イエドロの落語其の参 再演!! 公演情報 イエドロの落語其の参 再演!!」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
1-3件 / 3件中
  • 満足度★★★★★

    イエロー・ドロップス:「イエ・ドロの落語 其の参 再演」
     先週の土曜日、西武新宿線新井薬師前から歩いて5分程の所にある、Art Live Space 「Special Colors」にイエロー・ドロップスの「イエ・ドロの落語 其の参 再演」を観に行って来ました。

     前回の「イエ・ドロの落語其の参」に新たに2つの落語を加えて、再演というより、これはもう、新作と言ってもいいような、パワーアップして、面白さも、ホロッとした切なさも増量していて、私の中では、「イエ・ドロの落語 参.五」と言った感じ。

     前回と同じ、八幡山の秘密の見世物小屋でやるはずだったこの芝居を新井薬師前のArt Live Space 「Special Colors」に移しての上演したその意味が、始まった途端にすぐにわかった。これだけのパワーと熱量、秘密の見世物小屋では、収まりきらなかったと思う。

     より、近くにおぼんろのわかばやし めぐみさんとさひがし ジュンペイさんの息遣い、間合い、表情のひとつひとつが感じ、観られる。

     物語コーディネイターの末原拓馬さんの紡ぐイエ・ドロの落語の世界は、更に滑らかに、濃く、深く、ホロリと切なくて、とてつもなく可笑しくて、笑って泣いて、ラストに向かうにつれて、さひがしさんの金蔵が前回以上にしみじみといいお男(ひと)になっていて、めぐみさんのお染は、情のあるいい女になっていて、胸にきゅんときて、ほろりっと涙が頬を伝ったりなんぞして、この芝居が観られたことを幸せに思った。

     今回新たに加わった、追い剥ぎならぬ「追い剥がれ」、さひがしさんのセクシー・シーンに一瞬、目のやり場に戸惑いながらも、追い剥がれて行く時のめぐみさんとのやり取りの間合いが可笑しくて、可笑しくて好きな箇所。

     イエ・ドロの落語を観ると、「やっぱり、落語っていいよね~」と思う。

     今回、物語コーディネイターの末原拓馬さんも、短編作品だぼだぼラボラトリー の「ズタボロが捧げる聖夜の祈り」で出演。

     前回の「イエ・ドロの落語 其の参」、「ゴベリンドン」にしても、「イエ・ドロの落語」、「だぼだぼラボラトリー」にしても、末原拓馬さんの紡ぐ物語の世界が私は大好きなんです。

     紡がれる世界はもちろん、紡がれ、声となって空間に放たれるその言葉のひとつひとつが、五感をフル稼働させ、感情がうねり、水が静かに染み込むように心を浸す。

     放たれた言葉が、シンと冷えたクリスマスの夜空に昇って、きらきらと星の雫になって落ちて来る、キュンと痛かったり、切なかったり、寂しかったりするのだけれど、掌に落ちて溶けた雪が暖かいように、いつもどこかに仄かな温かさとやさしさがある。

     クリスマスの夜空、頬を掠める冬の夜の風、温かな部屋の空気、ひとひら、ふたひら、心の中に、言葉の雪の華が舞い落ちて、何かをぽつりぽつりと残して行く「ズタボロが捧げる聖夜祈り」。

     クリスマス近い、師走のとある土曜日の宵、笑って泣いて、いろんな想いと感情を胸に抱いて、外に出れば冬の夜の冷たい風とキンと清んだ美しい夜空。

     心はぽかぽか、たくさんの幸せな気持ちとわくわく、楽しい心を胸の中に両手いっぱいに抱えて帰路に着いた「イエ・ドロの落語 其の参 再演」だった。


    文:麻美 雪

  • 満足度★★★★★

    いえどろ
    上演場所が代わってしまい、申し訳ありませんと言うメールが来ましたが、我が家からはかえって便利なところなので良かったです。と思って会場に行きましたが、たった一度行ったきりの八幡山の秘密の小屋もあれはあれで趣があったのだなあと思えて来たのが我ながらおかしかったです。落語の原典は知りませんが、どれもほんわか人情味があっておかしくもホロリとしてしまいました。帰りにどうしても食べたくなってカツサンドを買って帰りました。

  • 満足度★★★★★

    覚悟
    10月の「其の参」から2か月半、あえて畳みかけるように再演する意義は何か?
    それが観たくて行ったのだが、元ネタの落語を忘れさせる弾け方が秀逸。
    庶民の下世話な価値観と勢いが落語の身上だと思うが、それを上手く生かした
    新しいストーリーが疾走するように展開する。
    同時にシュールな展開に哲学があって一緒に立ち止まって考えさせる。
    わかばやしさん、明と暗、悲と喜、哀と愛のメリハリが素晴らしい。
    さひがしさん、あなたのお尻に覚悟のほどを見ました。

    ネタバレBOX

    八幡山とよく似た会場が何だか懐かしい雰囲気。
    かつ丼女から品川心中の後、新たな2つのエピソードを挟んだことで
    古典落語の枠を完全に離れ、パラレルワールドのイメージが豊かになった。
    「女郎でない人生」に思いをはせるお染の思索がリアルになったと思う。

    案山子の師匠とのやり取りも膨らみが増した。
    あの案山子の顔、前回は案山子の真下の席だったので見えなかったが、
    あの時も「へのへのもへじ」の口が動いたの?
    今日師匠の顔を見てびっくりした。
    とても良く出来ていて楽しい。                        

    わかばやしさんの台詞と表情にメリハリがあり、お染の行き詰まった人生と悔しさ、
    身勝手な行動とその後の“選択しなかった人生”を思う表情の深さが素晴らしい。
    ご都合主義の庶民感覚が笑いを呼ぶ落語のポイントを、テンポよく切り替えて魅せる。
    冒頭のカツ丼女から心中場面、やがて記憶が戻るまで、鮮やかな切り替えが見事。

    さひがしさんは受けに回ってその切り替えを受け止める。
    息の合ったダンス(?)とついでに追剥がれでふんどし1本になるあたり、
    ニートの金蔵の性格そのままと見せて、時々過激に仕掛けてくる。
    表現として既に確立している落語を超えるためには、
    ある程度の過激さが必要なのではないかと思う。
    それにしても「ニートの金蔵」のお人よしキャラは素晴らしい。

    物語コーディーネーター末原さんの力と、さひがしさんの覚悟がかみ合って
    元ネタが気にならない、新しいストーリーが生まれた感じ。
    客席で“顔を作る”のも“ヅラを忘れる”のも演出のうち、
    と見せるのがまた良し(笑)
    次回も楽しみにしています。


このページのQRコードです。

拡大