも感じられない。アイドルライブでヒロインを見かけても、じっと見つめる感じを受けない。
    ただ、凧づくりが好き、おじいさんが好きというくらい。
    視線を誘う仕草が足りないのと、円形劇場ゆえ死角なのか?

    感覚でいうと、不安感が伝わるくらい。
    例えば、ヒロインとの交流の記憶が、好感ではなく、悪夢におちる。食べたくない、不気味な食べ物の羅列。黒いビニールをまとったダンス。「気持ち悪い」ではなく、「変」。何がしたいんだ?と、戸惑った。

    周りのキャラたちが、分かりやすいだけに、ストーリーをまわすだけの狂言回しに見えた。
    楽しくも、哀しくもないのは、見ていてツラい。

    例えば、ヒロインの応援にいって、かすかに手をかざすとか。
    おじいさんとの別れのシーンに、「ぜんぶ無くなれ」みたいな破壊衝動を表すとか。
    (ゴムを口にくわえさせて、手を放すではなく)
    地味でも、感情をみせる役者の芝居が見たかった。

    アフタートークでは、「なんか闇なんですよ」と説明されたが、とりつく狂気や、悶える苦しみでは無かった。あえてあげるなら、お伽話の小鬼。黒テープや黒いごみ袋が、ガサガサ踊る感じ。妄想タイムなんだろうけど、感情を突き抜けてこない。何かが足りない。唐突さが目につく。

    派手なシーンが良いだけに、とても残念だった。
     
     
    ★派手な演出は、好き

    本職による、落語。
    劇中アイドルユニットのライブ。
    応援したり踊ったりする、観客役。
    バンドライブに、ヘッドバンキング、生音。
    アジる活動家。
    地元イベント。
    着ぐるみのコミカルさ。
    街コンに、恋のお悩み相談、観客参加。
    身体をくねらす、コンテンポラリーダンス。

    見映えのするシーン演出は、時間を忘れさせる。
     
     
    ■雑感

    黒いビニールは、「闇」というより、「夜風」を想わせた。チラシには、ノイズとあったが。

    凧上げに、風を逃がす説明セリフ。
    何か、待ちの姿勢。ただ、風が過ぎていく様に、立ち会う感じ。
    また、夜を過ごすうちに、夢をみて、また夜が白んでくるみたいな。

    街のストーリーは幕をおろしたけれど、家族たちの夜は長くて暗い。

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