満足度★★★
河村唯さんが日替わりゲストで出演。
アサヒビール社のビルにあるホール。同社が協賛だったのかな。
日本がどこかの国の一部になった未来の浅草。田中涼子さん演じる美咲がヒロイン。浅草には対立する3つのグループがあって、アサヒグループの朝日昌三が、美咲のために3グループをまとめて1つの祭りを・・と。
それぞれのグループはパフォーマンスを披露。白倉さん率いるグループのパフォーマンスは、さすが、すごかったです。
各グループの演者さんたちは別々に稽古したという話を聞きました。大人数ですし。そのせいか、連携がなく独立していたように思います。まあそれはそれで。
田中涼子さん演じるヒロイン美咲は不治の病で、・・・、最後、良かったです。
河村さんはワンシーンの出演ですが、うたを歌ってくれました。アイドル卒業後の最初の機会、嬉しかったです。
満足度★★★★★
Xカンパニー旗揚げ公演:「泡の恋」
内容は、
近未来の浅草。
日本という国は今は無く、新しい合併国へと変わり、元日本の、現外国の領土となってしまった東京の街ASAKUSA。
そこは3つのグループが街を納める縄張り争いをする、昭和と未来が混在するカオス街になっていた浅草は、人が集まり、懐かしくも新しい街を作るための想いが交錯していた。
日本だった頃から浅草で育った美咲は、賑わう浅草を微笑ましく見つめながらも、変わっていく景色をどこか物憂げに眺めていた、そんな最中、時代は残酷にも人々を翻弄し、想いをねじ伏せて行き、わずかしか残されていない時間を前に、アサヒグループの朝日昌三は、街のため、美咲のため、対立する3つのグループを統合して1つの巨大な祭を打ち上げる決意をするのだが...。
日本人だった人々の、泡のような恋物語というもの。
こう書くと、シリアスな舞台に思えますが、ところがどっこい、大人の玩具箱をひっくり返したような、9割お腹から笑って、1割のしみじみがとっても素敵なバランスで散りばめられた1年を締め括るのに最高の楽しい舞台。
今までに観たことのないような舞台。舞台なのだが、単なる舞台ではない。舞台をポンと飛び越えたような、自由奔放、縦横無尽、てんやわんやで時間も時空も自在に行き来して、芝居、舞台というものの平衡感覚が一瞬失われて、今、自分は何処に居て、何を観ているのか、現実なのかファンタジーなのか、その境界があいまいであやふやになる不思議な感覚へと陥る。
だが、それ故に、気づくと違和感無くすっとファンタジーの中へと入り込み、物影から、覗いているような臨場感がある。
いつもなら、印象に強く残っている役者さんお一人お一人について、書かせていただくのですが、出演されている全ての方が、印象強くて、書ききれないので、舞台を観ての感想のみを綴らせて頂きます。
目まぐるしく駆け巡る舞台、3つのグループが、それぞれ存在感のあるキャラクターと強烈な印象を残しながら、時間と時空を行きつ戻りつ、縦横無尽に、自由奔放に交錯し、繋がり、滑らかに、物凄い熱量とスピードで展開して行くのに、せわしなさは感じず、どこかゆっくりと時が流れ、時が止まり、また動き出す。
笑いながら観て行く内に、「恋の泡」ではなく、「泡の恋」である意味が解って来る。
恋が儚く泡のように消えるのではなく、儚く消えて行く泡のような恋。
それは、昌三と薄野のマドンナ、美咲の病によって失われて行く記憶と命であり、美咲との時間であり、泡のように儚く消え想いであっても、誰かが誰かに恋をしたその時間。
その切なさといとおしさ、仄かに感じる温かさが、胸に沁々と染み透って行く。
「泡の恋」。
それは、淡く儚い初恋のようで、ほろ苦いビールの泡のような恋なのかも知れない。
パチンと弾けて消えてしまう恋。
それは、美咲だけに向けられたものではなく、美咲と昌三が愛した浅草という街への、今ここで生きているということへの恋なのかも知れない。
そのひとつまみの切ないしみじみさが、スパイスとなって、舞台を包む9割お腹から笑える忘年会のような自由奔放な舞台を、泡のように弾けさせつつも、胸にじんわりと沁みて面白い舞台にしていた。
年の瀬にぴったりの笑って、ほろっとして、思いっきり楽しめた、1年を締め括るのに最高に面白い舞台でした。
文:麻美 雪