クラッシュ・ワルツ 公演情報 クラッシュ・ワルツ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.7
1-9件 / 9件中
  • 満足度★★★

    リアルとウェルメイド
    贅沢なトークゲストが並んでいたが(当日は柴幸男+かもめんたる)、都合により退座(芝居を観れただけで御の字)。 芝居はナンセンス劇の始まりかと勘違い。次第にマジメにストレートプレイを仕上げているのだと、途中で修正した。 ただ、無理もない。 事故現場に花を供えているのを咎め、あるいは表札を見ていただけで泥棒と疑い、彼女らを家の中に連れ込んで、(セミパブリック空間でもない)「応接室」を人のクラッシュする場に設定しているからで。 どことなく不自然さが漂うので「不条理系?」とみても、罪はないと思う。
     息が詰まるようなやり取りがすったもんだあって、互いの不理解状態が、(隣家の下手なピアノのように)「少しずつ良くなって行ってる」と、芝居を観て実感されるかどうかだが、私は登場人物たちの心情を、終始「眺める」立場を離れずに終ったし、「よくなってる」と信じる気持ちにはあまりなれなかった(ならなくて良いとも言える)。 お話のほうは、謎かけ(伏線)を謎解くプロセスを飽きずに追えた。が、リアリティを逸脱する箇所がそこここにあり、解消しきれず残ったように思う。
     たとえば・・息子を轢き殺した加害女性を許さない父(元夫)が、実は相手をホテルに連れ込んでいた・・。また、女性の方は愛のないセックスで子を宿したが、毎月命日に花を捧げるうちに偏執的な愛を膨らませたか、子を産み育てたいと願い、一度も献花をしない母親を難じて自分のほうが彼を愛していると嘯く・・。など。
     最大の謎は、相手を「許したい」と言い出す妻が、なかなかその態度を示さず、恐縮し続ける加害女性をずっと眺め続け、どうにもサディズムを感じてしまう面。だが彼女は地味な服装や髪型に甘んじるその女性の人生を奪ったことを申し訳ないと、頭を下げて泣く。途方もない分裂があるが、それを自覚的に摘出しているとも見えない。
     最後のオチは如何にもウェルメイドだが、抑え目な演出でも、私は甘く感じた。沖縄行きの話をしながら泣くシーンは、「リアル」に重心を置くなら、最後までリアルを貫徹してほしかった。「踊り」はもっと「型」が決まっていて良いが、このあたりは好みの問題か・・

     演目は二年前の劇作家協会新人戯曲賞(最優秀)をとった作品で、作者本人の演出による再々演。この年の最終選考に残った5作に「東京アレルギー」「血の家」など、こまばアゴラで上演された作品があり、中々接戦だったのではないかと想像された。

  • 満足度★★★

    セクハラ演劇、パワハラ演劇
    演出家のセクハラ、パワハラには腹が立ちました。

    ネタバレBOX

    5歳の男の子が亡くなった交通事故の加害者、被害者家族、事故現場付近の住人の気持ち、思惑がぶつかり合う話。

    花を供えている人を自宅に引き入れるというスタートは少し不自然に思いましたが、過失致死を起こした人のその後が気になるので話の進行を注視していました。花を供えることが死亡事故現場という印象を与え続けマンション価値に影響することなどは慰安婦像問題を思い起こさせます。罪のない傍観者はいないなども原発事故を想起させ心に響きました。

    しかし、加害者の非よりも男の子の不注意の方が大きかったことが分かっていたのに、被害者の母親の上目目線的パワハラや、弱みに付け込んだ被害者の父親の性的暴行などのセクハラが行われていたのは許しがたいことでした。ただ、ここまではお芝居の内容としてのセクハラ、パワハラですから仕方ありません。

    それが、加害者の女性に舞台上で生着替えをさせる演出を見たときには、演出家によるセクハラ、パワハラを強く感じて腹立たしくなりました。家の奥さんが「どうぞこちらで」と言ったように、いったんはけて着替えて出てくれば良いのです。何も舞台上で下着姿にすることはありません。

    様々な気持ちがぶつかり合う興味深い内容だっただけに、自らぶっ潰した作演の責任は重いと思います。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    ありふれた日常から...切ない
    舞台セットから、これから先に描かれる内容が想像できるような丁寧な作り。開演までに流れる、微かな波の音、船の音、その静寂な雰囲気が突然ドタバタと...冒頭演技はそれまでのしじまを破る。そのギャップは計算の内なのだろう、すぐに物語に引き込まれた。物語はどこにでもある(海辺)街角、3年前にそこは運命の十字路になったという。これからの話は、それこそ初演時の前に起こった出来事を意識していることは容易に想像できる。
    (上演時間90分)

