壊れたガラス 公演情報 壊れたガラス」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.3
1-3件 / 3件中
  • 満足度★★★★★

    上手い
     このタイトルも無論、1938年11月9日~10日にかけてユダヤ人やシナゴーグ、ユダヤ人経営店などが襲撃された“水晶の夜”を暗示している。パリでユダヤ少年にドイツ外交官が銃殺された事件をゲッペルスらが利用してポグロムに発展させたと言われる、例の事件である。原作は、アーサー・ミラー。

    ネタバレBOX


     彼の書く作品の多くが家庭劇という体裁をとり、家族関係を通して社会の歪みや問題を浮かび上がらせてゆく手法は健在である。問題作であるから内容は自分で読んで頂くとして、今作を観た者の一人として、若干舞台に触れておこう。
     医師、ハイマンのアプローチが見事である。海外の作品を日本人が演じる時、姓名の違いからくる違和感だとか、わざとらしさを感じる舞台が多いのだが、今作では、どの役者もキチンと役を自分のものにしており、弱者たちの在り様をキチンと描いている為、またハイマンが医師としての立ち位置から見事に狂言回しをして居る為に、こういう違和感を感じなかった。このことは、役者・演出の力量を高さを証明しているだろう。因みにアーサー・ミラー自身がユダヤ系アメリカ人だからユダヤ人のアイデンティティーや被差別に関する作品もかなり書いている。が、彼の作品は、人としての本質、生きる意味についてを考察するレベルに達している為、内容的に深く普遍性の域に達している。こういう作品をセレクトし上演した高い見識も良い。
     音響、照明も上手に使われている。初めに“水晶の夜”に触れたが、舞台奥に新聞紙を鏡餅のような形にして一面に貼り付け、上手・下手同様ラップで覆った状態にし、側面にはずっと照明を当てていたのは、無論この夜を暗示しているだろう。更に医師、ハイマンの祖父がオデッサ出身のユダヤ人であることも興味深いではないか。
     アメリカに於けるアーサー・ミラーの位置としては、ユダヤ人問題でのシルビアとゲルバーグの恋の営みに関する言い争いで、夫婦どちらもユダヤ人である今作に対するに、フォークナーならば片方は南部出身の保守主義プロテスタントを対峙させ、不能のゲルバーグに対し、或いは拒否するシルビアに対し、「このユダ奴!」などとの罵声を浴びせることで乗り越えようとするだろうが、ミラーは精神崩壊或いはその危機を扱っている点で実に興味深いと感じるのだ。
  • 満足度★★★★

    深い!
    人は言葉の裏を勝手に判断して、自分を傷つけてしまう。

    言葉の圧が凄い!
    沢山の人に体感して欲しい。

    ネタバレBOX

    「相手を許す」「自分を許す」ことを自分に許す。
  • 満足度★★★★

    この濃密な舞台空間
    アーサー・ミラーのこの戯曲を、濃密な舞台空間に詰め込む。役者たちは演劇集団円などからの実力派だから、客席はその世界に釘付けになる。
    戦前のあの時代、ユダヤ人であることが夫婦を縛り付けていたと読めるが、実はもっと違う見えない縄がたくさんあったのではないか。狂気が一瞬にして切れるラストシーンを見ると、その一瞬にいろんな縄が心の中に浮かび上がってきた。

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