Hamlet 公演情報 Hamlet」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.4
1-5件 / 5件中
  • 満足度★★★★

    鑑賞日2016/05/21 (土)

    固有名詞を排し、スーツ姿や赤いハイヒールなど現代風な衣装をまとった人々の、普遍的な愛憎劇としてのハムレット。

    この演出家らしいスピーディな展開と荒々しい感情の発露が観る者の神経を揺さぶった。

  • 満足度★★★★★

    今までに無いハムレット
    かなり衝撃的な作品だった。鉄パイプのテーブル、金属を激しく叩くような音、そしてかなり早口な台詞。感情が唇からあふれ出すのを止められないかのような、
    剥き出しの感情を相手に叩きつけ続けるような・・・無機質な舞台にそれが積もっていくように感じた。オフィーリアの今まで観た事がない狂気、父王に迫られてもがくハムレット、それぞれが緊張感の中で、どんどん追い詰められていく様が、体をこわばらせた。小劇場だからこその演出・照明・音響、そして小劇場としてはかなりハイレベルな作品だと感じた。

  • 満足度★★★★★

    迷わない
    「To be,or not to be, the question」...限りある時間の中で、一つの公演を観る。あれか、これかという二者選択ではなく、同じ時間帯に多くが上演されている公演の中から、この公演を選んで嬉しく思っている。
    有名なシェイクスピア「ハムレット」という戯曲...言葉は悪いがこの手垢のついたような作品をどう観せてくれるのか、大変興味があった。その印象はサスペンス風で、スタイリッシュな演出という感である。
    演出の延長上にある照明、音響効果も洗練されており印象深いものがある。

    ネタバレBOX

    梗概は改めて書なくても有名な戯曲。しかし、説明にもあるように「有名な戯曲であり、様々な解釈、様々な上演形態が試みられた、あるいは、それらの試みを許してきた、名作戯曲」ということを意識したことは容易に理解できる。

    王が急死し、王の弟クローディアスが王妃と結婚して王の座に就く。悲しみに沈む王子ハムレットは、ある晩父の亡霊と会い、その死がクローディアスによる毒殺であると知る。ハムレットは狂気を装い復讐を誓う。

    場内はL字型ひな壇客席。出入り口の反対側にある席に座る。その位置から右手奥に上階へ通じる階段。また芝居途中に階下から照明が照らされるシーンがある。この劇場の特長である立体的な空間を見事に演出していた。
    セットは、患者搬送に使用するようなスチール状網ストレッチャー3台が等間隔に置かれている。その台下部に水が入った大きな水槽が置かれてある。始め中央に置いてあった水槽内には人骨が...。

    殺人事件の謎解きのような雰囲気もあり、その物語の先を観たくなるような展開である。小難しいと感じていたハムレットも、この公演では分かり易く思えた。今までは政治劇の要素が色濃いという印象であった。その面はあるが、ここでは人間が持つ猜疑・嫉妬・羨望・偽善というような負のスパイラルが折り重なるように描かれる。その様が澱のように沈殿していく。しかし、それは重苦しいという感覚ではなく、骨太・重厚という感覚に近い。心の深奥を水槽の水に映し出す...静謐なまでの美しさが感じられた。
    それは、陰影のある、もしくは定位置(水槽淵)だけの強調した照明効果。また音響は重低音のようで、それが荘厳のイメージを呼び起こす。

    さて冒頭の限りある時間に関連して、女性演出家サラ・フランコムの舞台を8台のカメラで撮影、臨場感豊かに再現した映画が公開される予定(日本未公開)。映画では8定点から捉えるというが、そのライブ感はその場限りのもの。ただ、映画のようにアップで役者の表情(感情)を観れないことはあるが...。

    次回公演を楽しみにしております。
  • 満足度★★★★

    熱演!
    私にとって難しいと感じていたシェイクスピア作品が、とても分かり易くなっていて、とても良かったです。役者さん達の熱演も素晴らしく、迫力があり、息苦しくなる程でした。演出も独特で、雰囲気が出ていたように思います。ラスト近くの剣闘シーンはカッコ良くて(カッコいいというのが良い表現ではないかもしれませんが)もっと観たい位でした。熱演の光る舞台で、良かったです!

  • 満足度★★★★

    ラディカルな解釈 花四つ星
     今作の底本はQ1版である。リーフレットの説明によればHamletの底本には3種類があり、通常使用されるQ2,F1はQ1より長く科白も異なるという。またシーンの順序も異なる。構成、台本、演出を担当した船岩氏が敢えてQ1を選んだのは物語の展開が他の2版より分かり易いと感じたからだという。

    ネタバレBOX

    更に登場人物たちの与える印象が、自らが上演し
    たいと思った「ハムレット」という作品イメージに符号していたからだという。無論、Q2,F1からも借用した部分はある。だが、今回の上演台本を創るにあたり根本的に他の2版より短いQ1版では、削るより足す方法が採られている。結果、非常に現代的なハムレットになった。衣装も完全に現代ならば、科白回しも現代語訳である。而も固有名詞が用いられることは殆どない。その代わりに強調されるのが、各人の役割である。現王は現王の、妃は妃の、王子は王子の、その恋人は恋人の、宮廷貴族は宮廷貴族の、墓堀は墓堀の役を恙なくこなしているのである。そういう機能の中で門題化されるのが、制度と人間の関係である。シェイクスピアの生きたエリザベス朝は無論王政であるが、原始共産制以外の社会システムはその基本構造は同じだという事もできる。(学者が聞いたら目を剝いて怒り出しそうだが)即ち収奪する者とされる者である。収奪する側は富、権力、権威、知、軍事力、名声、名誉、社会的地位などの総てを独占し、収奪される者を支配する。
     To be or not to be, that is the question.という有名な科白も今作では“生きるべきか死ぬべきか云々”との訳ではない。一応、先王の亡霊から復讐を委ねられたハムレットが悩む場面で、イマイチ座りが悪いように思われたのは、真に彼が対決すべきであったのは、この制度という怪物であったにも関わらず、彼の生きた時代(と我々の時代も含めて)煩わしい人間関係から目を転じて関係そのものに着目できる知性が余りに少ないことを表している。そしてこのことこそが、ハムレットが真に悩むべき問題であった。ちょっと抽象的になるが、ハムレットの真の悩みは、それにうすうす気づきながら、問題を的確に処理できなかったことにあろう。
    観劇後、何とも言えない蟠りのようなものが心の奥底に残ったのは、今作がこの辺りの事情を提起できた証拠だろう。実験的でラディカルな演出、それに応えた役者陣、殊にハムレット役、オフィーリア役、クローディアス(&先王)役らの演技、そして墓堀(マーセラスも)役は気に入った。

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