    ネタバレBOX

    舞台セット...和室内、その壁は鯨幕のような白と黒を基調にし、真ん中に長座卓が置かれている。これまた青幕をイメージした座布団。部屋の周りに白い花が咲いている花壇(供花イメージか)。物語は交通事故の加害者、被害者元夫婦、事故現場に住む夫婦(第三者)という立場が異なる大人のそれぞれの思いと思惑が絡んだ濃密な会話で進む。通常であれば、第三者は入り込まないのであるが、直接事故に関係ない人たち(夫婦)を登場させ、その会話の中で東日本大震災を想起させる。加害者女性が十字路に供花しているが、そのために売却を予定しているこの家が事故物件扱い(縁起が悪い)になり、売却価格が下がるという。この金銭的問題と併せてこの家の主婦が自責の念に苛まれる。そぅ、近所にいるからこそ交通事故の予見可能性を感じ取る。それにも関わらずどこにも相談しなかったと嘆く。直接事故に関係しないが、風評被害、二次被害、三次被害という言葉で表す。普通の日常会話ではなかなか出てこないだろう。

    登場人物たちの思いは直接に、捻じれて、揺れる様相...その漂流するような展開になるが、事故から3年、前に進んでいないことに対する被害者女性の決意。その行動として、被害者が気になり尾行まがいのことを始める。そして被害者の女性は夫と離婚しているが、その元夫が加害者女性の弱みに付け込み性的関係を強要していることを知る。一身に贖罪する加害者、それが一転して被害者女性に一度も供花しないことを詰め寄る。その反論として加害者は供花することで贖罪(責任)の充足を感じているとも。5歳時の子の”死”を日々弔う加害者、5年間の”生”を見続けた母としての被害者、その激情した会話の応酬に心震える。それでも被害者の母親は前に進むために加害者に供花を止めて自分のために生きてほしいと諭す。

    隣家から聞こえるたどたどしいピアノの練習は、この家に住む夫婦がワルツをぎこちなく踊る姿にシンクロする。それでも少しずつ進んでいるのだから...。復興を意識していることだろう。ただ少し震災を盛り込み過ぎかも。

    なお、気になったところ、加害者が妊娠しており、それに気が付いている被害者女(母)が祝福する。加害者が既婚者か恋人がいるか定かではないが、話の流れからすると、元夫の子を宿したとも思える。それでもわが子を事故死させた加害者を許せるものか?激高する感情を押し殺したような結末に疑問が残る。

    表層的には交通事故を題材にした「クラッシュ・ワルツ」、その内容はヘヴィで濃密な会話、息詰まるような緊張感。それでも後味は決して悪くはないヒューマンドラマとして楽しめた。

    次回公演を楽しみにしております。
  • 満足度★★★

    ネタばれ
    ネタばれ

    ネタバレBOX

    刈馬演劇設計社の【クラッシュ・ワルツ】を観劇。

    交通事故があった交差点で、何年にもわたって花が添えられている。
    それは家族ではなく、加害者が行っているのである。
    そしてその事故現場前にマンションを建てようとしている住民が、
    風評被害でマンションの売れ行きが良くないと、花を添えるのを止めさせようとしている。
    そして加害者、被害者の家族、そして住民が一同に会した瞬間、
    それぞれの事情と思いが爆発していくのである。


    事故によって影響を受けた被害者と加害者だけに収めず、
    あえてその風評被害を受けた住民を加えて、物語を司るのが注目する点であろう。
    観客の視点をそこから始めて、家族の心情へ入っていく手法はなかなかであった。
    が、あまりにも被害者、加害者間の直接的なやり取りには全くの余白がなく、虚構と曖昧さと妄想の劇を期待している観客は、
    ただただうなずくしかないのである。
  • 満足度★★★★

    約85分
    勧善懲悪という言葉があるが、世の中ひと筋縄ではいかず、誰がイイもんか悪もんかなんてそう簡単には決められない。
    緻密きわまる脚本によりそのことをまざまざと思い知らせてくれる、地味だけれど秀抜な人間ドラマ。
    今回の再々演版は、既読だった台本(『優秀新人戯曲集2014』所収)に加筆をしたものらしいが、セリフの追加により間延びした印象は否めず、個人的には短尺版のほうが上出来だと感じた。

