ヤッシーナイト2 公演情報 ヤッシーナイト2」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    最終日観劇
    演者も演出も当日のトークゲストも、演劇界の早稲田派閥で囲まれ劇場の外では六大学野球の優勝パレードが聞こえるという、滅多に経験しないような観劇日。
    個性的な4作品、この作家陣を集めたのはご本人の人徳ゆえなんだろうな。
    矢柴さんの映像での活躍は目にしているけど、舞台で見る姿は初見。これまでも幾人もの一人芝居を見たことはあるけど、今回は作家陣に惹かれ見に行った。劇場アクセスも良く、劇場内部も綺麗だった。

    舞台で演じる時は一人だけど、幕間にお手伝い役?のメイクさんが出てきてその人と台詞なんだか素の会話なんだか、あまりにも自然な会話を挿入し、舞台上で着替えを見せながら次の話へ移行する。更衣中、胸にバストバンドしているから「ああ、一人舞台って大変だなぁ‥」と漠然に思っていたら、実は前日の舞台で肋骨骨折してしまったのだとか。お大事に。
    少し長くも感じたが面白かったです。約2時間半。

    ネタバレBOX

    上手側には楽屋をイメージするメイク台に衣装、下手側には劇中に使用する机やソファがあり、中央には平面の壁、そこにはタイトルや映像画面が出るスクリーン仕様。冒頭、上手近くにある出入口から和服姿の矢柴氏登場。上演前には、助演としてメイクさん(中村沙樹さんというかたらしい)に雑談するように作品解説やそれまでの経緯を独り言ちる。舞台小道具などの転換などは若い男性がやっていたが、のちに舞台監督さんだと判明。

    4組の脚本家によるオムニバス一人芝居。以下、上演順。

    ・10数年前、自分と同時期から活動してた猫のホテル、活躍していく様を横目に自分も「CAB DRIVER」という劇団主宰して活動していたけど、自分んとこは公演直前に主演女優が来なくなったりと問題も発生したりと紆余曲折あり。数年後(千葉さんと)共演した際に、連絡先を交換してから、今回、脚本書いてもらった。
    「おんなの谷 / 千葉雅子」
    将棋名人戦、対局真っ最中に勝負の流れを変えようと、昼食で訪れたお店で巻き起こる棋士と妻と愛人とカンボジア出身の女性店員のひと騒動。店内で次第に修羅場と化してくる妻と愛人とやたらと突っ込みの上手い店員に対する棋士の慌てっぷり、否定と突っ込みながらご飯食べて、彼女たちに追い込まれ次第に汗だくになってく様が面白い。ショートショート猫ホテ作みたいで、一人で演じているに千葉さんの作品と強く実感。面白かった。

    ・着替えながら、今回の脚本依頼をした経緯を話しつつ、次の準備。
    (山崎さんが)昨年の一人舞台「ヤッシーナイト」を見に来てくれて、その時はつかこうへいさんの作品をやったが「どうせならオリジナルやったら?」と言い残して帰って行った。今年の舞台で何をするか誰に書いてもらうかと悩んだ時、山崎さんとの会話を思い出し、ならばオリジナルを書いてもらおうと、身の程知らずの前代未聞のオファーをした。昨年度の邦画興行収入1位2位を独占した脚本家で日本を代表する映画監督にですよ!(山崎氏はすでに5年くらい先のスケジュールが埋まっているらしい)小劇場に書き下ろしたという大事件!思い切って依頼したら最初は「書けたら書きます」という返事だったのに、届いたのは見事に書き上がったものが送られてきた。読んだら確かに面白い。けれど、ある部分、手直ししたらもっと面白くなっていくんじゃないですかね〜と、下から上を伺うように(パソコンでキーボード打つように)メールを送ったら「良いですね〜」とまた面白いのが送られてきた。さらにここを変えたら〜、なんてやりとりを数回繰り返して出来た作品。
    「蔵の中 / 山崎貴」
    老婆から依頼を受けてやってきた質屋の男2人。お宝になるような物はないかと、蔵の中を物色していると封印された箱を見つける。中見ないと物がわかんないしと開けてみると、何やら決戦の様子やその時代の重大な事柄が時代絵巻のように描かれた巻物が出てくる。歴史上の人物から近年の様子まで描かれて図面も綺麗で内容的にもお宝か!?と喜んだのも束の間、最近の震災を思い出す絵が出てきて、もしやこれは予言の絵巻で見たらヤバいものなのでは…と思ったら案の定、家主の老婆から「それは家宝だから開けないで」と外から言われてしまう。はーいわかりましたーと返答するも、今頃言われて後の祭り。さてどうしようと思案していたら、こうなったら全部見てやるかともう一人の男は言う。勢いのあまり結局見てしまった男2人の結末。世にも奇妙な未来話でテレビドラマ的な要素も見られて面白かった。

