在りし日の街 公演情報 在りし日の街」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    疾走する故郷の街
    「在りし日の歌」は、言わずと知れた中原中也の詩集。そのうちの1編「冷たい夜」は、「冬の夜に 私の心が悲しんでいる 悲しんでいる、わけもなく…心は錆(さ)びて、紫色をしている。(以下省略)」...この公演は、郷愁に溢れた内容をイメージしていたが、自分の思っていたものと違っていた。その違いは、タイトルと描いた物語のギャップに驚かされたもので、グイグイとこの話の中に引き込まれた。物語に何回も出てくるシーン...夜空に輝く星座を見上げる。

    この公演の魅力は、デフォルメした人物造形、スピード感とテンポの良さが飽きさせない。細かいことを言えば、リアルティに欠けることから、突っ込み所はあるが、それを追いやる勢いがある。
    (上演時間2時間強)

    ネタバレBOX

    夢破れて故郷に帰ってきた女性・青柳サナエ(豊田奈々サン)が、上京するまでの人(幼なじみ)や街が変っていたことに戸惑いを感じる。人は立場、状況・状態など時間の経過によって変る。人が変れば街も変り故郷の匂いが薄れるかもしれない。そして、そこに事件が絡めばなお更である。

    梗概は、上京して歌手を目指した女性・サナエが故郷の四ツ木町へ帰ってくる。大人になった幼なじみは、家業(印刷工場)を継ぎ、金貸し、ヤクザになり地元に残っている。この街は24年前の偽札事件、時計台殺人事件の2つの事件が縺れ、さらに市町合併の渦中にある。サナエは、街の秘密に翻弄されつつも、事件を追う刑事、合併に絡む国会議員などが入り乱れて、縺れた糸を解くように事件の真相に迫る...サスペンス・ミステリーである。

    大都会・東京(歌舞伎町)と四ツ木町というローカル都市を比較した都鄙(トヒ)感も語られるが、それよりも強調した人物像(キャラクター)、独特な説明・決め口調の台詞回しが印象に残る。
    この物語から思い描く言葉は、「ふるさとは遠くにありて思ふもの」(室生犀星)...であるが、ここでは自ら渦中に入り街の健全化に奔走する姿が映る。人は、自分の思い出の持ち方次第で、現在をいっそう光に満ちたものにすることも出来れば、暗い影の中に包み込むこともある。本公演、思い出に浸るだけではなく、未来に向けて大きく歩き出そうとしている。2015年旗揚げの劇団「21g座」のこれからの姿に重ね合わせることが出来よう。

    なお、いくつか気になるところ、例えば殺人事件にもなれば現場付近は徹底的に調べ、地下工場などは簡単に発見されるだろう。もう少しリアリティがほしい。しかし、あくまで”楽しむ芝居”に徹し、広げ散らかしたピースを回収するように努めていると思う。荒削りのような感じもするが、こじんまりせずスケール感を大切にしてほしい。

    次回公演を楽しみにしております。
  • 満足度★★★★

    良くも悪しくも現代日本の若者
     どうやら今作の作家は、相当の“つか こうへい”ファンであるらしい。つか的テイストが随所に感じられる他、台詞回しなどにも影響が見て取れる。あの“つか”の熱量を感じるシーンがいくつもあるのだ。(追記後送)

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