    ネタバレBOX

    舞台となるのは、中年夫婦が2人で暮らすある家庭。
    ただの銭ゲバに思えた夫が妻思いの優しい男だったと判る終盤では、台本を読んだ時と変わらぬ、否、それ以上の感動を覚えました。
    とりわけ、夫婦でワルツを踊るシーン。
    演出・演技、ともに良かった。
  • 満足度★★★

    何度息をのんだことか・・・
    トラフィック・サスペンスという言葉から設定は疾走する車の中で殺人が起きてさて犯人は?みたいなもののを想像したら全然違ってた。ノンストップという説明ははずしてないが、トラフィックとサスペンスという言葉はこの芝居には似つかわしくない。終演後出演者のトークがあったが、加害者役の方がきれいな方だったのでビックリした。この作家の作品はまた観てみたい。また東京おいで。

  • 満足度★★★★★

    献花
    面白い。90分。

    ネタバレBOX

    イガラシ夫(二宮信也)…マンション建設(販売価格の下落防止)のため、交差点に花を添えないようミタやクドウに土下座する。
    イガラシ妻(おくりまさこ)…クドウが花を添える姿をぐっと見守ってきたため、献花には賛成。夫が何も説明してくれないことが不満。交差点の危険性を訴えなかったことで事故が起こったと自分を責める。
    ミタ(篠原タイヨヲ)…被害者の父親。クドウを許さず責め続け、同時に自分も責め続けている。
    タケイ(長嶋千恵)…被害者の母親。クドウを許したいとして、人生を奪ったことを土下座した。現場に献花はしていない。
    クドウ(岡本理沙)…加害者。すべて自分の責任と抱え込む。

    交通事故でミタらの子(5歳児)が亡くなった事故現場前の一軒家で立場と都合と気持ちが行き交い一応の決着に辿りつく。
    イガラシ妻以外のポジションから見ると、どこかでうーんとスッキリしない感情が起こる。その途端傍観者なポジションに落ち着くわけだけど、いい具合に引き込んでくる魅力があった。時間も短めながら色々詰め込んであったけど、夫が金に執着するのは妻の医療費と判り、二人で拙い花のワルツをBGMに拙いワルツを踊るというラストでキレイめに終幕したので、なんとなく安心した。

    人の死に関わる加害者と被害者の関係性に、タケイが言った「対等」はあるのかなと。逆に、ミタのように性的に私刑を行う関係が正常なのかと。どんな関係だったらよいだろうかと。こんなとこに面白味を感じた。
    あと、(タケイの子を)身篭ったクドウは出産するようだが、(多分)シングルマザーとなるクドウは、こうした顛末で生まれる子に対しても責任を負うのかしらと。人間連鎖的に繋がってて全てに責任は取れないだろうけど。

    いい感じに恐怖とグラつきを感じられた、いい作品だった。
  • 満足度★★★

    みんな嫌い
    よくあるハリウッド映画で、なんかこういうシステムでつくれば脚本つくれますよー的な映画ありますよね。そういうのから逸脱はしてないのかも。
    なんとなくちぐはぐで。なんとか賞受賞っていうことで、期待して見に行ったけど、期待し過ぎたかも。
    こんなに登場人物全員に嫌悪感持った芝居も珍しいかと。
    でも賛否両論激しいほどいいかもってのもありますからね。僕は否でしけど、それがどうしたって感じですね。
    これを読んでる人は是非とも見に行って賛否を論じていただければと。

    ネタバレBOX

    花を手向けてた人が、花を着飾る?過程が、演劇的じゃないというか、劇的じゃないというか。だからあの人がワンピースを着終わっても、何にも楽しくなかった。
    花を手向けてた人が花を着るっていうアイディアは面白いと思うけど。

    最後の夫婦のシーンも、余韻を感じるってことがなかったです。だから逆に余計なシーンのように思えたり。

    花は誰が片づけてたのかと。花を手向けてるひとはそれで満足するかもしれないけど、枯れた花を毎度片づけなくてはならなかった人は大変だったですよね、きっと。

    みんな嫌いって書いたけど、おじさんは好きかも。おばさんも?
  • 満足度★★★★★

    衝撃的なサスペンス風会話劇
    名古屋からやってきた寄せ集め的な劇団らしく、加害者、被害者の双方の視点から、なぜこういう事故がおきたのかが衝撃的な表現で表しており、緊張感あふれる、凄い内容だった、85分でした。

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