    ・すでに汗だくになりながら公開着替え。冒頭の依頼話にまた話が戻りそうになったところでゲストが自ら登場、以下混同した会話の覚書。
    「インターバルトーク / ゲスト・村上てつや」
    たまにぼーとしてテレビ見てるといきなり矢柴が出て驚く/早稲田で芝居やるなんて懐かしいねー/学生時、大学の一番いい場所でゴスペラーズがコーラス練習していた、それを演劇やっている団体は少し離れた場所で稽古している団体が多く、それを遠くで聞いていたが月日が経つとだんだん煩くなっていき、聞こえてくるので早稲田の演劇サークルにいた(カムカムミニキーナの)八嶋智人などは「あいつらうっせーな」とか言ってたの覚えてる/場所取り?提供してくれたおばちゃんに親切にしてもらったエピソード/今日は六大学野球で早稲田が優勝したから、帰りはこの周り、大変な事な事になるんじゃない?/大御所に依頼する話聞いてて俺がハラハラしちゃったよ!俺らは大御所クラスの作詞家に(修正を)お願いしたら、なんで?って言われるよ!いや、そのかたは「てにをは」を大事にされている方なんでね(言いながらフォロー)/ゴスペラーズも芝居仕立てでライブやったりする/デビューしたての頃、当時のマネージャーの勧めで5人全員NHKのドラマオーディションに参加させられた、5人のうち4人は書類選考落ち、後の一人が第3次(?)まで通過して結局何かのドラマに端役として出演した/それがこの前さだまさしさんの娘さんと結婚した北山(陽一)!/矢柴さんが村上氏になんか歌ってよ、と振るも、逆に「お前が歌え」と煽られ、村上氏はポケットから音叉取り出し耳に当てながら共鳴確認、メイク役の中村さんと舞監さんも加わりコーラス指導、矢柴さんがメインボーカルでベン・E・キングの「スタンド・バイ・ミー」を披露する事になるが、なかなか音程取れず苦戦する。最終的に客席もコーラス加わり場内一体化でワンフレーズ歌い上げる。/ 充分盛り上がったところで村上氏退場。

    ・次の方とは(飯田譲治さん)長いお付き合いで、僕が初めて映像に出演した時の監督さん。この人も凄いですよー、依頼したら2時間くらいの作品書いて送ってくれた。でも(上演の)時間は限られてるし演るの一人だし、ビクビクしながら手直しをお願いしたら「なにぉ〜」と言われたりしたが協力して書いていただいた。NHKドラマ「アイアングランマ」にワンシーンで出演した役、その時は「関塚」って名字だけだったのに今回はフルネーム。「正」って名前だったんだw その役を主人公にして、一人芝居の台本にしてくれたもの、いわゆるスピンオフ。
    暗転。画面が切り替わると
    「私立探偵関塚正 / 飯田譲治」
    いきなり水を一気飲みしたところから一瞬に場の空気が変わり、すぐに話の世界に突入。かつて刑事だった関塚、今は探偵をやっているが、ある事件を追っていく事に妻も関わる事になり…。かつての「沙粧妙子」を彷彿させるような作品というか、性愛エロチックホラーサスペンスといった感じ。映像になったら、あの場面はCG処理が加わるんだろうなと思うような描写があったり。最後は冒頭の水を飲んでいる場面に戻るが、妙に気持ち悪い面白さがあった。

    ・やっと最後です、もうみなさんもずーーと脇役汁浴びっぱなしで疲れるでしょ?着替えながら胸に装着してるバストバンドに自ら触れ「昨日の公演中に肋骨を怪我し病院直行しいろいろ処置してもらった」との事。次のジュウノメは5人くらいの若手ライターたちが考えた作品の中の一作。(ああ、ジュウノメって10の目の事か、と書いてて今頃気づいた)
    「ザ・ワールド・オブ・マイン / ジュウノメ(シナリオ制作ユニット)」
    パジャマ姿で床に頭をつけて膝曲げて倒立している、この訳ありの子が主役だが、実は逆子男児だった。なんとか正常位置に戻り、そこから話が始まる。父親が仕事を終え、ほろ酔いご機嫌で帰宅し、名前を考えたと発表するもあまりのキラキラネームに胎児意気消沈、そんな名前やだー!と念じ胎内でジタバタするも、肝心の母親は自分とは真逆の考えで否定しながら「ほらお腹の子もこんなに喜んでる!…」ってそれに感動する始末。今は売れない役者だけど付き合いは大事、今度の仕事まで2万円貸してとのたまう父親。おいおい、俺もう生まれちゃうよ!これから先、大丈夫なの?本当に生まれて大丈夫なの!?と、困惑してるうちに母親の体に異変の兆し、いよいよ陣痛が始まって…。胎児は無事に母親のお腹から出てこられるのか、父の命名は本当にそれでいいいのか、風雲急を告げる出産の行方は一体どうなるか。深夜枠のドラマ見ているみたいなファンキーな出産話。現実社会でもその当て字で名前つけてる人がいそうなタクシードラーバーなハリウッド俳優名、それを模写する矢柴さん、似てた。

    無事に終演となり、「脇役汁をたくさん浴びたと思うので早く帰って洗い流してください。」と矢柴さん〆の一言で終了。
    2時間を超える舞台を演りきった矢柴さんの舞台への意気込みや戯曲への取り組みと掘り下げ方、人物の陰影、緊迫した心理状態をすぐにモノにする巧みさに感嘆。どの作品も作家個性が出てて、面白かったです。

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